もしもまた
千秋真一×多賀谷彩子


(私が音楽をやめれば、私たちもっとうまく付き合えるんじゃないかしら)
(私が音楽をやめればーーーー)

彩子はそう思いながら、千秋の寝室の、甘く懐かしい思い出が残るベッドに、
静かに身体を横たえた。

(よく見たこの部屋の天井・・。真一のキス。髪・・。肩・・。)

彩子はベッドに横たわったまま、1年前までの甘い記憶をたぐり寄せるように手を上げると、
バタン・・!と、となりの部屋で千秋がバスルームから出てくる音が聞こえて急に我に返った。

「・・・」

彩子はベッドの上で仰向けのまま、もぞもぞと静かに体勢を整え、右足を少し高く折り、
スカートの裾をちらりと腿が見えるよう微妙に手で調整し、千秋を待つことにした。
別れたとはいえ、喧嘩ばかりしていた頃に、何度か身体でつなぎ止められた経験から
彩子は千秋の攻略法はこれしかないと、勝手に決めていた。気位の高い彩子は言葉ではいつも
失敗をしてしまうのだ。

「・・・・」

目をつぶり、寝たふりをして待つこと約5分。千秋は寝室に入ってこない。

「・・・?」

彩子は寝室のドアを静かに開けて、リビングを見てみるとそこには、
フローリングに Tシャツとジーンズのラフな格好で大の字になって寝ている千秋がいた。
彩子はがくりと肩を落とす。

酔い覚ましにシャワーを浴びたものの、ここ数日、悪魔のごとき師・シュトレーゼマンに
連れ回されて、日本中を巡っていた 千秋はヘトヘトに疲れていた。

「すー」という軽い寝息が深くなって行きそうな時、彩子はあわてて千秋に口づけた。

「ん・・ん?!」

千秋が口を開くと彩子は更に舌を押し入れる。

「ん・・ぶ・・!」

ようやく何事かを察した千秋は彩子の肩を手で押しやり、唇をあわてて離した。

「彩子?!・・・まだいたのか?!」

その言葉と態度に、彩子は一瞬くじけそうになるものの、すぐに違う闘志がわいてきた。

(この男、本当にムカつく・・!)

すでに自分が意識外に置かれてしまった存在であることを認めつつも、綺麗に別れたつもりでいる
この綺麗な男を辱めたい。陵辱したい。そうでないと釣り合わない。

意を決した彩子は、千秋が完全に身構えてしまう前に千秋の顔を両手で押さえ、
またキスをして、強引に舌を押し込んだ。

「んん・・?!」

まだ少し千秋の意識が朦朧としているのをいいことに、
彩子はすかさず右手を千秋の顔から離し、ボタンの閉められていないジーンズの隙間から
手を滑り込ませ、千秋のそれをギュッとつかんだ。

「おい・・!」

あわてて上半身を起き上げようとする千秋を身体で軽く制し、彩子は器用にジーンズと下着を
下へずらして、掴み出した千秋のそれを口に含んだ。

「あ・・!やめ・・彩子・・!」

千秋の必死の願いを無視して、彩子はわざと大きな音を立てて見せた。

ジュッ・・ジュブ・・!ジュブ・・!

「さ、彩子!やめろって・・!!」

言葉とは反対に、みるみる間に形を変え、
これ以上はないくらい固くなった千秋自身を、彩子は手でゆっくりと愛撫しつつ
口で激しく吸い上げ、卑猥な音を部屋一杯に響かせた。

「ん・・・ん!」

鋭すぎる快感に苦しそうな声を漏らす千秋が、まだ抵抗する気なのか少し身体を起こした。
彩子は早く千秋の理性を消し去ってやろうと千秋の前に身を投げ出し、更に激しくそこを攻めた。
千秋は顔を上げ、自分の下半身にしがみつき、必死の形相でそれを口にしている女を見た。

別れたはずの女。
桃ヶ丘のお嬢様、王女様とも言われた、美しく上品で、気高い歌姫。
美しく澄んだ歌声とは裏腹に、内に秘める激しい感情や情熱を、いつも俺だけに向けてしまう。
俺は付き合いきれずに投げ出してしまった・・・。1年も前のことだ。
また戻りたいとは思わない。でも・・・。

「彩子・・・」

千秋は上半身を起こし、彩子の頭を手で押して自分から無理矢理に引き離し、
その腕を引いて抱きしめた。
突然抱きしめられた彩子は少し驚いたが、すかさず彩子のシャツの上から
胸を揉み、ふくらみの間に顔を埋める千秋に

(やった・・!)

と心の中でつぶやき、興奮した。

千秋は彩子を静かに押し倒すと、シャツのボタンを上からひとつひとつはずして、
露わになった色気たっぷりの黒いレースの下着も鑑賞することなく
背中に手をやったかと思うとすぐに器用にはずしてみせた。
やさしく胸のふくらみを両手で揉み、すでに赤く固くなっている乳首に口を付けると
先端を舌で転がし、時々やさしく歯で噛んだ。
彩子は形が崩れるから、と乳首を吸われるのは嫌がるのだ。

「あ・・あん・・!」

自分の感じるところをよく知っている千秋の愛撫に、彩子は
ご満悦で声を漏らす。

気が付くと千秋の手はもう、彩子の大事な部分に進入している。
下着の中に入れられた千秋の右手はすぐに溢れる蜜に襲われ、クチュクチュと
卑猥な音を奏でる。

「ああ・・・あ・・あん・・」

千秋は彩子の下着を脱がせると、一番感じる敏感な突起部分に口づけ、舌でやさしく転がしながら
二本の指を彩子の奥深くまで押し込み、ゆっくりと出し入れすると、
彩子の呼吸に合わせて、次第に速く激しいリズムでそこを突いた。

グッチュ、ギュッチュ!グッチュ・・。

「あ!ああ!あ!」

大きく開かれた彩子の大事な部分から飛び出す水滴がびちゃびちゃと千秋の手をぬらし、
フローリングにも水玉をいくつも落としてゆく。

「あ・・!いや・・真一・・入れて・・ああ!」

千秋は彩子の身体を抱きしめて持ち上げ、お姫様だっこで水滴の落ちている場所から離し、
スカートが濡れないように丁寧に脱がせてやると、自分もジーンズと下着を脱ぎ、
大きく固くなっている千秋自身を、彩子の赤く興奮した花びらにあてて
クチュ、クチュ、と蜜で濡らしてから、ゆっくりと奥へと進入させた。

「ああ・・・!!」

彩子は声を上げ、自分の上でゆっくりとやさしく腰を動かす千秋の姿を見た。

「ん・・はあ・・はあ・・」

甘い息を漏らしている千秋。

まだ乾ききっていない、美しく艶のある黒い髪。端正な眉毛に長い睫が
ときどき快感に歪んでいる。

彩子は数日前に見た、彼のあの美しいラフマニノフの演奏を思い出す。
甘く、やさしく響く第2楽章・・。
千秋の繊細な指先が鍵盤を流れ、綺麗な水紋を作って会場に広がり
その水紋は次第に大きな波となって私たちを襲った。

その神様のような男を今、私がこの手に抱きしめている。
あの時と同じような快感の表情を、私だけに見せている。

そう思うと彩子はまた喜びに胸を締め付けられた。

「・・満足か?」

そのとき、千秋がそう呟き、彩子は一瞬心が凍った。

青冷めて目を見開く彩子を、千秋はやさしい表情で見つめていた。

(ああ・・嫌みじゃないんだ)

そう判断した彩子は少しホッとする。

「おい、いくぞ」

そう言うと千秋は彩子の足を両脇に抱え、下半身を高く持ち上げ
上から覆い被さり、彩子の奥深くを激しく突きだした。
彩子の好きな体位。でもそれは千秋によって作られていった彩子の・・。

「ああ・・・!!!あ!ああ〜!!あ″ーー!!」

彩子はたまらずに大きな声を出す。最後の声だけ枯れただみ声になった。

「こら、のどに悪いからそんな声出すな」

少し笑って千秋が言う。

よく言われたその台詞・・・。

彩子の目に涙が溢れた。

(真一ほどやさしい人はいなかった。
真一ほど、私の歌を想ってくれる人も。
なのに私は・・・・)

彩子はこの1年、自分の歌が思うようにならない苛立ちを
違う男たちで埋めてきた。そして再び千秋の音楽に魅せられて、
千秋自身を手に入れることで音楽への思いを昇華させようと
していた自分に気が付いた。

(たぶん真一は、わたしが歌をあきらめようとしていたとは思っていない。
いつもの八つ当たりだと思って、それでも私のために・・・
私に恥をかかせないように・・・わたしの歌のために・・・)

「あ・・あっ・・・ああ〜!!」

千秋のやさしく激しい腰の動きに、彩子は泣きながら声を上げる。
千秋もその美しい声に聞き惚れながら、自分も彩子も頂点に達していくのを感じた。

「彩子・・・もう・・・あ・・あ!」

千秋は素早く彩子から身を離し、彩子の腹の上あたりに射精しようとしたが、
それは勢いよく胸の上を貫き、彩子の顔にまで達してしまった。

「・・・・ごめん」

少し青ざめた千秋の、たまにみせるおまぬけな顔がそこにあった。
彩子の流れ出る涙はそこで止まり、ぷっと笑って

「真一、たまってたのね」

と最後の反撃をしてみた。

「あ〜〜・・・」

千秋は恥ずかしそうに赤くなって、ごろんと彩子の横に転がり、顔を手で覆った。

「そうかも・・」

と、小さく呟く千秋。

彩子は自分と別れてからの千秋の1年が、あいかわらず音楽に没頭する日々だった
ことを思い、うれしさと共に大きな喪失感を感じていった。
いくら身体を合わせても、もう取り戻せないほど遠くにいってしまった彼の心。

(もしもまた振り向かすことができるのだとしたら、それはたぶん・・・・)

ガチャン・・。

シャワーを浴び、元通りにきちんと服を着て完璧にメイクをした彩子が
バスルームから出てきた。
またジーンズをいいかげんにはいたまま、すでに深い寝息を立てている千秋が
フローリングの上に転がっている。

「さて、わたしも家に帰って練習しなきゃ!」

彩子は、宣言するように、誓うようにそう言うと、千秋にそっと口づけた。

「さよなら」

彩子は勢いよく玄関の扉をあけ、カツン!と高く鋭いヒールの音を響かせ
千秋の部屋から出て行った。

次に会うときは舞台の上だと思いながら。






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