「江戸のクロキン2」〜中編〜(非エロ)
黒木泰則×野田恵


〈前回までのあらすじ〉
再び夢の世界の住人となったクロキンこと黒木泰則。お江戸の町に巣食う悪の手下を
ばったばったと切り伏せて、お供の由美か○るとうっかり八兵衛をしたがえつつ、
とうとう黒幕の元まで辿り着く。
行け!行け!!我らがクロキン。お江戸の平和を守るのだ!!!(←ウソ)

「江戸のクロキン2」〜中編〜

むんずと腕を捕まれたまま、黒木は引きずられるようになりながらも必死で清良に
付いていく。

「こっちの方向でいいのね!?」

彼女の勢いにのまれ、ただコクコクと頷く格好になった黒木は、しかし
頭の中でいろいろと考えていた。
僕がシュトレーゼマンを見たのはこの間の夢だったし、この夢がその続きだったとしても
同じ場所にいるとは限らないんじゃ?それに……。
また恵ちゃんと関わることになったらどんな展開になるんだろう、と黒木は不安を覚える。

「あ、あの……」

黒木が声を掛けると、何?とその歩みを止めることなく清良は振り返って彼の顔を窺う。

「とりあえず、ちょっと止まってくれないかな?息が……」

苦しくて話ができない、と言うと少し不満そうに眉をしかめながらも彼女の足が止まった。
黒木が解放された手で胸を押さえながら息を整えている間、清良は後方を見つめ
軽く舌打ちする。どうやら峰が付いてきていないらしい。
仕方ないから彼が追い付くまで休憩しましょ、と言う彼女の言葉に黒木はほっとした。

「で、話って何?まさか道がわからなくなったなんて言うんじゃ……」

いやそうじゃなくて、と黒木は首を横に振る。

「その、キミ達の言うご隠居さんと会ったのは、確かにこの道を真っ直ぐ行った
ところにある川沿いの柳の木の近くなんだけど」
「じゃあ何も問題ないわ。そこまで案内してくれれば」
「でも、それ随分前のコトかもしれないし」

もういないんじゃないかな、と言う彼に、清良は「かもしれない?」と首を傾げる。
まさか夢の話なんて説明するわけにもいかず、どうしたらいいのか頭を悩ませているうちに、「おお〜い、お清姐さんドコ〜!?」と半泣きの声が離れたところから聞こえてきた。
こっちよっ!!と怒鳴ったあと、彼女は黒木の顔を見て

「まあとにかくその場所に行きましょ。何か手掛かりがあるかもしれないし」

それまで悪いけど付き合ってね、と笑った。

その時である。

「ぜったいイヤです!お帰りくだサイ!!」

女性の叫ぶような声が辺りに響き渡った。見ると十字路の角にある旅籠の前に人だかりが
出来ており、なにやら騒動が起こっているようであった。
清良はまた事件?と俊敏に踵を返しその喧騒の中に駆け寄って行く。
しかし黒木は、その女性の声に衝撃を受けて足を動かせないでいた。
まさか、恵ちゃん……?

「痛っ!放してください!」

声の主がのだめであることを確信し躊躇していた黒木だったが、再びあがった悲鳴に
これが夢であることも忘れて走り出した。
しかし野次馬の壁が邪魔をして、なかなか中央に足を運ぶことができない。
ふと横を見ると清良も同じように苦戦しており、ふたり目を合わせて頷くと、同時に
隙間へとその身体を力任せにねじ込もうとした。

「お待ちなサイ」

不意に肩を叩かれ、驚いて振り返るとそこにはシュトレーゼマンの姿が。

「ご隠居さま!」

と目を丸くする清良にああやっぱりと納得するも。
視線をもとに戻せば今にも連れて行かれそうなのだめがいて、黒木は焦る。
しかしシュトレーゼマンは彼の肩を放そうとせず、ただ首を横に振った。

そうこうしているうちに、一人の男がゆったりとした足取りでのだめの前に現れた。
誰だろう?僕の知ってる人じゃないし……。
そんな黒木の周りで人々がヒソヒソと噂する。

「越後屋だ。越後屋の大河内だ」
「本当だ。あいつまた何か企んでやがるのか」

どうやらあまり評判が良くない人物らしい。
なんだか少し千秋くんに似てるような、というかコスプレ?ニセ千秋くん?

「やれやれ、まったく強情な人ですねぇ」

大河内と呼ばれた男は肩をすくめて唇の端を曲げた。

「こちらには切り札があるってこと、よもや忘れてもらっちゃいけませんよ?」
「うるさいデスッ!とっととこの人たち連れて帰ってクダサイ!!」

噛み付かんばかりに睨みつけるのだめに、おお怖いと苦笑いしながら男たちに合図を送る。
その中に先程の茶屋で騒動を起こした男が混じっていることに黒木は気付いた。

「今日はこのへんで帰ります。いい返事を期待していますよ」

おい帰るぞ、という声とともに連中は人ごみを押しのけていき、その後ろで

「おととい来やがれっていうんデスヨッ!!」

ムキ――ッ!とのだめが大量の塩を投げつけていた。
その姿に黒木はふうぅと安堵の溜息を漏らす。そしてこうなることがわかっていたのかと
隣の老人を窺うと。
チッとものすごく残念そうな表情をしていた。

「もうすこしでのだめチャンのムフフ♪な姿が見られるかと……」
「このエロボケじじぃ――っ!!!」

清良が鉄拳を繰り出すも、シュトレーゼマンはひょいと素早く避けて。

「のだめチャーン、みるひいが助けに来ましたヨ〜」

いやらしい手つきで彼女に抱きついていき。
ギャボ――!という声とともに吹っ飛ばされたのだった。

「ナルホド。土地の利権書をねぇ……」

鼻血を拭きつつ茶をすするシュトレーゼマンにじとーっ、とすわった目線を送りながらも
のだめは頷いた。

「それで、おとなしくこの旅籠を明け渡すか、さもなくばその身を代官に預けろ、
なんて言うんですヨ」

ウチの使用人を脅して無理やり手に入れたクセに!と憤る。

「真さんがいてくれれば、こんなことには……」
「ご主人?」

清良が尋ねると、のだめはこくりと頷いた。
話によると、彼女は若女将として主人と一緒にこの旅籠を営んでいるのだが、
数ヶ月前に彼は旅に出たまま帰ってこないという。
真さん、てことは千秋くんのことだよな。
夢であることがわかっていても、なんとなく落ち込んだ気分になる自分に混乱して
黒木はぷるぷると首を振った。
ちょうどそのとき、

「もしかしたら、真さんも奴等に……」

とさめざめ泣きながら呟くのだめと目が合い、黒木は慌てる。

「あれ?お侍さんもしかしてこの間の?」
「ああ、あの、さっきの男たちの中に茶屋で乱暴してた奴がいたんだけど!」

無理やり清良に話をふった。

「うん、私も気付いてたけど」
「で、そのお代官が黒幕で、みんな裏で繋がってるんじゃないかと」

あ、そっかと感心する清良の横で、峰がやっぱりオレの睨んだ通りだなと鼻を鳴らす。
彼を見事なアッパーカットで沈めたあと、清良はシュトレーゼマンに向き直った。

「ご隠居さま、出番ですよ!」

彼女の言葉にシュトレーゼマンは不満そうに声をあげた。

「エェ〜!?せっかくのオフだっていうのに〜」

めんどくさいデース、と言う彼の横でパリンと茶碗が割れた。

「……あ、アブナイじゃないですカ」
「うるさいっ!ちゃんと仕事しろ!!」

肩で息をしながら、だいたいエリさんとオリさんは!?と清良が怒鳴りつける。

「エリさんなら温泉バカンスですヨ。オリさんは彼女に連れて行かれマシタ」

だから私もノンビーリできるんデス♪と彼は笑い、

「のだめチャン、今晩ゲイシャさんたくさん呼んでクダサイネ」

のだめに擦り寄るように近づいて注文した。

ドガシャ――ンッ!!!

ものすごい音とともに清良は立ち上がり、峰にゆったりと微笑んだ。

「あんたは、もちろん来るわよねぇ?」

その凍てつくようなオーラに峰が震えながら頷くのを見届けると。
今度は黒木の方にその顔を向けた。

「こうなったら、最後まで付き合ってもらうわ!」

ええぇ!?と目を白黒させる黒木の腕を問答無用とまたもや掴み。
清良は男二人を引き連れて、旅籠の一室を後にした。
部屋には踵落としをまともに喰らい、口から泡を吹いて倒れるシュトレーゼマンの
姿があった。

「ど、どこに行くつもり!?」すっかり清良のペースに乗せられた黒木と。
「代官のところに決まってるでしょ!」

わき目も振らずに進む清良。
そして「待ってくれよ〜」と相変わらずの峰。
さてさて、この三人の行き着く先は、光か闇か?


これほんとに僕が主人公なんだろうか?
なんだか納得いなかないなぁ。






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