ホームラン(非エロ)
岩瀬健×吉田礼


「ケンゾー」
「ん?」

暗闇の中、礼が健に尋ねた。

「ケンゾってさ、私のどこを好きになったの?」
「・・・」

健は考えながら、ベッドの中で礼の方へ体を向け、礼の頭の下に自分の腕を潜り込ませる。
健に腕まくらをされている状態の礼は、暗闇の中でも自分の顔をじっと見つめているのが分かる。

「・・・む」
「あ、今胸って言おうとしたでしょ」
「・・・ちげーよ」
「じゃあどこ」
「・・・」
「もう最悪」

礼が拗ねたような声で言う。

「ていうかそんなの聞いてどうすんの」
「別に、どうもしないけど・・・」
「ん?」

健が自分の腕の中でうつむいてしまった礼の顔を覗き込む。

「・・・どうもしないんだけど、ケンゾーさっきからずっと黙ってるから・・・」
「え、俺?」
「・・・なんか沈黙に耐えられなくなったの!」
「・・・え〜」
「え〜、じゃないよ。ったくケンゾってば、こうなってもケンゾーのままなんだから。
 ほんっと何も分かってないよね!」

そう言って礼は布団で顔を隠してしまう。
健はしばらく考えてから、礼を自分の方へ抱き寄せた。
礼の前髪から礼のにおいがした。

「分かってないってなんだよ」

健に抱き寄せられ、健の首元で礼が続けた。

「・・・だから、ケンゾは何も分かってないよ。普通ムードとか考えるでしょっ」
「えぇ?」
「どうせ、あぁ疲れた、とか考えてたんでしょ」
「はぁ?ちげーよ」
「違わないもん。」

「ていうかムードとか言うの今時お前ぐらいだよな」
「・・そんなことないし」
「パスタのことスパゲッティって言うのも」
「それもう聞き飽きたからっ」
「なんか礼って古くせーっていうか」
「それも聞き飽きた」
「それにいつも説教くせーし」
「も〜だから、くさいくさいうるさいから!」
「でも俺はそーゆーとこが全部好きっていうか」
「・・・」

自分の口元がこそばくなった。
礼が腕の中で自分を見上げている。

「・・なんだよ」
「・・・今、俺うまくまとめた〜とか思ってんでしょ」
「思ってねーよ!どんだけ」

少しの沈黙の後、ふふ、と礼が笑った。
健の顔が少し緩む。

「・・・それに、黙ってたっていうか感動してたの」
「へ?」
「いやだから、やっと礼とこうなって、長かったなぁって考えてたの」
「・・・」
「今までずっとお前のこと考えてたから」
「・・・」
「・・・ていうか、ちゃんと式のスピーチ聞いてました?(笑)」

しばらく礼は黙っていたあと、健の首に自分の両腕をまわしてきた。
部屋は真っ暗だけど、礼と目が合ってるのが分かった。

「・・ケンゾー」
「ん?」
「ケンゾっていつも三振ばっかのくせに、時々ホームラン打つよね」
「どーゆー意味だよそれ」
「ふふふっ」
「ていうかそれツルのこ・・・」

礼が健に唇を重ねてきた。
裸のままベッドで抱き合う二人は、それから長いキスをした。






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