春の日の昼下がり
千秋真一×野田恵


ぽかぽかと眠くなるようなある春の昼下がり。

「はぅ。さすがにちょっと疲れましたかね……」

満足のいく公演を終えてのだめはようやく自宅に帰ってきた。
確かに疲労感はあるのだが、それ以上に、満ち足りたうっとりするような興奮の名残りが
気分を高揚させていた。
はやく彼に今度の公演の事を伝えたい。
それから……

「ただいまデス!」

ほぼ1ヶ月ぶりの我が家はとろりとした金色の光に満たされていて。

「真一くん……?」

求める人の姿は見当たらない。

あわてて冷蔵庫脇の2人のスケジュール表を確認する。
確かに今日は彼のオフの日のはずで。

「お買い物にでも行ったんでしょうかネ?」

とりあえず荷物を置きましょう、と寝室のドアを開けると、

「ほわぁ。」

思わずあがった声を飲み込んだ。

「ひさしぶりですネ。真一くんがお昼寝だなんて。」

まだ次の公演には間があるはず、ひょっとしてまたミルヒーのお供で?
なんだかクスクス笑いが止まらない。
そうっと癖のある黒髪に手を伸ばす。
この寝顔を独占できるのは、自分だけ。

「はうん。」

しばらく、うっとりと彼の寝顔を見つめていたが、

「よく寝てますネ……」

ちょっとだけ、と言い訳しながらそっと隣にもぐりこんだ。
小さくじゅうでーん、と呟いて彼の胸元に鼻をすりよせる。
彼には、「猫じゃあるまいし、それやめろ」としょっちゅうブツクサ言われるけれども。
でも仕方ない、こうして彼の匂いにつつまれていると、安心とも喜びともつかない、
お腹の底からくすぐったいような、不思議なドキドキした気分になる。
ほんとに猫だったら、ゴロゴロのどを鳴らすことができるのに。

ほぼ1ヶ月ぶり、だから嬉しくて気づかなかった。

「お前、くすぐったい」

いきなり頭の上から声が降ってきて、あ、と思う間もなく。
組み伏せられてしまった。

「えと……」

なんだか急に恥ずかしくなって目をそらしてしまう。

「ん?」

おずおずと目をあわせると、優しい彼の目。
こんな目でみつめてくるなんて反則だ、といつも思う。

「ただいまデス……」
「おかえり」

1ヶ月ぶりのキスは甘くて。
だんだんと激しくからんでくる彼の舌に頭の芯がしびれてくる。

「あの、あの、真一く、ん、」

キスの合間にやわらかに乳首を弄られて、

「なに?」
「あ、や、あぁぁん、ん……!」

耳朶に舌を這わされ、高い悲鳴をあげてしまう。
耳は、だめ。
背筋がびりびりする……

うなじにピリッとした痛みを感じ、彼のキスが背中に移るころには、
もうとうにワンピースは床の上で、後は腰をおおうたよりなげな布が一枚。

「あ、あん、あはぁ、あ、ん」

両胸をやわやわと愛撫され、乳首を弄られるとそれだけで身体がはねてしまう。
布越しにゆっくりと擦り立てられる彼の熱さと硬さ。

「のだめ……」

耳元でささやかれるだけで身体がふるえる。

「だ、め……」

のどにからんでかすれた声しかでない。
腰のひもはあっさりと解かれ、彼の長い指がしとどにあふれた場所をさぐる。

「あ、あ、あ、」

こぼれたあえぎをキスでふさぎ、彼の指は容赦なく中を蹂躙する。

「あ、ふ」

目じりにこぼれた涙をなめとり、また耳元に舌をはわせて、

「何がだめ?」

ずるい。

「のだめ、」

耳が弱いって知っててわざと。

「足、ひらいて」

だから耳元のささやきにさからえない。

カーテン越しに注ぐ、とろりとした金のひかり。
もう何度も彼の前に体をひらいているに、未だに慣れない。
ましてこんなにも明るい場所で。
目があけられずに、かえって気配に敏感になってしまう。
彼はじらすようにちろちろと足に舌を這わせる。
見ないで。
いいえ、見て、それから……
脚にしるしをつけられ、視線と吐息にじわじわと犯されて。

「きゃ、あぁ、ああ」

しっかりと腰を押さえられ、あたたかな舌で丁寧になめられる。

だめ。だ、め、もう……

鼓動が落ち着くにつれ、つと離れていく彼の身体が恋しくなって目をあけた。
すでに彼も身に着けていたものをすべて脱ぎ捨て、自らの昂ぶりに手をそえ、
先にすすむ準備をはじめていた。

そっとさえぎるように、彼の手に触れる。

「……で」
「え?」
「つけないで、そのままで……」

そのまま、彼の昂ぶりに手を這わせる。
裏筋をなであげ、ビクリとはねるのをやさしく包み込み、
熱さと硬さを確かめ、形をなぞる。

「……っは、でも、お前、」

見上げれば、しかめた眉に荒い息。思わず手を伸ばし、
こめかみを伝う一筋の汗を指先で追った。

「だいじょうぶですヨ?マネージャーさんとは打ち合わせてきました。
それに、」

彼の黒髪に両手をさしこみ、キスをねだる。

「もう、いいんじゃないですか……?」

彼の父親への愛憎も、親となる事への躊躇も。
きっと、もう大丈夫。

今度は自分から、彼のまぶたに、頬に、くちびるにキス。
さっきのお返しに、彼の硬い欲望にキスしようと身体を起こしかけたけれど、
そのまま両手をシーツに縫いとめられて。

「あ、は、あぁあ、ん……!」
「……っ」

彼の荒い息が降ってくる。
一気に刺し貫かれた熱い、身体の奥の奥。
思わず、逃げるようにあがった肩を、しっかり押さえられ、
奥をぐるりとえぐるように突き上げられて。

「……!」

もう声もでない。

気づけば、午後のとろりとした光はかげっていて。
ゆっくりと髪を梳いてくれる彼の手は心地よく。

「はぅ。お腹すきました……」
「ぶっ。まったく、余韻も何もあったもんじゃないな」

笑いながら起き上がる彼の目はやさしい。けど、

「先、シャワー浴びるぞ。お前も、」

言いさして、こちらをみる目はちょっといやらしい。

「ちゃんと洗わないと。中から俺のがでてくるだろ?」

真っ赤になって起き上がるのだめを見て、さも愉快そうに笑う意地悪なカズオ。
でも。

「いいんですよね?」
「え?」
「赤ちゃん。のだめ、できてたらちゃんと生みますよ?
今さら、やっぱりって言ってもダメですよ?」
「……ばーか」

そらした目元が赤い。

「そうでなきゃ、生でなんかするかよ……」

それは眠くなるようなある春の日の昼下がり。






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