道化を演じる(非エロ)
山倉真一×弥生


ようやく彼女が目覚める。
「ん…今何時…?」
「7時半」
「え!?結婚式10時からじゃなかった?」
「そうだっけ」
「そうよ!着付けてもらう約束したのに、遅れちゃう!」

彼女が慌しく布団を這い出す。

「…やっぱり同級生の前ではこのことは…」
「秘密に決まってるでしょ!」

ブラウスのボタンを留めながら吐き捨てるように言って、

「まさか、あなた…」

と、僕を睨む。

「言わないよ」
「一言でも漏らしたら、この関係は解消だから!」
「……なら、何で僕と」

ふんと彼女が鼻をならす。

「医者なんだから、人体におきる様々な反応に興味が湧くのは当然でしょ?」

あくまで体だけの関係だと言い切られ、胸がちくりと痛んだ。

「じゃぁね。
あなたも遅れないように気をつけるのよ?…服はちゃんと用意してあるわね??」

僕がコクンとうなずくと、彼女が満足げに「よし」と呟く。
最後にようやく、いつもの姉のような心配りをのぞかせてから、
彼女は、そういうことのためにだけ貸し出されている狭い部屋を出て行いった。

部屋が静寂に包まれる。
僕は、彼女の同級生達の前で、いつものように道化を演じる自分の姿を思い浮かべて…ふぅ、と小さくため息をついた。






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