白い肌の色
黒木泰則×ターニャ


あ、溶ける……。

ベッドがしなって、ギ……と微かな音を立てた。
色の薄い素直な髪が汗でうねって、白い肌に貼りつく。
張りのある乳房の、青く浮いている血管を指でなぞった。

「なに、してるの?」
「……血管。痛くないものなの?」
「ヤスのここは痛いの?」

ターニャが腕を上げて僕の手の甲を撫でる。

「痛くないよ」
「バカね、こんな時までクソ真面目なんだから……」

だって不思議じゃないか、こんなに痛々しいのに。
身体をゆすりつつ綺麗な卵形の顔を見ていると、ターニャの顔にみるみる血が上る。
白い額、薄い色の金髪、薄青い瞳、上気した頬は綺麗な薔薇色で、ふと恵ちゃんの言っていた
「ピンクのモツアルト」が頭に浮かんだ。
モーツァルトも見ていた肌の色……。
白い肌の色、血管も青く透くような。

「ヤス、ヤス……。ちゃんと見て」

ターニャが白い両腕を伸ばして僕の頬を挟んだ。

「……見てるよ」

不思議な色のビー玉でも見るようにターニャの瞳を見ている。

「ヤス……」
「黙って」

黙ってもう少し見せてよ、君の肌が上気していくところ。

ターニャが大きく喘いで、うわ言のように僕の名前を呼ぶ。

「ヤス、ヤス!」

僕が腰を打ち付ける度に君の中が熱くなる。

「あぁ! ヤス、来て!」

まだだよターニャ。

「ヤス、お願い。もう来て?」

ターニャが哀願するように下から僕の顔を覗き込む。

「まだ……」

僕に組み敷かれて白とピンクと金色に乱れるターニャは、まるで君が弾くピアノみたいだ。

突然、ターニャが僕の首に腕をかけて引き寄せると、ぐっと両足を僕の腰に絡みつけた。

「!」

一瞬動きを止めた僕にお構いなしに、ターニャが腰を突き上げてくる。

「ちょ、待ってよ、ターニャ」

思いがけない動作に僕の頭が乱れて、呼応するように身体が動く。

「……ぁ、あぁっ!」

小さく声を上げて、何か早口でターニャが呟いた。
次の瞬間、ガクガクとターニャの中から内股に震えが走った。
膝が緩んで僕の腰から滑り落ちる。

少し身体を起こして、波打つように喘ぐターニャの胸元を見つめる。
綺麗なピンク色。
僕の先端を包み込む、君の中の襞がうごめいている……。

「ヤス、まだ……」

胸元の紅がいくらか褪せた頃、ターニャが息を整えつつ呟く。

「うん」

そう、まだ。
もっと見ていたいから、モーツァルトも見たピンク色を。

ターニャが力尽きたように、くたりとベッドに四肢を投げ出す。
それを見てまたターニャの身体を揺らす。
静かに目を閉じた君の額が歪んでたちまち血が上る。
本当に、綺麗な、肌の色だ。

ターニャの肌に見とれているうちに僕の中の熱が高まって高まって、
それをぶつけるように僕は君の身体を揺すりたてる。
ターニャが呟く言葉が、やがて聞き取れないロシア語に変わった。
それでも、ところどころに僕の名前が混じるのを、愛しさと哀れみが綯い交ぜになったような
変な気分で聞いている。
僕の身体は、必死で絶頂に向って腰を振っているのに……。

やがて、近付いた焼け付くような快感を手繰り寄せて、一気にはじいた。

初めて放った時は、焼き切れるように熱いことに驚いたっけ。
僕は、未だにターニャを好きかどうかも分からなくて。
それなのに身体だけを重ねるのは、今までの僕には思いもよらない(菊地くんならともかく)。

もしかしたら僕は、ただターニャの肌の色を見たいだけなのかな。
薄い肌が僕の腕の中で乱れて色付くのはとても綺麗で。
湿ってかすれた声で「ヤス、ヤス……」って喘ぐターニャーはとても可憐だから。

……はぁ。


白肌に 惑い乱れる パリの僕 (青緑百句)






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