薄暗い部屋の中で
千秋真一×野田恵


枕を重ね、そこへ背中を持たれかける。脚はだらしなく開いて投げ出して。
薄暗い部屋の中で聞こえるのは、自分の押し殺した吐息と、淫猥な水音。
脚の間で揺れる小さな頭を撫でて髪に指を絡めると、のだめは少し顔を上げた。
そして、見せ付けるように下から上へとぽってり濡れた唇をスライドさせる。

「んっ……」
「……はぅ、へんぱひ……」

気持ちいい?と聞きたげな眼に答えるように、髪をかきあげて耳へかけてやった。

少しだけ飛び出した舌が左右に揺れてぴちゃぴちゃと音が増し、
のだめの唾液に濡れた自分のものは指の輪にこすりたてられている。
やがて再び先端は熱い口腔に飲み込まれた。
凹凸のある上顎にこすり付けられ、その裏ではざらざらとした舌が蠢き、
かと思えば柔らかな頬の内側の肉にゆっくりと押し付けられ……。

「のだめ、もう……」
「んっ……」

ベッドサイドからティッシュを2~3枚取り、のだめに渡した。
のだめは慣れた手つきでオレの腹にそれを敷き、激しく指の輪を上下させた。
微妙に締め付けの違う指が、オレのそれをこすりたてる。
のだめは伸ばした舌で割れ目をちょんと舐めたり、小さな吸い付くようなキスを送ってくる。
上目遣いにオレを見上げる、その顔。濡れた唇の、舌の柔らかさ。

……もう、限界だ…………。
のだめの顔にかからぬように頬を押さえ、もう片方の手で慌ててティッシュへ自分を押し付けた。

「……っく」
「あ……」

どくん、どくんと精液がティッシュの上に放出される。
のだめはその様子をじっと凝視していた。
ごくん、と鳴る音。
のだめが生唾を飲み込んだ音だ……この変態。

「しゅごい……あへー」

しごくように指を滑らせられてすべてを吐き出すと、抜ける力に耐え切れずに枕に身体を沈めた。
のだめは汚れたティッシュを丸め、濡れていない部分でオレを拭っている。
そして次第に縮んでいくそれを指で持ち上げ、そっと唇に含んだ。
柔らかく全体を飲み込まれ、吸われる。

「汚いから……」

首をかすかに横に振り、そして最後にきゅっと先端に吸い付かれた。
……わずかに残っていたものが、吸い上げられる感触。
軽い、身震いが起きる。

のだめは満足そうにえへへと笑い、新しく取ってやったティッシュで今度は自分の口元と手指を拭った。
それをゴミ箱へ放り、ずり下げていたオレのボクサーパンツを元に戻し……。
その上から愛しげにそこへキスをして、オレの腕の中に戻った。

「……あ、ありがと」
「えへ」

のだめは今生理中で、セックスは出来ない。それを承知でのだめの部屋に来たわけだが……。
久しぶりに密着した肌の、体の柔らかさに無駄に反応してしまった自分がいて。
情けないことに、処理してもらうことになった。

……まったく、何やってんだオレは。

しがみついてくる体を抱きしめて、キスをした。

「気持ちよかったですか?」
「ん……」

腰の辺りをゆっくり撫でていると、のだめは少しだけ艶っぽい溜息をついた。
密着して押しつぶされた胸の先……たってる?
こいつ、舐めながら感じてたのか。
のだめは何も言わずに目をつぶり、じっと動かずにいる。それは、我慢しているように見える。

……気持ちよくなりたいのは、こいつだって同じなのだ。

「のだめ」
「ハイ?」
「……おまえは、いいの?」
「?」
「……気持ちよくなりたく、ない?」

えっ?とビックリした顔が、オレの顔をのぞきこんだ。

「の、のだめはアレですから……い、いいんです……」

そう言っているけれど、体は微妙に反応しているのがわかる。
さっきから、脚を摺り寄せるようにしてること、それから胸の先端をこんなに尖らせて。

「や、あ……触っちゃダメです」
「気持ちよく、してやりたいんだけど……ダメ?」
「だって……」

生理だから、ダメです……。
消え入りそうな声で真っ赤になってうつむくのだめがなんだかとても初々しくてたまらなくて。
いやいやと首を振るのを抱きしめつつキスをした。
いつもよりちょっとだけ優しく、浅く。
そして、パジャマの前ボタンを開け、そっと裸の乳房を手のひらに収めた。

「やっ……だめ!」
「遠慮しなくていい」
「でもっ、だって……あ……」

尖った胸の頂を口に含み、舌でそっと舐めると、のだめの白い喉元が仰け反った。

「だめ……!!」

のだめはオレをぐいっと押し返し、ささっと胸元を整えた。

「ダメです……っ。もー、そゆことするなら、のだめソファで寝ます」
「……わかった。もうしない」

のだめは少しふくれながら、ボタンを留めて再びオレの腕の中に戻った。
まるでガードするみたいに、腕が胸元でクロスされている。
オレだって無理矢理したいわけではないし。
もしのだめが望むなら、指で気持ちよくしてやるくらいしてあげたいと思っただけだ。

「そんなに警戒するなよ……」
「あのですね……」
「ん?」
「中途半端だとかえってつらくなりそうで」
「……」
「あの、だって、多分……ちゃんとして欲しくなっちゃいそうなので……」

だから、ダメです。
のだめはまた顔を真っ赤に染めてそういい、恥ずかしさからかくるっと背を向けて丸まった。

「欲しくなる?オレを」
「……そですよ」
「欲しいって思うんだ? エロいな、おまえ」
「……もうっ、いじわるデス」
「ふーん」

丸い背中に体を密着させて、ぎゅっと抱きしめた。
欲しくなる、か。それはまた嬉しいことを言う。
体温を移すように、そっと下腹に手のひらを当てる。と、のだめは一つ溜息をついた。

「痛いか?」
「薬飲んだから大丈夫です。先輩の手、あったかくて気持ちいい……」
「終わったらもっと気持ちいいことしてやるよ」
「やらしいデスねー、もう~むっつり王子~」
「むっつり言うな!」

髪の乱れたうなじに鼻先を入れて唇を押しつけると、途端のだめの息が穏やかになった。
おやすみ、と呟いてみるけど、もう返事はかえってこない。
鼻がぴすぴすと鳴っている。
寝たのか……眠りに落ちるのが速いヤツだ。

もう一度「ありがとう」と首筋にキスをして、抱きしめた。
一週間後の自分たちのスケジュールはどうだったかな、なんて考えながら眠りにつく。

こういう事考えるからムッツリと言われるんだろうか……。

いや、まあ……いいか……もう……。






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