レッツダンス(非エロ)
千秋真一×野田恵


「わっほーw 今日もおいしそうですね?」
「…エスカリバーダとアルボンディガス」
「ふぉーー、呪文料理!いっただきま〜す」

相変わらず人のうちに勝手に押しかけてずうずうしく飯を食っていく。
長野で大量の飯があったパーティーにも出てこず
真澄曰く「チンパンジーみたいにふらふら」していたのに、
戻ってみたら、やはり以前と変わらず良く来る良く食う…
本当になんだったんだろう―

「む〜ん、これ甘くておいしいです!ワインじゃないんですか?」
「… サングリア」
「こっちの肉団子もおいしくて、本当先輩天才!!」

手放しで誉められると少し照れるが、悪い気はしない。
のだめは、満面の笑みでアルボンディガスを食べ、サングリアを飲む。

「ちょっと暑い中で飲むサンゴリラって、ぴったりですね!
暑がりの先輩が冷房切っているから、電気止められたのかとびっくりしましたけど」

バッコッ

「ふぎゃ!」
「お前と一緒にすんじゃねぇ!っつーか サングリア、なんでゴリラだよ…」

のだめと同じ扱いにされた事に多少腹は立ったが、俺様の思惑に気が付いたのだめは
なかなか良い感をしている。冷房がガンガンに効いた部屋にはサングリアは合わない
少し暑いが、一時間前に冷房切っておいたのは正解だな。

殴られた事をものともせず、料理にがっついているのだめを横目に
グラスのサングリア(オレのはカヴァで割ってる)を飲み干した。

「あ、先輩。サンゴリラ、お替りいりますか?のだめ作りますね!妻だから」
「妻じゃねぇ!つーっか、サングリア。何度言わせんだよ。」
「まーまー、細かい事は気にしない。あ、のだめの分もお替り作ろう。」
「ばが、これはダメだ」

のだめがオレ用のカヴァで自分の分を作ろうとするので、慌ててとめる。

「お前の分はソーダで割れ。」
「えー、けち。」

のだめはぶつぶつ言いながら冷蔵庫に仕舞われたソーダを取りにいった。

「むきゃー、プリン!プリンがあります。デザートですか〜〜〜?やったー!」
「ばか、誰がお前の分だって言った… こら、人の話を聞け。勝手に持ってくんな」

オレが止めるのも聞かずのだめは勝手にデザートを持ってきて、
止めるまもなくがっつこうとしている。

ボコッ

「おい、聞いてんのか。誰が食っていいといった。だいたいお前はソーダを取りに行ったんだろ」
「ふぉぉ、そうでした。のだめもサンゴリラ飲むんでした」

問答無用で殴りつけて、そもそもの目的を思い出させるとのだめは慌ててソーダを取りにいく。
今のうちにのだめからデザートを遠ざけておくと戻ってきたのだめはすぐに抗議の声を上げた。

「あー、のだめのデザート!」
「誰がお前のだよ。ってゆーか、まず飯を食い終わってからだろ!」
「あ、そうですね。ついつい美味しそうだったので。じゃあ、食事が終わってから食べましょう」

のだめはそういうと、自分の分のサングリアを作り食事を再開した。

「ふぃー、ごちそうさまでした」

のだめは満足そうに手をあわせると、極自然にデザートに手をのばしてきた。

「・・・おい、誰が食っていいって言った」
「えー、でもさっき、デザートは食後って言ったじゃないですか!いっただっきま〜す」
「む〜ん、このプリン、本当においしいw とっても濃厚!さっすが先輩。何を作っても天才デスね!」
「・・・(照)まぁ、プリンなんだけど。これはフラン・デ・イェマ」
「ふぉーー、呪文デザート!」

満面の笑みを浮かべながら大絶賛するのだめを横目にオレも一口食べてみる。
― うん、確かに・・・さすが俺様だ。

視線を感じて横を見ると、のだめが皿を舐めながらオレのプリンをじっと見つめている。
無視して、一口。・・・視線が痛い
さらに無視してもう一口。

オレは深いため息と共に皿を差し出した。

「ほら、食え」
「ほぇ?でも、先輩の分ですよ?」
「そんな恨めしそうに睨まれながら食えるか。いいから、さっさと食え」
「いいんですか!それじゃ、遠慮なく」

のだめの視線に根負けしたオレは結局三口食べただけだった。
勢い良く食べるのかと思いきや、今度は一転、ゆっくりゆっくり味わうように食べている。
まあ、甘いのは苦手だし。喜んでるし。
オラウータンみたいになってるよりは、よほどのだめらしいだろ。
うん、作った甲斐があっ・・・って!別にのだめのために作ったわけでは!?
一人アタフタしていると、最後の一口を名残惜しそうにしていたのだめに言われた。

「先輩?どうしたんですか?顔、赤くないですか?」
「!! はぁ?何いってんだよ!
しっかし、本当に良く食うな。この調子なら確実に豚になるな!」
「むっきー!何言っちゃってるんですか!乙女に対して失礼な!」
「ど・こ・が、乙女だよ!大飯ぐらいで、風呂嫌いのくせに!」
「お風呂は関係ないでしょ」
「ふん、食ってばかりで。今日ので確実に2kgは太ったな」
「し、失礼な!のだめだって運動してるんです。見ててください!むきゃーー」

のだめは、いつもの奇声と共に駆け出していった。

――――― 10分後 ――――――

ガシャガシャ

― たく、結局片付けもせずにただ食いかよ!

のだめが片付けも碌に手伝わないのはいつもの事なのに、今日は何故だかむしょうに腹が立つ。

ザーー、ガチャガシャ 

バン!ドタドタ ガチャッ バタバタ

隣の部屋のドアが乱暴に閉まる音がしたかと思うとすぐに自宅のドアが開く。

― のだめだ・・・
そういえば、あいつが出て行った後、鍵閉めていなかったか。
今更なんの用だよ!ムシムシ。

まるでのだめなど居ないかのように、洗ったばかりの皿拭きに精を出す。

・・・・・・

バタバタ
カチャ、ピッ。 

・・・・・・

「おい、何を勝手に・・・うゎっ!!」
「むーん、のだめだって運動してるんです!これからプリンの分運動しマス。
見てて下さい!むん。」

のだめは勝手に持ってきたビデオを再生させていた。
それは、いい。いつもの事だ。

チャカチャカ、チャカチャカ

メレンゲか・・・なんでごろ太でメレンゲ?

「おい、なんなんだ、それは・・・」
「何って先輩知らないんですか?大ヒット中の コシリズム!ごろ太バージョンです。
最近は子供のメタボも多いから、ごろ太がダイエットに一役かってるんですよ〜」

のだめは画面の中のリオナの踊りを真似ながら、ビデオの説明をする。
まだ準備体操なのか、メレンゲのリズムに乗って腰を右に左に振りっている。
少しへっぴり腰のせいか、スリットが大きく開き、程よく引き締まった太ももが白くまぶしい。

「そうじゃなくて!お前、なんでそんなカッコしてんだ」
「もう、先輩うるさいな〜。なんでってダンスなんだから、それなりの格好しないと〜」

文句を言いながらも、のだめはリオナのまねをして、今度は腰を前後に振っている。
腰を引くときに前へ突き出される胸はカップから零れ落ちそうで… 

そう、のだめは何故かさっきまでのワンピースから着替えていた。
体のラインもあらわな黒のミニワンピースはデコルテ部が大きく開いて、頼りなく細い肩紐は首の後ろでゆるく結ばれている。
胸を強調するように深い真紅で縁取られたカップ部は、のだめの白い肌と零れ落ちそうな胸を強調している。
膝上30cmのぴったりしたタイトスカートはやはり真紅のレースで縁取られている。
ただでも短いスカートなのに、深くスリットが入っている。 

テレビ中のリオナの指示に従って、のだめは腕を上にあげ腰を回している。
オレはいやに露出の激しいのだめとリオナがメレンゲのリズムで踊っているのを呆然と眺めていた… 


――――――

「せんぱ〜い?」
「うわぁ!… なっ、なんだよ!」

ふと気が付くと目の前にのだめがいる。
大きく開いた胸元は汗ばんで、きらきらと輝いている。
激しく動いていたのか、ただでも短いスカートがたくし上がり、ただ立っているだけなのに
真っ白な太ももが露わになっている。

「先輩も一緒に踊りましょう!」
「はぁ〜?なんでオレがこんなおかしな事しなくちゃならねーんだよ」
「えー、だって見ているんだから一緒に踊りましょうよ?
ちょうど、二人で踊るダンスになりましたし」

DVDではいつのまにかレゲトンになり、ごろ太とリオナが踊りの解説をしている。
ごろ太は後ろからリオナをの腰を支え、タイミングを合わせて腰をふっている。ちょうどバッグみたいなかっこで・・・

「…ふ、ふざけんな!誰がやるか」
「えー、いいじゃないですか、これのだめ一人ではできないですよ」

ごろ太とリオナは向かえあわせになり片手をつないだ形になっている。
リオナは腰前後に振りながら腰を落とす。ちょうど顔はごろ太の腰のあたりだ。

― これって・・・ 

「じょ、冗談じゃねぇ。誰がやるかこんな事。
っつーか、なんでこんな踊り子供向けアニメキャラがやってんだよ!」
「だって、先輩が太るっていうから運動してるんじゃないですか!
先輩には協力する義務がありますよ!さぁ、やってみましょう!」

そう言いながら、のだめはオレの左腕につかまると踊りだした。
人魚が水面の浮かび上がるように体を前後させる。 
のだめが腰を左右に振りながら体を前後にしならせるたびに胸があたり、
白く眩しい光が目に刺さる。 

「ほら、先輩も!腰を落として、一緒にやってください」
「へっ? ば、ばかっ。はなッ…」

汗に光る胸元と腰のあたりを刺激する感覚に呆然として、反応が遅れたが慌ててのだめから離れようとする。

「あっ、向きは反対ですね!」

テレビの中のリオナはごろ太に背を預け、後ろ手に首を抱えるようにして踊っていた。
引き離そうとしたのだめに、急に向きを変えられてしまい、一瞬反応が遅れ、ごろ太とリオナと同じ体勢になってしまう。

「ほら、先輩も腰を落として!」

のだめはリオナの真似をして、ゆっくりと腰で円を描くように踊りだした。
最初はへっぴり腰ではなく、ビデオと同じような滑らかな動きだ。
のだめに首に抱きつかれているため、腰は少し落とし気味になり、のだめの耳元にオレの顔があたる。
リズムに合わせて、腰の回転は速くなるが・・・

「・・・くさい・・・」
「へっ?」
「ふざけんなー!離れろ、変態!!」 
「ぎゃぼーーーー!!」

のだめを無理やりひっぺがし、放り投げた。

「いい加減にしろ!」

オレは怒鳴りながらDVDを取り出し、のだめを抱えてのだめの部屋に向かう。

「ひどい、ひどいです!先輩」
「二度とくんな!変態!」

のだめを家に放り込み、DVDを投げつける。
のだめが”鬼ー”とわめいているのが聞こえたが、無視して家にかえり、今度はしっかりと鍵をかける。

はーーーー。

オレは玄関によりかかり深くため息をついた。
今、熱くなっているのは、気のせいだ。気の迷いだ。
とりあえず、風呂… 入ろう。

熱いシャワーを浴びながら、のだめが風呂嫌いであった事に感謝した。 

――――――――――――――――――

ふと気が付くと、のだめがオレの胸に手をつき、覗き込んでいる。
驚くオレをよそに、何も言わずに密着させた腰をゆっくりと動かしだす。
干満な刺激なのにあっという間に、何たること、自己主張をはじめる。
このままではダメだとわかっているのに、ゆっくりとした、だが、的確に与えられる刺激にオレは言葉もない。
いつの間にかオレは上体を起こし、のだめと抱き合うような形になっていた。
腰の動きに合わせて胸がやわらかくおしつけられる。
のだめの腰の動きはだんだん早く、小刻みになっていく。

― このままでは、本当に・・・
なんとかどかそうと思っているのに、声は全く出ず、のだめを押しのける事もできない。

強く押し付けられた腰の動きに限界を感じた時、

『・・・っ、や、やめろーーーー!』


見上げると、そこは見慣れた天井で、誰の気配も感じない。

「・・・のだめ?・・・」

見回してみるが、のだめの姿は影も形もない。

― 夢か・・・ 
  なんっー夢だ。最悪・・・ 

まだ夜明けまでは少し時間があるようだが、とても眠る気がしない。
もう一度シャワーをあびてから、いつもより一時間早くランニングに出かけた。 

オレは大学の練習棟に向かうべく、構内を歩いていた。
今日は、シュトレーゼマンに大学祭で弾くラフマニノフを見てもらう約束になっていた。
夕べはあまり眠れなかったため、体調は最悪だが・・・

「・・・嘘つき、ダ・・・全然・・・メでしたよ。しっぱ・・・」
「おー、そうで・・・ 何故で・・・ 私・・・練習に付き・・・あげま・・・」

練習棟までもう少しの所で、中庭のほうから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
引き寄せられるように、声のほうに歩いていくと、中庭の木陰に潜むように
のだめとシュトレーゼマンが何か話している。
シュトレーゼマンはのだめから何か黒い布?を受け取っているようだ。

「ちゃんと、これは着たんですか?」
「もちろんデス!これ来て、レゲトンで踊ってみましたよ!
でも、踊りにもちょっとしか付き合ってくれなかった上に、部屋から追い出されちゃいました!
先輩と絶対仲良くなれるって言っていたのに、ミルヒーの嘘つき!」
「オ〜、なんででしょう?絶対、成功すると思ったんですけどネ。
どんな風にしたのか、のだめチャン、これ着て試しに私の前で踊ってくれませんか?」
「え〜、なん・・・ 「おい!昨日の騒ぎはあんたのせいか!」」
「[ヒッ!」」

オレが居ることに全く気が付かなかった二人は、ドス黒い声に息を呑んで固まっている。

「ち、千秋… ご機嫌よいようですね」
「ジジィ・・・」
「あっ、ミルヒー、またね!」

オレの機嫌が非常に悪い事を敏感に察知したのだめは、矛先がシュトレーゼマンに
向いているうちにと、慌てて逃げ出そうとしている。

「あ、のだめちゃん!私を置いて逃げるんですか!」
「じゃ、じゃあ、先輩また夕飯で!」

走って逃げ出すのだめはとりあえず、夕飯の時に絞めるとして、今はシュトレーゼマンだ。

「で、どうゆう事なんですか?昨日のはあんたの差し金か」
「いえ、のだめちゃんが千秋が冷たいっていうから。男なら必ず優しくなる方法を
伝授してあげたまでで・・・」

答えないオレにシュトレーゼマンはニヤニヤしながら続ける。

「でも、千秋?このワンピース、良くなかったですか?それにレゲトンも。最新のセクシーダンスですよ?
あ、お子様な千秋にはもしかして刺激が強かったの・・・」
「ふ、ふざけるなー!」
「あーーーーー!」

オレはシュトレーゼマンからワンピースを取り上げると
思いっきり引き裂き、端切れと化した元ワンピースを投げつけた。






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