通らなければならない道
山田草太×鮎川若葉


「え、いいんす‥か?若葉さん」
「私に二言はありません。いつかは通らなければならない道です。ですから、」

若葉は食べかけの弁当にそっと箸を置き、固まっている草太へ向き直って言った。

「今日、よろしくお願いします。」

三つ指をつき頭を下げる。2つ結びの髪がサラリと頬にかかる。

「いや、なんつーかいきなり今日とか言われても…」
「様々な要素から総合的に判断して、本日決行するのが良いかと思いましたっ。」

顔を上げた若葉は、草太の顔を見ずに何事も無かったように再び弁当に向かう。
草太の作った弁当だ。激務の若葉のために部屋へ差し入れに来てくれたのだった。

「若葉さんがそう言うなら。…わかりました」

筑前煮の人参をつまもうとするがうまくいかない。箸先は胸のバクバクを隠せないようだ。

「そ、それから、人が食べてるの横でじっと見るのやめてください。消化が悪くなります。」
「若葉さんが食べてる姿を見ていたいんです。それ美味しい?若葉さん。」
「…美味しいです…。」

その夜、ビー太郎を寝かしつけた草太がアパートへやってきた。

「若葉さん入りますね。」

灯りの消えた狭苦しい部屋のベッドに若葉が腰掛けていた。
月明かりに照らされたその姿は、2つ結び・メガネ・いつものジャージ。
彼女らしいな…草太は思わず微笑む。
座っている若葉の横に手のひらをついて、上から覗きこむ形で口付けようとする。
びくりと若葉がのけぞる。かなり緊張しているのか、唇がかすかに震えている。
と、意を決したのか、若葉自ら唇を合わせてきた。おずおずと草太の首に手を回す。
唇が離れると、草太は若葉を胸に引き寄せた。

「もう止められないですよ。嫌だと言ってもやりますから。」

だんご虫…草太さんの匂い…体温…男の人なんだ…
ドクン!

若葉は体の奥から心臓とは違う大きな鼓動がするのを感じた。
草太は若葉のメガネをそっと外すと、額から頬、首筋へ唇を軽く押し付けるように移動させていった。
後ろから若葉を包むように抱きしめた草太は、若葉の頭にオデコをコツンと当てる。

「だいじょぶ、信じて。」

ジャージの胸元に手を入れる。Tシャツごしに胸の膨らみに触れる。

「下着つけて無いんですか」
「そ、その方がスムーズではないかとっ」

両手指で下乳からサイドに向けてさすってみる。

「はぁ…」

若葉は無意識に息が漏れたことに驚いた。肌が粟立ち、痺れが走る。
恥ずかしい・痺れる・くすぐったい…でも不思議なのが、全ての感覚が“甘い”のだ。
Tシャツの下で乳首が硬く収縮するのが自分でわかった。

草太は色気の欠片も無いジャージの上着を脱がせた。若葉がさっと胸先を腕で庇う。

「俺は後ろにいるから見えないですよ。恥ずかしがらないでください、若葉さん。」

ゆっくり開かれた若葉の両腕。草太は若葉の両手を柔らかく握った。

『安心して…だいじょぶ』

そしてまた胸に触れる。
重さを確かめるように手のひらを添えたり、ウェストラインから乳輪までをゆっくりと撫でたり…
若葉の背筋が勝手にピンと伸びる。まるで胸を突き出すように。

『ま、真ん中触って…やだ、凄くせつない…』

口に出せるはずも無い。その時
キュッ… 布越しに2つの突起がつままれる。

「あ…」

親指と中指に挟まれた乳首を草太の人差し指がゆっくりとこすり始める。
若葉の内股に力が入り、背筋がより一層反り返る。

「ふぅっ…ふっ…ふっ…」
「若葉さん、どんどん硬くなってる」

草太は爪の先を使い、小さなストロークでカリカリカリカリと突起を引っ掻いた。
草太の膝に置かれた若葉の手に力が入る。

「はぁぁぁ…恥ずかし…んっっ」

こんなに小さな突起なのに、苛められると身体が言うことをきかない。
草太は若葉の着衣を器用にスルスルと剥ぎ取ってしまった。
そして着ていたシャツを脱ぎ捨てると、力の抜けた若葉ごとシーツとケットの隙間に滑りこんだ。

「シーツが冷たい…」
「若葉さんが熱いんだよ。」

今度は手のひら全体を使い、広くゆっくり全身を愛撫する。
波に揺られるような浮遊感と包まれる安心感。なのに身体の中心が焦れる感覚に若葉は戸惑った。

『さっきみたいに苛められたい…嫌ぁ…そんなの…』

若葉の両膝に手を置いて開かせる。滑らかな乳白色の腹に力が入るのが分かった。
羞恥に耐える若葉の顔には、隠しきれない期待の色が伺える。
紅潮し汗ばんだ頬に、うなじに、髪が張り付きたまらなく色っぽい。
草太はまず若葉のそこを手のひら全体で覆うように触れてみた。次に、V字にした指で大陰唇をスッと撫で上げる。

「はぁぁぁぁ…なんで…!なんでぇ」

若葉の尻がガクガク震える。知識にある“感じる部分”とは違う場所への刺激なのに…。
何度も撫で上げられる。足裏が痺れるようだ。腰が自然に動いてしまう。

「ふぅっっ…んっっ…んっっ…指…んっっ…」

やがてある一点に意識が集中し始めた。触ってほしくてたまらないのだ。

つぷっ

「あふっっ!んっっ…」

草太の中指の腹が膣口にあてがわれた。そこには重湯のような暖かくこっくりとした感触の液がたっぷりと溜まっていた。

「あったかい…若葉さん」

指の腹を上へ滑らせる。愛液で滑らかになった指先がついにクリトリスを捕らえた。

「ふあぁ!(来たぁぁ…触って…疼いてたの…)」

眼を閉じ、眉を寄せてのけぞる若葉。

「若葉さん…めちゃめちゃキレイっす。見せてください…全部」

若葉は胸元でクロスさせた手をキュッと握りしめていた。眼も強く閉じられている。

「あ、やっぱ嫌っすか?俺…」
「想定内です!」
「え?」
「交際中の妙齢の男女が何をどうするかぐらい理解しています。いいんです、平気なんです、気にしないでください!」

早口でまくし立てる若葉の唇が草太によって塞がれる。

「んっ…ふぅっ…」

『唇が柔らかなのに力強くって…んっっ…入ってくる…男の人の舌…が…』

二人の唾液が混じり合い、胸の奥がキュウっとせつなくなる。
しばらくの激しいディープキスののち離れた二人の唇は、銀色に光る糸で繋がっていた。

「はぁっ…はぁっ…ごめん、若葉さん。俺なんつうか気持ちが高まって、すげぇ可愛いいって思って…好きだ、若葉さん。」

あぁ、この人はどこまでも優しくて優しくて、ずっと欲しかった言葉を私にくれる…と若葉が眼をうっすら開けた瞬間

「待って!んんっっ…!」

ググッと押し込む感触がして、頭がずり上がる。脚の間から若葉を見下ろす草太は、いつもの優しい笑顔だ。
ゆっくり若葉の手を取ると

「先っぽ全部入ってますよ。わかりますか?」

広がった陰口あたりを触らせる。

「いっ痛い…痛い…のかな…」
「まかせて、力…抜けますか?」

草太は若葉の片足を持ち上げ肩に担ぐ。
料理人らしく器用な指先で若葉のクリトリスを見つけ出す。突起を守るフードを持ち上げ、敏感過ぎるであろうルビーにそっと触れる。

「んっ…!はぁぁ…大丈夫です…熱い……」

円を描くように緩やかにクルクルと撫でる。キーンとした快感が若葉を貫く。

「それ変になるっ…やめてやめてやめてっ」

なまめかしく蠢く若葉の膣内に、残り僅かな草太の理性が飛んだ。グッと体重をかけ腰を押し付けるる

「んはぁっ!!!!」
「はぁっ…はぁっ…はぁっ…クリトリスがキンキンに尖ってますよ…素直じゃいですね、若葉さん。」

腰を短く早いストロークで出し入れする。狭い、あまり狭い処女地が草太の亀頭を刺激する。

「若葉さんの奥、気持ちいいっす…若葉さんもう俺だけのもんです…」
「あんっあぁんっ…あんっあんっ…やめて…」
「止めないっすよ…止めてほしくないんでしょ?…はぁっ…若葉さんてエッチだったんだ…」

硬くなったクリトリスを包皮ごと揉み込みながら、乳首に指を這わせる。

抜き差しの度にヒリヒリした痛みが若葉を襲う。時折ひっかかるような痛みもある。下半身が溶け、何かがこんこんと溢れ出している。
胸を責める草太の手を思わず握りしめてしまう。
うっすら開けた眼に、顎を上げて若葉を見下ろす草太が映った。
キュッと上がった口角と乱れた呼吸。若葉は淫らな玩具になった気がした。

『私で気持ちよくなってる…?もっとよくなって…苛めて…』

「はぁっ…んっ…ダメだ、出すよ、俺の…」

くびれたウエストを両側から掴み、早いピストンで快感を貪る。奥に当たる…締め付けが強くなる。

「あっ…あっ…好き…好き…好き…ずっと…好き…いっぱいして…好き…気持ちいい…あっ…んっ」
「俺も好…んっ…出る…そんな締めないで…ヤバい…ふぅっっ」

膣内に熱いものが広がった。
二人は2本のスプーンのように重なり合い、荒い吐息のままキスをした。

カーテンの端から漏れる朝日で目が覚めた。
若葉は前髪をかきあげると慌ててメガネを探し出し、かける。
部屋の隅の一口コンロの前に草太の後ろ姿を見つけた。

「あ、起こしました?朝飯作ったんで、よかったら食べてください」

相変わらずの柔らかい笑顔で草太が近づいてくる。

『やばっ!目が見れない!私としたことが!』

若葉はシーツを身体に巻きつけると、素早く後ろを向く。

「卵とクコの実を乗せたお粥。もしや若葉さん、朝飯食べない派っすか?」
「た、食べますとも。できる社会人として体調管理も仕事のうちですから!」
「俺、帰ります。ビー太郎起きちゃうとマズいし。あ、それから」
「え?なんですか?」

照れ隠しの怪訝な表情で振り返る若葉。

「これ、まだ信条にしてます?」

草太の指差した方を、メガネを押し上げてまじまじと見る。
そこには

“恋は賢人の愚行”

の張り紙が。

「こ、これは単なる剥がし忘れですし、私はそもそも…」

喋り終えるより早くキスをされる。

「じゃ、俺行くんで。また苛めてもいいすか?若葉さん、苛めてほしいって顔に書いてありましたよ。」
「!!!」

クッションを抱えて紅い顔で呆然とする若葉。
ボロアパートには甘い余韻がいつまでも漂っていた。






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