大川弁プレイ
千秋真一×野田恵


「風呂入ってくる。のぞくなよ」
「のぞきませんよ~……毎回そんなこと言って、ホントはのぞいてほしいんデスか?」
「んな訳あるか!もう部屋に帰ってろ!」

お決まりのやりとりを交わして千秋はバスルームに向かった。
のだめは先にひとっ風呂浴びて、今は千秋のベッドに寝そべって譜読みをしている。
実際、のだめの変態行為は相変わらずだ。
一緒に居るとき千秋が風呂に入ると、8割の確率で覗いてくる。
もう深い関係になってずいぶん経つというのに……
毎回あきれる千秋だが、相手の体に見飽きないのはお互い同じだった。
のだめは人の裸を見たがる割に、自分の裸は恥ずかしがって見せないんだよな。それもまぁ、可愛いか…

そんな事を考えながら風呂をすませる。のだめは覗いてこなかった。

「あいつ、本当に帰ったのか?」

呟いてバスルームの扉を開けると、寝室から元気なバカ笑いが聞こえてきた。

「ぎゃはははは!ヨーコひどかやん!」

どうやら、国際電話でのだめの母・ヨーコと会話しているようだ。

「そげんこと言われたくなか~」

髪を拭きながら千秋が近付くと、のだめは気付いてガバッと起き上がった。

「あ、千秋先輩あがってきたけん喋るね?」

にこにこと振り返ってくるのだめに、千秋は全身でNO!NO!と拒否を示し後ずさる。

「…恥ずかしがっとうごたんw」

のだめはあっさりと引き下がると枕を押しつぶしてベッドに寝っころがった。
恋人の親と話すのはハッキリ言って苦手だ…
しかもヨーロッパに連れ出したあげく処女を奪ったとあっては、きちんとするまで顔向けできない。

千秋は逃げるようにキッチンに行き水を飲みながら、何ともなしにのだめの話し声を聞いていた。

「なんよそれ~のだめでっちゃ頑張りようとばい!」
「よっくんは?おると?」
「それがたいね、千秋先輩がすごかとよ~」

延々と続くお喋り。家族と話すのも久しぶりだし嬉しいのだろう。それにしても…
のだめの福岡弁をじっくり聞くのは初めてかもしれない。
大川に行った時もオレにだけは敬語を使っていたし、ケンカの時はじっくり聞く余裕もなかったし。
いつしか千秋は新鮮な気持ちで聞き入っていた。

「それじゃヨーコも頑張りいよ!またねー」

ようやく電話を切ったようだ。

「ずいぶん長かったな。なに話してたんだ?」

千秋が寝室に入ると、のだめは寝そべったままで機嫌よく会話に応じる。

「色々です。ガッコのこととか、リサイタルのこととか、千秋先輩とのラブラブぶりとか!ぎゃは♪」

いきなりいつもの『のだめ語』になった。なんだかおかしくて千秋は笑ってしまう。

「先輩?なんで笑うんデスか~」
「いや……ころっと言語が変わるもんだから。やっぱお前、日本語のバイリンガルだな」
「えー、そですか?そんなに変えてるつもりはナイんですけど…」

思いっきり違うって。まるで違う人間みたいに。
心の中でツッコミながら、千秋は少し面白くない気もした。

「お前さ、オレと話す時にも大川弁で話してみろよ」
「へ…どしてですか?」

そう聞き返され考え込む。自分といる時に、完全に素のままののだめでいてほしいから……か?

「……理由なんて別にいいだろ」

急にムスッとした千秋の表情を見て、のだめが困ったように覗き込む。

「真一く~ん?なに怒ってるんデスか?」
「怒ってない」

そう言いながら視線を逸らしてベッドに寝転がる千秋は、完全にご機嫌ナナメだ。
怒っているというより、拗ねている?
直感的にそんな気がしたのだめは、自分が上機嫌なのも手伝って、千秋のお願いを聞いてやる事にしたのだった。

「真一くん、そげん怒らんでコッチ見いよ」

唐突に聞こえてきた穏やかな訛りに、千秋はちらっと横目でのだめの方を見る。

「聞きたかとやったら大川弁しゃべっちゃあけん、機嫌ば直さんね」
「……だから、別に怒ってないって」

まるで幼子をあやすような物言いに毒気を抜かれたものの、すぐには素直に向き直れない。

「なんか照れるやんね」

もう一度のだめの方を窺うと、はにかむように笑っている。千秋相手に敬語抜きで喋るのは照れくさいらしい。
大川弁で話すのだめは地方の純朴な女性…に見えなくもない。やっぱり、新鮮だ。

「もっと聞かせろよ」

千秋は少しだけ微笑むと、のだめを隣に引き寄せて目を見つめた。

「そげんコト言うても…なんば話すと?先輩が喋りやすかごと、してくれんと」
「喋りやすくか」

少し考え込んでから、おもむろに腕をついて上半身を起こし、のだめにのしかかる体勢になる。

「じゃあ、アノ時の声でも聞かせてもらうかな」

のだめは一瞬にして『アノ時』がどんな時かを察知し青ざめた。

「むぎゃ!?なんでそうなると!!?」
「オレの明日の仕事、午後からだし」
「のだめは朝からガッコばい!?譜読み、譜読みせないかんのに…」
「ま、早起き頑張れ」
「う…ううぅ~~~……ひどかやん…」

がくりと項垂れたのだめは、それでも千秋に口付けられると、どこか嬉しそうに目を閉じた。

ちゅっ、ちゅっ、と音を立てて繰り返されるキス。
千秋はそっと目を開けて、夢見るようなのだめの表情を窺った。
真上からその細い体を抱き込むと、意外なほどの胸の弾力に押し返される。

「ん…千秋先輩、電気ば消して」
「ああ」

さっと体を離すと部屋の明かりを消しに立つ。その際にデスクの引き出しから避妊具を取り出すのも忘れない。

明かりが消えた寝室に、キッチンからの光が差し込んできた。
消すのを忘れていたな……そう今さら気付いたが、これも好都合か。
薄暗いがしっかり相手の顔も体もよく見える。ちょうどいい間接照明だった。
うっとりとキスの余韻に身をゆだねるのだめが目に映る。

「お前、色気ねー」

千秋はつい苦笑してしまう。のだめは完全に部屋着用のTシャツとジャージ。

「ばってん、エッチするつもりげな無かったとやもん!」

ぷぅとふくれて尖らせた唇をすかさず奪い、千秋は行為を再開した。

ゆったりした白いTシャツを捲り上げると、乙女チックな小花柄のブラジャーが現れる。

「これ初めて見るな」

千秋が目ざとく観察すると、のだめは妙に嬉しそうだ。

「可愛かろ?これ着けとう日にエッチするとは初めてやったもんね」
「ん、結構好き」

呟いてブラの上から乳房に口付け、ついばむ。
硬い生地越しではたいした感触もないはずなのに、自然とのだめの息が上がっていく。

「はぅぅ……先輩~…直接がよか…」

身悶えながらおねだりする様子が可愛くて、千秋の顔に笑みが浮かんだ。

「じゃあ脱いだら?」

わざと意地悪く言って身を引くと、のだめが恨めしそうな視線を向けてきた。

「先輩が脱がしてくれるんじゃなかとね…」
「オレも自分の服脱ぐから忙しい」

白々しく言い捨てて千秋は着ていたシャツをベッドの端に放り投げる。
むくれたままのだめもそれに倣い、のろのろと衣服を脱ぎ始めた。

のだめがようやく全ての衣服を脱ぎ終わったとき、千秋は既に避妊具の装着さえ済ませていた。
向かい合って座ったまま、二人はもう一度じっくりと口付け合った。

千秋はのだめの口内に舌を差し入れながら、柔らかな乳房を手で包み込む。
向かい合う体勢だと、どうしても鷲掴みすることになってしまう。
ぐにぐにと全体を押しつぶすように揉み、先端はあくまで優しくつまみ上げた。

「んんっ……むぐ…」

のだめは胸への愛撫に身をよじりながらも、決して離れまいと千秋の唇に吸い付いてくる。
健気な様子に千秋は自身の昂りを感じ、腕を伸ばしてのだめの背中を抱き寄せる。
口付けたまま引き寄せられ、のだめは千秋のあぐらの上にまたいで座る形になっていた。

「ぷは……先輩、もうこげん硬くしとうと♪」

内腿に当たる硬い感触に、のだめはキスを中断してにやけ顔になる。

「おい、つついてないで乗っかれよ」

呆れながら千秋が言うと、のだめはこくりと頷いて腰を浮かした。
のだめが腰を下ろすと先端がわずかに入ったが、そこからなかなか進まない。

「あの…のだめのば慣らしとらんけん、よう入らん…」

いつもは指でしてくれる前戯がないことを非難するように睨んでくる。

「仕方ないな」

のだめの非難も意に介さず、千秋はやれやれといった感じで腰を揺すり上げ始めた。

ぐっ…ぐっ…優しい上下運動によって潤いが増し、二人の結合が深くなる。

「ひゃぁん、はぅぅ」

のだめは目を瞑って千秋にしがみつく。
目を閉じていると、自分の中で千秋のものが動く感覚が、より強く感じられる。

「のだめ……気持ちいい?」

動きを止めずに耳元で囁かれた質問に、のだめはガクガクと首を縦に振る。

「よかっ…すごか…!えらい深かごたん…」

千秋は思わずくすりと笑ってしまう。
言っている内容はとてもいやらしいのに、大川弁だとなんだか色気がなくて面白い。

「真一くん~!笑わんどってよ」

またも唇を尖らせたのだめに苦笑しつつ、千秋はその背を抱えると繋がったまま押し倒した。
正常位になると、両手をついて目を合わせる。

「やっぱりこの方が動きやすいし…、もっと聞かせてくれよ」

言うや否や、動きづらかった鬱憤を晴らすように激しく突き入れ始める。

「あっ!やあっ…あん!」

のだめが眉根を寄せて喘ぐ。苦しそうにも、嬉しそうにも見える顔。
角度を変えて浅い出し入れを繰り返すと「物足りない」と言わんばかりに締め付けてきた。

「真一、くん…」
「なに?」
「…もっと、奥まで欲しか…」

じっと目を逸らさずにおねだりする表情は、間違いなく、今まで幾度となく抱いてきたのだめのそれだ。
その濡れた瞳に見据えられると、千秋はいつも愛しさがこみあげてしまう。

「……のだめ…!」

唇をふさぐと同時に、一番奥まで突き入れる。

「んんっ」

熱いキスをしながら、汗ばんだ背中を抱きしめながら、繋がった部分を激しく揺する。
これ以上できないくらい全身で求め合った。

「んむ…んん………はぁーっ」

声も出せずに千秋にしがみ付いていたのだめは、唇が離された瞬間大きく息をついた。
止まない突き上げに甘い声を漏らしながらも、千秋に語り掛ける。

「あっ…真一くん、のだめが敬語やめたっちゃけん…」

千秋は視線で先を促した。

「真一くんも…はぅん…のだめのこと名前で呼ばんと不公平やんね」
「…不公平って、何が…」
「敬語も、あだ名も、使わんで話すとが…夫婦やけん」

いきなりな発言に、千秋は思わず動きを止めて呆れ顔になる。

「あのな、お前…」

言いかけて、のだめの優しげな表情に見入ってしまった。

「だって真一くんがホントの夫婦になりたがっとうのが分かったけん」
「………」

千秋は胸を突かれる思いがした。
かなり的外れだが、こいつはこいつなりに、オレが気にした事を察知したのか……
恋人になってだいぶ経つのに、常にのだめが敬語を使っていること。
正確には『敬語』ではなく『のだめ語』ではあるが。
でも、完全に素のままのこいつを見せてくれているのか、不安になったんだ……

「夫婦になりたい、ってのは違うけどな」
「ぎゃぼん!?」
「でも、まぁ……もっと近付きたい、とはいつも思ってる」
「のだめもばい」

「…恵」

呼ぶと、本当に嬉しそうな笑顔になった。
軽くキスをして、額に張り付いた髪を撫ぜてやると、千秋はゆっくりと動き出す。

「あ…んっ!ああっ」

再びのだめが眉を寄せる。だけど、本当に嬉しそうな表情だ。
脚を肩にかかげ上げると、一層奥まで押し込んでいく。

「やぁぁ!深か…!」

千秋は膝立ちになりピストン運動を加速させる。

「恵…、気持ち、いい…?」

二度目の問いかけに、のだめはにこっと笑みを浮かべ頷いた。

「ん、気持ちよか…。あっ、真一くん、は?」
「…すごくいい」

千秋も微笑みかけて、強くなる締め付けに自身の限界を知る。

「う……もう、いく…!」

できる限り奥まで進めると、そのまま想いの丈を注ぎ込んだ。

「はうぅぅんっ……!」

のだめはぎゅっと目を閉じて、千秋のものが中で熱を放っているのを感じた。
と同時に、頭が真っ白になるような快感に襲われる。

「ん…はぁっ…」

千秋がゆっくりと自身を引き抜きゴムをはずす。
のだめが脱力して息を整えている間、千秋は後始末をしながらその幸せそうな顔を見ていた。
千秋が一方的にわだかまりを感じて意地悪な態度をとったのに、のだめは優しく包み込んでくれた。

どんな口調だって、のだめはのだめなんだよな…

「…のだめ、その…ちょっと冷たくして悪かった」

千秋の唐突な謝罪にのだめは少し驚いたようだったが、すぐに笑顔になる。

「いいデスよ、別に。先輩の意地悪は慣れっこですから♪」

聞きなれた『のだめ語』がのだめの口から出てくると、千秋はなんとなくホッとした。

「あ、もう大川弁やめたんだ?」
「んー…やっぱりコッチの方がしっぽりきます」
「しっくりくる、だろ!」
「まぁまぁ。先輩だって呼び方が『のだめ』に戻ってるじゃないですか」
「……この方がしっくりくるからな」

千秋が服を着終えてベッドに寝そべりながら聞いてくる。

「お前さ……オレがあだ名で呼んでるからって、距離を感じたりする?」

のだめはTシャツと紐ショーツだけを身に着けると、千秋の横にもぐり込んだ。

「感じませんよ~。だって…」
「だって?」
「のだめが大川弁で話したって標準語で話したって、千秋先輩への距離は変わりまセンから」

にっこりと笑うのだめの瞳に、千秋が悩んだ答えは出ていたのだ。
千秋もふわりと微笑んで羽枕を構えると、口を開いた。

「お前の口調は『標準語』じゃねぇーーー!!!」
「ぎゃぼーーー!!」






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