ガールズトーク&ボーイズトーク
番外編


峰と清良がいきなりパリへやって来て、千秋の部屋を占領した日。
峰のペースに久々に巻き込まれ、目眩がしそうになったが、ようやく帰ってくれる日が
明日となった。

「いやー、もう明日帰るかと思うとつまんねーなー」
「こっちはホッとするよ」

千秋は今日も夕食担当となり、エプロンをしたまま皿の後片付けを終えたところだ。

「まあそんなつれねーこと言うなって。せっかく久々に会えたんだしー」
「俺は会いたくなかったよ…じゃあな、おやすみ」

千秋とのだめが隣室へ帰ろうとしたとき、清良が突然こう言い出した。

「ねえねえ龍、今夜わたしのだめちゃんとこに泊まるから!
最後の日だから思う存分女同士のおしゃべりしようと思って」

峰は、そんな清良の提案に不満があるようだ。千秋も同様。

「え、えーーー!?清良、そんなぁ、せっかく……」
「ちょっと待て、おまえらは1つのベッドでいいだろけど、俺はゴメンだぞ!」

しかし、そんな抗議の声も、女達の前にあえなく敗北して。

「龍たちは千秋くんの部屋に泊まればいいじゃない。こっちならソファがあるし。
私とのだめちゃんが隣で。じゃあおやすみなさい、明日の朝ねー!」

千秋の部屋に残された男性陣は、なぜ突然こうなったのか理解できないまま、
とりあえずは、仕方ないから飲むか、とバーボンを酌み交わし始めた。

「……峰、おまえら何かあったのか…?」
「別にねえよ……ただ単にのだめと話したかったんだろ」

峰は自分のグラスに氷を足し、少し不安げな口調でこう言った。

「……女同士のおしゃべりっていうと、やっぱ…アレかな……」
「アレだろうどうせ……」

男同士が、女同士が、旅行で枕を並べて話すとしたら、アレしかない。
恋の話。
いや恋の話で終わるのはガキのすることだ。
ここはやっぱり……アレ、だろう。

「……じゃあ千秋、オレたちもせっかくだから男同士のおしゃべりを」
「しねえ!!」

千秋はキッパリと言い放つ。なんで峰に自分とのだめのコトを話さなくては
ならないのか。そんなことするくらいならセーヌ川をパンツ1枚で泳ぐ方がマシだ、
と千秋は思った。

「ちぇーっ、ケチー!いいじゃねーか、オレすげー興味あんだぜ、
お前がどうやってあの変わり者ののだめとつき合ってんのか」
「ほっとけ!絶対何も話さねーぞ!」
「分かった。……じゃあオレの相談に乗ってくれ!」

峰は語り始めた。

「オレ、実はな……女とつき合ったことは何人かあるんだが、清良みたいに
誰から見ても美人、っていう女とつき合うのって、初めてなんだ……
いつも、正直ルックスは並って女ばっかりで……。
千秋は、のだめだってマニアックだけどかわいいし、前は多賀谷とつき合ってたし、
どーせその前だって美人ばっかりだったんだろ?千秋様ー、とか呼ばれて。
……だから、教えてくれ!いい女を飽きさせないベッドテクってのは、どんなのなんだ!?」

バーボンをこぼさんばかりにコップを机に叩き付ける峰に、千秋は後ずさった。
そんなに悩んでいたのか、こいつ?

「そんなの知らねーよ!満足させりゃそれでいいンじゃねーの?」
「だから、どうやったら満足させられるのかを知りたいんだって!」

峰は早くも酔い始めているようだ。
ため息。どうして俺の周りには、こう変わった奴ばかり集まるんだろう。
千秋は自分もかなりマニアックだということに気付いていない。
そして、自分も少し酔っていたことにも。

「……とりあえず、てっとり早いのはキスが上手いことだろ、きっと……」
「キスか!どうすんだ!?」

峰は目をすわらせながら、身を乗り出した。

「……言っとくが、あくまでも一般論だからな!」

***

「……ふむふむ、なるほど、そうか。けどそうすると、のだめはどう反応すんだ?」
「だから、話さねえって言ってるだろ!」
「お前も律儀だなー、つまんねーの。分かったよ聞かねーよ。
じゃあそうしといて、次はすかさず胸を……」
「早いって。キスだけでもっと時間かけてみろよ。キスするだけじゃなくって、
髪とか首筋とか耳とか背中とか、いろんなとこ触りながら。
たまに唇から離れて鼻先とかまぶたにキスするのを挟んだりとか……
焦らすようにすれば、きっと燃えるンだよ女は」

…どうして俺はこんな話を峰にしているんだ……。
ようやく千秋も後悔しはじめる。しかし酒の力には負けている。
峰は感じ入ったようで、千秋の手を両手で握り始めた。

「千秋、お前はっやりすげーなー!どこでそういうの覚えるんだよ。雑誌とか見るのか?」
「見ねえ、経験だ経験!見るのはおまえだろ、いつも勝手に雑誌とかAVとか人んちに
置いて行きやがって。処分すんの大変なんだからな!」
「あとは?ほら、体位とかはどうだ!松葉ナントカとか!」

……もう、助けてくれ……。


その頃の女性陣。

「のだめちゃん、胸大きいよね……」

改めてワインを開けて、いちど乾杯。
それからパジャマに着替えるのだめをチラリと見て、清良はため息をついた。

「そーデスか?一応Dカップですけど……清良さんはBカップでしたっけ?」
「当たり!すごーい、なんで分かるのー?」
「千秋先輩が言ってましたヨ」
「!?ち、千秋くん、なんでそんなコト……」

千秋といえば、クールでシビアな指揮者。指揮棒を折るほどの厳しい指導は忘れない。
そんな千秋が、なぜ自分のカップの大きさを知っているのか!?
清良は思わず自分の胸を押さえた。

「センパイ、おっぱい星人なんですよ。だから女の子のムネのチェックは、
たとえ峰くんの彼女でも、怠りないと思います」
「へぇぇ、意外〜…。あんなクールそうなのに、案外……なんだ」
「そーデスよ!全然クールじゃありまセン!」

クールじゃない、とのだめはワインを注ぎながら言う。
それは、清良には納得いく話ではあった。
こののだめという女の子自体、千秋の彼女だと知ったときには意外だったことを思い出す。
クールビューティ系がお似合いかな、と思っていたのだが、峰や真澄から話を聞き、
そして実際会ったところ、千秋という男から想像していたのはかなり違うタイプの、
かわいい、個性的な女の子だった。
それはそれで好ましい2人だな、と清良は思う。
のだめと一緒の千秋は、醸し出す雰囲気が、今まで知っていたものと違う、
とてもほほえましいものだったから。

「じゃあ、のだめちゃんがグラマーで千秋くんは嬉しいよね。……龍は、どうなんだろう。
男の人って、胸、大きいほうがやっぱり好きなのかなあ」
「どうなんでしょうね?好きなヒトなら関係ないんじゃないデスか?
Bカップ上等じゃないですか!のだめはそのくらいのが好きです!」

清良は悩んでいた。
峰は、べつにグラマーが好きだとは、自分には言わない。
けれど先日、彼の部屋で見つけてしまったAVの数々は、ことごとく巨乳ものだった。
胸の大きいのだめに、一度意見を聞いてみたいとそのときから密かに思っていたのだ。

「ほら、AVだと、胸で挟んじゃったりするじゃない。あれ男の人は嬉しいんじゃないの?」
「あー、あれ。けど視覚上の問題だけみたいですヨ、見て楽しいみたいデスね。
先輩は、特に気持ちが良いわけじゃないって言ってました」
「そうなんだ!……じゃあ、何がいいんだろ、胸が大きいと。触り心地とかなのかな」
「ああ、そうかもしれないデスね。触るのは好きみたいだから。
もうずーーーっと触ってますよ。見るのも好きみたいデス。
あとはー、キスですかねー。先輩、のだめがしゃべってると照れちゃって、
絶対キスして口ふさぐんですヨー。それからー……」

どんなに酔っても、のだめに関しては絶対話さない千秋。
酒に弱いとはいえ、一般論でしか訊かれていないのに、千秋のコトばっかり話すのだめ。
そして夜は更けていく……。






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