リレー のだめ誕生日
番外編


「恵ちゃん誕生日おめでとう。」
「ムホー!くろきくん、どうしたの」
「スズランは君によく似合うと思って、」
「ギャボーン、夫に聞かせたい台詞です。」
「今日は千秋君は?」
「一日中楽団のリハーサルです。」
「恵ちゃん、僕はずっと君のこと好きだから」

そういうと、黒木はのだめを引き寄せた。

「く、黒木くん・・・?」
「僕なら絶対に恵ちゃんにさみしい思いなんてさせないのに。」

のだめの手から小さなスズランの花束がするりと落ちた。

「黒木君・・、苦しい・・・デス。」

その時だった。

「のだめー?帰ったの?」

突然、聞き慣れた声が部屋に響き、二人は勢いよく体を引き離した。

「タ、ターニャ?」

のだめは驚きに声を強ばらせる。
こんな時にターニャがくるなんて、別に特別なにかやらしいことを
していたわけではないのに、先ほどの黒木の行動を思い出すだけで
なんだかとても後ろめたい気分になって照れくさい。
まるでよく熟れた林檎のように顔を赤らめた黒木とのだめの顔を
交互に見やりながら、ターニャは不思議そうに顔を顰めた。

「どうしたの?あんたたち」

顔、真っ赤よ。
そういうとターニャはまるで二人を詮索するように
いやらしい笑みを浮かべて見せた。

「千秋がいないところで、二人きりで、なにをしてたの?」

「な、何って、なにもしてませんヨ!!」
「ふ〜〜〜ん?」
「こ、これ」と黒木は花束をひろってのだめの手におしつける。
「じゃ、ぼくはこれで」

二人の返事を待たず、黒木は走り去ってしまった。

「ちょっと、何よこの花は??」

ターニャが好奇心を浮かべた顔でつめよってくる。

「え、いや、今日、のだめの誕生日なんデス」
「なんで…」

ターニャがさらに追及の手をのばそうとした時だった。

「おい、おまえらひとんちの玄関先でなにやってんだよ!!」

「ぎゃぼ!先輩おかえりなさ…」

振り向くと、不機嫌そうな千秋。
その後ろに、目を逸らした黒木が申しわけなさそうに立っていた。

「あ…」

ターニャは言葉を飲み込む。
千秋と出くわした黒木は、そのまま連れて来られたのだろう。
ここにのだめと二人きりでいたことは言わない方がいいのかしら?

「さ、さっきまでヤスとふたりでのだめの誕生日の
お祝いをしてたのよ。さ、千秋も帰ってきたことだし、
私たちは退散するわよ?ヤス。」

そう言うとターニャは黒木の背中を押すようにして
そそくさと出て行った。

バタンとドアが閉まると、のだめは困ったような顔をして
千秋を見上げた。

「やっぱり・・・なんかあったんだろ。」

そういうとのだめの瞳から大粒の涙がぽろぽろと溢れ出した。

「黒木君に・・・、突然ぎゅうってされて、
のだめ、苦しくって、そしたらターニャが来て・・・。
ターニャ、黒木君のこと好きなのに。
どうしたらいいかわからなかったんデス・・・。う・・・ひっく。」


千秋は子供のように両手で目をこすりながら泣いているのだめを
優しく抱きしめた。

ワケの解らぬまま、泣き続けるのだめの背に手を回していた千秋は、
のだめの口から漏れる切れ切れの言葉に、状況が理解できるようになってきた。

「ふーーん・・・」

千秋は呆れた顔でため息をつく

「センパイ?」

「おまえな、幾つだよ。
何が、ぎゅうってされた だ?どんな男にだって性欲があるってことが解んないのか!?
その幼稚さ、何とかしてくれよ!」
「え・・・?性欲とか、そんなんじゃないんデス・・・そうじゃなくっ!あ、あああ!」

言葉を荒々しく遮る千秋の男の動作に、のだめは

「ん…!!はぁ…千秋先輩…あっああ!」

息苦しさから解放された途端、下半身から脳を走る快感がのだめを責める。

「優しければ誰でもいいのか?それともあいつだからか?」

千秋が耳元で囁く。
静かに、激しく、いつもになく強く。
そして“のだめ”に触れる長い指も。

「違ぃ…マス…!!のだめは…っ!」

その愛撫は言い訳することを許さない。

千秋はのだめを玄関の壁に押し付け、言い訳しようとする
のだめの唇を自分の唇で塞いだ。

「んっ!んむ・・・はぁっせんぱ・・・んー!!」

千秋は激しく舌を絡めながらのだめの秘部を
くちゅくちゅと荒々しくかき乱す。

「やあんっっ!先輩っ!だ、だめです、そんなにされたらのだめ・・・っああん!」
「こんなに濡れて・・・。あいつに抱きしめられたときに
感じたんだろう?」

そう言うと千秋は指を動かしながらのだめの蕾に親指を擦り付ける。

「きゃああんっっ!違いマス!あぁっ先輩が・・・こんなことするからっ・・
のだめ、もう・・・もうっ・・・!!」

千秋は構わず指を動かし続けた。

「はあっ先輩!あっっ!あー!あぁーっ!!」

立っていられなくなったのだめは床に膝を着いた。

床にくずおれそうになったのだめを抱きかかえようと千秋は背をかがめた。
すると、足下に再びのだめの手からこぼれおちたすずらんの花束が目にとびこんできた。
そうか、誕生日…

千秋はのだめを両手で抱き上げると、わきのベッドにそっとおろし、その上からおおいかぶさった。
いいようのない罪悪感と焦りを打ち消すように、唇をかさねた。
今度は、やさしく、ゆっくりと…
唇を離すと、うっすらと目を開いたのだめと目が合う。
うるんだひとみがきらきら光っている。
少し困ったような、せつなそうな色をうかべていて、思わずすいこまれそうになる。

「しんいち君…」

「のだめは…“千秋先輩だから”好きなんデス…!!」

登りつめたばかりでまだぼんやりしているが、
千秋を真っ直ぐに見つめるその眼は
わずかな迷いも偽りもない。

―まるで「私はあなただけのもの」と訴えているような。

千秋はそれに応えるように首筋から下へと“自分のものである証”を刻んでいく。

一度絶頂を迎え、桃色に蒸気したのだめの頬に、一筋の涙がつたう。

「のだめの好きな人は、しんいちくんだけなのに・・・。
信じてくれないんデスか?」

懇願するようなのだめの表情を見て、
千秋は少し汗ばんだ栗色の髪をなでながら優しく言った。

「もういい、分かったから。分かってるから。」

―最初から分かっていたんだ。のだめが他の男に興味がないことくらい。
でも、こいつはスキが多すぎて、時々不安でたまらなくなる―

「しんいちくん・・・?ひゃぁっ・・・!」

千秋はのだめのまぶた、頬、耳元、首筋にゆっくりと優しく、キスをする。

―こいつは俺だけのものだ。誰にも渡さない・・・―

ワンピースの裾を捲り上げ、胸元に手を伸ばす。
下着の上からでもはっきり分かるほど、
のだめの胸の突起はぷっくりと硬くなっている。

「ん・・・ぁ。」

のだめがかすかに声を漏らすと、千秋は下着を外し、
露になったのだめの乳房を優しくなで上げる。

「あ・・・しんいちく・・・。」

親指と中指で胸の突起をつまみ、人差し指で弾いたり、
もうひとつの突起を舌で転がすとのだめの声はいっそう高くなる。

「ひゃぅ・・・っあんっ・・・あ・・・っはぁ・・・。」

黒木くんの気持ちが未だにのだめに向けられていたこと・・・

本当はわかっていたのかも知れない。
俺がそのことに見て見ぬ振りをしていただけだ。

そう思いながら自分のものである証を一層強く刻んでいく。
と共に甘く切なく漏れるのだめの甘美な声。

あ・・もう――――


嫉妬にかられながら絶頂を向かえる営みの中で、千秋は黒木のことが気にかかっていた。



一方ターニャに一手打たれた黒木はというと・・・

黒木は、ターニャの夕飯食べていかない?の言葉に甘え、
部屋へ寄っていく事になった。

「何かあったの?ヤス」
「いや、なにもないよ。はじめから何にもなかった。僕の片思いだったんだ。」

やっぱり。とターニャは思う。

「そんなに考えなくていいわよ。私だって、片思いしてるのに打ち明けられない。
きっといえないまま、振られるんだわ。」
「えっ。ターニャちゃんは(時々分からなくなるけど)女の子らしくてかわいいじゃない。
告白してみたらいいのに。(加えてそのナイスバディ)」

「やさしいのね、ヤス。私が好きなのはあなたなのよ。」
「えっ。」
「いつか気付いてくれるんじゃないかと期待しながらも、
あなたの心は音楽でいっぱいなのだと思っていたわ。
それなのに あなたはのだめのことが・・・」

黒木は、自分の気持ちを素直に話すターニャに 別の一面を見た気がした。

思わずゴクリとつばを飲み込んで黒木は黙り込んだ。

ターニャは、黒木の上下に動いた喉仏を見て、膝の上でぎゅっと両手を握り締める。

「ヤスが、のだめのことを好きでも構わない……」

一瞬の間を置いて立ち上がるターニャ。
静かな動きでテーブルの脇を歩いて、黒木の前に立った。

顔を上げられないでいる黒木の前で、ささやかな衣擦れの音がした。
ファサッと優しい音を立てて、今までターニャが羽織っていたシャツが目の前の床に落ちた。

「た、ターニャ!?」

慌てて見上げると、白い肌にラベンダー色の下着だけをつけたターニャが、淋しそうな笑みを浮かべて
黒木の頬に手を伸ばしてきた。

「ねぇ、ヤス……」

「ターニャ、ごめん。リード作らなくっちゃ。」

僕は慌てて、リード作らなくっちゃなんて色気の無い事を言ってしまった。
正直どうしていいかわからないんだ。
ターニャは一瞬、淋しそうな顔をした。急いでそれを取り繕い、僕を見送ろうとした。
僕は何だかたまらなくなり、つい、ターニャを抱きしめてしまった。

「…私は、自分以上にヤスが大事よ」

ターニャはそう呟くと黒木に背を向けてリビングの方へ戻る。
そのシャツを羽織った背中はどこか悲しそうだった。

(…ごめん、ターニャ…僕はなんて中途半端なんだろう)

ターニャはリビングにあるピアノの椅子に腰かけ、鍵盤を押し始めた。
曲は、サティのジムノペディ第一番。

ターニャの今の気持ちを表すかのように、切なく、静かな旋律。
―愛している彼の瞳に、私は映らない。―

いつか聴いたモーツァルトのイ短調ソナタの時のような
ネットリとした弾き方ではなく、
絶望感が伝わってくるような、力のない指のタッチ。
しかし、細かい強弱はしっかりとつけてある。

黒木は背筋に何かがはしるのを感じた。

(すごい・・・。こんな表現力、以前の彼女にはなかった・・・。
なんて美しいんだ・・・。)

黒木は涙が溢れそうなな感覚をぐっとこらえる。

最後の和音を弾き終わると、ターニャは立ち上がり
黒木の方を見て淋しそうな表情で言った。

「私、コンクールに出ようと思うの。
今まで安易な気持ちでピアノと向き合っていたけど、
あなたに出会ってから変わったのよ、私。」

「ターニャ・・・。」

「私は、のだめや千秋に追いつきたい。何よりヤス、あなたに
追いつきたいの。あなたのいる高い場所に追いついて、
一緒に歩いていきたい。」

ターニャの瞳から切なく涙がこぼれ落ちる。

「ヤスのこと、愛してるわ。好きになって欲しいなんて言わないから、
好きでいさせて・・・。」

黒木は立ち尽くしていた足をようやく動かし、ターニャのもとへ
歩いていく。そして優しく抱きしめた。

「僕に追いつくなんて、とんでもない。君はとっくに高い場所にたどり着いているよ。
驚いた。すごく素敵な演奏だったよ。
僕も君のピアノをずっと隣で聴いていたい・・・。」

そう言うと黒木はターニャにキスをした。
とても軽いキス。唇が触れるか触れないかというところで
顔を離し、見つめ合う。

「ヤス・・・。」

ターニャは信じられない出来事に顔を赤らめた。
黒木は自分の行動に吃驚していた。

(僕はさっきまで恵ちゃんの事が好きだったはずなのに、
こんなに一瞬で恋に落ちると言う事があるんだろうか。)

黒木は自分の気持ちを確認するようにもう一度
ターニャにキスをした。今度は深く、舌を絡めていく。

絡みつく、優しくて強いキス。
こんなキスをするなんて・・・
あぁ、わたし、今ヤスとキスをしている・・・

たまらなくなったターニャは黒木の背中に強くしがみついた。

これはいつものヤスじゃないの。
きっと、この雰囲気の勢いに違いない。
わたしのことなんか、これっぽっちも眼中にないくせに。
でも誘ったのはわたし。それでもいい。
ヤスもわたしも、一緒なのよね。
想いをよせる相手には愛しい人がいるの。
でも今だけなら――――


今だけなら、ヤスはわたしのもの――――


黒木の初芽の想いに気付くはずもないターニャは、どこか淋しい気持ちを堪えながらキスへ身を任せていた。

そんな時。


コン コン

「ターニャ、いる?」


千秋の声だ。

千秋の声にはっと我にかえるターニャ。

黒木の背に沿えられた手をぱっと離し距離を開こうとした。
だが黒木はそれを許そうとしない。

「…いやだ」

耳を疑うような言葉に、ふと見るとこれ以上ないほど紅く染まった黒木の顔。

「なに…言ってるの、千秋が、来て…」
「君まで…君まで千秋くんのところへは行かせない」

そう言うと、黒木は更に強く抱きしめた。
強い眼差し、少し潤んだ目。


そんなこと言われたら―――

本当に信じていいのね?


ターニャは黒木の艶やかな髪をゆっくり撫でた。
そのまま、自分の背に沿えられている黒木の手を自身の胸元へと誘導する。
しっとりと湿った白い肌から、強い鼓動が黒木の手へと伝わる。
置かれたその手にこらえられない欲望がみなぎり、黒木はやんわりと揉みしだいた。
はぁ、と深い溜め息がターニャから漏れる。


「あれ…いないのか」


千秋の呟く声はもはや二人には届かない。
タン、タン、と階段を降りていく千秋の足音とターニャから漏れる吐息だけが二人を包んでいた。






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