上田次郎×山田奈緒子
![]() いつものように事件を解決した帰り道。 少しだけ前を歩く上田と不満そうに後に続く奈緒子。 「上田〜どこまで歩くんだ?」 「家までに決まってるだろ。」 「家!?まだ5キロ以上あるじゃないか。」 「仕方ないだろ。この村は電車が通ってないしバスも御往復しかしてないんだ。」 「次郎号はどうしたんだよ。」 「あいつは持ち主に似てデリケートだからな、今日もメンテナンス中だ。」 「まったく…へっぽこ次郎号め。」 「おおぅ!」 「何だ!?急に大声出すな。」 「忘れていたがYouに渡すものがあったんだ。有難く受け取りたまえ。」 上田は奈緒子に白い封筒を手渡した。 「家賃か?食事券か??」 「いいから黙って開けろ。」 「……これ。」 中に入っていた紙に書かれたのは黒門島に伝わるあの文字。 思わず立ち止まった奈緒子に気付かず上田は先を急ぐ。 「ちょっと待て!お前またふざけてんのか。」 「どうしてYouの思考はそんなに貧しいんだ。1度ならずと2度までも俺のプロポーズを無碍にするつもりか。」 「2度って…いつ!?」 「何でだ!?しただろ!!あの無人島で。紙に書いて渡したじゃないか。」 「あれは…。」 「まぁいい、過去のことは気にしない。心の広〜い上田次郎だ。とにかくもう1度封筒をよく見てみろ。」 「ゆっ…ゆっ……指輪!」 「まぁ当然のごとく給料の3ヶ月分だ。」 上田は至極、上機嫌な笑顔を浮かべた。 「焼肉何食分ですか?」 「You…。」 「とにかくこんな風に渡されても困ります。」 「うぅっ。」 先ほどの笑顔が一転。 「泣くな。」 「つき返すのか?この愛情溢れる手紙と指輪を!?」 「違いますよ。」 「んっ?」 「ちゃんとはめてください。上田さんの手で。」 そう言うと奈緒子は左手を差し出した。 「……。」 恐る恐る無言で指輪をはめる上田。 「何か言うことないのか?手が震えてるぞ。」 「けっ…結婚してやってもいいぞ。」 「私もしてやってもいいぞ。」 奈緒子は綺麗に微笑むと、見とれる上田を置いて歩き出した。 「ジュブゼーム!」 「叫ぶなうるさい。」 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |