壮絶な演奏
番外編


音大の卒業演奏会、大勢集まった聴衆は、オーケストラのピアノ協奏曲にくぎづけになっていた。
その音は流れるように谷間を漂い、まるで千尋の谷に突き落とされて、空中を漂いながら引き込まれるような妖艶な魅力だった。

曲はラフマニノフ、ピアノは千秋真一。
そのピアノ演奏者「千秋」は、身をよじらせて、もだえるように体をくねらせた。

官能的な動きだった。
腕を激しく動かし、上半身をのけぞらせて、体を震わせるようにして、オーケストラは目標に向かって一気に流れ、「千秋」は美しく奏でながら、

ああっ、そこ、ああっ、そこ〜、あああっ!!

と、指の超絶技巧によってうねりながら、ついに耐え切れず美しい絶頂を極めていった。

ああっ、ああっ。

「千秋」はあまりにも色っぽく、男なのに女のようだった。
聴衆もまた共にイッて果ててしまったかのようだった。

その中にいた老婆の学長も、まるで「千秋」に愛されたかのような深く深く満たされてまるで愛撫をされたようになっていた。
そしてシュトレーゼマンに、千秋に王子の服を着せていじるように厳しく命令しておいて本当によかった、と学長は思った。

いつのまにかオーケストラは終わりの時を迎えていた。
終わりと共に、壮絶なブラボー!の大歓声。
この演奏は、DVDに焼き込まれ、その後、大学の新入生が入学するたびに、「千秋」がクネクネして悶えながら壮絶な演奏を奏でるシーンが多くの学生に見られたのだった。

千秋は後日、そのDVD動画を自ら見る機会があり、一週間以上寝込んだ。






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