すずらんのような彼女
黒木泰則×野田恵


すずらんの花のような、恵ちゃん。
清楚で、可憐で……
僕の大好きな。

「どうして、……どうして泣いているの?千秋くんは?」
「センパイのことは言わないでくだサイ……」
「なにか、あったのかい?」
「……いいデスから」
「恵ちゃん………」

僕が彼女の頬に触れると、小さな体をビクッと震わせた。
うつむいていた顔を上げると、その目には涙が浮かんでいる。

「キスしてもいい?」

僕は、そっと彼女に唇を寄せた。触れる刹那、まるで電流が走ったように、
僕の体を火花が走り抜ける。
柔らかい、女の子の唇。
まるでマシュマロのような。

大学1年のとき、学内のオケで知り合ったフルート専攻の1学年上の先輩から
申し込まれて、付き合ったことがある。それが僕の初めての女性。
楽しかったし、それなりにいろいろ経験したけれど、彼女が留学準備に
入った頃からだんだん会わなくなり、自然消滅してしまった。
もともと何が何でも彼女が欲しいなんて思ったことがないし、
合コンなんて興味がなかったので、それ以来彼女はいない。

恵ちゃんに初めて会ったとき、自分の周りの風景が突然、色が付いたように思えた。
もっとも、その時は、彼女が千秋くんのことが好きだとは気付かなかったので、
あんな失敗をしでかしてしまったのだけれど……。
それでも僕は誰のことを悪いとも思わない。
千秋くんの忠告を聞かなかった僕も悪いんだし、結局は自分の責任なのだから。
それに、あの体験は、僕の音楽にひとつ大きなものを残したと思っている。
彼等が2人で一緒にパリへ旅立つと聞いたときは、すこし動揺した。
なぜなら僕もパリへ行くつもりだったから。
ひと回り大きくなって、またいつの日か恵ちゃんに僕の音楽を聴いてもらえれば。
未練とは言いたくないが、そんな思いもかすかにあったので、みんなには行き先は
内緒にしておいたが、偶然、このパリで、彼女に出会ってしまった。
そしてその彼女は泣いていた。

「……千秋くんは、優しい?
彼より、僕のほうがずっと、君を大切にできると思ってる」

そう言うと、彼女は僕に抱きついて、胸に顔をうずめた。
ふわ、とシャンプーに香りがかすめる。
僕は自分の腕を彼女の背中に回し、強く、強く抱きしめると、
今度は彼女から、僕の唇を求めてきた。さきほどより強いキスを。
唇だけではなく、舌が割り込まれ、僕の口中を余すことなく味わっていく。

……なんて気持ちがいいんだろう。
こんなキスは経験したことがない。
無音の室内で、僕達の唇が合わさり、離れる音だけが響く。まるで映画のようだ、
と思い、ますます頭の中が熱くなる。
すこしためらいながらも、ワンピースの上から、胸に触れる。柔らかい。
想像以上に弾力のある胸を、包み込むように触れると、彼女の甘い声が聞こえた。

「恵ちゃん、いいんだね…?」

うなづくのを確認して、背中のファスナーを下ろした。ぱさり、と床に落ちるワンピース。
下着だけになった彼女を抱きしめ、2人でベッドに倒れ込む。僕も自分の服を脱ぎ、下着だけになる。

「黒木くんは、優しいですよ、ネ……?」

ブラジャーのホックをはずし、露になった胸をおずおずと触れた。
小ぶりで、だけど形の良い乳房。
自分の指が彼女の乳房に食い込むさまはエロティックで。
さらに、指で、乳首に触れると、その途端彼女が震えた。

「や……ん!」

首筋、乳房、乳首、と口付けをしながら、手のひらに吸い付くような白い肌全体を愛撫し、
下半身の繁みへと手を伸ばす。そこはもう、十分に潤っていて。
指を差し入れると、熱い液体がまとわりついた。こんなに濡れているなんて。
動かすと、すすり泣くような彼女の声が高まる。

ああ、僕も、もう……。
恵、ちゃん……

***

…………。
……う。

「…………ぅ、あ。」

……目が覚めた。

僕のアパートのベッドだった。もちろん彼女の姿はなく、1人きり。
夢か。
当然だ。
彼女は、千秋くんと、幸せに過ごしているんだから。
けれど、夢の中の彼女は、柔らかい唇も、小振りな胸も、白い肌も、僕のために捧げてくれて。
とてもーーーとても、魅力的で。

………恵ちゃん。

僕はそう小さくつぶやき、堅くなっている下腹部に手を伸ばして、そのまま毛布の中に頭を埋めた。
もう、少しだけ、僕のために………。

***

…………。
……う。

「…………ぅ、わーっ!!!」

……目が覚めた。

「センパイ……!?嫌な夢でも見たんですか?飛行機系……?汗かいてマスよ」
「いや………もっとイヤな夢」

ほんとに、なんて…嫌な。
はーっ、と大きく息をつき、隣に寝ていたのだめを抱き寄せて、頭を自分の胸に乗せさせる。

……一体、なんなんだ今の夢は。
黒木くんの…………あんなシーンを、なぜ俺が見なくてはいけない!?

「大丈夫デスか……?」

のだめがとても心配そうに、俺を下から見上げた。

「大丈夫じゃない。……キスして」

そう言って笑うと、のだめもちょっと安心したようで、俺に唇を重ねてきた。
ちゅ、とすぐ離れていきそうになったので、首に手を回し、逃げないようにして
もう少し、とねだる。

「ん………」

深く、熱いキス。大きく口を開けて、唇と、口中全体を味わう。
何度も何度も、唇と、舌と…吸うように、絡めるように、撫でるように。
一瞬、さきほどの夢の黒木くんが浮かんだが、それよりものだめの「本物の」
唇の味わいの方が魅力的だったので、悪夢もすぐにかき消すことができた。

「気分、直った……」

のだめが、よかったデス、と笑った。

「のだめ、おまえ黒木くんが今どこで何してるか、知ってるか?」
「黒木くん?ヨーロッパにいるっていう噂ですけど、知りませんよ。どうしてデスか?」

そうだよな、知らないよな。……あ、もうひとつ。
俺はひょい、とのだめの胸をいきなりわしづかみにした。

「ぎ、ぎゃぼ!センパイ、いきなり何するとデスか!」
「いや、Dカップ……だよな、もちろん」
「そうデスよ今さら!触るなら、もうちょっとムードある触り方してくだサイ!」
「ごめん、ちょっと確認したくて……」

夢の中に出て来たのだめの胸は、どう見てもBカップ程度の大きさだったから。






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