我慢できません2
山田草太×鮎川若葉


部屋の電気を消したとはいえ、完全な暗闇ではないし目が慣れればそれなりに見えるものだ。
草太の手のなかでふよふよとかたちを変えるさほど大きいともいえない自分の胸が、
ソファのアームレストに頭を持たせかけている体勢のせいでいやというほどよく見える。

「ン……ッ、」

ツンと尖って硬くなった先端を口に含まれて、若葉はピクリと背を震わせ息を飲んだ。
ここを触られるとどうしようもなくもどかしい快感を生むということを、
若葉の体に教え込んだのは草太である。
なにも知らなかった頃は乳首は赤ん坊に乳をやるためにあるのだと思っていたし、
実際に英次郎を産んで母乳をあげていたときは当然ながら
こんな疼くような気持ちよさを感じたりはしなかった。
それとも、触るのが草太だからこんなに気持ちがいいのだろうか。
草太以外の男に愛撫されたことのない若葉には知りようがなかったし、知りたいとも思わない。

「はぁっ……ンンッ」

片方を歯で軽く甘噛みされながらもう片方を指の腹で優しく押しつぶすように捏ねられて、
思わず漏れてしまった声を慌てて飲み込む。

「若葉さん……唇、傷になるから噛んじゃだめだよ。我慢すんの、苦しいっすよね。
今度のお泊り保育の日は防音ばっちりのラブホにでも行こうか?」
「ラブ……! そ、そんな贅沢はダメですっ」

薄暗闇にも真っ赤になった若葉に、草太は半ば冗談でもなかったという口調で

「でもオレ、若葉さんの可愛い声、もっと聞きたい……」

と、唇を指でなぞられる。

「き、今日は英次郎が起きちゃうから……ダメです」
「じゃあ英次郎が起きる心配のないときは我慢しないでもっと聞かせて?」
「…………」

とは言え、素直にハイとも言いづらいお願いに困って若葉がぐっと押し黙ると、
草太はくすっと笑って唇にちゅっと軽いキスを落とした。

「若葉さん、可愛い……」

熱っぽく囁かれ、抱き締められる。
素肌と素肌が合さるだけでため息が出るほど気持ちがよく、
若葉は口づけを受けながらうっとりと目を閉じる。
背中から脇腹、腰のラインを撫でおろした草太の手が、若葉の脚の間に滑り込んだ。

「ぁ……」

下着越しにもわかるほどにそこはたっぷりと潤っていて、若葉はかあっと頬を染める。
しかも、草太は今更気にしたりはしないが、若葉が穿いているのはパンツスーツに
ラインが響かないようつるんとして何の飾りもなければ色気もないベージュのショーツだ。
今ではそれなりに可愛い下着もいくつか持ってはいるのに、こんなときに限って……
などと恥ずかしさからの逃避で思考が脱線している間に、するりとショーツを脱がされてしまう。

「あ……ンッ、」

草太の指がくぷりと潤みのなかへ沈み、卑猥な水音をたてながらゆっくり内部を掻き回す。
滴る蜜を掬った指でぬるりと敏感な芽を撫であげられると、
電流に貫かれたような強い快感にビクリと腰が跳ね、漏れそうになる嬌声を飲み込んだ。

「〜〜〜〜ッ!!」

ここを触られたらすぐにイっちゃう……と思考が蕩けかけたそのとき、
襖がカタリと開く音がして草太と若葉は揃ってストップモーションのように固まった。

「おかあ、おとう、おしっこ〜」

英次郎の寝ぼけた呼び声に草太が「オレが行きますから」と囁いて身を起こすと、
落ちていたパジャマの上着を拾って若葉の裸体にそっと被せた。
ソファは寝室へ続く襖には背を向けて置かれているのだが、
若葉は英次郎に見つからないように息をひそめて身を縮こまらせる。
英次郎をトイレに連れて行った草太は、寝かしつけるためそのまま一緒に寝室に入って行った。

達する直前のところで放り出された熱を持て余したままの若葉は、
草太が戻るまでの時間が長く長く感じられてたまらない。
被せられたパジャマの上着の下で身を捩り、無意識のうちに熱くなっている場所に手を伸ばす。
草太と恋に落ちるまで若葉は、恋愛にも性的なことにも殆ど興味がなかったので
知識として知ってはいても、自慰をした経験はなかった。

「ひぅ……ッ!」

加減がわからず強く触りすぎて、痛みを伴う刺激に息を飲む。
もっと優しく、草太が触れてくれるみたいに……と思っておそるおそる指を動かすが、
ちっともあんな風に気持ちよくなれない。

「はぁっ、……な……んでぇ……」
「わ……かばさん……?」

息子を寝かしつけ終えて戻ってきた草太は、はじめて見る妻の痴態にごくりと生唾を飲み込んだ。
自慰をしているという自覚のない若葉は、やっと戻ってきた草太に
このもどかしい熱を早くどうにかして欲しくて、

「そ……たさんがしてくれるみたいに、気持ちよくならないよぉ……」

と、潤んだ瞳で訴えた。
普段は優しげなたれ目をすうっと眇めて雄の表情になった草太は、唇の端をぺろりと舐める。

「放ったらかしにしてごめん。とりあえずイきたい? それとも、挿れて欲しい?」
「い、挿れてほし……っ」

草太の手でまっさらな体を拓かれた若葉はもう、クリトリスだけの刺激で絶頂に達するより
草太を迎え入れた状態で達した方がより深い快感を得られることを本能的に知っている。
パジャマ代わりのハーフパンツと下着を脱ぎ捨てた草太は、
視覚からの刺激ですでに臨戦態勢になっている自身に
先ほど寝室から持ち出してきた避妊具を手早く装着する。
仰向けにさせた若葉の両脚をぐっと押し開くと、
薄暗闇にもぬめって光る入り口にくぷり、と先端を沈ませた。
挿入の瞬間が気持ちいいらしい若葉にたっぷりと快感を味わって欲しくて、
一気に突き入れたい衝動を抑えて熱く潤むそこにゆっくりと自身を埋め込んでいく。

「あぁ……」

背筋を震わせた若葉が、甘いため息を漏らす。
奥深くまで自身を埋めきった草太もまた、熱いため息を漏らした。

「はぁ……っ、若葉さんのナカ、すっげえ気持ちいい……」

若葉の脚を抱え直した草太は、はじめはゆっくりと、やがて力強く腰を揺さぶる。
穿たれる度にうわずった嬌声が漏れそうになり、若葉は慌てて手で口元を塞ごうとする。
それに気づいた草太は、若葉の手を取って自分の首に回すよう誘導すると、
身を屈めてキスで唇を塞いだ。
甘い吐息ごと舌を絡め取りながら容赦なく奥を攻めたてると、
草太の首筋にしがみつく若葉の腕にぎゅっと力がこもり、無意識のうちに肩口に爪が食い込む。
そのピリピリとした痛みさえ、草太を昂ぶらせる快感になる。
先ほど若葉の自覚のない痴態を目撃したせいか、もう限界が近いと感じた草太は
覆い被さっていた体を起こすと、ぐっと深く腰を突き入れた。

「ッ、ごめ……若葉さん、オレもう……」
「あっ、それ、ダメぇ……ッ!!」

奥を小刻みに突きながら、繋がっているところのすぐ上でぷくりと勃ちあがっている
クリトリスに指を這わせる。
溢れる愛液を絡めた親指の腹でそこをコリコリと転がすように撫でると、
若葉は今度こそ両手で口を塞いだ。

「〜〜〜〜!!!」

激しく押し寄せる快感の波に、目の前が真っ白にスパークする。
仰け反った背がガクガクと震え、草太を飲み込んでいる内壁がぎゅうっと引き絞られる。
その絞り尽くそうとするかのような締めつけに、たまらず草太も若葉の奥で熱を弾けさせた。

「……もう、そろそろ離してください」

後ろからすっぽりと若葉を腕の中に抱き込んだ草太は、

「えー、もうちょっとだけ」

と、少し鼻にかかった甘え声を出した。

「シャワー浴びたいんですけど……」

汗ばんでべたつく肌が気になるのも本音だけど、汚してしまった下着を洗って干さなければ……
という妙に落ち着かない気持ちもある。
それ以上に、事後のこういった甘ったるい戯れが何年経っても慣れなくて恥ずかしいのだ。

「じゃあ、一緒にシャワー浴びよっか?」
「イヤですっ。シャワーだけで済むとは到底思えません」
「そんな……オレってそんなに信用ないですか?」
「自分の胸に手を当てて、今までのことをよ〜く思い出してみてください」

新婚の頃、お風呂で事に及んだとき調子に乗って色々やりすぎたせいでその後、
基本的にお風呂はNGになったため、ごく稀に事後のシャワーのお供を許されたときはつい、
あれこれと悪戯をしてしまっていたことは確かだ。
若葉の髪に顔を埋めて、草太ははぁ……と情けないため息をついた。

叱られた子犬のようにしょんぼりしてしまった草太がちょっとだけ可哀相になった若葉は、
自分を抱き締めている腕を解くとその指先をきゅっと握った。

「今度のお泊り保育の日……その、ホテルに……行ってみても、いいですよ」
「えっ?」
「こっ、後学のためですっ。以前に抱えてた案件の調査でそういうホテルの通用口で
従業員の方から話を聞いたことはあるんですけど、部屋の中に入ったことはないのでっ」

若葉は早口でまくしたてるとバッと草太の腕を振り払い、
落ちていた自分の下着とパジャマを手早く拾い集めて小走りでバスルームに消えた。

「マジっすか、やった……!」

ラブホテルなら防音にも気を遣わなくていい広いお風呂がある。
これは若葉にお風呂エッチアレルギーを克服してもらうチャンスではないかと
草太はニヤニヤしながらあれこれ考えを巡らせはじめた。






SS一覧に戻る
メインページに戻る

各作品の著作権は執筆者に属します。
エロパロ&文章創作板まとめモバイル
花よりエロパロ