封じ込めた想い
安藤一之×蓮見杏奈


「安藤・・・くん・・・? 」

もつ兵衛のいつものボックス席。
安藤一之は酔いつぶれている。

「ん・・・んん〜」

むにゃむにゃと口を動かして心地よさげに眠っている。
珍しいこともあるものだ、と思った瞬間

「あぁ」

蓮見杏奈は唇の端で苦笑した。

−−−そうか。瀬崎だ。

今日、瀬崎と会う。雪平からメールを受け取っていたのをすっかり失念していた。
きっと2人は今頃、雪平のマンションなのだろう。

赤い顔で突っ伏している安藤のあどけない寝顔を見ると、蓮見は小さく微笑む。
そしてそのすぐ後で、歯軋りしたいような嫉妬の混じる憎しみを胸の奥に感じ、微かに舌打ちをする。
いつだって・・・そう、誰だって雪平のそばにいる男は皆あの女に心を奪われるんだ・・・そして雪平はそれを拒まない。

「毎度! いつもの・・・? 」

顔見知りの店員が暖かいおしぼりを差し出して威勢よく言った。
はっと我に返ると、もう一度安藤を見つめる。

「ん・・・今日は帰るわ。三上は一緒じゃないの? 」

安藤をあごで指して店員に問う。
店員は笑って首を振った。

「じゃ、連れて帰るわ。いくら? 」

安藤は相変わらず、突っ伏したままうなっている・・・


「安藤くん・・・ついたよ・・・」

自らのマンションに安藤を連れてくることが出来たのは、もつ兵衛を出てとうに1時間は立っていた。
嫌がるタクシー運転手に部屋まで抱えてきてもらったのだ。

「ん〜ゆ・・・きひら・・・さ・・・」

ばたんと玄関先で安藤は倒れた。
蓮見は怒りにも似た欲望が自らの下腹部から駆け上がるのをとめることをしない。
そう、多分・・・雪平も・・・この若い新米刑事を憎からず思っている・・・長い付き合いの蓮見には・・・

「・・・ううん。雪平を誰よりも見つめてきた私にはわかる・・・」

小さくつぶやくと、安藤を冷ややかに見下す・・・紅い唇が欲望と憎しみで醜く歪んだ。

玄関先に仰向けになった安藤の細身のジャケットとシャツを乱暴にはだけさせる。ネクタイを抜き取ると学生のように幼く見えた。
意外に筋肉質な裸の胸をそっとなでると、純粋な肉の欲望だけが体を駆け巡る気がする。
軽く舌なめずりしながら、小さな乳首を細い指先でくりゅくりゅと刺激してみる。

「ふっんんっ・・・」

可愛いあえぎの混じった吐息が、安藤の寝顔から発せられる。
蓮見はごくりとのどを鳴らすと、自らのジャケットとスカートを脱ぎ去った。

ふと思いついて、部屋の暖房をONにする。

玄関先で全裸になるには寒すぎるわね・・・蓮見は自嘲的に笑うと、ベッドにかけてある大きなブランケットを持って玄関に向かう。

安藤と自らに巻きつけるようにすると、安藤のスラックスとボクサーパンツをずるりと脱がせていった。
先ほどの乳首への刺激で、軽く勃ちあがった安藤のそれは思いのほか野太く、蓮見は思わず感嘆の吐息をもらした。
そっと指を沿わせると、びくんと更に硬さを増していく・・・
紫に黒のトリミングをほどこしたレースのブラと同じ柄のタンガー姿のまま、そっと蓮見は安藤の怒張に唇を寄せていく・・・
チロッと子猫のように舌を這わせたかと思うと、その太さにぞくっと腰を震わせた。

・・・すっごい・・・

雪平への憎しみから安藤を・・・そんな思いなど吹き飛んでしまったかのように、一心不乱に安藤の怒張を口に含み、奉仕する。

ずちゅっちゅぼっ・・・

ふんふんと鼻を鳴らしながら、蓮見は安藤の肉塊をぽってりとした唇でしごきあげていく。
そっと目を上げると、安藤は夢と現実の狭間にいるのか苦痛にも似た表情で静かにあえいでいる・・・

いつも・・・山路との逢瀬では自分が男の玩具になったような、そんな錯覚を覚えている。
山路とだけではない。以前からずっと、自分自身へのコンプレックスからなのか、男の満足するようなセックスしか出来ない自分がいた。

・・・だからだろうか? こんな風に泥酔した安藤をもてあそんでいる、そんな状況が蓮見を異様なまでに興奮させていった。

太い亀頭にぐるりと這わすようにねっとりと舌を絡める・・・
下唇をカリ首にひっかけるようにプリュプリュとしごきあげていくと、安藤は小さくうめき声をもらしている・・・
先走り液をちゅぼちゅぼとすいたてた瞬間、蓮見のでろりと垂れ下がった陰唇からねっとりした白濁液がぶちゅっと音を立てて吐き出された。
ブラに包まれたままの乳房を安藤のきゅっと締まった腿におしつけ、乳首への刺激を自ら加えていく。
自分自身が淫乱な娼婦になったような錯覚さえ、蓮見を興奮させる材料になっているようだ。
ひときわ深く、喉の最奥まで突き刺さるように安藤の怒張を飲み込んだ瞬間、こらえきれない衝動に蓮見は小さなショーツを脱ぎ去った。
ねろり・・・と糸をひいて、愛液がショーツと自らを繋いでいるのがわかる。

安藤が正体なく泥酔しているのに少し感謝すらする・・・こんな自分にもまだ羞恥の心が残っているんだ・・・あたりまえのことに心の中で安堵のため息をついた。

そっと安藤の上にまたがっていく。うっとりと目を閉じたままの彼は雪平との情事を夢見ているのかもしれない。

それだっていいじゃない。
いや、その方がまさに好都合じゃないか。
あの女が想っている男を、あの女のふりをして犯す。
自分自身にはぴったりの復讐なのかもしれない。

小さく首をふり、ぐいっと腰を沈める。あまりの猛々しさに、そっと息をはきながらゆっくりと挿入する・・・

すごい・・・

「んぅっ・・・ふ・・・んんっ・・・」

蓮見のほとんど生えていないかのような薄い陰毛の下では、どろどろの陰唇がぱっくりと口を開き、青筋を立ててそそり立つ安藤の怒張を飲み込んでいる。
腰を振りたてることも出来ず、はぁはぁと肩で息をつきながら、安藤の顔を見つめる。
眉間にシワをよせ、苦しそうにもだえている若い男。

「・・・ごめんね」

小さく唇の中でつぶやくと、ゆっくりと腰を上下させていく・・・
膣奥からどろりとした愛液が後から後から湧き出てくるのが分かる。
普段のセックスでは、どちらかと言えば淡白な方だ。
山路にどんなに激しく責めたてられても、頭の芯は静寂に支配されている。
その静寂の中では・・・あの女が微笑んでいる・・・可愛らしい唇で「蓮見」とささやきかけてくる。
どうしても手に入れられないものならば、それを壊してしまいたい。どこまでも追いかけてくる心の中の笑顔を引き裂いてやりたい・・・

「!!! ひぁっ・・・んんっ! 」

腰をぐっとつかまれる感覚に驚いて目を開けると、蓮見の骨ばった腰を安藤の太い指がぐっとつかみ下から思い切り突き上げてくる。
目は閉じたままだが、明らかに覚醒した様子の腰使いだ。

「っんあっ!!! ふぅんんっ・・・やっんんっ」

ぐちゅっぐちゅっと隠微な湿った音が、結合部分から響く。
はぁはぁと熱い吐息を蓮見は吐き出しながら、安藤の怒張を楽しむように腰を軽く浮かせる。
安藤は親指を一番敏感な突起に這わせていく・・・
コリコリと小さく弾くように刺激を加えると、疼くような快感が下腹部から腰へと突き抜けていった。

「んぁっ・・・はっぁぁっ」

相変わらず安藤は目を閉じている。相手が蓮見だということに気づいていないのかもしれない。
空いた片手でブラに包まれたままの乳房をぐいっとつかみぐりぐりと揉みはじめる・・・蓮見は思わず安藤の男らしい胸に頬をすりよせるように体を預けた。
安藤はそっと薄目を開けると、小さく微笑んで蓮見の紅い唇を強く吸っていく。

・・・気づいている・・・? 酩酊して何も見えていないのだろうか・・・?

激しく舌を絡めていると、そんなことすらもどうでもいいような気がする。
今この瞬間、自分と安藤は互いに相手を貪っているようで2人きりではないのだ。

・・・2人のあいだには・・・そう、愛と憎しみを同じくらい感じている「雪平夏見」がいるのだ・・・

一際大きく安藤の怒張が突き刺さる。子宮口を先端が激しく押し込んでくる快感に、何の予兆もなく一気に蓮見は絶頂へと上り詰めた。
激しく締め付ける快感に安藤は腰を震わせ、そのままペニスをずるりと引き抜いた。
言葉を発することもなく、がばっと上体を起こすと床に押し付けるようにして蓮見を四つんばいにさせ、もう一度後ろからのしかかる。
ぴくぴくと痙攣する蓮見の陰裂に、ねっとりと濡れそぼったままの怒張を一気に挿入した。

「やっ・・・! ぁぁんっ!!! 」

達したばかりの体に、安藤の激しい抜き差しが早くも二度目の絶頂をもたらそうとしている。

「あっあっあっ・・・いぃっ! 」

両手で乱暴に蓮見のブラをずり下げると、思い切り鷲づかみにして激しく揉みこんでいく。
締まった腰を柔らかな尻に押し付けるようにすると、蓮見は我慢できずに叫ぶ。

「いくっ!!! だ、出してっ中でっ・・・あたしっもぉっ・・・いっ!!! 」

安藤が最奥を激しく突きこんだ瞬間、膣内がうねり激しく痙攣する。
安藤は蓮見の声を無視するように、ぐっと怒張を引きずりだすと体を前に移動させ、蓮見の唇に自らの匂いの残るモノを無理やり押し付けるようにした。
おずおずと唇を開くと、ねじ込むようにして蓮見の口を犯していく。
髪をつかんでぐいぐいと蓮見の頭をゆすり何度か出し入れすると、安藤は声も出さずに思い切り激しく射精していった。
蓮見は苦痛と羞恥と屈辱にまみれた表情で、安藤のむせかえるような男の欲望を飲み下していく・・・

安藤は最初から気づいていたのかもしれない・・・
もしかしたら・・・蓮見の心の奥底に封じ込めた想いにすら。

いつまで続くのかと思われる長い吐精が終わると、安藤は黙ってペニスを引き抜き、そのまま静かに体を横たえる。
蓮見も何も言わずそっと安藤の胸に顔をのせる。
しんとした空虚な静寂の中。2人は同じ相手を思いながら、浅い眠りについた。






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