甘い快感 続編
上田次郎×山田奈緒子


玄関のドアが閉まる音で目が覚めた。

――ん?

いつもとは様子の違う目覚め。
真っ暗な中、電化製品の電源のランプだけが光っている。
ああそうだ。上田さんの部屋を掃除していて――

そこではっと我に返って奈緒子は飛び起きた。
心地良い疲労にまかせて、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。

どのくらい眠っていたのか。
真っ暗闇。
裸のまま。
そしてさっきの音は――

廊下を歩く音がして、奈緒子は血相を変えてさっき脱ぎ捨てた服を探した。
しかし無情にも足音はどんどん近づき――

ガチャ。

「わーーーっ!」
「おおうっ!?」

ほとんど同時に叫んだ。

「は、入るな上田っ!」

慌てて毛布をかぶって隠れる。

「何だよ!?」

上田の驚いた声と同時に、視界がぱっと明るくなる。

「で、電気つけるなって!」
「何だよ。どうした」

無遠慮に近づく足音。

「だから入るなって言ってんじゃん!」

更に毛布を引っ張って、頭まですっぽり隠れた。

「入るなって、ここは俺の部屋だぞ」
「そうだけど」

もうバカバカバカ上田。早く出てけ――
毛布の中で必死に念じるが、上田は構わずに話し続ける。

「あのな、youも知ってるとおり俺は優秀な頭脳と共に限りなく広い心をも持ち合わせているジェントルな男だ。
だから胸も心も貧しいyouが勝手に俺のベッドで昼寝していたくらいで憤慨するようなことは――・・you」

急に声のトーンが変わった。

「おい。なななななんで服脱いでんだ」

ああ、せめて服をかき集めて隠しておけば――
後悔で頭が真っ暗になる。

「おい。なんとか言えよ」

毛布一枚で隔てられてはいるものの、上田が真横で上ずった声で喋っているのがわかる。

「なんでもないです。いいからとにかく出て――」
「you」

ぎしっ、とベッドのきしむ音。

「の、乗ってくんなバカ上田!」

服を着てさえいればぶっ飛ばしているところだ。

「そうか、you、そういうことか・・・フッ、ふっふふふふふふ」
「変な笑い方するなって!」
「なぜ早く俺に言わない」
「はい!?・・・何が」
「だから、したいならしたいと早く言えば良かったじゃないか」
「なっ・・・ちが・・・何誤解してるんですか」
「誤解?・・・なあyou、恥ずかしがらなくていい。俺だってこの歳までひとりでこまめにコツコツ練習を・・・

さあ、共に目眩く快楽の世界へ」

「だから違うって!・・・あの、だから、そういうんじゃなくて、あの、ぜ・・・全裸で寝る健康法・・・ですよ」

我ながら苦しい。

「昼寝でか?」
「そ、そうですよ。悪いか」
「フン・・・まあいいけどな」
「だから、服着るからさっさと出てってください」

が、上田は出ていくどころか、奈緒子の身体を覆うようにして上から覗きこんできた。

「あ、あっち行けって上田」
「you・・・ちょっと、1回・・・顔を見せなさい」
「なんで」
「いいから」
「やだ」
「・・・泣いてるんじゃないのか。心配してるんだ」

別に泣いてないけど。
でもあんまり優しげな声だから。毛布の端からほんの少しだけ、顔を出して外を見て――

思いがけず至近距離に上田の顔があった。
しかも優しい声とは裏腹にその目はあからさまに期待と欲望に満ち満ちている。

「お、お前、声と態度が違いすぎるだろ!この詐欺師!」

慌ててもう一度毛布をかぶろうとするものの、上田もまた毛布の端を掴んで離さない。

「あ、あのな、youがそのつもりなら俺はいつだって」
「だから違う!やめろ変態!」

ああもう。何なんだこの攻防。

一瞬、手の力が緩んだとき、ついに毛布がはぎ取られた。素肌が部屋の冷えた空気に触れる。
ああもうだめ――
頭が真っ白になりながらも、咄嗟に腕で胸を隠していた。

「you。隠すんじゃない」
「やだ」

必死で顔をそむけて抵抗するが、組んだ腕はあっさりほどかれた。

「み、見ないで。見ないでください」

心の準備もなく、こんなにいきなりコンプレックスをさらすことになろうとは――

「・・・そ、そんなに恥ずかしがるな。か、可愛いから」

え。

顔を正面に向けた瞬間、上田が覆いかぶさってきた。

「全裸睡眠は身体が冷えてかえって健康を害するぞ」

はい?

「だから・・・俺が、あ、あたたためてやる」

たがひとつ多いぞ、上田。

「う、上田さん」

上田の大きな両手に頬をはさみこまれて。

何か言う隙も与えられずに、キスされた。

「・・・んっ」

上田の大きくて固い手に腰を撫でられて思わず呻いた。

実際の上田は手も身体も大きくて――いや大きいのは知ってたけど――身体を重ねてみて初めて知った
温かくて重たい充実感。
奈緒子が抵抗をやめたのをいいことに、上田は好き放題触れてきた。
自分の服もさっさと脱いで、丁寧に眼鏡も外して。
固い指で胸の先端を擦られ、吐息がもれる。

「・・・気持ちいいか?」

言えるかそんなこと。
聞こえなかったふりをして顔を横に向けた。

「you」

上田に抱きすくめられると、本当にすっぽり包まれてるみたいになる。
首筋に舌を這わせられて、低い声で囁かれて、ぞくぞくする快感にどうしようもなくなって声が出てしまう。

ああもう悔しい。
でも嬉しい。
でも悔しい。

「んん・・・、ん」

上田のひげが顔にあたって痛い。でも口をふさがれているから文句も言えない。
少し開いていた隙から舌が入りこんで、深く侵入してくる。
苦しくて、熱くて、気持ちいい――

キスを続けながら、上田の手が身体を探ってくる。
くびれた腰を撫で、腹部を辿り、やわらかい内腿に手を這わせる。
くすぐったいような快感に奈緒子は身をよじった。

そしてためらうように動いていた手が漸く秘所に触れ――

「あ」
「ど、どうした」

上田があわてたように手を引っこめた。

「あ、いや――」

あまりに近くで目が合ったので思わず俯いた。

「何でもないです・・・大丈夫」
「・・・本当だな」

再びそこに上田の指が触れる。
奈緒子の細い指とは全然違うそれが、ゆっくりと愛撫してくる。
中指が更に深くまさぐり、熱い蜜がとろりと絡んだ。

「あっ・・・」

声をもらすと、上田は嬉しそうにちゅ、ちゅっと顔にキスをしてきた。

「よしよし・・・you、濡れてるじゃないか」
「う、うるさい。いちいち言うな」

上田の指の動きに合わせて、恥ずかしい音がする。

「あ、や、やだ。上田さん」

羞恥に染まった頬を上田の首もとにおしつける。

「うん?・・・いや、いいぞ。すごくいい」

そう言ってわざと音が立つように弄ってくる。

「あっ、あ・・・う、ぅん、ば、ばかっ」
「可愛いな」
「・・・っ」

またキス。

頭がぼーっとしてしまうようなキスをされながら、上田の指が更に侵入を試みているのを感じる。
熱い粘膜の中にゆっくりと指が挿入され――

「ん」

奈緒子が一瞬身体をこわばらせた。慌てて指が抜かれる。

「い・・・痛いか?」

上田が目を見開いている。そういえばこいつはドーテーだった。私だって初めてだけど。

「いえ・・・あの、ちょっと、違和感・・・ていうか」

本当は少し痛かったけどごまかした。
上田が必要以上にびびってしまうのも嫌だったし。

上田はまじめくさった顔で奈緒子にかぶさるようにすると、首、胸、脇腹――と徐々に下へ口づけていく。

「んん・・・」

それがくすぐったくてもじもじしてしまう。
と、そっと内腿に手を添えられる感覚があって、そのまま脚を開かされた。

「えっ」

驚く間もなく、上田の両腕でがっちりと太腿をおさえこまれてしまった。

「えっ、あ、ちょっと、上田さ」

恥ずかしい体勢をとらされ、抗議しようと上体を起こしかけたとき。
更に恥ずかしい感触に身体がふるえた。

「や、やだっ、上田さん、だめ、そんなとこ、き、汚いから!あ、あ・・・バカ」

敏感になったそこに、上田が舌を這わせる。何度もキスをして、舌先でつついて――

「や、やめてやめて、うえだ、やめ、あぁ、ん」

上田は奈緒子の声を無視して続行する。
奈緒子だって、こういう行為が存在することを知らないわけではなかったが、聞くとやるとじゃ大違いだ。
煌々と明かりのついた部屋で、こんな、こんなこと。

恥ずかしさで死にそうなのに、身体は敏感すぎるほど反応した。

「あ、んんっ・・・あ、あ・・・っ」

自然と身をよじり、行き場のない手はさまよってシーツを掴んだ。

「奈緒子」

名前で呼ばれて目を開けると、上田が満足そうな顔で見下ろしていた。
私がどんなに恥ずかしいかも知らないでニヤニヤしやがって――

「い、いいか。そろそろ」
「え・・・」
「・・・もう十分濡れてるしな・・・それはもうとろとろの濡れ濡れの」
「うるさい上田!・・・い、いい・・・ですよ」
「ほんとか」
「何回も言わせないでください」

開いていた脚を更にぐいっと広げられる。

「・・・痛かったら言えよ」
「・・・たぶん痛いと思います」
「まあ・・・そうだな・・・じゃあ、どうしても、どぉおしても我慢できなかったら」
「上田!・・・いいから。覚悟・・・してますから」
「・・・わかった」

開いた身体に、何か――まあ、上田の巨根――が当たって、入口を探ってくる。
ぬるぬるした感触があって、ゆっくりと、中に、分け入るように――

「い、」

痛い。

「あ!い・・・いた、痛い!」

覚悟していたつもりだったが、実際に体感するリアルな苦痛に声が出てしまう。

「you・・・、奈緒子」

上田はいったん動きを止めて、左手で奈緒子の頬に触れた。

「大丈夫か」

大丈夫じゃない。でも・・・

「だ、大丈夫です」

そう答えていた。そして腕を伸ばして上田の首にすがりつく。

「おぅ・・・よしよし」

上田はそのまま奈緒子の上に優しく覆いかぶさると、華奢な背中に腕を回して抱きしめた。
その状態で更に深く、ゆっくり挿入する。
奈緒子の身体がこわばる。

「you・・・力を抜くんだ」
「ん・・・ん」

少しでも苦痛を和らげてやりたくて、上田は奈緒子の耳や首筋に口づける。
挿入したまま、下半身は動かさずに愛撫を続けた。

「う・・・上田、さん」

奈緒子が口を開いた。

「ん?」
「あの・・・いいですよ、動いて」
「・・・無理するなよ」
「上田さんこそ」

快感と苦痛、おそらく両方の理由で上気した頬がかすかに微笑む。

・・・かわいい。

自分のために耐える姿にたまらなくなって上田はキスをする。
そしてそのまま、ゆっくりと、できるだけ優しく、腰を動かしはじめた。


思いがけず2人で駆け上がってしまったステップはあまりに急で――
そして心地よかった。

「you」
「・・・ん?」

静かな部屋の、ベッドの中。

「大丈夫か」
「なにが」
「まだ痛いんじゃないのか」
「それは・・・まあ」
「明日は何もしなくていいから。休んでなさい」
「・・・上田さん、優しすぎて気持ち悪いですよ」
「何言ってるんだ、当然だろう。youは女性だしなにより初めての」
「うるさい上田!」
「なんで怒るんだ」


静かな寝室に、いつもの、しかしいつもとは少し違う掛け合いの声。


「ところで上田さん、お腹すきません?」
「いや、俺は・・・心ゆくまでyouを味わったからな」

バキッ

「なんで殴るんだ!」
「いいから焼き肉行くぞ上田!」
「フッ、youもスキモノだな。一体どれだけ肉欲を持て余して」
バキッ(2回目)


静かな部屋での、いつものやりとり。
たぶん、これからも続いていく。ずっと。






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