燃える炎(非エロ)
佐橋皆人×焔


燃える炎のようにきっとこの思いは直に消えると想っていた。
きっと自分の中で雨でも降って、消えると想っていた。
だけど、消えるどころかどんどん熱くなるばかりで、おさまる気配がなかった。

佐橋 皆人──。

自分を調整してくれた人の息子。
シングルナンバーを(自分と結女を含め)5羽も羽化させた男。
だから自分は羽化したんだ。アシカビの力が強くなったから自分は羽化したんだ。
そう思っていたのに、


  ***


「美哉…、五月蝿いんだけど」

不純異性行為禁止の出雲荘では夜な夜な淫らな声が響いていた。
そのことを講義するものは焔のみ。今日も言っても変わらないだろうと思いながら
焔は美哉のもとへ行った。

「いいじゃないですか。佐橋さん達は愛し合っているんですから」
「不純異性行為禁止じゃなかったの?」
「愛し合うという行為は“不純”じゃありません。私も健人さんと何回──」
「分かったよ」

美哉が健人の話をし始めると五分どころか三十分となりやがて御中の話になり、結局二時間話してしまったということがある。
だから聞くのはさんざんという風に焔は簡単にあしらった。
すると美哉は少し怒ったようで(焔の態度が気に入らなかったので)後ろに般若が現れた。

「美哉…?」
「そんなに言うなら焔も皆人さんと交合してくればいいんです」

(“も”って、まさか…美哉も?)
という心の声は隠しておいた。

「え、遠慮しとくよ。僕抱かれるの嫌だし」
「焔?」

恐る恐る美哉の背後を見てみると、いつもなら顔だけの般若が今は胴体まで出現しており、刀まで持っていた。
そこまで怒ることか? と思う焔だが怖くて反抗できない。

「認めたくないだけでしょう? 佐橋さんのこと」

般若が消えた。

「なんのこと?」
「自分が羽化したのは、佐橋さんの“力”が上がったから、と考えているでしょう?」
「…うん」

出雲荘に響く声はいつしかなくなっていた。
風が窓から吹き込み美哉の髪を揺らす。

「アシカビやセキレイ、そんなの関係ないんですよ。佐橋さんは。ただ純粋に皆、引かれているんです。
佐橋さんの心に」
「そんなこと言う人だったっけ? 美哉」
「うふふ。変わったんですよ」

一応、ということで焔は佐橋の部屋に行ってみることにした。


「流石ね。風花」
「結局気づかなかったわね〜。もうっ、私だって皆人クンと交合したかったのに」

焔が出て行ってから、風花が美哉の部屋に入って来た。
二人とも無線機を着けており(松作)先ほどの会話は全て風花が美哉に指示したものだった。

「そんなに焔と皆人クンをくっつけたいの?」
「いいえ。ただ、焔が抱かれている処を見たいだけです」
「そういうトコ、健人と同じね」

そう? と美哉は微笑んだ。


       ***


僕が惹かれている? 佐橋に? まさか。
男に惹かれる? まさか。
そんなことありえない。大体男にキスされただけで嫌なのに。
嫌、なのに。


扉を少し開け中を覗いてみる。
結と月海が裸で布団で寝ていた。おそらく毛布は佐橋がかけたのだろう。
佐橋は服を着ていて、眠っている結と月海を見つめていた。
ふと佐橋が此方に視線を向けた。扉から離れた。

「誰かいるんですか?」

足音が近くなって、扉が開いて、見つかった。

「あ、佐橋…」
「篝さん。すいません、五月蝿かったですか?」

五月蝿いってこと気づいてたんだ。

「もうなれたよ。でも五月蝿いし、此処異性行為禁止だし、一応言いにきただけだよ」

違う。けど、美哉に抱かれて来いって言われたことなんで言えない。

「そうなんですか…。すいません」
「いいよ。別に…。無理やりやらされてるんでしょ? 佐橋は」
「最初はそうだったんですけど、何だかずっと一緒にいると 感じるんです。
結ちゃんの思いとか月海がどう思ってるのとか。セキレイだからかもしれないですけど」

口元を緩ませ、ははと笑う佐橋。
セキレイだからじゃない、彼女たちだから感じることができるのだろう。

「ね、え」
「なんですか?」
「僕も…」

勝手に体は動いて、佐橋の体をぐっと引き寄せて、そしたら佐橋の手が僕の体に触れていた。
気づいた時には遅かった。顔はきっと真っ赤だろう。体も羽化する前の時のように熱い。

「篝さん…」
「ねぇ、僕も 結たちと同じように、してよ」
「いいですよ」

僕を締め付ける手の力が強くなって、背中から輝くツバサが生えていた。

美哉の言う通りだよ。
僕はただ佐橋が好きなんだ。


   ***


松部屋にて


「ちっ」

美哉が大きく舌打ちをした。

「気づいてたみたいね」
と風花
「カメラには気づいたみたいですね…」
と松

「もしかしてと思って焔たんの部屋にもカメラを仕込みましたが、まさか結たんや月海たんが
いるところでSEXし始めるとは思わなかったですよ」
「見たかったのに」
「でもこれで焔たんも皆たんの虜です。いくらでも見れますですよ〜」
「そうですね…。でも許せません。佐橋さんも焔も今月はお家賃倍にします」
「災難ですね」
「私のほうが災難です」

般若が背後にいたので 二人とも「はい」としか言えなかった。






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