バスルーム
上田次郎×山田奈緒子


「you…」
「…ん……」

熱く火照った身体。まだ残る強い快楽の余韻。落ち着かない息遣い。

「気持ち良かったか?」
「…っそんなこといちいち聞かないでください」
「気になるじゃないか…まあ君の反応を見てれば言わなくてもわかるけどな」
「…だったら聞くなバカ」
「君の口から聞きたいんだ」

情事のあとの甘くけだるい空気。ぐちゃぐちゃに乱れたシーツ。汗ばんだ身体。

「汗びっしょりじゃないか」
「…上田さんこそ」
「フッ…まあ今日は特別激しかったからな…あんなことやあんなことを…ふ、ふふ、ふふふ」
「上田!」
「…このままじゃ気持ち悪いだろう、シャワーを浴びたほうがいい」
「…私は別にいいですけど」
「いいや浴びたほうがいい、いや浴びるべきだ」
「…じゃあ上田さん先にどうぞ」
「you知ってるか、風呂というのは一人ずつ入るよりも二人一緒に入ったほうが水道代も電気代も安くなるんだ。
勿論私は金に困っているわけでは断じてないが、水と電気を節約することは地球環境のためにも必要であってだな
一人ひとりが意識することによってこの美しい地球を守っ」
「上田…何が言いたい」



「熱くないか」
「…はい」

温かいお湯が汗を流していく。確かに気持ちいい。しかし奈緒子は落ち着かなかった。

「何もじもじしてる」
「べつに…」

薄暗かった寝室とは違い、煌々と明かりのついた浴室。(当たり前だが)お互いに全裸。
そしてなにより、上田の膝に座らされている落ち着かなさ。椅子が一つしかないというのが理由ではあるが――
上田はどう思ってるのか知らないが、奈緒子にシャワーのお湯をかけながらついでに自分も汗を流している。
目の前に大きな鏡があるのも落ち着かない。前を向けば裸の自分たちが映るのがたまらなく恥ずかしい。

「なんで下向いてるんだ」

耳の後ろで上田が話しかける。背中にぴったりと胸板を押し付けられて思わず背筋が伸びる。

「…だって…恥ずかしいじゃないですか」
「恥ずかしい?何が」
「う…だから、この体勢とか」
「何言ってるんだ、今まで背面座位でやったことが何回あると」
「わー!やめろバカ!」

デリカシーのない奴め。奈緒子は唇を尖らせる。
と、突然胸に柔らかくぬるっとした感触を感じて身体がびくんと跳ねた。

「おおう…いい反応だな」

見ると上田がたっぷりの泡を奈緒子の身体に塗りつけている。

「お、お前いつの間に…!シャワーだけじゃないんですか」
「ちゃんと洗ったほうがさっぱりするだろう」
「ちょっと、じ、自分でやるから…」
「遠慮するな」
「お前最初からこのつもりで…あっ」

泡のついた手の平で胸の先端を転がされて、思わず声が出た。顔が熱くなる。
「洗ってるだけなのにそんな声出して、いやらしいなyou…」

「…っ、う、お前わざとやってるくせにっ」

前を向くと、鏡には後ろから上田に抱かれて頬を染めた自分の顔が映る。
下を向けば、上田のでかい手に揉まれる泡まみれのささやかな乳房。

「ん……!」

思わず身をよじると、更に強く抱きしめられた。

「逃げるんじゃない」
「逃げてなんか…」
「ちゃんと洗うと気持ちいいだろ」
「…洗ってるんですかこれ」
「当たり前だ…他に何がある。断じて邪な感情など微塵も抱いてはいない」
「じゃあさっきから腰のとこに当たってる固いものは何なんですか」
「……」



入浴というには長すぎる時間。シャワーは既に止められ、シャワーヘッドは床に放られたままになっている。
浴室に響くのは、熱い吐息と甘くうめく声、卑猥な水音。

「あっ…あ……あん」

邪な目論みを指摘された上田は開き直って奈緒子の身体を弄りはじめた。
膝に乗せた奈緒子にたっぷりの泡を塗り、肌を滑らせ、大きな手で愛撫する。

胸の先端を優しく弾くと、奈緒子は健気に反応した。

「あっ……ん」
「どうだ…you、お風呂プレイの感想は」
「そっ…そんなことっ…最中に聞くなバカ上田っ」
「素晴らしいじゃないか…見ろ、君の白い肌が泡にまみれて数段いやらしく見えるだろう、
この視覚からの刺激によってより一層の興奮と快楽を得ることができる。
特にこの…君の可愛い貧乳の先端に白い泡が…こ、ここをな、こうやって、こうして、ほら、」
「んんっ!あっ!あぁん…!」

確かに上田の言うことは悔しいが本当だった。触られるのも、それを見るのも初めてではないのに、
浴室で、泡まみれで同じことをされるとなんだかいつもよりものすごくいやらしいことをしている気がして――実際してるのだが――
さっき寝室で散々したはずなのに。もうこんなに感じている。
恥ずかしい。

ぬるっ
とした感触と共に上田のかたい指が股間に割って入ってきて、思わず大きな声が出た。

「きゃぁん!」

身体の上から流れてきた泡が集まって、もはやよく見えないそこを上田が優しくかきまわす。

「んあ、あぁん、んッ…くぅん」
「よしよし…気持ちイイか。もっと大きい声出しても…いいんだ」

上田が後ろから耳元にちゅっちゅっと音を立ててキスをする。
左手は胸に。右手は秘部に。逃げ場のない快楽に奈緒子は身をよじった。
ああもう、バカ。バカ上田。スケベで巨根の童貞…ではないか…でもとにかくバカ。

「上田さ……あ、あぁ…ん、き、きもちいい」

頭の中の罵倒とは裏腹に、口からは甘い声しか出ない。

「おぉう…そ、そうか…きもちイイのか…素直だなyou…いい子だ」

軽く開いていた脚を、更にそっと開かされた。

「ん……」

両方の膝の裏に上田の腕が回されて、ぐいっと――

「ちょ、ちょっと何してるんですか」
「このまま、持ち上げて…いいか」

持ち上げる。この体勢のまま。いわゆるM字開脚で。座ってたら見えないが、立てば目の前の鏡に――

「だ…駄目!絶対駄目に決まってるだろ!」
「でもほら、…見たいじゃないか」
「見たくない!」
「俺は見たい」

ぐっ、と力が入って身体が少し浮いた。

「やだやだ!この変態!も…もうお前なんかと口きいてやらな…あぁん、ばかあ!」
「わ、わかった!やめるから泣くな」

慌てて上田が腕を離した。

奈緒子は涙目のまま上田を睨む。

「うう…この変態」
「…すまん」

膝からおりてしまった奈緒子の腕を優しく掴み、再び、今度は向かい合う形で膝に抱く。
ボディスポンジで泡立てたきめ細かい泡を、奈緒子の胸元に惜しみなく落とす。

「…使いすぎです」
「…こんな時くらいいいだろ」

泡まみれの身体を抱きしめる。

ぬちゅ。くちゅ。

胸をこすり合わせる度にいやらしい音が立つ。

「んっ……」

目を閉じ、羞恥に耐える奈緒子の表情が可愛い。

「お風呂プレイといったらこれをやらないとな」
「う…上田さ…」
「ぬるぬるで気持ちいいだろ」
「ン…ん……」
「積極的だなyou…自分から腰を…回して」
「お…お前がこすりつけてんだろ…あっ、やん」

確かに上田の大きな両手は奈緒子の細い腰を掴み、自分の巨根に擦るように動かしている。
しかし奈緒子もまた、自ら快楽を求めて秘部を擦りつけてしまっている。

「んんんっ!あっ…!あっ、あっ」
「…くっ、…ふ…」

つるつると滑る肌。奈緒子が滑り落ちないようにしっかりと背中を抱く。奈緒子もまた、上田の首にしがみつく。

「あっあっあっ、あん、んん…ン、あぁん」

耳元で聞こえる奈緒子の声がたまらなく可愛い。
いつの間にか上田よりも奈緒子のほうが積極的に腰を回してしまっている。
もう絶頂が近いのかもしれない。
泡にまみれた「そこ」は摩擦が強まる程に卑猥な音を立てる。
上田がたまらず奈緒子に口づける。容赦なく侵入してまさぐると、奈緒子も必死に舌を絡ませてきた。

「ぷ…ぁ……ああ、うえださ…ん、あ、あたし、もう、だめ、もう、いく、いっちゃう」
「いい、イッていい、イけ」

奈緒子の尻を掴んで激しく揺さぶる。飛び散る泡。反響する嬌声。

「いッ…ぁあ…あ!んあっ…うえださ……ああ…ッ…!」

腕に、胸に、絶頂を迎えた奈緒子の身体のふるえを感じる。そのすべてが愛しい。

「はぁ、はあ、はぁ…」

ぐったりと上田の胸に寄りかかり、肩で息をする奈緒子。

「you…」
「ん…んん…」

上半身をそっと起こし、顔を覗き込む。
頬はピンクに染まり、未だ消えない絶頂の名残に朦朧としている。

「……」

上田は無言で奈緒子の身体の向きを変え、鏡に向き合わせた。

「ん……や…、なにするん…ですか」
「どうだ…最高に色っぽくて可愛いと思わないか」
「え?」
「イッたあとの君の表情だよ…自分で見たことないだろ。上気した頬に軽く開いた唇…you、鏡でちゃんと見」
「……ッこの…バカ上田」
「じゃあ…ほら、you、いいか」
「え?」
「え?じゃない。俺はまだ終わってない」
「う……。い、いいけどあの、ここよりも…部屋でのほうが」
「you…今日は初めてのお風呂プレイだったわけたが…盛り上がったのは良かったが、はからずも挿入前に君だけフィニッシュを迎えてしまった。
このまま終わるということは私の本意ではなくつまりこの機会を逃したら次にいつ君がこのようなプレイを許してくれるかわからない、要するに」
「要するに?」
「挿れたい。ここで」
「〜〜このっ…どすけべ、変態」
「知ってる」
「開き直るな!こ…こんな長時間し…してたら全身ふやけるぞ」
「心配するな。ちゃんと泡は流してから本番だ…中に入ったらいけないしな。さぁ、you」
「ちょ、ちょっと、上田さ」

――バスルームの明かりはなかなか消えない。






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