運命の夜
千秋真一×野田恵


「ずっと一緒ですよね?」・・・・・

何も言わずに腕の中ののだめをしっかり抱きしめた。
やわらかな膨らみの感触と、ほのかな香り。

(シャワー、浴びてたのか……)

―幸せだ―……。
今夜は、会えると思っていなかった。
会わないほうがいいのかとも。のだめのほうから部屋に来てくれて、
祝ってくれるなんて。
まだ、今夜の演奏会の興奮が残っている。火照った体はあの感動のせいなのか、
普段からは考えられない積極的なのだめの態度のせいなのか。

(いつもと違う…でも、こいつにとってあの演奏が、
いい刺激になってくれたなら… 俺は…喜んでいいのか?)

心の奥に何かが引っかかる気がしながらも、すでに理性の糸が切れる音がした。
さっきのシャンパンの香りが残る唇を夢中で貪る。

「…ん…っふ……」

・・・・・(のだめのこと好きですか?)・・・・・

(そんなこと……いまさら言わなくても解ってるだろ…)

もう何度となく抱きしめた体なのに、のだめはいつも新鮮で、ミステリアスで。
吸い付くような肌が気持ちいい。昔はよく変な匂いさせてたのにな…。
こいつは変わった。体も、ピアノも―。
感じてくれて嬉しい。もっと、もっと二人で色々感じて… …一緒に。
ワンピースの胸元からこぼれる胸をいつもより乱暴に掴み、
しっとりとした感触の谷間に顔を埋めた。

「…っあ……せん…ぱい…待って」「ん…?」

俺、凄く…興奮してる…?

「なんか…話してくだサイ…」

月明かりが濃い影を落とし、のだめの表情が読み取れない。
今夜はのだめが明かりを嫌がったから。もっとよく見たいのに…。

「ごめん、そんな…余裕無い…」
「あ……!ん……っ」

一気に貫きそのまま腰を激しく動かす。慣れ親しんだはずなのに
初めてのように絡みつく熱いのだめの中に、何度も。

「のだめ……のだめ…!」

(全部、好きだ……)


こんなに我を忘れた事はなかった。
柔らかい体を抱きしめて、何度ものだめの中で果てた。
のだめの目に滲んだ涙を唇で吸う。

(のだめ……?)

「おやすみなサイ…」

心地よい疲れと共に、のだめを抱きしめたまま深い眠りに落ちていく。

(のだめ、ごめん……)

何かが消えない棘のように胸に刺さったまま・・・・・。






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