美鈴の夢
瀬文焚流×当麻紗綾


広々とした薄闇の中。
無骨な男の体と白く柔らかな女の体が絡みあう姿がわずかな薄明かりの中に浮かび上がっている。
ひとつの布団の上でふたりの男女が唇を吸い、指先を絡ませ、全身でお互いの肉体を求め合う。

「んっ…あっ、瀬文さ…んっ」

たまらなくなった女が男の背中にしがみつく。男はそれに応えるように女の奥に体を押し込んだ。

「あっ!」

女は首すじをのけぞらせて熱い吐息を吐き出す。その首すじに口付けしながら男は動きを早めていく。
ふたりの呼吸が荒くなり、だんだん熱を上げて汗ばんた肌と肌が触れ合い、お互いの体温でさらに汗ばんでいく。

「っもう、いく…いく………!」

髪を振り乱しながら女の体が釣り上げられた魚のように跳ねるのを男は力尽くで押さえてさらに腰を打ち付けた。

「あっあああっ……はぁぁ…」

女の絶頂に合わせるように男も果てた。精根尽き果てた様子で女の上に崩れ落ちる。
荒い呼吸を整えながらふたりの目が合った。

「瀬文さん…」
「当麻…」



ハッとなって美鈴が目を開けると――― 明るい照明が目に入った。
眩しさに目を細めながら周りを見ると、そこはいつもの未詳だった。その仮眠スペースに寝かされていたのだった。

(そういえば鎮静剤を射たれて…… え?…今のは…夢?)

何でこんないやらしい夢を見たんだろう――― 美鈴は恥ずかしさに頬を赤らめるが、自分の手が布団をしっかり掴んでいるのに気がついた。

(まさか…今のは)

「あ、目覚めた?」

近くに座っていた当麻が、いつものように餃子をバクバクと食べながら声をかけてきた。

「お腹すいたっしょ?餃子食べる?」

箸で餃子をつまみ大口開けて次々に胃袋に放り込んでいくガサツな女には先程のヴィジョンのような色艶はまったく感じられない。

(でも…本当はここで…あの餃子食べてる唇で…あんな事とかしてたんだ…)

箸を持った指先や餃子を咥えた唇がさっきの情景と重なり、美鈴は恥ずかしさと少しの怒りで頭が熱くなってきた。改めて自分のSPECがイヤになってくる。

(ていうかこんなところでしないでよバカ…)

恨めしげに自分を見る美鈴を不思議そうに眺めながら餃子をぱくつく当麻であった。






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