亜宇他荘物語5
○○○×ミザリィ


ある日の亜宇他荘

「ミザえも〜ん!」
「てい!」

オカルトショップ「美沙里」に駆け込んできた想一少年の脳天に、ミザリィの空手チョッ
プが炸裂する。

「私は未来から来たお助けロボットじゃないわよ」
「じゃあその手に持ってるものはなんだよ!」
「こ…これはたまたまおやつに買ってきただけよ!」

ミザリィは食べかけのドラ焼きを、慌てて口の中に押し込んだ。

「それで、そんなに慌ててどうしたの?」
「ママを助けて!」

「バラワン星の風土病、ホンダラワ風邪だわ」

病院に想一少年の母を見舞ったミザリィは店に戻るなりそう言った。

「ウソくせ〜」
「てい!」

露骨に顔を顰める想一少年の脳天に、再び空手チョップが飛ぶ。

「きっと地球人に変装した観光客から感染したのね」
「どうすればいいの?」

すでに現代医学では手の施しようが無いと医者から告げられている。
ウソくさかろうがなんだろうが、想一少年にはミザリィが最後の希望なのだった。

「この風邪はマイナーだから買い置きの薬が無いのよね」

などと言いつつミザリィは、ミシンとタイプライターと軍用無線機が合体したような奇怪
な機械を操作する。
すると三分も経たないうちに亜宇他荘の真上にUFOがやって来て、ミザリィと想一少年
を吸い込むと、あっという間に恒星間航行速度に加速して、太陽系を飛び出した。

「簡単すぎるよ!野尻抱介なら大気圏離脱だけで10ページは使うよ!」

想一少年が喚く。

「細かいことはいいのよ」

いつのまにかやたら露出度の高いSF漫画風コスチュームに着替えたミザリィが、カメラ
目線で言った。

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無限に広がる大宇宙。

「暇だ…」

ファンタオレンジのグラスを片手にバターおかきを齧りながら、想一少年は呟いた。
ホンダラワ風邪の特効薬を入手すべく、ネタラエーヤンカ星へとハイパー・ドライブでぶ
っ飛ばすUFOの中の一室で、少年はひたすら退屈していた。
目的地まで四時間はかかると言われ、ここで時間を潰すようにと個室を与えられたのだが、
はっきり言って何もすることがない。
テレビはあるがDVDは山田洋二監督の「男はつらいよ」シリーズだけだった。

「ミザリィはどうしてるんだろう?」

想一少年は部屋を出た。

「AH…」

UFOの中を適当に歩いていると、僅かに開いた扉の向こうからやたら色っぽい声が聞こ
えてくる。
中を覗くと荒縄で縛られたミザリィが、脳味噌ムキ出しで蠅のような複眼を持った、いか
にもな宇宙人に犯られていた。

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「ミザリィ!」

想一少年は部屋に飛び込んだ。
都合よく床に転がっていた中身ムキだしのドライヤーのような銃を拾い、宇宙人に向けて
引き金を引く。

ギョーンギョーンギョーン

GANTZEな効果音から一拍おいて、宇宙人の頭が破裂した。

「大丈夫ミザリィ」
「別に助けてくれなくてもよかったのよこういうプレイだったんだから」

ミザリィはちょっと不機嫌だった。

「それより困ったわ。このUFOは脳波コントロール式だから運転手が死んだら動かしよ
うがないわ」
「ど、どうしよう!?!」

うろたえる想一少年。

「コンピューターに聞いてみましょう」

ミザリィは壁にならんだスイッチをポンポンと叩いた。

「このUFOが何処に向っているかわかるかしら?」

『ハアァ〜?キコエンナァ〜〜!』

UFOは緑に覆われた惑星に不時着した。






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