千秋真一×野田恵
![]() 「今日はのだめ、あっさりお願いしたいんデス!」 「…はぁ?」 ベッドに入るなり、突然わけのわからないことをのだめが言い出す。 この変態と一緒にいるようになって、わけのわからないことは多々あるけど… 「なんで?っていうか、何があっさり?」 そう聞くと、のだめがポッと頬を染めてうつむく。 「え…えっちのことデス…」 「…」 …それはふだん俺がしつこくしてる、ということか? つい考え込んでしまって黙っていると、のだめが少し慌てた様子でぶんぶんと手を振る。 「あ、いや、先輩がしつこいとかじゃなくて…のだめ、女の子の赤ちゃんが欲しいんデス!」 「…はぁ?」 ますますわけがわからない。 「赤ちゃんって…結婚してるわけでもないのに…」 「いつかするんデス!」 フーンと鼻を鳴らして、のだめが俺を見る。 「のだめ、女の子が一人は欲しいんデス。大きくなったら一緒に買い物とかしたいし…」 「女の子の赤ちゃんと、『あっさり』とどういう関係があるんだよ」 「それはデスね…」 …なんでも、のだめの話によると 「濃厚なセックスで、女性が感じるセックスなら男の子。 あっさりしたセックスで、女性があまり感じないセックスなら女の子」なんだそうだ。 他にも『産み分け』なるものの、いろいろな方法があるらしいのだが… 「とにかくのだめ、どうしても…その…感じやすいというか、必ず先輩より先に…だし、 このままだと絶対男の子だと思うんデス。 で、今から女の子を授かるための練習をしておきたいんデス!」 「…ふーん」 そりゃ女の子はかわいいと思うよ、俺だって。 でも…。 「じゃあ、今日はあっさりでいいんだな」 「ハイ!よろしくお願いしマス」 ************************ …自分から言ったのに… 「せ…んぱ…い」 「…なに?」 触れて欲しいところを避けるように、先輩の手が体をなぞっていく。 ゆっくりと、やわらかく。 いつもならもっとギュッと抱きしめてくれるのに、それもなくて。 知り尽くされているであろう敏感なところにはまったく触れずに ただやわらかくふわふわと、指先が体に触れては離れる。 「のだめ…いい?」 いつもの準備をして、目をのぞきこんで先輩が聞いてくる。 「ん…いいデス…よ…」 とは言ったものの…本当は良くない。 いつもならいっぱいキスもしてくれるのに… なんだか少し不安な気分になってきちゃいまシタ。 「あっ…」 待っていた快楽の感覚…でも… 「あっさり…で、あんまり奥まで入れちゃダメ…なんだろ?」 少しイジワルな口調で先輩が聞いてくる。 うぅ、イジワル…カズオ… ついつい、自分から先輩の首に腕を回してギュッと抱きしめてしまう。 「どうした?」 「ん…えっと…」 「練習、なんだろ?」 そう言うと、先輩は浅くゆっくり動き始めた。 ******************** とても不安そうな顔でのだめが俺を見つめている。 「せん…ぱ…い」 「なに?」 「も、ちょっと…動いても大丈夫…デスよ?」 「…動いて欲しい?」 耳元で囁いて、耳たぶを甘噛みするとピクッとのだめの体が震える。 …これだけでこんなに反応するんだよな… 額と額をくっつけて、瞳を覗き込むようにしてのだめを見る。 「なぁ、のだめ?」 「…はい?」 「今、欲しいのは女の子の赤ちゃん?…それとも、俺?」 「え…」 また耳元へ唇を移動して、囁くように聞く。 「どっち?」 舌を耳に差し込む。 「はぁ…ん…」 背中に回されたままの腕に力が入る。 「せん…ぱ…い…が…」 「なに?聞こえない」 「…し…んいちく…んが…ほしい…です」 「ん…よく言えました」 その可愛らしい唇を味わうように、今日一番激しいキスを交わす。 ******************** 「あっ…ん…あっ!」 浅いところに感じていた先輩が、ドンっ…と深く突いてくる。 耳たぶに首筋に、先輩の唇を感じたかと思うと さっきまでやわらかく触れていただけの指が、熱を帯びた動きでのだめの体を探っていく。 そして、敏感な胸の頂にある蕾をキュッと摘んだり転がしたりし始めると 大きく体がのけぞってしまうのが自分でもわかる。 やっぱりのだめ、ダメですね。感じないように、なんて無理デス…。 「んん…っあ…ん…あぁ…」 どうしても声が漏れてしまう。 待ち望んでいた快感の波が、指先まで押し寄せてくるのがわかる。 どうしても止められなくて…。 激しくなってくる動きに翻弄されて、快楽から涙がポロポロ溢れてくる。 「しんいち…く…んっ…のだめっ…もう…っ…」 「ん…っ」 「あ…あっ…あぁん…あっ…!…」 ******************** 「のだめ、やっぱり男の子でもいいです…」 「…はぁ?」 「男の子だったら、先輩に似てるといいデスね〜。毎日ときめいちゃいそうデス。ぎゃはっ」 俺はため息をついた。 「…っていうか、俺おまえと結婚するなんて言ってないけど」 「むーん。じゃあ先輩は、のだめが他の誰かと結婚しちゃってもいいんデスか?」 …いいわけねぇ。 「お前みたいな変態と結婚してくれるような心の広い寛大な男、世界中のどこ探したっていねぇよ」 「むきゃっ!」 俺様以外にはな…。 「もういいデス!」 そう言って、のだめがプイっと背中を向ける。 そんな彼女が、たとえ変態でもやっぱりかわいくて、そっと髪を撫でる。 「なぁ、おまえもしかして、子供の名前とかまで考えてるの?」 「そりゃもうばっちりデスよ!」 自信満々といった口調でのだめが答える。 「ちゃんとまともな名前考えろよ…親のセンスが疑われるんだから。…俺のセンスが悪いと思われたくない…」 「…ほぇ?先輩…」 「もう寝ろ!おやすみ」 くしゃくしゃとのだめの頭を押さえつけて、ふと子供が出来たら…と想像してみた。 のだめの楽しそうなピアノが響く…ゴミの山の部屋でかくれんぼする子供たち。 『普通の家庭』はまず無理だな… 軽くため息をついて、のだめの温かな体を抱きしめながら眠りについた。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |