おいてけぼり
シチュエーション


昔々、とある旗本が錦糸町の堀で釣りをしていたそうな。
ところがその日に限って魚が一匹も釣れん。いい加減頭にきた旗本が腰を上げた時、堀の方から

「魚を置いてけ」

と声がした。

「好きなだけ持っていけ」

ムッとした旗本が魚篭を堀端に投げると、葦の中から白魚の様な手が出てきて魚篭を掴んだのじゃ。
旗本はその妙に艶めかしい手に見惚れてしもうて、行き成り葦の中に飛び込むと魚篭の中を覗き込んでおった女子(おなご)の腕をむんずと掴まえたそうな。
吃驚した女子の頭から丸い耳が飛び出したのにも気付かず、旗本は女子の着物を端折ると太い尻尾を持ち上げた。そして淡い紅色に染まる鮑を見つけるや、己が自慢の銛で突き上げたのじゃ。
最初は泣き叫んでおった女子も、二度三度と突かれるたびに声と貝の身を湿らせてよがったそうな。
ひとしきり楽しんだ後、旗本が女子に訳を尋ねると、幼い娘が病に倒れ苦しんでおるとの事。
娘の為に我が身を呈して精の付く魚を手に入れようとする母狸に感じ入った旗本は、丁度近くを通り掛った町人達から魚を買い上げようと堀の下から声を掛けたそうな。

「おい、すまんが魚を分けてもらえぬか」

じゃが、町人達はどこからともなく聞こえてくる旗本の声に恐れをなして、魚篭や釣竿を投げ捨てて逃げてしもうた。
こうして母狸は魚を手に入れ、娘狸も無事に持ち直し、この辺りでは妖怪「おいてけぼり」が跋扈する事になったそうな。

どっとはらい。






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