プラクティス
黒木泰則×ターニャ


ふふん、フェロモンには、ちょいと自信あったのよ、わたし。
加えて最近、ますます磨きがかかったこのナイスバディ。
どうよ!このくびれ、この胸の谷間、道行くフランス男も振り返る・振り返る〜。
なのに、見向きもしないって、あいつはもう…!ZENとかBUSHIDOとか、
そういう系??まあ、そんなことが、もどかしくてまたいいんだけど…。
って、わたしったら、男の趣味まで変わっちゃってるし―。
責任とってよね、ヤス!
目を閉じれば――ありありと浮かぶ、アイボリーの肌。びっくりするほど肌理が
細かくて、ほんと磁器か何かのようで…女が悔しくなるようなそんな肌の男は、
コーカソイド(白人)にはいない。胸毛なんかないわね、絶対‥。葦のように
すべすべと、それでいて弾力があって…。
その肌と重ね合い、絹の黒髪を指で梳り、夜空のようなその瞳に、わたしだけを
映して…。
そんなふうに、幾夜も夢で愛してたことを、あなたは知らない。夢であっても、
喜びにふるえてたわたしを、あなたは知らない。

そのあなたが、今、現実にわたしのベッドにいて、無邪気な顔で寝息をたてて
いる。
のだめ、ありがとう。千秋、ありがとう。ボジョレヌーボーと、酒神バッカス
さま、ありがとう!
アルコールで紅のさした頬と、赤味を帯びた形のいい唇を、指でなぞってみる。
閉じた睫毛は、安心しきって、ぴくりともしない。
でも、甘美な夢の続きを、ゆっくりなぞるには、わたしはもう待ちかね過ぎて
いて…リビドーのほとばしりを抑えようがない。服を脱いで、彼の大腿の上に
座り、その服を脱がせにかかる。

「ん…なに?…え?!ターニャ……!」

意識は戻っても、主導権はわたし。ここはわたしのベッドで、あなたはもう
わたしのものだもの。
覆いかぶさり、むさぼるように舌を吸って、上顎の内側を舌でねぶる。
ヤスがうめきをあげた。でもそれは声にならない。間近に聞くその切なそうな
音は、なんて可愛い!わたしの芯はすっかり溶解してて……彼を飲み込み、
溶かしてしまわなきゃ気が済まない。

唇を解放すると、彼は、荒く大きく息をついた。油断して、無防備に曝された
胸の、尖ったつぼみのような突起を口に含み、舌で転がす。と、たまらず、
押さえた悲鳴のような声があがる。
ヤス自身に指を這わせると、はっきり怒張している。握り込むと、喉が
ひゅうっと小さな空気の音をたてて、息を止めた。やんわりと、扱きにかかる。

「あ、あ……ふ……」

目を閉じ、観念したらしい彼の、食いしばった歯の奥からもれる、細い声。
手技に悶えてくれるその表情もまた絶品で‥‥思う存分堪能しながら、
わたしは笑う。

「ヤス…。そんな、あんまり初々しいと、ますますいじめたくなるから…。
はじめてでもないでしょう?」

ぴくっ、と肩が硬直するのがやけにハッキリ見えて、目をみはった。

「はじめて……なの??」

象牙の頬も額も、もうこれ以上ないってぐらいに、真っ赤っかで…耳たぶまで
鮮紅色で…。ほんと、さくらんぼみたいで…感激に息をのむ。
ヤス……わたしのチェリーボーイ!
はじめて心の底から欲しいと思った、やたら可愛くてこ綺麗なこの彼は‥‥
わたしの中で、本当の男になる。
わたしが、彼の初めてで、特別――それは、この先ずっと変わることのない、
彼のエポック‥。

彼の肩を胸板を抱き寄せ、わたしの中に、彼自身を導き入れた。

「ターニャ…」
「ヤス‥。…そう、そこ…」

ためらいがちに、確かめるように入ってくるヤスを、膣の最奥まで、全身で
受け入れる。

「ああ、あ……」

最奥に到達し切ると、意を決したように、おもむろに律動をはじめる。
おずおずと、あたかもじらしてるように。
待っていた。ずっと。
焦ることはない。彼のペースで、一緒に高みに登っていけばいい――
なんて、いつからわたしは、こんなに寛容な女になったんだろう。
ヤスが、わたしの中にリズムを刻む。わたしの手に絡まる彼の指の、
確かな圧力。日々銀のキーを押さえてきたその指に握りしめられ、わたしは、
彼の大事な楽器になる。
楽の音は高まり、やがて最高潮に達し、そしてはじけた。

幸せ……。
痛いほどこみあげてくる幸福感に、涙が伝った。

「ごめん、ターニャ…」

なにか激しく勘違いしたみたいで、おろおろ謝りだしてるし。

「その‥あの‥ごめん。‥ゴムとか、全然‥‥」
「ああ。それは‥いいのよ。いいの。大丈夫だから‥」
「‥じゃあ、その‥がっかりした…んだよね?そう‥だよね、やっぱり…」

ひとり合点して、恥じ入って、すねたように・バツ悪そうに膝抱えてて‥‥
か・わ・い・い――!!
愛おしすぎて、おかしくなりそう。
ううん、わたしはもう充分、おかしくなってる。この、世にも稀ってほど純な
男に…。

「ぜ〜んぜん!」

がばっと抱きしめ、もういっぺん押し倒してしまう。

「ヤス!大好き・」

さくらんぼ色の、うすい耳たぶを齧る。






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