食中毒 続編
黒木泰則×ターニャ


のだめが山のような食料品を抱えてドアをノックした時、わたしは一瞬別の誰かを期待していた。
その食料品の贈り主が「別の誰か」だったことが、ますますわたしを苛立たせた。

「黒木くん、ターニャによろしく言ってましたヨ」

のだめが大きなパンの塊に目を落としながら言う。

「みんな心配してマス。黒木くんは、なるべく消化にいいものを選んだって・・・」

彼女の目は、まだパンから離れない。

「のだめ、そのパン持って帰っていいよ。どうせそんなにいっぱい食べられないし」
「ふおお、のだめ、そんなつもりじゃ。でも、そうデスカ?なら遠慮なく」

チアキが留守だと、ご飯に困るのよね、わたしたちみんな。
いそいそとパンを抱えて部屋に戻って行ったのだめの背中を見ながら、ため息が出てしまう。

・・・なんで自分で来ないのよ。お見舞いなら物なんかいらないから、自分が来ればいいのに。
ヤスのバカ・・・。取って置きの、おいしい紅茶くらい淹れてあげるのに。


恵ちゃんの部屋をノックすると、やっぱり返事はなかった。
そして、千秋君が演奏旅行中で留守だとわかっていながら、とりあえずさっきのようにドアを叩いてみると、
やっぱり恵ちゃんが出てきた。
二人が付き合っていることはじゅうぶんわかっていても、
なんとなくこちらが赤面してしまう。
それより気になるのは恵ちゃんが今、目の前でかじっているパンの塊のことで、
それは僕が「ターニャに届けてくれる?」と預けたパンによく似ていて、でも間違っていたら申しわけないから、聞かないことにする。

「黒木くん、のだめ、勝手に持ってきちゃったんじゃないデスよ?ターニャがくれたんデス!」

僕の視線に気づいた恵ちゃんは、真っ赤な顔で言い訳を始めた。

そうか・・・もしかしたらターニャは僕からの差し入れなんて、
受け取りたくないのかもしれない。

「ごめんね、また来ちゃって。電話しても通じなかったし、ターニャの様子を知りたかったし、近くを通ったんで、つい」
「ふおー、やさしいんデスね、黒木くんは。ターニャはもうだいぶよさそうでしたが、疲れてました。起きてたから、自分でお見舞いに行ったらどうデスか?」
「いやっ・・・やめとくよ。女性が寝ている部屋に行くのは失礼だし、それに、僕なんかが行ったら、彼女はもっと具合が悪くなるかもしれないしね」
「そうでショウか?ターニャ、寂しそうでしたよ。きっと寝ているのに飽きたんだと思います。黒木くん、話相手になってあげてくだサイ。のだめはこれから、
せんぱいとペアのパジャマを買いに行くので忙しいんデス!」
「ああ・・・ペア・・・そう、すごいね・・・」



うとうとしかけたところでまたノックの音がした。
わたしはだるい身体を引きずりながらドアに向かう。

どうせのだめに決まってる。
わたしのところにやってくるのは、彼女くらいだもの。

「誰?」
「・・・黒木です」
「ハア!?」

ヤス?なんでここに?わたしノーブラなんだけど・・・まあいいか。
ヤスはわたしになんか興味ないから、この姿も対象外よね。

「ごめん、起こしちゃったかな?」
「ううん・・・上がって。ちょうど退屈してたところだし」
「あの、出直してくるよ。それか、ドアの外で待ってるから・・・その・・・」
「何よ?はっきり言いなさいよ」
「ターニャ、それじゃ・・・丸見えだよ。ごめん、僕のタイミングが悪かったね」
「気にしないでよ、このくらい」
「気にするよ!しかも、そのままじゃ、目の置き所がないし・・・」

へえ、照れ屋というか、純情なんだ。
これくらいで赤面して。面白いじゃない。日本人の男って、
みんなこうなのかしら?でも、チアキはもっと場慣れしてそうだけど。

「じゃあ何か上から羽織るから、それでいいでしょ?」
「うん・・・いいの?お邪魔して?体調はもういいの?」
「大丈夫だから入って。ヒマだったの。おいしい紅茶淹れてあげるわ」

僕は心臓が飛び出しそうだった。
ドアに出てきたターニャは、Tシャツにパンツで、しかも胸もあらわなノーブラ姿だったから。
いったい、彼女に節操はあるのだろうか?僕はやっぱり外人の感覚には着いていけない。
でも、Tシャツに透けていたそのふくらみと、
尖った先端が目に焼きついて離れない。僕はどうかしている。
このまま帰ったほうがいいんじゃないか?でも、ターニャは入れと言ってくれているし。だいたい、
僕は何でここに来たんだ?様子が心配なだけなら、
電話でよかったのにな。僕は何でここに来たんだ・・・?


「・・・て、ゴメンなさいね」
「えっ?何か言った?」
「心配かけてゴメンナサイね、って言ったのよ!」

何度も言わせないでよ。心ここにあらずのヤスを見ていると、わたしに対する同情だけでここにやって来たことがよくわかるわ。
自分の伴奏中に倒れた女への哀れみ、かもしれないし。
彼の冷静さや、わたしを見る彼の目のおどおどした部分に、いかにわたしがこの人から好かれていないかがよくわかる。
趣味悪いって。何よ、わたしを馬鹿にして。
私だって暗い男はお断りなんだから。

でも、差し入れは、少しだけ、嬉しかったわよ。
だってヤスだけだもの、そんなことしてくれたのは。

「ターニャ、もう食べられるの?」

ヤスはわたしの苛立ちも知らず、紅茶をおいしそうに飲んでいる。
こうして見ると、悪くないのよね、彼も。
でも、感情表現に欠けるかな。
何を考えているのか、本当にわからないのよ。

「うん・・・差し入れ、ありがとう。嬉しかった・・・」

ヤスの顔がまた赤くなる。

何、その赤面は?
単に、哀れみの差し入れをしただけで、御礼を言われて赤くならないでよ。

「何を選んでいいかわからなくて、いろいろな人に聞いたんだ。女の人の好みとか、僕、わからないから。本当は、あのパンを一番食べてもらいたかったんだけどね」

あ、のだめにあげた・・・あのパン・・・。

「恵ちゃんが食べてたんで、びっくりした。でも、まあ、よかった。とりあえずおいしそうだったし。少し遠いんだけど、一日10本しか焼かないパンなんだって。
とてもやわらかくて香りもいいから、食欲がわくかなと思って」
「それ・・・どうしたの?並んで買ってきたの?」
「あ、いいんだ、気にしないで。また買ってくるよ。今度は僕も食べてみたいし」

ヤスのバカ。どうでもいいと思っている女に対して、そこまで優しくしないでよ。
寂しい気持ちの隙間に、頼むから入ってこないで。
わたしに勘違いさせないで。

「ターニャ?」
「紅茶のおかわりは?」
「ターニャ、ひとつ謝りたいことがあるんだ。ずっといつ言おうか考えてて、結局言えなかったんだけど」

勘違いするな、って言いたいのかしら?俺に惚れるなとか?まさかね。

「あの、恵ちゃんのリサイタルの時、待ち合わせの場所で、僕ががっかりしたような顔をした、って言ってたよね。あれ、違うから」
「何が違うのよ!がっかりしてたわよ!」
「違う、聞いて。学校でターニャが僕のこと暗いって、青緑だって、言ってたのを聞いたから・・・。
きっときみのほうが僕を見てがっかりしたに違いないと思って、
来るべきじゃなかった!と一瞬思ったんだよ」
「わたしがいたから、がっかりしたんじゃないの?」
「僕にがっかりするだろうと思って、困っちゃったんだよ」
「わたしたち、お互いに困ってたのね」

なんだ・・・原因はわたしか。肩の力がすっと抜けた。

「でも、わたしに趣味悪いって!それは言ったでしょ!」
「言ったけど・・・」ヤスは困って、下を向いて、そして呟いた。
「ごてごて化粧したり、変な柄の服を着ないほうが、その、可愛いと・・・思うから」

僕は何を口走っているんだろう?動物柄の服を着る女性は趣味じゃない。濃い化粧も大嫌いだ。
でも、今目の前にいるターニャは素顔で、幼さの残る顔がとても愛らしい。服だって、こんな感じのシンプルなTシャツのほうが、よほど似合っているのに。たぶん本当は、
とても寂しがり屋の彼女が、似合わない化粧や服で無理やり自分を作って、
寂しさを紛らわすための手段を探しているとしか思えないんだ。

「あの、ゴメン・・・僕、どうにかしてるよね」
「ヤス、ヤスには彼女はいるの?」
「いないよ!女性は・・・縁がないというか・・・好きになった人はいたけど・・・」
「だったら、今後のために教えてあげる。素顔のほうが可愛いなんて、そんなことはめったに言うもんじゃないわよ」
「・・・なんでだい?」
「相手に、誤解されるから・・・・」

ターニャはそう言って、少し悲しそうな顔をした。
僕はその顔を見た瞬間、もしかしたら、ターニャは「誤解」しているのだろうか、と焦った。
いくら鈍い僕でもわかる。「誤解」してくれるということは、
僕のことを少しは・・・。ああ、なんだかわからない。
リードだ。こういう時はリードを作るのが一番だ。無心になって、
冷静になれるから。帰ろう、帰ってリードを作らなくっちゃ・・・。

「僕、あの、そろそろ帰らなくっちゃ。紅茶、おいしかったよ」

椅子から立ち上がった僕の手を、ターニャが突然掴んだ。

「待って、帰らないで。帰るなら、わたしの誤解を解いて行ってよ。私のことが嫌いで、苦手で、悪趣味だって、
ちゃんと言って。そうしたら帰ってもいいわよ」


ヤスはもう一度座るでもなく、ただおろおろしている。わたしはその様子を見ながら、悲しいような、悔しいような、
からかってやりたいような、不思議な気分になっている。

「わたしのことが嫌いだって、ちゃんと言って」
「嫌いじゃないよ!」ヤスが焦る。
「嫌いな人に大事なオーディションの伴奏なんてしてもらわないよ」
「じゃあ、なんでここに来たの?なんで差し入れをしてくれたの?哀れみ?責任感?」
「違う・・・気になったし、心配だったから」
「ヤスはやさしいもんね。相手が誰でも、やっぱりパン屋に並ぶわけ?」
「ターニャ!」

ヤスが突然わたしの手首をぐっと握った。
まるであのリサイタルの夜、わたしを夕食に誘った、少し強引な力強さで。

「何言ってるの?おかしいよ、何だか」
「おかしくないわよ!おかしいのはヤスのほうでしょ!その気がないなら優しくしないで!その気がないのに、わたしの気持ちをかき乱さないで!」
「僕は・・・」
「いつもわたしだけが勝手に舞い上がっちゃう。もうこれ以上傷つきたくないのよ!」

僕は、何かしてしまったらしい。
でも、何がどうなってターニャを傷つけたのか、さっぱりわからない。
わかっているのは目の前のターニャが泣いているのと、
その泣き顔が子供のように幼くて、どうしようもなく弱く見えて、どうにかしなくては、ということだけだ。
僕は焦ったけれど、一方ですごく冷静だった。だから自分が何をしているのか、かなり冷静に把握していた。
ターニャの手首を掴んでいた自分の手が、ターニャの頭を引き寄せて、
そのまま胸に抱きしめたのも、別に驚かなかった。
そうしなければ、彼女は今にも壊れてしまいそうだったから。

「ヤスのバカ・・・」

僕の胸の中でしゃくりあげているターニャは、いつも思っているよりずっと小柄で頼りない。
僕は生まれて初めて女性を抱きしめている。そして、さらにきつく抱きしめている。
いつか恋するなら、と思い描いたシーンとはずいぶん違う。こんなふうに恋心が芽生えることも、
初めて知った。そう、たぶん僕は今ターニャをいとしく思っている。

「ターニャ・・・ごめん・・・僕は・・・」

涙に濡れた瞳のままで、ターニャが僕を見上げた。
その目を見た瞬間、僕はまるで魔法にかかったように、ターニャの唇に触れてしまった。
そのあとは歯止めがきかなかった。
ただ固く抱きしめて、そのまま生まれて初めてのキスを、何度も何度も繰り返した。
そして口付ければ口付けるほどに、
ターニャがいとしくて、可愛くて、仕方がなくなった。
僕はいったいどうなっているんだろう?
異国で女性の色香に惑わされているのか?
このままここにいていいのか?
そろそろ帰らないと、今日の分のリードが作れない・・・でも、
離れられない。僕はターニャから離れられない・・・。


ヤスがキスしてきたとき、わたしはとてもしあわせだった。
そのキスはとてもぎこちなくて、ごつごつしていて、ロマンチックとは程遠いシロモノだったけれど、
ヤスの必死さと、ヤスの誠実さが伝わってきたから。今までわたしに、
こんなに真摯なキスをしてくれた人はいなかった。
わたしはたぶん、こんなキスがしたかったんだと思う。

「ごめん、初めてなんだ・・・」

照れたように告白する彼が、とても欲しくなる。
どんなふうにこの朴訥な人は、女性と愛を交わすのかしら・・・?

「ヤス、お願い」

わたしはヤスの胸に顔をうずめたまま、精一杯の勇気を振り絞って言った。
きっと貞操観念の強いヤスには、これで引かれてしまうかもしれない。
でも、わたしはこんな感情表現しかできないのよ。

「明日まで、ここに一緒にいてくれる?」

ヤスはびっくりしたような、戸惑ったような顔をして、そして・・・言った。

「一度帰ってリード作ってくる。でもまた夜来るから。何かおいしいものを買ってくるよ」
「ハア!?リードお?」

キスしただけなのに、わたしたちの間にはもう壁がない。
ヤスに漂っていたぎこちなさが消えて、わたしを見る目に熱さがこもっている。
たぶんわたしも、この期に及んでリードのことを忘れない彼を憎らしいと思いつつ、
やっぱり同じような目で彼を見ているに違いない。

「わたし何か作るから。こう見えても料理はうまいのよ。だから、早く戻ってきてね」

なんだか素直にそう言えて、わたしは自分に驚いた。
ヤスはバックパックを肩にかけると、それじゃ、僕はワインでも買ってくるから、と言って、ドアに向かって歩き始めた。
そしてくるりと振り向いたから、
わたしはキスを待ち受けた。でもヤスが言ったのは、

「あ、でも、料理なんかして大丈夫?ワインも、まだ無理かな?」

ヤス・・・心配は嬉しいけれど、野暮なこと言わないで。

「もう大丈夫なの、本当に。それに、ワインは腐ってないでしょうしね」

ハハハハ、とヤスが笑った。
こんなに朗らかに笑う彼を、わたしは初めて見た気がした。
とても魅力的な笑顔。わたしはヤスにどんどん惹かれていく。

「じゃあね、いくら大丈夫でも少し寝ていたほうがいいよ」

ヤスが部屋を出て行こうとしている。わたしは肩透かしを食った気分になる。

「忘れ物よ」
「え?僕何か置いてきたっけ?」
「ううん。こういう時は、ね?」

わたしが目を閉じてあごを上げると、おずおずとヤスのキスがかぶさってきた。
でも、最初のぎこちなさはなく、とても甘く熱い、
柔らかなキスだった。もしかしてこの人、すごく才能あるのかしら?それとも、
実は百戦錬磨、なわけないわよね。
唇を離して、振り返りながら階段を下りていくヤスを見送った時、わたしはたぶんパリに来て一番安らいだ気持ちになっていた。

キスしてしまった!
女性とキスしてしまった!
ターニャと!いったいこれからどうなるんだ!
今日夕飯を一緒に食べて、明日まで一緒にいるということは、いるということは、朝まで一緒ということは、つまり、その、ご休憩ではなくて、宿泊?宿泊、いや、泊まる、
つまり・・・。

僕はいつもの倍くらいの早足で家路を急いでいる。
競歩選手のように、ものすごいスピードで家に向かっている。
キス。キスした。よりによって、あのターニャと。
よりによって?いや、僕は彼女が・・・好きなのだろうか?恵ちゃんへの気持ちとは、また違う。
だから、これを恋と呼んでいいかどうか、経験不足の僕にはさっぱりわからない。
こういうとき千秋君がいたら、たぶんわけもわからず相談していたかもしれない。
やわらかい唇だった。いいにおいがした。
溶けそうになった。僕は・・・とにかくワインだ。
ワインを買わなくちゃ。でも、あの、リードもきちんと作らないと。
雑念に惑わされず。ああ、でも、どうやらそれも難しそうだ。


ヤスがはにかんだ笑顔で運び込んできたのは、いろいろなワインが何本も入った重そうな紙包みだった。
どんなワインが好きかわからなかったから、たくさん買ってきてくれたのだという。
この人は無愛想だし、とても口下手だけど、思いやりにあふれている。
わたしはそれをカウンタートップの上に並べる。ヤスが椅子に座って、
わたしのことを見つめている。曇りのない、まっすぐなその視線を、
わたしは幸せな気持ちで、背中で受け止める。誰かのために料理を作り、
誰かの帰りを待つ。その行為自体は久しぶりだったけれど、
ヤスに対しての気持ちは、なんとなくこれまでの恋愛とは違う。

「ねえ、お皿出すのを手伝ってくれる?」

振り向くと、ヤスはまだあの目で、わたしを見つめていた。

「うん・・・どれがいいかな?」

キッチンに並んで立ったわたしたちの手が、カップボードの扉のあたりでぶつかった。
ヤスがわたしの手をぎゅっと握る。
そして、わたしたちはそのままキスをする。長いキス。とてもとても、いとおしいキス。
鍋の火を止めなくちゃいけないのに、わたしはキスするのに忙しくて、動けない。

僕は自分に驚いてしまった。でも、
すごく、自然な感情だった。ただ、
ターニャにキスしたかったから、
彼女の手を握ってしまった。
微笑んだ彼女に化粧っ気はなく、
髪からはいい匂いが漂っていて、
鍋からこぼれてくるおいしそうな匂いとあいまって、僕をぼんやり幸せな気持ちにさせた。
そのままキスをした。夢中だった。僕はもしかしたら、とても大胆なやつなのかもしれないな。
でも、このキスが心地よすぎて、何度交わしても足りなくて困ってしまう。
憎たらしくて、口が悪くて、「悪趣味」な服の
ターニャはいったいどこに行ってしまったんだろう?
今ここにいて、僕がくちづけているのは、幼い顔をして、
寂しさにさいなまされながら異国でピアノを弾く、いたいけな女の子だ。

「ヤス、ねえ、火を消さなきゃ」

ターニャはつけっぱなしのコンロの火を気にしている。
僕が手を伸ばして火を止めようとすると、ターニャがイタズラっぽく微笑んだ。

「もう一箇所、消さなくちゃいけない火があるのよ?」

ああ、経験不足の僕でも、彼女の言っていることくらいわかる。
これがロシア人なのか?それとも世間一般の女性なのか?
もしかして恵ちゃんと千秋君も、普段はこんな感じで・・・。

「ど、どうしようか、でも、料理が・・・」

僕の返答は、ものすごくマヌケな音に響いていることだろう。
ターニャはそんな僕の言葉が聞こえないような顔をして、キスしたままじわじわとベッドに近寄っていく。
僕は自分の心臓の音が聞こえるほどに緊張している。

「ターニャ、ちょ、ちょっと・・・」

僕はくちびるを離すと、まじめな顔で言った。

「僕は、汗臭いし、それに・・・」
「いいのよ。ヤス、お願いだからたまには冷静じゃないところも見せて。わたしのことが欲しい?」
「あ・・・う・・・うん」
「じゃあ、黙って。あとはわたしにまかせて」

僕は人形のように、ターニャのベッドに横たわる。これでは男女が逆だ。
僕の思い描いてきた「初めて」とはまったく違う。
でも、きっと事実は小説より、なんだろう。僕は黙って目をつぶり、でも、
やっぱりすべてを見ておきたくて、目を開けた。
ターニャが僕のボタンダウンのシャツを、ゆっくりと脱がしている。
その下に着ている白のTシャツを脱がすのか、と思ったら、その上から僕の胸元にキスをしてきた。
僕はすでにいっぱいいっぱいになってしまっている下半身が、
恥ずかしくて仕方ない。ターニャは僕の乳首をTシャツの上からなぞる。

「あ・・・う・・・」

声が出てしまう。そんなところが感じるなんて、いったいどうやって知っておけと言うんだ?
僕は上に重なっているターニャの腰を抱きしめて、
どうしようもなくなっている下半身を思わず押し付けてしまった。

Tシャツの上から胸にキスした時、ヤスのかすれた声を聞いて、わたしはこれまでになく興奮してしまった。
このひとにとって、わたしは初めての女なのだ。忘れられない夜にしてあげたい。
ヤスがわたしを好きになってくれるように、
わたしのすべてをぶつけてみたくなる。
彼の下半身が、わたしに痛いほど当たっている。
わたしはそこにそっと手を伸ばす。
夜は長いから、まだ脱がさないで、薄手のチノパンの生地の上から、形を確認するかのように撫でる。
ヤスが少し顔をのけぞらせる。わたしは気にせず続ける。
先端の部分を指先で軽くこする。ヤスが声にならない声を出す。

「ヤス・・・声・・・出してちょうだい・・・」
「僕は・・・だって・・・恥ずかしいから・・・」
「聞きたいのよ。ヤスの声」
「あっ・・・ターニャ・・・あっ・・・それ、ダメだ・・・そこは・・・」
「気持ちいいの?」
「あ・・・うん・・・いい・・・」

わたしは先端をさらにこすると、チノパンの上から彼自身を握る。
輪郭に沿って柔らかに、そして、くびれの部分、すべての形をなぞるように、強弱を付けて握り締める。
そしてチノパンを脱がし、
トランクスの上からさらに握り締め、
ゆっくりとこする。先端からにじみ出た液が、
ヤスのトランクスをじっとりと濡らしている。ヤスの両手はわたしの背中で、行き場がないように惑いながら、
ゆっくりゆっくり動いている。
わたしはその手を引き寄せて、自分の胸元に近づけた。
ヤスの大きな手が、わたしの乳房を掴み、ぎこちなく動き始めた。
わたしにはそのぎこちなさが心地よくて、思わず声が出てしまう。

「はあ・・・ヤス、もっと・・・触って・・・・」
「う、うん・・・それよりターニャ、お願い・・・少し・・・止めて、手を」
「なぜ?イヤなの?」
「違う・・・気持ちよすぎてダメだ・・・僕は・・・出てしまう・・・」
「いいのよ、ヤス」
「ダメだよ・・・これでは・・・僕だけが・・・」
「ヤス、もっと気持ちよくしてあげる・・・」

わたしがヤスのトランクスを脱がせると、窮屈そうにしていた彼自身が、意外なほどの大きさで目の前に現れた。
とても固くて、反り返っていて、そして、濡れている。わたしはそれを、
そっと口に含む。ヤスの喘ぎが上のほうから聞こえてくる。
わたしはそれを嬉しく思いながら、口に含んだまま、
左手を使ってもっと下の柔らかい部分をそっとなで上げる。
そして同時に右手をTシャツの下にもぐりこませて、ヤスの乳首を優しくつねる。

「あっ、あっ、そんな・・・あっ、ダメだよ、ターニャ、そんなことしたら・・・ああっ」

そこには、冷静なヤスはもういない。
快感に喘いで、腰を浮かしているわたしのいとしい男が横たわっている。

「ターニャ、僕、出てしまう・・・頼む・・・ああっあっあっ・・・ダメだよもう」

わたしはその言葉に耳を貸さず、ヤスを愛撫し続ける。

「あっ、ごめ・・・ごめん・・・ダメだ・・・もう・・・出るっ・・・」

口の中でヤスの下半身が跳ねるような感触。
びくん、びくんと波打つ塊。ヤスからこぼれ出た液体を、わたしはそのまま受け止めた。
そして、それをすべてて吸い上げると、
舌で先端をこじ開けるように、残りの液体をすべて吸い取った。
固く目を閉じて横たわっているヤスが、わたしの中で誰よりもいとしい存在になった瞬間だった。

ねえ、朝まではまだ時間もたっぷりあるわよ。

僕は・・・黙って天井を見上げている。下半身がしびれたように感覚を
失い、ただ呆然とベッドに横になっているだけだ。僕の右脇の中にすっぽり
収まるように、ターニャが横に寝そべっている。こういう時は、何か声を
かけるべきなんだろうか?「ありがとう」とか?いや、
それじゃ、またターニャに誤解されちゃうよ。

僕は目をつぶる。さっきの、あの爆発的な快感が蘇って、早くも下半身が
再びうずき始めているのがわかる。ターニャに悟られないように脚を組もうと
したけれど、すでにその部分は、ターニャの右手に押さえられている。
ターニャの顔を、恥ずかしくてマトモに見られない。

「ヤス」
「え?」
「大丈夫?なんかさっきから動かないし」
「うん、大丈夫。ちょっと・・・感動して」
「本当に?うれしい・・・ねえ、ここも喜んでくれたのかしら」
「え、あ、もちろんだよ。それよりゴメンね、僕が何もしてあげられなくて」
「いいのよ。ヤスがとっても可愛かったから」

顔中に血液が集まってしまったように、今自分の顔が真っ赤になっているのが
よくわかる。年下の女の子に「可愛い」と言われるなんて。しかも、その子は
今まさに、僕のモノをもてあそび始めている。僕はこのまま快感に身を任せて
いるべきなのか、「もうやめよう」と慎みを見せるべきなのか、それとも
自分が主導権を握るべきなのか、とても迷っているんだ。
でも、主導権て、どうやって?
ああ、わからない。第一、突然こんなことになるなんて想像も
していなかったから。僕がこれまで描いてきた女性との初めてプランから、
大きすぎるくらい外れているから、まったくどうしていいかわからない。
千秋君だったら、きっと気の利いた言葉や、行動に出られるんだろうな。
僕はオーボエなしには、ただの不器用な男だから、ターニャが今何を
隣で考えているのか、想像すると怖くて申し訳なくなる。しかも、さっきから
触られているおかげで、そこに意識が集中してしまい、
はっきり考えることすらできなくなってしまった。

「ターニャ」

僕は勇気を出して聞いてみることにした。

「僕にできることはない?何か・・・君のために」
「そんなこと初めて聞かれたわ!」

ターニャは楽しそうに笑い出した。でも
僕のモノを触り続けることだけはやめない。そして、すでに大きくなって
しまっているそれを、さっきよりリズミカルに撫でさすり始めた。

「ちょっと・・・ターニャ、待って・・・」
「いいのよ、ヤス。私に任せて」
「ダメだよ!」

僕は半身を起こして、初めてターニャの顔を見た。化粧をしない
ターニャは愛らしくて、とても幼く見えた。その彼女の指先が、僕の下半身に
絡み付いていて・・・この状況を目の当たりにするだけで、もうおかしくなってくる。

「僕も男だから。だから、僕にもチャンスをくれるかな?」
「チャンスって?」
「男の沽券を回復するチャンス」

ターニャはくすりと笑うと、僕から手を離し、目を閉じて横になった。
薄暗い部屋の灯に浮かび上がるターニャの姿は、息を呑むくらい綺麗だ。
僕は昔親に隠れて読んだ、うろ覚えの「HOW TO」をかなぐり捨てて、
ただ僕が今ターニャにしたいことを、したいように、することにした。

目を閉じて横たわると、ヤスがおずおず、という感じでわたしの髪に
触れてきた。まるで子供の頭を撫でるように、ただ黙って髪を触り続けて
いる。じれったいほどの時間が過ぎて、やがてヤスがわたしの上に覆いかぶさってきた。

「ターニャ・・・」

ヤスの声がかすれていて、それがわたしをゾクゾクさせた。
決してたくましくはないけれど、力強い両腕がわたしを抱きしめ、そしてまたしばらく
動かない。もどかしい行程を、ヤスは今何を考えながらたどっているのかしら?

「ヤス」

わたしはヤスに火をつけたい。このひとのパッションを感じてみたい。

「キスして」

それが引き金になった。ヤスが、たぶん今日これまでに交わしたどのキスよりも
熱いキスを、わたしに何度も降らせた。そして、じれったいけれど着実に、ヤスの右手は
わたしの乳房を揉みしだき、赤ん坊のようにわたしの乳首を口に含んで吸い上げた。
慣れない仕草だからこその必死さが伝わってきて、わたしはいつもよりずっと感じてしまう。
ヤスの頭をぎゅっと抱きしめて胸に押し付けると、ヤスは、ああ、とため息を漏らして、
両手で左右の乳房をむちゃくちゃに掴んだ。痛い、それがたまらなく気持ちいい。

時折わたしの脚に当たるヤスのそこは、もうじゅうぶんすぎるほど固くなっている。ヤスは
それを持て余しているかのように、遠慮がちにわたしの脚にこすりつけてくる。
じらされている、そんな感覚で、わたしの腰がつい動いてしまう。わたしの脚の間から、
熱い液体がとろりとあふれ出て、シーツにまたシミを作っている。
はやく、はやく。入ってきて欲しいのに、ヤスはわたしの胸元で動きを止めたままだ。
どうしていいかわからない、そんなヤス自身の高まりは、固く熱くたぎったままで、
わたしのそのあたりをただうろついているだけ。

はやく・・・。お願い・・・。いつものわたしなら、簡単に口に出せるこの言葉も、
なぜかヤスには遠慮してしまう。彼の真摯さや、彼の純粋さを目の前にして、
わたしはただ、バージンのように振舞いたくてしかたない。
でも、気持ちいいのよ、もう既に。じんじんとあそこがうずいて止められなくて、
わたしはヤスが貫いてくれる瞬間を、ただ黙って待ち焦がれている。

大きな二つの乳房に顔をはさんだまま、僕はもう興奮のさなかにいて、いったいこれから
どうしたらいいのか考えあぐねていた。やはり下も触るべきなのか?でも、どんなふうに?
ただ撫でたりするだけでいいのかな?よくわからない。
さっきからターニャの腰が、微妙な動きで僕に押し付けられるから、
僕の下半身は「なんとかしてくれ」と悲鳴を上げている。
僕の、明らかに汗ではないぬめりが、ターニャについ押し付けてしまう下半身を
ぬるぬると刺激して、僕は爆発を必死でこらえる。
気を紛らわすために・・・僕はそっと右手を下のほうに伸ばしてみた。

女性の身体に触れたのもこれが初めてなのに、何もかもが超スピードで進んでしまい、
僕はついて行けないよ・・・でもその一方で、僕の中の「男」が、
ただ単純にそこを触ってみたいと思っている。手を伸ばし、指でそっと触れてみると、
一瞬手を引っ込めたくなるほどの濡れようだった。これが「濡れる」というものなのか。
ターニャが感じてくれているのが嬉しくて、同時に突然切なくなった。

僕と彼女は恋人同士でもなんでもないのに、こんな関係になっちゃっていいのかな?
もしかして彼女は誰とでもこんなことをするんだろうか?

初めては好きな人と、と思っていたのに、僕は自分がターニャを好きなのか、それとも
肉体の誘惑によって、好きだと思い込んでいるのか、よくわからない。だから、そんな
中途半端なまま、このまま抱いてしまっていいのかな?

深く考え込んでしまう自分の性格がやっかいだ。
ターニャは、ただこの瞬間僕を求めてくれているのに。
動きを止めて考え込んでしまった僕に、ターニャが気がついてしまった。

「ヤス、大丈夫?」

その声はなんだか不安そうで、傷ついたようなトーンだった。

「なんでもないよ、どうしていいかわからなくて、困ってるだけ。初心者だからね」

僕はわざと明るい声を出して、ターニャに軽くキスをすると、今度は思い切り大胆に
指をターニャの中に差し入れた。暖かく、ぬるぬるとした柔らかなその部分で、
僕はとにかく優しく、でも、精一杯の気持ちを込めて、指をリズミカルに動かしてみた。

「ああっ・・・」

ターニャの両腕が僕に巻きついてくる。

「大丈夫?痛い?」
「痛くないわ。とても、ステキ。ヤス、もっと続けて」
「うん」

僕はさらに奥へと指を差し入れると、ターニャの腰の動きにあわせながら指を出し入れして、
ターニャの声がより大きくなる瞬間を観察した。そして、どうすればターニャが気持ちいいのか、
何となく感じ取りながら、ただただ必死だった。

「ヤス・・・いいわ・・・」

僕が指を動かすたびに、ターニャの口から吐息が漏れて、そして
下からはびちゃびちゃと淫靡な音が聞こえてくる。
その音が僕を刺激して、もう、ガマンできそうにない。

「ターニャ、僕もうガマンできないんだけど・・・いいの?」
「わたしもよ。来て、ヤス」

僕はその瞬間になって初めて、避妊のことが頭に浮かんだ。これだけはちゃんとしなければ、お互い
大変なことになってしまう。でも、練習すらしたことがないし、第一避妊具を持っていない。

「あの、ターニャ、言いにくいんだけど・・・その、僕、持ってなくて」
「ああ」

ターニャがうっすらと微笑んだ。

「大丈夫よ、心配しないで」

どういう意味なんだろう。普段から準備万端なのかな?それとも安全日というものなのだろうか?
そんなことをあれこれ考えているうちに、ターニャが僕の目を下からじっと見て、言った。

「好きよ、ヤス」

優しい言葉の後には、必ず照れ隠しに目をそらしてしまう天邪鬼なターニャが、今はじっと僕を
見つめている。生まれて初めて女性から告白されたのが、ベッドの中というのはどうかと思うが、
それはさておき僕は胸がいっぱいになってしまった。

「僕もターニャが好きだ」

驚くほど自然にその言葉が出て、そしてその瞬間、僕は罪悪感のようなものから解放されて
ほっと力が抜けた。

僕はターニャの瞳を見つめて、そして初めて、好きだよ、と心の中でつぶやきながらキスをした。
そしてそのまま、押し付けていた下半身の塊を、ターニャの脚の間に滑り込ませると、先の部分を
当てがって、さらに強く押し当て続けた。
ターニャの腰が動いて、僕を受け入れる手伝いをしてくれる。僕はそれに迎えられながら、

でも、少しでもこの感触を長く味わいたくて、少しずつ中へと進んでいく。
僕の塊に巻きつくような肉の感触があり、ぬるりとした暖かさが僕を刺激して、
早く奥まで突き刺してしまいたくて仕方ない。僕が、もう僕自身ではないかのように、
冷静な思考はすっかり頭から掻き消えてしまった。

ああ・・・入っていく・・・

じわり、じわりと沈ませていった僕の塊がすべてターニャの中に納まった瞬間、僕は生まれて
初めて味わう、なんともいえない安堵感に包まれた。あとはもう、本能のままに。
お互いに気持ちよくなればそれでいいんだろう。僕は腰を引き、そして戻した。
ぐりっ、ぐちゅっ、その動きが、ターニャに締め付けられているモノを刺激して、
ああ、もう出してしまいそうだ。
でも、ぐっと深く突き入れると、ターニャが甘い声を上げるから、僕はその声が聞きたくて何度も
腰を深く沈めて、ターニャを深く突き刺す。ずぶっ、ぐしゅっ、ずぶっ、ぐしゅ・・・その卑猥な
音に混じって、ターニャの、今まで聞いたこともないような甘い切ない声が響く。
ああっ、あっ、あーん、あああっ・・・ぐしゅっ、ずぶっ、ぐしゅっ、ずぶっ・・・。
そんな声、ダメだよ、ターニャ。その声だけでも僕は。その声は反則だよ。
でも、でも、僕の胸の下で切ない顔をして声を出すターニャがたまらない。
なんて綺麗で、そしていやらしいんだ。

「ヤス、ああっ、もっと・・・いい・・・」
「いい・・気持ちいいの?」
「気持ちい・・い・・・ああ、そんなこと聞いちゃいやよ」
「気持ちいいんだろう?」
「いい。いいの。でも、聞かないで、そんなふうに」
「ターニャ、気持ちいいって言って」
「いや・・・ダメよ・・・」
「気持ちいいって、言ってくれ」
「いい・・・すごく・・・」

僕が言葉をかけると、ターニャは自分の発した言葉に興奮し、そしてますます
快感に身体をよじらせる。僕は僕で、その反応と、そんなに卑猥なことを口走っている
僕自身に興奮して、腰の動きがますます早くなってしまう。

ぐしゅ、ぐちゅっ、ずぷっ、つぷっ・・・

「ああ、ああ、ヤス、すごいわ」
「僕ももうたまらない・・・・ターニャ、すごいよ」
「ヤス、ヤス、いいの、すごいの・・・お願い、もっと、もっと来て」
「うん。僕ももっと、ターニャをむちゃくちゃにしてしまいたい・・・」

腰と腰をぶつけ合うように、僕はターニャを貫き続ける。ターニャが悲鳴にも似た、でも
甘美な叫びをあげる。そして僕は、自分の意外な一面を見て、驚きながらそれを楽しんでいる。
僕が、こんなふうに女性を抱くなんて。こんな言葉を発するなんて。

「ターニャ、どうされたい?」
「いじわる!もっと、もっと強く、壊れちゃうぐらいに突いて」
「じゃあ、もう一度そう言って」
「ひどい・・・ヤス・・・あ、やめちゃいやよ。お願い」
「言ってよ」
「ああっ、お願い・・・突いて・・・突いて・・・!」

ガマンしてきた声が思わず漏れそうになるほど、ターニャの言葉は刺激的だった。僕は
腰をぶつけるように、乱暴に、ターニャを犯すようにベッドに押し付けて、僕のモノを
激しく出し入れした。一番深いところに到達するたび、ターニャの悲鳴が響く。
僕はターニャに覆いかぶさっていた上半身を今や起こして、座るような格好で
ターニャを貫いている。出し入れされる僕のモノと、それを受け入れているターニャの・・・
あまりにもいやらしい、刺激の強すぎるその結合部分が目の前にある。
僕のモノをくわえこんでいるターニャの、やや上の部分がぷっくりと膨らんで
赤く色づいている。僕は腰の動きを止めないままで、そこをそっと、指でつまんだ。

「あひっ・・・あーっ!ヤス!ダメよ!」
「ダメなの?ダメならしないよ」
「ううん・・・あっ、ダメじゃないけど・・・気持ちよすぎて・・・おかしくなる」
「やめるの?」
「・・・やめないで・・・」
「じゃあ、おかしくなってよ」

目をうるませて懇願するターニャの色香に、僕はますますターニャを攻略したい気持ちに
襲われてしまった。男の沽券の回復とか、もうそういう場合ではない。これが本来の
僕自身なんだろう。
ターニャの脚を、もっと大きく開く。思い切り開いて、結合を深くする。そして、充血した
ちいさなふくらみを、指の腹でこする。ターニャは悲鳴を上げているけれど、決してやめてとは
言わない。それどころか、僕をくわえている裂け目から、ますますどろどろの汁を垂らして、
僕の動きに合わせるように腰を打ち付けてくる。

「ターニャ、すごいよ、全部丸見えだよ」
「あっ、いやよ・・・そんなこと言わないで」
「いやらしいよ・・・すごい音だね」
「ヤス!ああっ、いやよ、そんなこと言ったら、わたし・・・」

僕は、ターニャを引き起こし、つながったまま僕のひざに座らせた。そして、
ターニャ自身の重みによって、ますます深く達している僕のモノを、今度は垂直に突き上げ始めた。
ターニャの大きな乳房が、僕の目の前で上下する。なんという淫らな光景だろう。
僕はその乳房を片方掴むと、乳首に軽く歯を立てた。

「ひっ」
「痛い?」
「あっ、痛く・・・ない」
「もっとして欲しいの?」
「知らない・・・」
「じゃあやめよう」
「だめよ!ヤス、お願い意地悪しないで・・・」
「してほしいんだろう?なら、そう言ったら?」
「ひどい・・・」
「じゃあやめるよ」
「あなた本当に、わたしが初めてなの?」

ターニャは切ない吐息を漏らしながら、僕の目をじっと見つめた。

「間違いなく初めてだよ」

僕はそう答えると、ターニャの乳首をまた軽く噛んだ。

「君が、僕をこんなふうにしたんだ・・・」

僕はターニャをひざに乗せたまま、激しく乱暴にターニャを上下させた。
そして、ターニャはこうされるのが好きなはずだと、確信していた。
僕はもうガマンも限界で、ターニャの中にすべてを放出してしまいたくて、
でも、こんなに気持ちのいいことを終わらせてしまうのがもったいなくて、
だから、ターニャを一旦ひざから降ろした。ターニャの中から抜き取った僕の下半身は
これまで見たこともないような大きさになっていて、芯から固かった。

「ターニャ、後ろ向いて」

ターニャは素直に僕に背中を向けて、そして僕の指示を待っている。

「僕に向かってお尻を上げてよ・・・後ろから気持ちよくしてあげるよ」

ターニャの真っ白な身体が、目の前で柔らかに形を変える。僕はその挑発的なポーズに、
獣のようにターニャに飛びつきたいのをこらえて、そのかわり指でターニャのそこを弄んだ。
もう指では物足りないことくらいわかってる。僕だって、もう限界だ。でも、最後はターニャの
口に懇願させたい。僕を求めて、いやらしく腰を振る姿を見てみたい。

「ヤス・・・」

案の定、ターニャはお尻をもじもじさせ始めた。

「ねえ・・・ダメよもう・・・き・・・たいの・・・」
「何?聞こえないよ」
「ああ・・・イキたいのよ」
「じゃあどうしてほしいか言ってごらんよ」
「ヤス、意地悪しないで!お願いよ!お願いだから」
「ちゃんと言わないと、何もしてあげないよ」
「ひどい人・・・お願い・・・イカせて・・・もう・・・入れて、ねえ」
「何を?」
「あ・・・ヤスの・・・それを・・・」
「それって、何?はっきり言ったら?」
「・・・ペニス・・・を入れ・・て・・・」

ターニャの言葉が終わらないうちに、もう僕の塊はターニャを後ろから捕らえていた。
獣のようにつながっている僕たちは、たぶんもう止まらない。僕はターニャの腰を両手で
掴んで、高ぶりきった下半身を打ちつけ続ける。出たり入ったりする僕のモノが、
ターニャのお尻の割れ目ごしに見えて卑猥だ。
僕はそのまま両手を伸ばし、ターニャの乳房を掴んで、強く揉んだ。そしてターニャの叫び声を
聞きながら、乳首をつぶすようにつまみ、それがもう、限界だった。

「ターニャ、僕、もう」
「わたしもよ、ヤス、来て、来て・・・」
「あっ、イっちゃうよ・・・イク・・・出る・・・」
「わたしも、ああっ、イク、イク、ああっ、もうダメっ・・・」

僕は目を閉じて、ターニャの腰を強く引き寄せながら、ありったけの精液をターニャの中に
放出した。びくん、びくん、と、ターニャの背中がそれに合わせるように揺れた。

(男になったのか、僕は)ふと、そんなふうに思った。
しかも、自分では想像もしたことがないような、別の男になってしまった。
ターニャを引き寄せてキスをして、僕は時計をちらっと見た。午前3時半。

「ターニャどうする?少し眠る?それとも・・・?」

ターニャは僕の顔を見て、恥ずかしそうに言った。

「わたし、明日は何の予定もないのよ」






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