朝の情景
黒木泰則×ターニャ


うん・・・眩しい?
カーテンから漏れる日差しが顔を直撃し、僕はびっくりして目を覚ました。
北向き窓の、僕のアパルトマンではない場所。ターニャの・・・部屋だ。
恐る恐る、という感じに左を向いてみると、そこには乱れた髪のままの
ターニャが、丸くなってすやすやと眠り込んでいた。

本当に、本当だったんだ・・・。

まじまじと、ターニャの顔を覗き込む。時折ぴくぴくと動くまぶたが
間もなくの目覚めを予感させて、僕はまたそっと天井を見上げた。
感情の赴くままに身体を重ねてしまったばかりか、とても初めてとは
思えない初体験になってしまったのは、彼女の無言のリードに
よるものなのか?それとも僕が、もともとそういう男だったってこと?
気恥ずかしくて、ターニャの顔をまともに見られそうにない。

コンコンコン。

その時、ノックの音が響いた。
反射的に起き上がったターニャは、ふらふらとした足取りで、
あられもない格好のままドアに近づこうとしている。

「ターニャっ!」
「んー、誰か来たのよ。開けなきゃ」
「頼むからそれよりまず、これ着てっ!」

ターニャは寝ぼけたまま、僕が手渡したローブを羽織った。
さあ、今度は僕の番だ。全裸の今、どこに隠れる・・・?
シーツの中にもぐりこむという、一番簡単なことも思いつかずオロオロと
ベッドで上半身を起こしているうちに、ドアは開けられてしまった。

「ターニャ、身体の調子はどうデスか?」

この声は・・・!

「うーん、もういいわよ、だいぶ」

ターニャが目をこする。

「あの、パン半分持ってきたんデス。センパイに聞いたら、これすごく
貴重なパンだって・・・。黒木くんにも申し訳ないから」
「そう?ありがとう。ところで、中に入らない?」

ターニャっ!ななな何言ってるのっ!

「ちょうどヤスもいるし」 

(くろきん白目)

「ぎゃぼ?黒木くんが来てるんデスか・・・?」

パンの塊を抱えた恵ちゃんが、口先を尖らせて不思議そうな顔で部屋を
覗き込んだ。やっとのことでシーツを身体に巻きつけた僕は
ベッドの上で固まったまま。そして、恵ちゃんと目が合った・・・。

「くっ、黒木くんっ?」
「やあ、おはよう!」

どれだけさわやかに右手を上げて挨拶しても、僕の顔は引きつっていて、
顔色はたぶん青緑だ。よりによって・・・よりによって恵ちゃんに見られた。

「どっどっ・・・どういうことデスか?」
「どうって、そういうことよ」

ターニャはにんまりと笑うと、恵ちゃんの手からパンの塊を受け取り、

「のだめも一緒に朝ごはん食べない?」

今や顔を真っ赤にした恵ちゃんは、いえ、あの、先約が、ともぐもぐ言うと、
そのままダッシュで視界から消えた。走って行った先が千秋君であることは
疑う余地もない。

「刺激が強すぎたのかしら?自分たちだっていつもしてることじゃない」

ターニャは何事もなかったかのようにドアを閉めると、

「ヤス、コーヒーにする?それとも昨日と同じ紅茶?」

と、余裕の表情だ。

鼻歌を歌いながら、朝食の支度を始めるターニャ。僕は1人焦っている自分が
とても情けなくなった。それに、誰かが朝ごはんを作ってくれるなんて
最高じゃないか。僕は下着だけつけてベッドから出ると、
窓のカーテンを全部開け放ってみる。ああ・・・外はいい天気だ・・・。

「ヤス?」

返事を待っているターニャに、僕は正面から
目を向けて、言った。

「コーヒー、もらえるかな?それと、淹れてる間、こっちにおいでよ」

僕が再びベッドに座り、シーツに隙間を開けて待っていると、ほどなくして
ターニャが子供のように、ぼすん!とダイブしてきた。そのまま
僕たちは何も言わずにただ顔を見合わせて、キスをして、そして微笑んだ。

きっと今頃恵ちゃんの説明を聞いて、千秋君はさぞかし驚いていることだろう。
午前中はもう少しだけこの部屋でゆっくりして、あとから千秋君と恵ちゃんを
誘って、4人でランチにでも出かけようか。
僕だって、見せつけられてばかりじゃ、面白くないしね。






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