素直になれない自分
黒木泰則×ターニャ


彼とちゃんと男女の関係になれて、少し経った。
ベッドの中の彼はやっぱり生真面目で、こっちの国の男たちとはちがう。
あんまりしゃべらないし、どちらかというと淡々としている?かも。

物足りない訳じゃない。
私のほうが経験値は上のハズ。
でも、なんとなく彼にリードされているようなカンジもあって、それが少し悔しい。
まあ、まだ数えるほどしかお互いを確かめ合ってないから、まだまだこれからよね。

今日は、彼の部屋で一緒に夕食。材料を買い込んで、私が押しかけたんだけど。

「ターニャの作るのは、どれも本当においしいよ」

そういって、私が作ったものをおいしそうに綺麗に平らげてくれる。
のだめもいつもガツガツと平らげてはくれるけど…。のだめのときとは違う。

食事の後の彼のにっこりと微笑むのを見ると、胸が苦しくなるような、
暖かくなるような不思議な感じがする。
今まではのだめの専属料理人だったかもしれないけど、
今は……できればすっと……ヤスの専属料理人でも、いいわ。

「明日は、朝一から授業があるんだ。送っていくから、ターニャも遅くならないうちに
今日は帰ったほうがいいよ」

夕食の片付けが終った頃、お茶を淹れているとおもむろにヤスが言った。
やっぱり、生真面目だわ。
でも、せっかくこうして二人きりの時間を過ごせるのに…。

いつもはお互い課題をこなすだけでせいいっぱいで、
こんな時間を作ることが難しい時もある。
だから、必死で課題を済ませ、レッスンもきっちり終えてここに来たの。
ヤスと付き合うようになって、私、信じられないくらい真面目に取り組んでるのよ。

ヤスの言葉が急に冷たく感じられて、悲しくて、イライラしてきた。

「いやっ。帰らないわ!」

自分でも驚くくらい、大きな声で叫んでいた。

「ど、どうしたの、ターニャ?僕、なんか気に触ること言ったの…」

「どうして!なんで帰れって言うの?学校はそりゃあ大事よ。でもあなたとのことも
大事なの!あなたは違うの、ヤス?」

なんだか、涙が零れてきた。張り詰めていた糸が切れてしまったみたいに。

「わたし、いっぱいいっぱいよ。でも、あなたがいるからがんばれるって思えたの!」

「ターニャ?」

困惑するヤスの胸をドンドンと叩いてしまう。
違う、違う……こんなことを言いたいんじゃない。

「あなたは、わたしよりも音楽のほうが大事なのよね、そうよね?」

そうに決まってるじゃない。なんのために遠い国まで勉強しているのよ。
わかってるのに。それでも今日は言ってしまう。あなたを困らせることを。

「わたしだって、わたしだって…」

さらに言葉を投げつけようとしたら、ヤスの手がが私の両手首を掴んで、
その唇が私の言葉を飲み込んだ。

「んん――!」

乱暴なキスに体の力が抜けていく。
ヤスがこんなふうにするのは、初めてだわ…。
ヤスは、手首を離した手で、私をそっと抱きしめていく。
腕の力はいつもより強く、そのままもつれ合いながら、ベッドに倒れこんだ。

「ごめん。痛かった?…ごめん…ターニャ…落ち着いて…」

「痛くなんかないわ。どいて、わたし、帰る」

どうしても止まらない。
ほんとは、帰りたくないの、あなたと一緒にいたいの…――そう、言いたいのに。

「ターニャ。帰らないって言ったり、帰るって言ったり、ほんとに、どうしたの?」

たしなめる様にヤスが、視線を合わせてくる。
どうかしてる…私、今日はきっと疲れてるんだわ。

「ヤスの邪魔しないように、帰るわ」

ぷいっと横を向いて、目を逸らす。
ふいに、ヤスの唇が追いかけてきて、優しく私の唇に重なった。
「んや! やだ!」と、逃れて叫ぶけど、今度は強引に言葉ごと奪われた。

「じゃ、帰さないよ」

ヤスの言葉が合図のように、次第に深くなるキス。
拒む言葉とは裏腹に、私も激しくヤスの唇を求めていた。

***

お互いに、服を脱ぐのももどかしいぐらいに体を探りあいながら、
いつの間にか生まれたままの姿になっていた。

こんなこと、今までになかった。
いつものヤスは、私に了解をとってから、抱いてくれる。
キスする時でさえも、あきれるくらい、用心深く、慎重に。
大切にされてるって実感は湧くけれど、もどかしいとも思っていたわ。

今日のヤスは…別の人みたいに性急で……口数の少ないのは同じだけれど。

「あぁん…ああっ はぁぁ… あんっ」

座った姿勢でヤスに後ろから抱きしめられてる。こんなの初めて。
普段なら背中のあたたかみに安心するのに、
ヤスの胸への愛撫がいつもより熱っぽくて、恥ずかしいほど感じてしまう。
乳房を揉みしだいてたヤスの手の動きが一瞬とまり、
尖りきった両の頂を指で摘まれた。そのまま転がされ、捏ねられ、捻りあげられる。

「やあぁッ、ヤス、ヤス! そんなにしないでッ いやぁぁ……!」

すごく感じて、仰け反ってしまった。
自分から胸を突き出すように、ヤスの肩に頭を預けて。
ヤス、私の体、ちゃんと受け止めて。ダイエット、がんばったんだから。

ヤスは片手を腰にまわしてしっかり受け止めて……。
いつものようにヤスは言葉のかわりに、私の唇にキスをくれた。
私の唇を食べてしまうように、深く、舌を絡めて、絡め合って…。

気がつくと、ヤスの片手が恥ずかしいほど濡れてしまっている内股に滑り込んでいた。

「あっ、ヤスッ ダメッダメ! そこ……」

慌てて唇を逃れて、ヤスの手を制止する。
ヤスの手が茂みの上からそっとそこに触れる。
私の制止は無駄に終わって、ヤスの手はどんどん大胆になっていった。

「やだ…いや……あ…ん…」

もうすっかり濡れてしまっているそこを、ヤスの指がかき回し始める。

「……ターニャ、今日は、いやなの? さっきから僕、拒絶されてる?」

「う…違う…わ…。だって、…今日のヤス…きゃあぁん! やッ、ぃやぁん!」

ヤスの指が私の中に入ってきて…どうしようもなくぬかるんだそこから、
くちゅくちゅと卑猥な水音が聞こえ始めた。

「やっぱり、いやなんだね。どうする? やめようか?」

こね回していたヤスの指が今度は勢いよく抜き差しされる。
ぐちゅぐちゅという恥ずかしい音を聞きながら、一気に昇っていきそうになる。
息が苦しくて、喘ぎ声しか出ない。
違うの、やめないで…その一言が言えないの。
ヤスがめずらしく言葉を続けて、私を追い詰めていく。

「帰りたい、って言ってたよね。…ごめん。今夜はここでやめよう」

後ろから耳元で囁いた後、ヤスは愛撫をやめてしまった。
ヤスがこんなにイジワルだとは思わなかったわ。
快感を取り上げられた私は、泣きそうになってヤスに哀願した。

「…今日のヤス……イジワル……ねぇ…おねがい…」

「だって、嫌なんでしょう?」

「ちがう…わ…ちがう…後ろから、が、イヤ…なの…」

「うそだ。すごく感じてたよね、ターニャ。ほら、こんなに濡らして」

「や…言わないでよ…ヤスの…イジワル!」

ヤスがいたずらっぽく笑ったと思ったら、急に前へと、うつぶせにされてしまった。

「なにする…」

「僕を困らせた、お返し」

ヤスはうつぶせになった私の腰をそっと持ち上げて言った。

「ターニャ…後ろからしたこと、ないよね。
……ホントは、君をもっと悦ばせてあげたい、と思ってるんだ。
でも、いつも君の望みどおりにはできなくて、ごめん。
ターニャのこと、いつも大切に思ってるよ。それだけはわかっていて…」

そういえばこの間のとき、ヤスにイジワルを言いたくて、後ろからして欲しい、
と言ってみたのを思い出したわ。ヤスはいつも気を使いすぎるもの。

きっと、今、真っ赤になって精一杯言っているに違いないわ。
さっきまで別人みたいだった声が、いつもの彼の声になっていたから…。
切ない気持ちが広がっていって、胸が、きゅぅんとなった。

でも、すぐさっきのヤスに戻ってしまって…両腿を手で開かされたと思ったら、
ヤスが上を向いて下に滑り込み、私のすっかりべたべたになってるところに
顔を埋めていた。

「やだ!ヤス、あ…なにしてる……の…あん!」

同時に生あたたかな感触がぬめりと触れた。

「ひゃ…やあぁんっ」

ヤスの舌が私の秘裂を何度もなぞって、恥ずかしいほど溢れてる液を舐めてる。
猫みたいに、わざとぴちゃぴちゃと音を立てられて、私はまた、昇り始める。
ぐいっとヤスに腰を掴まれて、逃げることができない。
舐めまわして、今度は裂け目を割って体の中に入ってきた。
ぬる…っとした感触が抜き差しを始め、私を押し上げていく。

やがて舌の感触が遠のき、ヤスの指が2本、そこに埋められていく。
ぬめぬめと舌は這い上がって、敏感になりすぎている尖りにまとわりついた。

「ああん!」

大きく声をあげてしまう。時折、ヤスが私の垂らしたものを啜る音が聞こえる。
…きっとヤスの顔をべたべたに濡らしてる。
体の中の指が激しく蠢いて、突き出した私の腰がびくびくと勝手に震えて……

「こわいッこわい! いやあぁぁぁ……!!」

すごく恥ずかしい格好で、ひとりでまた、昇っていってしまった。
今日は、怖いぐらい感じてしまってる。

「さっきまで、拗ねてたと思えないぐらい敏感だね、今日は」

シーツで顔を拭ったヤスが私の顔を覗き込み、微笑んで言った。
苦しくて、言い返せない。
いつもより強引で、少しイジワルなあなたのせいなんだから。

ヤスがベッドサイドのテーブルに手を伸ばして、引き出しからゴムを取り出し、
自分自身に準備を施している。
そして、まだ余韻が醒めないで戸惑っている私の腰に手をかけた。

「ま、待って…ヤス……」

「待たないよ、ターニャ。腰がこんなに揺れて…僕を誘ってる?」

今、ヤスに貫かれたら、どんなふうになってしまうのかしら?
本当は欲しくて欲しくてたまらないけど、自分がどんなに乱れてしまうのか、
怖いくらいなの。ヤスに嫌われてしまうかも。こんな私、初めてで…。

「……本当は、おかしくなりそうで、怖いの」

「大丈夫だから。おかしくなったターニャも、見せてよ」

「……嫌いに、ならない?……」

自分から、腰をあげて、ヤスを迎える格好になった。腰がぷるんと揺れる。
日本の女の子は、おしとやか、って聞いたわ。こんなことしたら、嫌われるかしら。
でも、こんな淫らにしたのは、あなたなの、ヤス。あなたが欲しくてたまらない。

「こんな可愛いターニャ、嫌いになるわけないよ。大丈夫だよ。僕を入れて……」

うなじを舐めあげられ、耳たぶをねぶられ、吸われた後、そっと囁かれた。
お尻をもっと突き出して、猫のように待ち構える。

「…きて…ヤス…」

固く張り詰めたモノがあてがわれ、擦り付けられる。自分からも腰を揺らしてしまう。
くちゅくちゅと馴染ませる音が部屋に響いた。

「すごく、いやらしくて、可愛いよ、ターニャ……」

そう言うと、ヤスは一気に私の奥まで貫いた。
一度入り口まで引いて、また奥まで突き込まれる。

「すごいッ奥まで…!! ああッああんッ…ヤス…っ」

息継ぎができないほど、大きなヤスを何度も受け入れる。

「やぁッ あんっあんっあっ ヤ…ス…」

ヤスが、腰を回して私の中をかき混ぜるから、愛液が溢れて内股を垂れていった。
なんだか溶けてどろどろになっていくみたい。
いやいやと、頭を振りながらも、腰をヤスに思い切り擦り付けて、迎え入れてしまう。

ヤスが背中に覆いかぶさるようにくっついてきた。
腕の間で揺らされていた胸のふくらみを掴んで、乳首を引っ張られる。
後ろから貫かれて、胸を嬲られる恥ずかしさと、ぱんっぱんっ、という音と一緒に
激しいリズムに翻弄されて、頭が真っ白になる。

「ヤス…ッ、ヤス……ッ――」

ヤスの名前だけを呼び続けた。
最後にヤスが最奥でびくびく震えるのを感じて、私は意識が無くなっていった。

***

チリリリ…
目覚ましの音で目が覚めた。慌てて音を止める。

醒めきらない頭で、ゆっくり確認してみる。そうだ…ここ、ヤスのベッドの中……。

一気に目が覚めて、飛び起きた。裸の自分のに気づいて、シーツで胸を隠す。
ここは、ヤスの部屋。昨夜のことを思い出す。少し強引で、イジワルなヤスを……。

ヤスは…?
見渡せばせまいワンルーム。部屋の主は、いない。
時計を見ると、ヤスの授業は始まってる。
私は…目覚まし時計は、私の授業に合わせてあったみたい。

ベッドサイドのテーブルを見ると、時計の横にメモがあった。

『君の分。持っていて ヤスノリ』

メモの上には……鍵がある。きっと、この部屋の合鍵だわ。

不意に、涙が出てきた。

ホントは、一緒に朝起きて、キスしたかった。おはようって、言いたかった。
独りでいるのが辛いから、もっとそばにいて欲しいのに。
取り残されたようで……涙がぽろぽろ零れてシーツを濡らしていく。

「ヤスの、ばか!」

馬鹿なのは、私だわ。わかってる。
ヤスの優しさは、今までの男とは違うって、わかってるけど。

いつもいつも気持ちとは反対に、ヤスに強く振舞ってしまう。
もっと、素直になりたいのに、優しくなりたいのに。
口下手で不器用なヤスに苛立って、ケンカばかりしてしまう。
物足りないわけじゃない。甘えているだけだわ。わかっているのよ。でも…。

ヤスに気持ちが嬉しいのに、素直になれない自分がもどかしい。

「わたしの、ばか」

だけど、少しだけでも素直になって、目指すものに向かっていかなきゃ。
お互いに目指すものがある、ということが、この先二人でいられる、ということ。
馬鹿で、単純な私は、そう信じてる。

もう、身支度を始めないと。
ヤスに馬鹿にされないよう、今日のレッスンもがんばるわ。
そして、早く課題をすませて…ここで帰りを待っていよう。
ヤスの好きな料理を作りながら。






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