触るだけ
千秋真一×野田恵


「……触るだけ、指で」
「ダメです、汚れちゃいマス……」
「いいよ」
「そんな……そんなの……」

昨夜のお礼を返したいんだけど、と申し出ると、のだめは顔を真っ赤にさせてたじろいだ。
具合の悪そうなのだめを見守りながら、結局ずるずると今夜もここに泊まっている。
耳元ではっきりと大丈夫だと囁いて背中を撫でてやると、のだめは潤んだ瞳でオレを見上げた。
そして、本当にいやならやめるけど、と髪を撫でて耳にかける。
のだめは目を伏せて少し考えている様子だ。

「……寝るか」

多分きっと答えはNoなんだろうと思い、ちょっと困った様子に助け舟を出す。
のだめがいいというならそれで。
アレが終ってから、十分楽しめばいいんだし。

「……ちょっと、待っててもらえますか」
「え?」
「すぐ、すぐですから」

のだめはベッドを抜け出て、バスルームへと走りこんだ。
がさごそと何かしている音と、それから水の音……何してるんだ?

5分ほどの時間はやけに長く感じて、何度目かのあくびをしたところでのだめが静かにバスルームを出てきた。
そしてまた小走りでベッドへ戻り、そしてオレの腕の中へおさまった。

「……お待たせしました」
「何?」
「洗って、タンポン入れなおしてきました……」
「えっ。じゃあ……」

のだめは目をぎゅっと閉じて、心底恥ずかしそうに小さく頷いた。

その返事を受け取り、パジャマの胸元のボタンを二つ三つ外して手を差し入れた。
そのままのだめを仰向けにし、二つの膨らみが見えるように合わせを開く。
丸い乳房を手のひらに含んでそっとそっと静かに揺さぶると、のだめがシーツをぎゅっと握りしめるのが見えた。
もう片方には唇をかぶせ、突起を舌で転がしては音が鳴るほど吸い上げる。
のだめから声が上がり始めるが、いつもならはっきりと「気持ちいい」と言いたげな声なのに、なんだか様子が違う。

パジャマの前をすべて開け、腹の柔らかく滑らかな肌を撫でつつ手を下へずらし、
ズボンのウエストゴムをかいくぐって中へ進入させると、少しだけのだめの体が強張った。
ショーツの上から丘の部分に触れただけで、「イヤ」と足をぎゅっと閉じる。

なんか、これって……初めてしたときみたいだ。
体を硬くして、オレが新しいところに触れる度にびくんと驚いていた、あの時ののだめのような。
顔をのぞきこむと、あの時と同じ、目をぎゅっとつむっていた。

「のだめ……」

真横に結んだ唇をほぐすようについばむと、のだめはゆっくり目を開けてオレを見た。

「……はず、かしい……」

どうした、とも何も言わないのに、のだめが答えた。
のだめも、いつもと違う自分の体の感じ方に戸惑っているように見える。

「大丈夫……足、開いて?」
「ん……やん……」

緩んだ足の間で、クロッチの中心に中指をつうっと辿らせると、のだめはまたびくっと体を揺らした。
ふっくらと柔らかな恥丘を手のひらに包み込み、緩やかに指を上下に往復させると、のだめの吐息は途端甘くなる。

「寒くないか?」
「はい……へーきデス」

ズボンをショーツごとひき下ろそうとすると、のだめはヒップを上げて手助けしてくれた。

「……紐じゃないんだ」
「いちいち観察しないでください……むっつり」

下半身が冷えないようにブランケットをへその辺りまでかけ、その中で露になったのだめのそこへ指を伸ばした。
……いつもならぬかるみきっているはずのそこが、潤んでいない。
このまま触れても痛いだけだろうと思い、指に唾液をまとわせ、再びそこを目指した。

「あぁ……ん」

閉じたままのスリットに唾液をなじませるように指を往復させ、時々揃えた指で突起を
大事に隠しているあたりを円を描くように揉み込んだ。
速くなったのだめの息は、その合間にだんだんと甘さを含んできた。
こわばっている上半身をなだめるように髪を梳き、唇を啄んでやる。
緊張が少しほぐれてきたのか、握りしめていたパジャマの生地を離し、オレの首に腕を回してきた。
お腹が痛い、と心持ち青白かったのだめの頬が、今はぱあっと赤味が差して、ふっくらとおいしそうだ。
そのふくふくとした頬にキスしながら軽く歯を立てた。

「やぁん……桃じゃないデス……」
「いや、似てるし……こっちも」
「あ、ん」

産毛があって、おいしそうなピンク色で、触れると弾力があって、でも表面はすべすべと滑らかで柔らかい。
そのおいしくみずみずしい桃の内面に触れるべく、指先を内側へ潜り込ませた。

「ひ、あ!」
「ごめん……」
「だ、いじょ……く、ふぅん」

こりっと膨らんだボタンにいきなりたどり着いてしまったので、のだめはその衝撃に背を反らせた。
内側は蜜で満たされていて、思いの外滑りが良かった所為だ。

もう一度ごめんと呟きながら、ぴくぴくと震える瞼に唇を落とした。そして、今度は優しく指の動きを続ける。

「あの、真一くん……」
「なに?」
「触るの、そこだけで……」
「ここ?」
「は、ぁん!」

とんとん、とノックをしてやると、のだめはこくこくと頭を縦に振った。
この小さなボタンだけ……まあ、のだめの一番敏感なところだ。
指に当たるその蕾は、見なくてもどんな状態かわかる。
快楽を溜めて膨らみ、丸くその存在を主張して、けれど恥ずかしそうにフードをかぶったままで……。
愛液で滑りのいいその膨らみを指の間に挟み、そっと前後させると、のだめは更に膝を緩めてくれた。

「あ、あぁ……はぅ……」

少しのけぞりながら、のだめは甘い声を出す。
首筋を辿って白い胸元へ降り、つんと尖った果実を口に含んだ。

もっと、と言いたいのか、やめて、と言いたいのか、のだめはオレの髪をぐしゃぐしゃとかき回す。
口の中でぷるんと弾ける突起を舌でこねたり、きゅっと吸い上げたり、軽く歯を当てて擦ったり。
そうしていると、何もしていない方の突起も反応して、次第に縮み、尖っていく。
そのかわいらしさを眺めつつ、更に膨らんできた気がする下の蕾の、フードを引き上げた。

「やんっ、やっ……あぁ!」

もう強い刺激はしないで、のだめの分泌した濃厚なとろみをまぶしてから手のひらで包み、静かに震わせるだけ。

のだめをいかせるだけなら、正直言って簡単だ。
特に、この場所なら敏感すぎるこいつなら尚更、かわいそうなほど感じすぎてしまうから。
でも、それだけではなく、「気持ちよくいって」欲しい。
ゆっくりと快楽を味わって、その先で頂点へ。その方がずっとずっと、高みを感じられるだろうし。
その瞬間が間近なのか、のだめはオレの腕の中で目を細く開いた。
濡れた眼は揺れ、半開きの口はもう、甘い吐息しか生み出さない。
息のつなぎ目はちょっとしゃくり上げるようになって、快楽の中に漂っている事を示している。

登りつめるのを我慢し、耐え、ギリギリのラインにいるのだめの顔には、幼さとあどけなさの中に
限りなく女であるという色が見える。
いつもそうだ。
この顔を見ると、自分がのだめを女にしたのだという優越感のような、そんな感情が湧く。
オレしか知らないのだ、こののだめを。

「だ、め……も、う……」

手のひらに包んだのだめの秘部は愛液で溢れ、波打たせる動きに次第にその音を大きくしていた。

……タンポン入っているのに、こんなに溢れるのか。
そんなことがふと頭をよぎる。
確かめるように指を奥へ伸ばしてみると、何かに触れた。
それを辿って……ああ、これ、紐……。

「……! いやっ、だめ、だめ……っ」

紐が伸びている入り口へ指を進め、そのまま第一関節あたりまで押し込んだ。

「あぁぁ!!」
「すげ、とろとろ……」
「ゆびっ、ダメ、やっ、だめ……!」

待っていたかのようにほころんだ入り口は、オレの指を2本飲み込そうとひくつき、誘う。
くるくると撫でてはほんの浅く指を入れ、こね回した。
いつもよりも粘度の高い蜜がそこには溜まっていて、ひくひくとした肉のうごめきが淫らだ。

「ん、もう、せんぱ……だめっ、やぁ」
「指、欲しい?」

のだめは「ダメ」を連発して、首をぶんぶんと横に振る。
オレの動きを阻みたいのか足をぎゅっと閉じ、しがみついてきた。
すすり泣くように声を上げ、イヤイヤと哀願される。
指も、そっちも、「ダメ」だと。

オレはそれ以上は出来ずに、ただ手のひらでのだめを愛撫していく事にした。
柔らかな恥丘ごと包み込み、力を入れたり緩めたりして、快感を送り込む。
と、のだめは苦しそうに息をしながら、再び腰を震わせ始めた。

「しんいちくっ、しんいちく……あぁっ」
「のだめ……」

そして喉の奥で小さくかわいく、恥ずかしそうに「いく」と呟いてから、一番高いところへとのぼりつめた。
仰け反った体が大きくぶるっと震え、一番高いキーでのだめが啼く。
切なげで、でも幸せそうな、鼻にかかったとろけるように甘い声だ。

しばらくの硬直の後、ゆっくりと体を弛緩させ、息を吹き返したかのように大きく空気を吸い込んでは吐く。
涙のにじんでいる顔にいくつものキスを落としながら、余韻がすぐに消えないように、
ぎゅっとのだめのその部分を圧迫した。
痙攣しているかのように、ぴくぴくと襞と入り口が動いているのを感じながら。

……入れたい。
こんなに誘われて、でも入れられない。
『欲しくなっちゃうからダメ』なのは、オレだって同じだったのだ。

「せんぱい……」
「ん……」

せがまれるのに応えて、のだめの唇に自分の唇を重ね、もどかしい思いを抱えながらも濃密なキスを交わした。


○  ○  ○  ○  ○  ○  ○ 


「……何怒ってんだよ」
「だって」
「だってなに?」

絶頂の後、しばらくして我に返ったのだめは、オレの腕を強く引いてバスルームへ行き、
オレの手をソープでゴシゴシと洗いはじめた。
そして「あっちいって」とばかりに追い出され、再びシャワーの音がして……。
何度目かのあくびをしたところでのだめが静かにバスルームを出てきた。

さっきと違うのはオレの腕の中へ来ずに、オレから一番離れたベッドの端にいることだ。
しかも、背中を向けて。

「ダメって言ったのに……そこだけにして、って言ったのに……」
「イヤ、だって不思議で」
「何がデスか」
「タンポン入れてるのにすげー濡れてたから」

どうなってんのか確かめたくなったんだと言うと、のだめは更に身を縮めてブランケットの中に潜った。

その背中ににじり寄り、小さくなっている背中をに体をぴったりと重ねる。
その体が微かに震えてる気がして、泣いているのかと慌てて抱きしめてみた。

「もう……先輩、意地悪……」
「悪かったよ……そんなに恥ずかしがることもないだろ」
「……」

そっと殻をむくように、頭の方の隙間からプランケットをはだけていくと、
乱れた髪の後頭部と、白い首筋が露わになった。
耳朶は紅く染まっていて、きっとのだめは顔を真っ赤にしているんだろう、と容易に想像がつく。
そうだ。そんなにまで、恥ずかしがることもないのに。

射精の瞬間を凝視されるのと、どっちが恥ずかしいんだか、とくだらない比較をしながら
耳の後ろにきつく吸い付いた。

「恥ずかしいだけじゃなくて……」
「ん?」
「言ったじゃないデスか。欲しくなっちゃう、って」
「ああ、うん……」
「あっちの方……先輩のが入る……そこ触られると、入れて欲しいって、なっちゃう……んデス。
……だから、触って欲しくなかったんデス」

そう言うのだめがすごくかわいく、愛しく思えて、抱きしめる腕を強めた。
鼻を啜るのが聞こえて、小さくゴメンと呟く。
密着しているのだめの体に、オレの体の変化したその固さが伝わったのだろう。
のだめは微かに身じろぎした。

「……やだ、先輩」
「しょーがないだろ……でも、オレも我慢するから」
「我慢?」
「気持ちよさそうなおまえ見てると、入れたくなっちゃう。でも我慢」

あとどのくらいで終わりそうなのか聞くと、三日くらいだとのだめが答える。
それじゃ、三日後は一日中やらしい事してるか?と誘う。
今度は、防音のちゃんとしたオレの部屋の方で。

「ばか……すけべ……むっつり……変態」
「それはおまえだろ」

漏れ聞こえたくすくす笑いに安堵して、襟足に鼻先を埋めた。
ボディソープのほのかなフローラルが、今日は心を落ち着けてくれる。

「おやすみ」

……もう言葉は返ってこなくて、静かな寝息が聞こえてくる。
のだめの下腹部を温めるように手のひらを当て、オレもそのまま眠りの世界へ深く沈んでいった。






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