いつか、きっと(非エロ)
リュカ・ボドリー×野田恵


「のだめ…寝てるの?」

コンセルヴァトワールの校内にある公園で、一緒にランチをしていたのだめが
芝生の上に横になって、すぅすぅと寝息を立てている。

…やっぱりのだめって、かわいいな。とても24歳には見えないし。

リュカは優しい眼差しで、その寝顔を見つめる。
どんな夢見てるんだろ…。
いつもこんなふうに口…開けて寝てるのかな。
僕の知らないのだめを、本当はもっと知りたい。
もっとたくさんおしゃべりして、もっとたくさんそばにいて

…できることなら、のだめのその肌に触れたいとも思う。

僕だってもう、子供じゃない。
背も伸びたし、声も変わった。
手だってこんなに…。
自分の手を見つめて、その手でそっと…のだめの頬に触れる。
いまこの公園には偶然にも誰もおらず、二人きりの空間になっている。
少し、鼓動が早くなる。
のだめは相変わらず、すぅすぅと気持ち良さそうに寝息を立てていて…

僕はこんなにのだめのことが好きなのに。
のだめは全然僕の気持ちには気付いてないんだな。
そっと、その頬を撫でると…リュカの手にのだめが反応したように
ふっと微笑む。
その可愛らしい表情に、キュッと胸が詰まる。
鼓動はどんどん早くなり、のだめの顔から視線と手を離すことができない。

「のだめ…」

ゆっくりと、その顔に自分の顔を近づける。
年が離れてることなんか気にならない。
僕は、本当にのだめのこと…

息がかかるほどの距離に顔が近づいた時、のだめが笑った。

「ん…ちあきせん…ぱい…」

むにゃむにゃと、何やら寝言を続けながら、その顔は眠っているのに笑っていて…。
…日本語だけど、「チアキ」は聞き取れる。
そして、この幸せそうな表情が、何より彼女の気持ちを表している。
こんな寝顔も、あの男はすべて知っているんだろうな…
そう思うと、とてつもない嫉妬心が体中を満たす。
無理やりにでも、のだめを自分のものにしてしまいたいとすら思う。

でも…。
愛しい人の名前を何度も繰り返しながら、幸せそうに眠る彼女に
もうこれ以上何も出来ない。
そっと、体を離す。
僕は、いつまでも片思いなのかな…。
でも、きっといつかチャンスが巡ってくると信じたい。
早く大人にならないと。体も、心も。

まだむにゃむにゃと口元をほころばせているのだめを、ゆすって起こす。

「のだめ、そろそろ起きないと」
「…ほぇ…のだめ…夢だったんですネ…」
「…どんな夢見てたの?」

少し、頬を赤らめて

「ひ…秘密デス」

と言った。
その答えも表情も、僕の気持ちをこんなにも切なくしているということに
彼女が気付いてくれる日は来るのだろうか…。

「いい夢の邪魔をしちゃったかな?」

これくらいの邪魔は許してよね。

「いいデスよ〜。リュカ、明日もまたお昼にお勉強しましょうネ」

…うん。もっと勉強して、いつかチアキを越えてみせるから
その時は僕に振り向いてよね。
いつか、きっと…。






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