前夜
峰龍太郎×三木清良


「…楽しかったな、千秋くんのオケ。また一緒にできるかしら……」

清良はワイングラスを傾けると、テーブルについた腕を突っかえ棒にして
うっとりと目を瞑った。
栗色の髪がさらさらと流れ、彼女の頬に美しい陰影を生む。

「そりゃできるだろ。戻るたびにコンサート組むからさ、客演でもいいから乗れよ」

龍太郎は微笑むと、そっとその髪の一房をかきあげてやり、指の隙間からこぼれさせた。

「向こう行ってもがんばれよな」
「言われなくたって」

龍太郎の言葉に、清良は得意気に微笑んだ。

「がんばるつもりよ。もっと練習して、勉強してくる。
じゃないとみんなにダメ出しくらっちゃうもんね。
特に高橋くんには……」

だんだんと険しい顔つきになる清良は、そこまで言うと視線をテーブルに落とす。

「…ヴッフォン国際で3位ですってぇ…?!
押コン2位なんてなんの武器にもなりゃしない…!!
見てなさい高橋、私…」
「…もっと上手くなってあんたの鼻っ柱を折ってやる、だろ?」

龍太郎は、グラスを手にしたままワナワナと震える清良の手をそっと握った。

「わかってるって。おまえ、飲みすぎ」

そんな龍太郎をきっと睨みつけると、まるで吐き出すかのように語気を荒げた。

「だって、だって悔しいんだもん!」

ぷいと顔を背けて頬を膨らませるその横顔は、アルコールで上気して桜色に染まっている。
清良の整った顔立ちが子供っぽい表情を見せるその様は、
普段の凛とした印象とはかけ離れ、可愛らしいものだった。
清良のその言葉が龍太郎に向けた雑言ではなく、
自身を鼓舞するかのような自戒を込めたものだということは、龍太郎にはわかっていた。
清良は、普段「悔しい」なんて軽々しく口にしない。
しかしひとたびアルコールがまわると、必ずこの話題を口にするのだ。
聴きなれた言葉ながら、龍太郎は横槍を挟まずに聞いてやる。

「押コンのことは、後悔はしてるけど、もう立ち直ってる。
コンクールの結果とか高橋とか、そんなことじゃない。私…私は……」

龍太郎はその頬にそっと掌を宛てると、自分の方に向かせた。

「そうよ…悔しいのよ……私これでも、いつも精一杯やってきたわ。
毎日、朝から晩まで練習して、色んなこと勉強して。
なのに、まだできないこといっぱいある」

顔を上げ、にやり、と微笑む清良。

「絶対、何か掴んでくるわ。
また龍に弟子にしろって言われたって、今度はそう簡単にいかないんだからね。
ひざまずいて、清良様、ってお願いされたって、ダメなんだから」

清良はそう言うとにっこり笑って、上機嫌で目を細めた。

龍太郎は苦笑を漏らす。

「はいはい。
…でもオレだって、おまえが戻ってくる頃にはもっと上手くなってるんだからな。
おまえがコンマスの座を争うのは、高橋じゃなくてきっとオレだぞ」

龍太郎は真面目な表情で答える。
言った言葉は本心だが、正直、笑い飛ばされるかと思った。
特に、酔いのまわった清良には。
しかし清良は笑わなかった。
代わりに、とびきり優しく目を細める。

「……うん。龍、ほんと上手くなったもんね。
オケで必死にさらってるあなた見て、私もがんばらなきゃって思ったよ」

繋がれた手をそのままに、清良はテーブルにつっぷして目を瞑った。

「弟子にしろって言われた時はさぁ……何この男馬鹿なんじゃないの、って思ったんだけどさ〜」
「言いすぎだっての…」

肩を落とす龍太郎の掌の中で自分の指を遊ばせながら、清良は饒舌に話を進める。

「でも、千秋くんと一緒に、あのオケを一番大事に思ってたのが龍だったのよねぇ……。
昨日ヘタレてた音が、今日は輝いてる。明日はもっと……。
…毎日、楽しかったな。いつの間にか、私、龍に触発されてた。
弟子になったのは、どっちなのかしらね……」

そのまま夢見心地で語尾を弱める清良。

「おい、寝るか?今日は一晩中腕枕してやるぞ」
「…腕枕だけ?」

清良はつっぷしたままそっとと目を開け、悪戯っぽくまたたいた。

「……だけのわけ、ねーだろーが」

龍太郎もまた、笑みを零す。

そっと誘(いざな)われて、清良はベッドに腰を降ろした。
龍太郎は清良の薄い唇にキスを落としながら、彼女のシャツのボタンを一つずつ外していく。
清良の紅潮した頬と、閉じられた双眸の長い睫。すっと高い鼻梁。
そして少しずつ露わになる白い肌。

「…ん、……」

もう何度も見慣れた光景なのに、龍太郎の胸は高鳴っていた。

…綺麗だ、清良。オレの真っ赤なルビー……

白いカッターシャツをそっと取り去ると、
深紅のブラジャーに隠された、二つの双丘が露わになった。
浮き出た鎖骨、細い肩。
決して大きくはない小振りな胸は清良の華奢な身体には丁度いいサイズで、
美しいフォルムを形作っていた。
背を支えてベッドに横たえながら、龍太郎は清良のベージュのカプリパンツのジッパーを下ろした。
そのまま脱がせてしまおうと思っていたが、清良のそっと開けられた切れ長の目に捕らわれ、
思わず龍太郎は清良にのしかかった。

「清良……」

再び重ねられる唇。
唇は、顎を伝って首筋へ。そのまま音を立てながら鎖骨をなぞる。

「…ん……ん、……」

龍太郎はホックを外し、幾分急いてブラジャーを取り去るとそのふくらみに唇を落とし、
大きな掌で味わうように揉みしだく。
清良の乳房は夢のように柔らかく、まろやかで。
龍太郎の硬い掌は、優しい愛撫で彼女のふくらみを自在に揺り動かす。
その頂は紅く、開花を待つ桜の蕾のように、淡く、はちきれそうに尖っていた。
龍太郎は、つと、その蕾を長い指でなぞる。

「…ゃ、ひゃぁ……」

頭から抜けるような清良の嬌声に笑みを零すと、
唇で挟み、舌で舐め取り、快感に震える清良のその蕾を思うがままに蹂躙した。
この夜を境に暫く彼女を抱くことができないと思うと、
龍太郎は一層燃えたぎる欲望と共に、羽交い絞めにして閉じ込めておきたい衝動にかられた。

…羽交い絞め?……そうだ。

「ちょっと待ってろ」

龍太郎はそう声を掛けるとベッドを離れ、
自身もTシャツを脱ぎ捨てて上半身裸になると、
テーブルの脇に落ちているリボンを手に戻ってきた。
先ほど二人で食べたケーキの箱に結ばれていたものだ。
ぼんやりと目を開けた清良は、龍太郎の手にしているそのリボンを見て、不審気に眉をひそめた。

「な…なによそれ……」

龍太郎は無言のまま薄く微笑むと、清良の両手をその頭上に押さえつけ、
いそいそとそのリボンで戒める。

「ちょ…ちょっと!何するのよ!」

龍太郎の思惑に気付いた清良が焦って声を上げるが、龍太郎は意に介さない。
白く細い両の手首に巻きつけられた、ブラジャーと同じ、深紅のリボン。
清良の手はその可憐な拘束具に瞬く間に捕らえられてしまった。

「ちょっと、龍ってば!」
「逃がさない」

清良の抗議の声に、龍太郎は落ち着いた声で答えた。

「…て……、手首ひねっちゃったらどうするのよ…!」
「だから、怪我しないようにおとなしくしてるんだな」

龍太郎は、拘束した手首を優しく押さえつけながら、この上なく優しく口付けた。

「逃がさない…清良……せめて今夜は、どこにも」

再び胸の頂に唇を落とし、硬く張り詰めたせいで一層深く刻まれた僅かな割れ目に舌を差し入れ、
なぞるように往復させる。

「…んっ…はぁ……」

吐息を熱くさせ、身をよじりながら身悶える清良。
抵抗しようにも、両腕は頭上で戒められているため叶わない。
そのもどかしさに清良は身をよじり、首を左右に振っては、なんとか快感に耐えようともがく。
抵抗とも取れるその動きに制されることなく、龍太郎は執拗に清良の乳房をいたぶった。
と同時に、右手で清良のズボンを脱がしにかかる。
龍太郎の硬い指先が素肌に触れるたびに清良はびくりと身体を震わせるが、
腰を浮かし、長い脚を伸ばし、龍太郎が自分のズボンを脱がせるのを手伝った。
ズボンを引き抜いてベッドの向こうに放ると、龍太郎は身体を起こしてにやりと微笑んだ。

「随分と協力的だな、清良。縛られて、なのに脱がして欲しかったのか?」

龍太郎の端整な顔が優越に歪む。
清良は眉を寄せて、屈辱的に唇を噛んだ。

「だって龍が脱がせようとするから……」
「オレが?オレがしたいだけ?ならいいよ、やめるよ?」

胸は高鳴り、自身も熱い吐息を漏らしているのがわかる。
既にズボンの中で硬くなった自身のモノの存在を意識しながら、
龍太郎にはやめる気なんてさらさらなかった。
それでも、清良を縛り付けて野獣の如く猛った興奮は、彼女に意地悪を言うことで益々火がつくのだ。

「…やぁ……やめないで、…続き……して……」
「してください、だろ?」

「…………。」

清良は目を潤ませて、龍太郎を睨んだ。
拘束されて、胸をさらけ出していて。
下着一枚で何の抵抗も許されないこの状況で、全身を視姦する龍太郎の前にさらされている。
恐ろしいくらいのその羞恥心は、身体の隅々の神経をも敏感にさせた。
胸への愛撫は続けられていて。
硬く尖った蕾を丹念にこねられて、清良は吐息と共に弱々しく言葉を紡いだ。

「して…ください……」

すると龍太郎は途端に情けなく破顔し、
いつもの優しい笑顔を宿して、清良に口付けた。

「…ゴメン。ちょっと意地悪言ってみたくなった」
「バカ……」

頭を優しく撫でる龍太郎の肩に顔を埋めて、拗ねたように、にじんだ涙をこすりつける清良。
龍太郎は少しの罪悪感を感じながらも、至福に満たされていた。
ステージでは鮮烈にして大胆、慈悲深いビブラートをもって迫力の音を奏でる、まごうことなき輝石。
ルビーの如く光り輝き、薔薇の如く妖艶に咲く彼女が、
自分だけには、意外なほど可憐で慎ましやか…そして淫らな面も見せてくれる。
龍太郎は、彼女――三木清良を、心から愛しく思っていた。
そして、籠の中に閉じ込めておきたい気持ちと、
果てしなく広い大空へ無限の可能性をもって飛んで欲しい気持ちの両方に苛まれるのだった。

龍太郎は清良の頬に口付けてから、そっとその滑らかな肌を撫でた。
撫でる、いうよりは、撫で回している。
まるでその感触を自身の掌に刻み付けるかのように、丹念に指を滑らせていった。

「ねぇ……外してくれないの?これ……」

清良は、慈しむかのようなその愛撫にとろけるように身を委ねながらも、手首の戒めを示した。

「似合ってるから、ダメ」

龍太郎は、撫でるだけでは飽き足らず、清良の肌のそこここに唇をおとしてゆく。

「!なによ、それ……」
「おまえのさ」

龍太郎は、清良の目を見つめて言った。

「強気な顔が屈辱に歪むのって、物凄く綺麗だ…」

今や圧倒的な優越に彩られた龍太郎は、淫靡に笑みを零す。

「…あ、ヴァイオリンのことじゃないからな。
縛られて抵抗できない清良、すげーそそられる……」
「何バカなこと言ってるのよ!…っあ、……」

龍太郎は清良の脚元まで移動すると、その両脚を抱え上げ、
しっとりと汗ばんだ内腿に舌を這わせた。
つつ――、とその中心に向かってゆっくり舌を進め、
かと思えば、その付け根に触れる一歩手前で避けてしまう。
そんなことを何度も繰り返した。
中心に近づくたびに清良の息が上がり、離れるたびに、押し殺した吐息が漏れる。
清良の美しく整った顔は快感ともどかしさに翻弄され、苦しそうに歪められた。

「…して。龍……私もう我慢できない……」

熱い吐息の合間に途切れ途切れにそう漏らすと、
龍太郎は、清良のショーツの端に指をかけ、ゆっくりと引き下ろして取り去った。
そこは濡れそぼり、溢れ出た愛液が茂みをしっとりと濡らしている。
龍太郎は誘われるままに、その中心に顔を近づけた。

「ヤ…そこはダメだって言ってるじゃない……!」

途端に抗議の声を上げる清良。
綺麗じゃないからと、龍太郎がそこに口を寄せるのを、いつも拒むのだ。
しかし今日の龍太郎は止まらなかった。
清良の静止を無視して、溢れた愛液で妖しく光を宿すそこに、口付ける。

「やぁっ…!や、ひゃん!やだってば、龍!や、イヤ!」

激しく抗議しながらも、自由にならない腕でもがき首を振りつつも、
龍太郎の舌の愛撫に堕とされる清良。
龍太郎はかまわず、清良のそこに口付けていく。
割れ目をなぞり、ひくひくとうごめく皮膚を追い立てるように舌を這わす。
思わず浮いてしまう清良の腰をしっかりと押さえつけ、
しっとりと濡れて粘着を伴った谷間をほじくるかのように舐め取り、舌と唇で愛撫する。
そのたびに頭上からは鋭い嬌声が漏れる。

「気持ちよくないか…?」

清良はハァハァと荒い息をつきながら、必死にもがく。
既に脚の間に入り込んだ龍太郎の身体に阻まれて、抵抗など何の意味ももたないのに。

「…気持ち…いい、け…どっ!でも、イヤ!恥ずかしいからっ……!!」
「イヤだ、やめない」

龍太郎は、清良の必死の懇願に凛とした声で答えた。

「向こう行っても、オレのこと忘れられなくしてやる」

清良は、ハッと龍太郎を見遣った。

顔を上げた龍太郎の瞳は、この上なく真摯で。
その視線の熱さに、快感も相まって清良は眩暈さえ覚えた。

「…忘れるわけ…ないじゃない、バカ……」

力なく微笑みながら、優しく龍太郎を見つめ返す清良。
その瞳には、涙が浮かんでいて。

「私、龍が好き。龍じゃなきゃいやだからね…!!」

龍太郎は、頷いた。
微笑みながらも僅かに瞳を潤ませながら。
そうして再び、顔を戻す。
龍太郎の舌がささやかに硬く勃ち上がった清良の芽を探り当てると、
清良は、抵抗する余裕もなく背をのけぞらせた。

「きゃあっぅ……」

龍太郎は清良の両腿をしっかりと抱えて広げ、その芽を丹念に舐め取る。
粘り気のある愛液をたっぷりと塗りたくりながら、
その柔らかな部分を押しては啜り、繊細な舌をもってなぶる。
その度に清良の腰がびくりと引きつる。
龍太郎の挿入を待つかのようにひくひくとうごめくくぼみに舌を差し入れて、
その周囲をなぞるように味わいながらかき回すと、
そこはびくびくと、面白いように波打った。

「清良…いいか?」

龍太郎は清良から身体を起こし、返事も待たずにベルトに手をかける。
清良は弛緩しきった身体をベッドに預け、その光景をぼんやりと見ていた。
龍太郎が全ての衣服を脱ぎ去ると、鞄からゴムを取り出そうとしたが。

「いいの……つけないで、生で、して」

快感の波に堕とされながらも、清良は口を開く。
龍太郎はさすがに驚いて清良を見遣った。

「そんなわけいかねーだろ。おまえ、自分の人生もっと」
「いいの。ピル飲んでるから平気」

そう言って清良は、悪戯っぽく微笑んだ。
龍太郎はあっけに取られて手を止める。

「大丈夫、私だって色々考えてるよ。
だけど、向こうに行く前に、龍を生で感じたかったから、処方してもらっておいたの」

そっと微笑む清良。
龍太郎はベッドに腰掛けると、そっと清良の肌に手を伸ばしながら言った。

「オレと…したくて?」
「うん」

腿を撫でる、さわさわと優しい感触にこそばゆい感覚を覚えてそっと微笑みながら、
清良は、まっすぐ龍太郎を見つめて頷いた。

「そっか……」

龍太郎は、思わず潤みかけた目を慌てて拭うと、清良に覆いかぶさった。

「…何泣いてるのよ、バカね……」
「泣いてなんか、ないって…」

そこまで言って、龍太郎は突如笑みを零した。

「啼くのはおまえだから」

そうして龍太郎は、清良の身体を一度抱きしめてから、うつ伏せに寝かせた。
清良は龍太郎の思惑に気付いて、
自由にならない身体をもてあましながらも慌てて龍太郎を振り返った。

「な、なにすん…」
「入れるぞ」

抗議の余地もなく、龍太郎は後ろから清良のその部分に自身を宛がうと、
ズブズブと押し入れていく。

「…う……」
「あぁ…!りゅ、龍……!!」

清良は自分の身体に押し入ってくる快感の渦に引き込まれ、
思わずベッドに顔を埋めて、眉を強く寄せた。
柔らかな自身の内側を、龍太郎の硬く太い幹がどんどん割って入ってくる。
押し流されるような引き込まれるような、わけのわからない快感。
拘束され有無を言わさず後ろからされる、まるで動物のような荒々しさに、
快感を逃がせない清良はただベッドに身体を押し付けて耐えるしかなかった。

「…は、ぁ、すご…清良……」

根本まで入れると、龍太郎はその背中に唇を落とし、すぐさま腰を前後に動かし始めた。

「あぅっ…あ…!龍太郎…!!」

清良の指は、真っ白なシーツを無意識の内に懸命にたぐりよせた。
そのまま強く握りしめて、爪が白くなるほど強く掴む。

「清良…すっげ気持ちいい……」

清良は、返事をする余裕もない。
身体の奥深くを間断なく突かれるあまりにも直接的で淫靡な快感に、
歯を噛み締めて耐えることしかできなかった。

突かれるたびに圧迫感を伴って、否応なく身体が揺さぶられる。
龍太郎のその部分の輪郭をはっきり意識できるほどの摩擦を感じる。
その圧倒的な激しい快感は清良に抵抗の余地を許さない。

「…っぁ…んぅ……」

…と、突然。苦しげに吐息を漏らす唇が、大きな掌によって力強く閉ざされた。
つながった姿勢のまま、龍太郎が清良の口を掌でふさいだのだ。

「…ん、ん……!!」

その圧迫感とまるで陵辱されているかのような屈辱に、清良の意識は一瞬錯乱した。

「…おまえ、後ろからされるの好きだろ。気持ちいいんだろ?
…もっと犯してやるよ……」

清良はいつにない龍太郎の強引な責めに、身を震わせながらも必死に首を振った。
正直なところ、イヤなわけではない。
龍太郎に後ろから組み敷かれて、屈服させられることに、倒錯した快感さえ覚える。
もっと、して欲しい。
自分の抵抗などものともせず、もっと強引に攻め立てて欲しい。

…そう思えば思うほど、清良はなぜか抵抗せずにいられないのだ。
首を振り、自由の利かない身体で必死に龍太郎から逃れようとする。
そうすれば、龍太郎は自分を逃すまいと一層激しく捕らえようとするのは予想がついた。
しかし身体で抵抗を示せば示すほど、清良もまた燃え上がり、
本気で龍太郎から逃げなければという考えに支配されるのだ。
犯して欲しいと願う気持ちと、逃げなければと思う切迫感。
その二つの気持ちに清良は翻弄されていた。
当然といえば当然だが、龍太郎はそんな清良に少しの隙も見せない。

「…ステージでは清純そうな顔してるくせに、おまえってこんなにエロいのな。
綺麗な顔が台無しだぜ…自分で腰突き出してるんだからな……」
「……ッ…」

龍太郎は覆い被さるようにしてその首筋に口付けながら、より強く清良の唇を掌で押さえる。
清良は僅かに残された通気孔から、苦し気な荒い息を必死につく。
そうして、羞恥と快感の両方に苛まれるのだ。

両手も縛られて、龍太郎のなすがまま、清良は文字通り犯されていた。
龍太郎は、今度は空いた左手で自分たちがつながる部分に指を這わせる。

「……ッ!!」
「おまえ、ここいじられるの好きだよな…。
こんな、なんにも抵抗できなくて、今触ったらどうなる……?」

龍太郎の指先は、ことさらゆっくりと結合部を辿る。
その指先が求める場所を察知して、清良は無我夢中で腰を引こうとする。
まるで、追い詰められたウサギが生命を守ろうと必死で逃げ道を探すように。
しかし龍太郎は決して逃がさず、一層清良を突き立てた。

「いいから、黙って犯されてればいいんだよ…」
「…んぁぁっ……!!」

龍太郎の指は清良の突起を捕らえ、揉みしだくようにこねくりまわした。
ズン、ズン、と重く突かれる快感と共に、
その敏感な芽をいたぶられて、電流のように激しい快感が清良を襲う。

「…やあぁ…許して、龍、あ、もうダメ……!!」
「何がダメなんだよ。じゃあやめるか?」

龍太郎は自身も荒く息をつきながら清良の腰をがっちりと掴んで、
より深く、強く腰を打ち付ける。
その芽を激しく弄びながら。

「…やぁっ、だ、い、イっちゃうの……!!」

清良はベッドに強く顔を押し付け、
拘束された手首をもどかしげに震わせながら、指先が白くなるほどにシーツを強く握りしめた。
快感に耐えるようにシーツにしがみついていた清良の指先は、
今や快感を逃すまいと、浮き上がる自身の身体をベッドにつなぎ止めていた。
抵抗の末に龍太郎の掌を振りほどき、清良は快感を搾り出すように声を上げる。

「ゃあぁぁぁっん…!
「イくのか?オレに犯されてイくのか?やらしいな、清良…!」

龍太郎の芽を擦る指先がこの上なく速くなると、清良の背はひときわ大きくしなった。

「ん、やあぁ……!!」

びくり、びくり、と清良の華奢な身体が跳ね、ベッドに深く沈み込む。
同時に膣内は激しく収縮し、龍太郎を締め付けてこの上ない快感を与えた。

「…っく……!」

龍太郎はその急激な締め付けに全身全霊をかけて耐えると、
手を伸ばし、くったりと力を失った清良の手首の戒めを解いた。

「…りゅ、龍、やだ、顔が見たい……」

肩を上下させて荒い息をつく清良が絞り出すように言うと、
龍太郎は自身を差し入れた状態のまま、清良を仰向けにさせた。
当然、結合部は卑猥な水音をさせながら、激しく摩擦する。

「ふ…ぁぁんっ……」

仰向けにされて龍太郎に再び組み敷かれると、清良は自由になった両腕を広げて、龍太郎の首にしがみついた。
龍太郎は闇雲に清良の唇に口付け、
激しく舌を絡ませながら、より一層突きを激しくする。
一突きごとに清良の身体はベッドから浮き、真っ白なシーツはその振動で波打つ。
清良は龍太郎を抱きしめる腕に力を込めると、再び眉根を寄せた。

「ん、ぁ、もっと…もっと!龍!」

龍太郎は清良に舌を絡ませながら、答える余裕もなく清良に腰を打ち付ける。
押し入れては回し、清良の膣内のざらざらした部分を幹に感じながら、こねるようにぐちゃぐちゃと掻き乱す。
清良は、龍太郎と自分の唾液でしとどに濡れた唇を引きつらせて、悲鳴にも似た声を上げた。

「や、また、い、イちゃっう、龍ぅ……!!」

力を失っていた清良の身体が再び強く龍太郎に絡みつき、
その爪先までもがピンと張ると、その強張りを受けて、龍太郎の身体もまた強張ってゆく。

「あ、すっげキツ…き、清良、」

龍太郎は激しい締め付けを感じながら清良の小さな頭を強く抱きしめた。

「や、ゃあぁぁぁ…!!」
「…ぁああっ…清良、好きだ…っ!!」

ひときわ大きく身体を震わせて清良が嗚咽のような嬌声を上げると、
追い立てられるように深く腰を突き、龍太郎もまたぎりぎりまで絞られた快感を吐き出した……

ズルリ、と力を失ったモノを引き出すと龍太郎は清良の横に倒れこみ、
震える華奢な身体を手探りで抱き寄せて口付けた。

「…あ、はぁ、あ…ん、……」

美しく眉根を寄せた清良は未だ荒く息を弾ませながら、龍太郎のその広い胸に顔を埋める。
お互いの早い動悸を感じながら、二人は暫くの間、そうして快感の余韻に浸る。
そうして暫くの間、互いの体温に身を預けていた。

「もう、龍のバカ……!」

幾分落ち着きを取り戻すと、清良は恨めしそうに龍太郎を見遣った。

「縛るなんて信じられない!ヤだって言ってるのに、あんなとこ…舐めるし……もうっ!」

頬を膨らませながらも自分の胸から離れない清良に人知れず微笑みながら、
龍太郎は清良の乱れた髪を撫でてやる。

「いや〜ははは……明日からまた暫く会えなくなると思うと盛り上がっちゃってさ〜…
でもたまには良かっただろ…?」

清良はそんな龍太郎の胸をペチリと叩くと、そっと背中に手を廻した。

「ったく、ほんとしょうがないんだから……んっ…」

そんな清良の額に唇を落とすと、龍太郎もまた清良を抱く腕に力を込め、そっと背中をさすってやった。

「……清良、オレもっとうまくなるからな。今は見送ることしかできないけど、
R☆Sで弾いて、待ってるからな。だからおまえもがんばれよ」

そっと告げる龍太郎に、清良はその胸の中でゆっくりと頷いた。
閉じた双眸を、整った鼻梁を、龍太郎の胸に押し付けるようにして。

「…うん。がんばる。龍のこと、忘れられないよ……」

二人はどちらからともなく視線を交錯させ、頬を寄せ合った。
互いに感じるあたたかな感触に、二人は幸せそうに微笑みを交わす。
そうして先程の激しい営みとはうってかわった、静かな、触れるだけの、……キス。
まるで想いを重ね合わせるかのように、唇を重ねた。

「好きよ、愛してる……」

キスの合間に、囁くように奏でられる清良の声。
龍太郎はその言葉に微笑んで、再び唇を落とした。

「愛してる、清良。おまえなら、きっとやれるよ……」

***

ゴォォ…………

飛行機の轟音が小さく遠く、しかり途切れることなく響くロビー。
清良の見送りには、龍太郎の他にも千秋が駆けつけていた。

「色々ありがとう。オケ、楽しかったわ。
今度会うのは向こうでかしらね」

差し出された手を堅く握って、千秋も答える。

「あぁ、そうなるかな。こちらこそ楽しかったよ。また一緒にやろう」

清良は千秋と笑顔を交わすと手を離し、龍太郎に向き直った。

「じゃあそろそろ行くわね」

龍太郎は頷くと一歩前に出て、清良の身体を抱きしめた。
千秋が傍に居るのにもかかわらず、清良もまたその背に腕をまわす。

「がんばれよ。…真っ赤なルビー……」
「もう、バカ!それ恥ずかしいってば!」

清良は眉を寄せて苦笑する。

「…帰ってきたら、また昨日のやってやるから楽しみにしてろよ」

含み笑いする龍太郎に清良は、咎めるように頬を膨らますと恨めしそうに見上げた。

「……バカ。昨日のせいで、私腰痛いんだからね!飛行機で体調悪くなったら龍のせいよ!」

そうしてすかさず身体を離そうとする清良の耳元で、龍太郎はささやく。

「…だっておまえが何回もねだるから……ギャ!」

頬を染めて軽く龍太郎の頬を軽く叩くと、
清良は、横顔に感じる千秋の呆然とした視線を振り払うように髪をかきあげた。

「浮気なんかしたらただじゃおかないんだからね!」

そして背を向けてゲートに歩き出す清良を、龍太郎は呼び止めた。
振り返る清良。
龍太郎は清良を抱きしめて、唇を重ねる。
一度目は、軽く。
僅かに離して、吸い寄せられるように再び重ねると、舌を絡ませあう。
そして三度目。優しく口付けると、龍太郎は清良を強く抱きしめた。

「がんばってこいよ。待ってるから」

清良は頷いて、龍太郎の胸の中で目を閉じる。
そして二人は名残惜しそうに身体を離し、笑顔を交わした。

「行ってくるね」

清良を載せた飛行機が、空高く舞い上がってゆく。
屋上に上がってそれを見届けると、龍太郎は千秋に「じゃあ帰るか〜」と声を掛けた。
ずっと黙っていた千秋が、やっとの思いで呆然と口を開く。

「お前ら一体いつの間に…そんな……」

龍太郎は僅かに頬を染めながらも、千秋の背中をバンバンと叩いた。

「まあ、まとまる時はまとまるもんなんだよ!
お前も、一緒に留学するからってあぐらかいてねーで、ちったぁオレを見習って早いとこのだめ捕まえとけよ!」
「…のだめとだぁ?!…オレはそんな……」

固まる千秋を残して、龍太郎はご機嫌で空港を後にするのだった。
心の中で清良の飛び立った空に語りかけながら。

「オレの真っ赤なルビー…待ってるからな!」

――LegendofMine&Kiyora!!――






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