終了ノ晩
佐橋皆人×浅間美哉


俺のセキレイが6人に増え、出雲荘にお世話になるのも申し訳なく感じ始めてきたころ。
結ちゃんや月海たちは相変わらずで、夜になると布団の中に忍び込んできては、大家さんに「不純異性交遊は禁止です!」と怒られていた。

結ちゃんたちが布団に忍び込む、大家さんが怒鳴りに来る→繰り返し。

もはや毎日の行事のようになっているので、一緒に寝ていても前ほどは緊張はしなくなってきた。
けど、布団の中で結ちゃんや月海たちに密着されると、いやでも身体のあちこちが当たってしまう。
結ちゃんが引っ付けば月海が胸を押し付け、それを見た結ちゃんはさらに俺に太ももから身体全体を寄せてきたりする。

いくら大家さんが注意しにくるからと言って、毎日がこんな状態では我慢にも限界があった。
大家さんが怒鳴りに来なくなったら、それはそれで緊張して寝れないかもしれない。
毎日毎晩、性欲を持て余しながら過ごしていた、ある日のこと。

「出雲荘は、不純異性交遊禁止です!」
「ごめんなさぃ〜〜〜っ!」
「くぅぅ……ッ日に日に厳しくなるのぅ……っ」

日によって、布団の中に忍び込んでくるセキレイは違っていて、今日は結ちゃんと月海の二人だけだった。
自分の部屋へ逃げるように走っていった二人を確認すると、大家さんが振り返って俺を見た。

「佐橋さん、あなたも同罪ですよ? 毎回、私が注意をしに来なかったら、あなたはどうするつもりなんですか?」
「え……ええと、すいません大家さん」

般若を背負った大家さんに、鋭い目つきで睨まれている。
言われる通りで、謝るしか出来ない。

「本当に……、わかればいいのですが……」

その時、気のせいか大家さんの視線がふっと、俺の目ではなく身体に向いている気がした。
いつもの細い目ではなく、キッと見開いた感じで……。
ほんの一瞬で、気のせいだったかもしれない。

「では、気をつけてくださいね? おやすみなさい」
「はい……おやすみなさい」

そして何事もなく大家さんは部屋から出ていき、俺も寝ることにした。
怒られるのはいつものことだったが、この後に布団に入って眠るには、大分時間がかかる。
さっきまで月海たちの胸やら太ももやらが密着していたので、気持ちが昂ぶって寝れない。

出雲荘では不純異性交遊が禁止。大家さんは何があろうと注意をしに来る。
性欲が昂ぶるのも何度目か分からないが、これを我慢して、我慢して、乗り切るしかなかった。
生殺しのような感覚で……気が変になりそうなこともあるけど、こんな風に我慢しているのは他の葦牙も同じなのかな…………

ようやく気持ちが落ち着いて、俺はいつの間にか寝ていた。
一旦寝に入ると目が覚めることは滅多にないし、最近は特に心配事などもなかったのでゆっくり眠れていたはずなのに、今日はおかしな感覚があって目が覚めた。

「……??」

隣を見ると、結ちゃんや月海の姿はない。
ただ、やけに下半身が熱いというか……さっきから自分の心臓の鼓動がドクドクと激しいことに気付いた。
興奮している?

同時に、その下半身のある場所から、人の気配を感じた。
そんな……、まさか……?? 誰が……、
下半身というより、鼓動が激しくなる原因は、自分の股間にある逸物を、さっきから誰かがずっと舐めていることだった。

「ぴちゃ……ッぴちゃ、はぁ……はぁ、チュ……ッちゅるるっ」

丁寧に、熱心に、舐めている。
俺が目を覚ましたことに気付いてないのか、咥え込んだり、舌を這わせることをやめようとしない。
一体誰が、こんな命知らずなことを……?
気持ちいいと感じる前に、出てきた感情はそれだった。
もしばれたら……今後この出雲荘に居ることは出来ないかもしれない。
何度も注意されてるから、本当に追い出されるかもしれない。

股間をしゃぶられながらも、俺の考えは最悪な展開にまで達していた。
路頭に迷ったくーちゃんが泣いてたら、俺はどうすれば……。
これは……とりあえず、やめさせないと駄目だ。

でも、どうすれば?

「ん……ッんっ、ちゅぱ……ッチュボッ、んんッんん〜〜〜ッっ」

考えている間にも、股間が舐められ、焼けるように熱くなっている。
毎日毎日、本当に性欲を我慢していたからか、肉の棒が限界に張り詰めるぐらい固く、反り返っていた。
やっているのが誰か分からないまま、それを丹念に舐められているという状況。

考えをまとめる前に、俺の我慢が限界を超えた。
ビクビクと肉棒の下が締め上げられる感覚に気付いたのか、舐めていた人物は肉棒を口の中に大きく咥え込んだ。

「んふ……ッ、ん……ちゅるるるるッっっ!!」

ドクンッ、びゅるっドプッドプッドプッ!!

「……くぅ……ッ」

布団の中にいるのが誰なのか分からないまま、口内に射精をしてしまった。
肉棒に丁寧に添えられた細い指が、根元からさらに精液を搾り出そうと上下に動かされる。
わずかに残っていた精子もすべて、咥えられた口内に飲み込まれていった。

「ん……ッん、んっ……コク、コク……コクンっ……はぁ……はぁ」

出された精子がすべて受け止められ、飲み干されていく。
俺の頭の中では、もうわけが分からなくて、布団の中にいるのが誰なのか、出雲荘を追い出されるのか、今ここで大家さんが来たらどうなるのか……と、回っていなかった。
ただ、下半身だけは素直なのか、されている行為に否応なく反応してしまう。

「んふ……ペロッぺろ……ぴちゃっ、じゅるるるるるっ」

やっと終わったかと思えば、今度は少しこぼれた精子を舌で舐め取っていた。
底に残したものをストローで吸い上げるように、肉棒の尿道口に唇を押し付け、吸い上げている。
こんなことをするのは……誰だろう。気持ちよすぎて……頭が回らない。

夢心地の気分のまま、いや……これは夢だったのかもしれない。それぐらい気持ちのいい気分で、俺は横になったまま動けなかった。

「……ん……チュッ……」

すべて出し切ってすっきりした肉の棒に、やさしく口付けがされた。
思わず腰が浮きそうになる感覚。すると、舐めていた人物がクスッと笑った気がした。

そして、とうとうこの瞬間がやってきた。
布団の中に潜っていた人物が、布団から出て行ったのが分かった。

「はぁ……はぁ……」

さっきまで密閉された空間で俺のものを咥えていたからか、少し息遣いが荒い。
息を整え終わると、ゆっくりとした動きで、俺が起きないように注意しているのか、畳を歩くギシギシとした足音が耳元に近付いてきた。
部屋の扉は俺の頭の上にあるので、部屋から出ようとしているんだろう。

気持ちよさの余韻があって、目は半開きだったかもしれない。
俺の横を通り過ぎる人影を、ただ……一目だけでも確認しておきたかった。
足音が限界にまで近付いたその時、俺は確かに目を見開いた。

「…………」

相手もこちらを見ていたのか、目が合ってしまった。
時が止まったかのように、俺は金縛りで動けなくなる。

部屋は暗かったが、さすがに目は慣れていたのではっきりと見えた。
その人物は、少しだけ微笑を浮かべると、部屋の扉をゆっくりと開けて出て行った。

「不純異性交遊は、禁止ですよ?」

出ていく直前に俺を見つめた瞳が、そんな風に言っている気がした。
可愛らしいような、イタズラ好きなような顔で……本当にこの人は何をしてるんだろう。
ようやく解けた謎の答えに、余計に頭が回らなくなった。

もう寝よう……。明日からは、またいつもの一日が始まる。
今日あった出来事は、多分夢だったんだろう。そう思うことで、納得をするしかなかった。


――翌日にあった大家さんは、何事もなく、いつもの大家さんだった。
ニッコリと微笑んで、本当に何事もなかったみたいだ。

ただ、この日を境に、大家さんは毎晩俺の部屋に来ては、不純異性交遊をするようになった。
隠そうともしない、隣の部屋では俺のセキレイが寝ているのも知っているはずなのに、大家さんは俺の上で腰を振って乱れている。
俺はというと、こんな事をされては我慢することも出来ず、今までの鬱憤を晴らすかのように、すべてを大家さんの中に注ぎ込んだ。
「不純異性交遊は禁止です」と注意する者がいなくなったこの部屋で、それを止められる者は誰もいなかった……






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