残酷な教え
尾形総一郎×笹本絵里


今日も彼は来る。

玄関の呼び鈴が鳴り、わたしはドアを開けて迎え入れる。本当は開けたくない、でも開けなくてはならない。
彼を怒らせてはいけないから。

彼は当たり前のようにわたしの部屋へ上がり、わたしを乱暴にベッドに倒す。
抵抗をしてはいけない。彼がますます激しさを増すから。
わたしはただ人形のように彼を受け入れる。そこに愛だの恋だの、甘い感情は存在しない。
いや、もはやわたしの中に感情は存在しない―――。

彼の舌がわたしの口内を犯す。全てを絡めとり、そして新たに注ぎ込む。
わたしは与えられるだけ。
何も奪わない、奪えない。
そのまま、わたしの首筋をねっとりとした動きで味わい、胸のふくらみに辿り着く。

「っん、は、やぁっ――。」

とりあえず、喘ぎ声を出す。出さなければ、彼がより一層攻め立てるから。
胸を愛撫するとすぐに、彼はわたしを支配する。下への愛撫はしない。
激しい律動の中、笹本は思う。

自分はなぜこんなことをしているのか、全く分からない。
尾形のことは尊敬していた。大人の男だと思う。けれど、それだけで、恋愛感情など持っていなかった。
いつの間に、こんなことになったのだろう―――。
この行為に意味はあるのだろうか。

そして、また今日も辿り着いた。

わたしはSPに向いていない。
一人の男から自分のことも守れない、ただの女が、他人様のことを守れるわけがない。
そのことを教えるための行為だ。

いつまで続くのだろう、この残酷な教えは――。
わたしは気づいているのに、理解っているのに。もう、いらない。

けれど、終わらない。
めくるめく、永久のループ。






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