ノエル♪(非エロ)
千秋真一×野田恵


12月24日、パリの街中がイルミネーションに彩られ観光客でごった返す中
オレはひたすら家路を急いでいた。
やばい、遅くなった。あいつ、待ってるだろうな、今日帰ることは連絡してあるし。
外でメシ食おうかと思ったけど、この混みようじゃ無理だな。何か買っていくか。
適当にデリを買い、通りがかりのマーケットで目に付いた小さなクリスマスツリーを抱えて
ようやく家にたどり着いた時にはすでに夜8時をまわっていた。
のだめのピアノが聞こえる。オレは階段を駆け上がった。

そして、・・・え?オーボエの音?この音はまさか---ガチャリとカギを開けて部屋に入った。

「ぎゃぼ〜〜〜〜!!先輩、早かったデスねー。おかえりなさい〜〜らぶ〜〜!!」

のだめが駆け寄って飛びついてきた。

「おまえ〜、オレ今日帰るって連絡しただろ、まさか忘れてたのかー?」

オレの言葉を無視してひたすら抱きついたままののだめの頭越しに、
またも顔を赤らめた黒木くんと目が合った。!!

「ご、ごめん千秋くん。僕、すっかり遅くまでお邪魔しちゃって。
室内楽のメンバーを探しているんだけど、なかなか見つからなくてね。
恵ちゃんにこうしてたまに合わせてもらってるんだ。」
「そうなんです〜、正しいバッハとかね、ぷぷ。のだめもすごい勉強になりますよ〜。」顔を見合わせて笑い合う黒木くんとのだめ。
「ふーん、バッハね・・・。・・・・・。」

なぜかオレは二言目が次げなかった。

「あ、ぼ、僕、もう失礼するよ。本当にごめん、遅くまで。ありがとう恵ちゃん、また・・」
「黒木くん、明日9時ですよ。忘れないでくだサイね〜。オーボワ〜〜。」

黒木くんは、オレの態度にただならぬ雰囲気を感じたのか、そそくさと帰っていった。
なんだよ、明日9時って。

「ほわぁ〜、キレイなツリーですね。どうしたんですか、これ?うきゅきゅ、先輩がツリー?」

ぎゃははと笑うのだめをオレはにらみつけた。なんだろう、イライラする。

「明日、何があんの?」
「え〜?明日リュカのおじいさんのとこの教会に劇を観にいくんですよ。リュカと黒木くんもすっかり仲良しさんんなんデス。
あ、先輩も行きませんか?」

オレが買ってきたデリの袋をガサガサとのぞきながらのだめが答える。

「いや、いい。」

イライラする。

「ご飯にしましょうよ、先輩♪先輩?ほゎ〜、コワイ顔。」

のだめがオレの顔をのぞきこんだ。
オレは思わずのだめを引き寄せてしまった。
何だろう、この気持ち。何でいつもこいつはオレの予想外の行動をとるんだ?
なんだよ、一人で淋しく待っているかと思えば、電話ひとつもよこさないで黒木くんと会ってたのかよ。
なんでオレ様がこんな思いをしなくちゃならないんだ、この変態相手に〜〜〜!!
のだめを抱きしめる手に力が入った。

「苦しいデスよ〜先輩、どうしたんですか?」

次の瞬間、オレは信じられないことを口走ってしまった。

「のだめ、おまえこれからすぐ部屋に戻って風呂に入ってこい。」
「え〜?なんでですか?昨日入ったばっかりです。のだめお腹が空きました。食べてから入りますよ。」
「いいから、言う通りにしろよ、早く。」

のだめを押し離し、オレは赤くなった顔をそむけた。

「もー、先輩カズオ!!」

ブツブツ言いながら部屋を出て行こうとするのだめに、オレは背を向けてぼそっと言った。

「それから、上下バラバラじゃない下着を着けてこいよ。」
「!!むほぉぉぉ〜〜〜、先輩それって・・・??ふほぉぉぉ〜〜〜。」

奇声を発するのだめにオレは俯いたまま何も答えなかった。
頭にかぁっと血が上るのを感じていた。

旅疲れで重くなった体をバスタブでほぐしたかったけど、まあいいか。
シャワーを浴びながらオレはぼんやりと以前Ruiに言われた言葉を思い出していた。
『独占欲』ふっ、そうかもしれないな。思わず笑いがこみあげた。
思えばあれがはじめて自分の気持ちを意識した瞬間だったかもしれないな。
いや、ずっと気づかないふりをしていたけど、きっともうずっと長いことオレは好きだったんだ、あいつのこと。
そうだ、もうずっとずっと長いこと・・・・。
のぼせそうになったので、バスルームを出た。
のだめはまだ来ていない。

こんなクリスマスを過ごすのは何年ぶりだろう。
買ってきたデリとワインでテーブルをセットしながら考えていた。
それにしても遅いな、あいつ。何やってんだ?
と、思ったところでコンコンとドアがなった。

「遅いじゃねーかよ、・・・・うわっ!!なんだそれは〜〜!!??」
「ノエルメイク♪デス!色っぽいですか〜〜?実はケーキも用意してあるんですよ、メリークリスマスです!」
「おまえ・・前にやっていた小顔メイクとどこが違うんだよ!今すぐ落として来い!!
それに、なんだその生ハムの乗ったケーキは!?殺す気か??」
「ぎゃぼ〜〜先輩ひどいデス!せっかくロレンツォに分けてもらったのに・・」
「はぁ?ロレンツォ??」
「イタリア料理やさんのマスターなんデス♪」
「・・・・はぁ・・・・・もういいからメシにしよう・・・」

口をとがらせて化粧を落とすのだめ。

のだめは真っ白いノースリーブのワンピースを着ていた。

「おまえ・・寒くないのかよ、真冬だぞ、今。」
「お色気大作戦デスよ。先輩の気が変わったらいやなので。」

オ、オレ、いいのか、こんな変態とホンとに・・・・?

「これ、はおってろよ。」のだめにカーディガンを掛けてやった。
「ほわ〜〜、優しい〜〜。ありがとう、真一くん。」

嬉しそうに見上げるのだめがかわいくて、オレはそっと抱きしめた。

ハッと目が覚めたのは、夜中の3時をまわった頃だった。
BGMはちょうど‘PetitPapaNoel`何度目のリピートだろう。つい寝てしまった。
テーブルの上のキャンドルのほの灯かりの中で見るのだめは、ぐっすりと寝込んでいた。
深い寝息・・・。それを見ていたら何だか胸にぐっとせまるものがあった。
オレはベットからそっと出ると、キャンドルを消した。

そうだ、明日の朝は、シナモンをきかせたフレンチトーストを作ってやろう。
久しぶりにこいつのピアノも聞きたいな。
ショパンがいいかな・・それとも・・
腕の中にのだめの寝息を感じながら、オレはやがて深い眠りに落ちていった。

「ぎゃぼ〜〜〜〜〜〜!!!」

オレは奇声で飛び起きた。な、何だ!?

「どうしよう、もう8時半です〜!!寝坊しちゃいましたー、ヤバイです〜〜〜!」

のだめは椅子に掛けてあったワンピースをひっつかむと、ベットから転がり落ちた。

「おいこら、どこに行くんだよ。」

オレは出て行こうとするのだめの腕をベットの中から掴んだ。

「リュカの劇ですよ〜!黒木くんと行く約束をしてるんデス。遅れちゃいます〜!」

ムッ・・こいつまさかこのまま行くつもりかよ、この状態で?

「行くなよ。」

オレはのだめを引き寄せた。

「ムキャ〜〜〜!先輩、じゃましないでクダサイよ!!のだめ、リュカにもおじいちゃんにも約束したんデス。」

次の瞬間、のだめはオレを突き飛ばして戸口に走っていた。
ボーゼンとするオレにのだめは振り向きざま、

「先輩、今日はリュカのおうちで食事するので、夕ご飯は要りまセン。
あ、それと、真一くん、好きデス♪」

そう言ってにこっと笑うと扉をバッタンと閉めて出ていった。

ウソだろ、こんな。フレンチトースト、ショパン・・・・のだめ・・・・おまえって・・・・・

オレは私そびれたネックレスを片手に、季節はずれの白いワンピースをコートの下からちらつかせて走るのだめを
窓から見送るのだった。

いつになったら真一くんはネックレスを渡すことができるのでしょうか、神よ・・・・アーメン!!






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