ル・シャトーにて(非エロ)
山田草太×鮎川若葉


〜ル・シャトーにて〜

仕事帰りの若葉がル・シャトーを訪れると、すでに客は一人もいなかった(痔爺も)
店内の様子から、盛況だったことがうかがえる。
ホッとした若葉はバッグの肩紐をギュッと握り直し「お疲れ様でした」とぶっきらぼうに頭を下げる。照れくさいのだ。
シェフ姿の草太は、首回りのボタンを外すと、すっと手を差し出し言った

「おいで、若葉さん」

ついばむような控えめなキスのあと、鼻の頭と頭が触れ合ったままで草太が囁く。

「会いたかった、若葉さん、俺…」
「私もです」

草太の潤んだ瞳と長い睫毛があまりに近過ぎて、若葉は目を合わせることができない。

草太の指が若葉の顎を持ち上げる。少し身構える若葉。

「どうかしたっすか?」
「食べられるかと…思いました」
「え?」
「あの時私、唇を食べられてしまうんじゃないかって…どきどきして。…結婚式の時」
「…あぁ、あの時」

一瞬の間の後、二人は笑い出していた。

「ほんっと、有り得ないサプライズっすよね。あ、暖かいスープ飲みますか?若葉さん」

真新しい鍋を手にした草太が腕組みした若葉に尋ねる。
ロマンチックな雰囲気は飛び去ってしまった。

「今日だって有り得ません!帰国してお店までなんて、知らなかったし!…嬉しかった…ですけど」
「え?なんすか?」
「なんでもありません!…あ!サプライズなら私もありますけど」

若葉は昼間届いた一通のメールを思い出していた。若葉にとってもサプライズな内容だったメール。

「そよ子さんが」
「はぁ」
「来年には」
「来年には?」

草太はスープをかき混ぜる手を止めない。

「来年には、西野そよ子になります!」
「はぁぁぁ?う、嘘じゃないんすか」

ガチャンガチャン!慌てて草太が厨房から駆け寄る。

「嘘ではありません。この通りメールが来ました。」
「ちょ、そのメールよく見せてくださ…」
「ダメです。個人情報です。…ぷっ」

してやったりな顔で吹き出す若葉。つられて草太も笑い出す。
そしてどちらともなく手をとりあう。

「改めてよろしくお願いします。若葉さん。」

若葉は微笑んだまま目を閉じた。






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