ワン・ハンドレッド後編
番外編


デート当日。

迂闊だったと恭介が思った時、彼は既にまな板の上の鯉だった。
群馬県では最高の、見滝原ハイエット・ホテルの最上階のスイートルーム。
枕もとの小さな電灯だけ明かりを灯した部屋。
そのベッドの上に、シャワーを終えた恭介の生の肉体が投げ出されている。

「ああ…、今回じゃなく、99回目の時に言い出すんだった…」

おかしいと思ったのだ。
今までのデートでは”3人一緒”なんてことはなかった。
それが今回は、ホテルのレストランで3人で食事という。
その時点で不自然な予感はしたが……まさか、あの二人が組んで自分を
ホテルの部屋に「お持ち帰り」してくるとは思ってなかった。
まだ互いに中学生だしそんな事はあり得ないと思っていたのに。
ホテルの支配人だって、客が『志筑』でなければ中学生だけで
こんな所に宿泊させたりはしないだろう。

「…はぁ、これからどうしよう」

恭介は溜息をつく。
どれだけ言っても、今夜だけは彼女達に退くつもりは無いのだろう。
一度「抱いて」と言ったものを引っ込めるのは女の恥だ。
そのくらいは恭介にも分かるので、恭介もここから逃げ出す訳にもいかない。
二人がシャワーを浴びているこの間に物理的には可能だが、
こうなると次に顔を合わせた時に何をされるか分からないのだ…。

「まさか二人との交際をちゃんと断ろうとしたらこんな事になるなんて…」

どうしようかと悩む恭介。
しかし事態は今も動いている。
気がつくと、先ほどまではしていたシャワールームの水音がピタリと止んだ。

(………ごく)

緊張のあまり唾を飲み込む恭介。

心拍数が物凄い勢いで上がっていく。

(お、落ち着くんだ。まだ、まだ間に合うかも知れない。
あの二人がバカなことをしでかす前に、まだ引き返せるかも――)

しかしそんな小ざかしい考えはバスルームの扉が開いた時に吹き飛んでしまった。

カチャッ。

バスルームのドアを開け、二人の少女が姿を現す。
バスルーム洩れた明かりを背に、二人の少女の身体が、
暗闇にくっきりと浮かび上がっている――。

「お待たせしました、上條君」
「お、お待たせ…。恭介…」

その瞬間に、恭介の思考は停止した。
性に一番敏感な年頃の男子。
それに、恭介はいかがわしい系の本すら読んだことが無いクラシック馬鹿。
生の女性、それも同級生の肢体には、常人よりも遥かに免疫が無かった。

「さやか、志筑さん……」


――バスローブ姿の志筑仁美。

決して露出は多くないのに、恭介は興奮を覚えた。
美女の湯上り姿というのは何とも言えない色気がある。
全身から湯気が立ち、身体が赤く火照り――。
今までこの艶かしい身体が、一糸も纏わぬ姿でお湯に晒されていた様を
存分にイメージさせる。
それにしても気品に満ちた彼女には、本当にシルクのバスローブはよく似合う。

――バスタオル巻いただけの美樹さやか。

風呂上りの色気は仁美と同じだが――。
布一枚に隠されたバストに恭介の目が行く。
その視線を感じたと分かるや、さやかは顔を真っ赤にして涙目になる。
(そ、そんなに見ないでよ……)と訴える視線。振るえる身体。
その仕草がなんともカワイイ。


この時点で恭介は、もう身体を前かがみにさせなければならなくなった。
男の面子の問題である。

「じゃあ、さやかさん」
「う、うん…。始めよっか」

二人はそのまま、ベッドに歩み寄ってくる。
仁美は優雅なステップで、さやかはたどたどしい足取りで、恭介の前に出た。

「上條君。ふつつか者では御座いますが、よろしくお願い致します」
「恭介――。それじゃ、お願い」

考え直すことは出来ないのだろうか。
今までの恋愛バトルとは訳が違う。
今宵の戦いは、二人の将来を狂わせる可能性がある。
恭介は興奮の洪水の中でかろうじて残された理性でそう考える。
いかに殿方を満足させるのも淑女の仕事、これはそれを競うためと言ったところで
これはオカシイのだ――。
恭介が何を考えているのか分かっているのだろう。
さやかは恭介の想いを知って尚、恭介に懇願した。

「恭介…。今は余計なこと考えないで。私たちだけを見てよ――」
「さやか…」

はらり、と少女を守っていたただ一枚の布切れが床に落ちる。
現れた肢体は――恭介が見てきた、あらゆる物よりも美しく見える。
暗い部屋の、小さな電灯の明かり。
それは明るい部屋にいる時の何倍も、少女の身体の白さを助長させる。
まるで輝いているような――。
恭介の視線は幻想的なさやかの美しさに釘付けにされた。

「恭介。私の身体、綺麗…?」
「綺麗、だ………」

男性にとっての永遠の神秘。
幼馴染の裸に見とれて恭介は本音を漏らした訳だが、
実は恭介は前々からさやかを「綺麗になった」と思っていた。
ずっと一緒にいたのだ。
さやかが昔からどのように成長してきたか、恭介はつぶさに見てきた。
顔立ちが良くなり、身体は丸みを帯びて、出るとこは出て引っ込むとこは引っ込んでいく。
ガサツだった幼馴染は、今や脱皮して蝶となったのだと思い知らされる。

「恭介……時々私の胸、見てたよね。気になってた? 触っても、いいんだよ…」
「あ――」

まるで催眠術にかかったかのように思わず恭介の手が伸びて、
幼馴染の歳に見合わぬバストを……触ってしまった。
いや、揉んだ。絹のような触感と弾力を堪能する。
恭介が手を動かすごとにさやかの豊かな乳房はマシュマロのように形を変える。
恭介は何かに憑かれたように一心振乱に乳を揉む。
しかし正気に返ると、恭介は咄嗟に手を離した。
自分が今セクハラをしてしまったというショックからだ。

「あ、あの!!さやか……!! その、これは…!!」
「うん。嬉しい」

その笑顔は反則だった。
元々笑顔の似合う娘だが、こんなに大人びた笑顔を見るのは始めてだ。
裸より何より、さやかがこんなに艶やかな笑みを浮かべていることに恭介は驚いている。
このまま抱きしめていいんだろうか…。

「私だけじゃなくて仁美も見てあげてよ。ほら。綺麗だから…」
「志筑さん……?」

目をやるとさやかの隣では仁美もバスローブに手をかけている。
そして恭介の視線を感じるや、羽織っていたそれを床に落とした。
現れるお嬢様の整ったプロポーションに、恭介は凍りついた。

「し、志筑、さん…!!」
「如何でしょうか。私の身体は……綺麗ですか?」

さやかと同じように。
仁美の白く美しい肌が視界に入る。

”綺麗か…?”

勿論だ。恭介は首を縦に振る。
すると仁美は一礼して、さやかに戦闘開始を促した。
二人の少女がベッドに上がる。

美樹さやかと志筑仁美の恋愛バトル、記念すべき百戦目。
未来をかけた最終決戦。
その夜の幕が開いた。



「今日は恭介は何もしなくていいから」
「ええ。私達にお任せ下さい」

仰向けの恭介に迫る二人の少女。
普段間近で、同年代の素っ裸を見ることなど無い。
恭介の息子は既に勃起しきってしまっている。

「うわ……恭介、ここ、凄いことになってる…」
「さやかぁ…」
「恥ずかしがらないでください。嬉しいんです、私達。
私達でこんなに興奮して頂けているのですから…」
「志筑さん…」

タコは骨が無いというが、奴らはこんな感じなのだろうか。
今の恭介は文字通りの骨抜きだ。
身体の一部分だけが硬直して他はぐにゃぐにゃ。
力が入らず少女たちの成すがままにされてしまっている。

「さやかさん。お先にどうぞ」
「いいの? その…仁美だって、欲しいんじゃないの。恭介の――」

初めてを、と言い切る前に仁美は頭を振った。
それを取りに行く権利は、積年の想いを募らせてきたさやかにある。
仁美はさやかにウインクすると、自分は恭介の背に回りこんで後ろから恭介を抱きしめた。

「志筑さん…!?」

恭介の胸のトーンがまた高鳴る。
背中に押し付けられる豊かな感触。そしてコリコリという触感。
仁美も、恭介の前に裸を晒すことで乳首を勃起させているのだという事実。
恭介の心臓は爆発寸前だった。
仁美の厭らしい吐息が耳元を撫でる。その瞬間全ての意識が仁美に集中した。

「志筑さん…あの…」
「ありがとうございます。でも今はさやかさんを見てあげてくださいね」
「さやか…!?」

目の前にいるさやか。
四つんばいになり、上目遣いで恭介を眺めるさやか。
張りのある胸は下向きになっても形を保ち、プリンのように揺れている。
さやかは縋るように恭介の前に来て、その唇を奪った。

――厭らしいディープ・キス。

舌を絡める水音が部屋中に響いた。

「さやか…」
「じゃあ行くね」

さやかは前かがみになると、自分の胸で恭介のイチモツを挟み込んだ。

「そんな、胸で…!?」
「いいから…。任せて」

さやかは不慣れな手つきで、恭介の息子を挟んだ胸の揉み始める。
締め付けられる感触に恭介は快楽を覚える。
女の子の……それも幼馴染の胸の豊かな感触がペニスを刺激するなんて…。
シチュエーションも相まって恭介には早くも限界が迫っていた。
びくびくと動くペニスの鼓動はさやかも感じている。

(恭介、感じてくれてるんだ…。私の胸で、感じてくれてるんだ…)

感無量だった。
股が濡れるのをさやかは感じる。
シャワーの名残でない火照りを全身に感じていく。
汗が滴り、吐息が荒くなる。
はぁ、はぁ……と声を荒げながら、舌も使いながら、さやかは恭介に奉仕した。

ドピュピュピュッ…!!
やがて我慢しきれなくなったペニスから白濁が飛び出てさやかの胸と顔を汚す。

「あ、さやかっ…!!」

汚してしまった。幼馴染の可愛らしい顔を、自分の汚いもので…。
恭介は快楽の中で得た罪悪感からどうしようもない気持ちになる。
しかし当のさやかは、とても嬉しそうに微笑んだまま、
「いっぱい出たね」と口にした。

「さやか…君は……」
「恭介…。嬉しい。恭介で感じてくれたんだもんね。見て恭介。
私のここ、もうこんなに我慢できなくなっちゃってるんだよ……」

くぱぁと広げられる、さやかの――女の子にとって最も大切な部分。
それを前にして保っていられる理性などもう残っていなかった…。
恭介は獣のようになって、さやかを押し倒した。

「恭介っ!?」
「さやか…!!さやか…!!」

餓えた狼の眼光。
それを見たさやかは大いに興奮を覚えていた。
今恭介にはさやかしか見えてない。
恭介の視線を独占している。

(ああ、恭介―――)

さやかは求められるがままに股を、愛する男に晒した。

「―――いぐっ!!!」

走る破瓜の痛み。
しかしそれを遥かに凌ぐ嬉しさがさやかの中に蔓延する。
これはさやかが襲っているのではない。
上條恭介が美樹さやかを襲っている。
その事実だけで―――さやかは、幸せだった。

「さやかっ!さやかぁっ!」
「恭介!好き!!大好きだよ、恭介ぇ!!」

始まるスパンキング。
下のさやかの膣内を、恭介のペニスが蹂躙する。
さやかの膣内の締め付けに抗いながら、恭介は何度も奥まで打ち付ける。

「ひやああああああああ!! 恭介ぇ!!
削れる!!削れるよぉ!!奥!!奥にぃ、当たるよぉぉおぉぉ!!
恭介ぇあ!!! もっと突いてよぉぉ!!」
「さやか! さやかぁ!!」

そして訪れる限界。恭介のペニスの唸りをさやかは膣内で感じた。

「だ、出して!!恭介の、いっぱい頂戴!!膣内に出して!!」
「さやか、さやか…!」
「中出しされるッ!!恭介の精子、中出しされる―――!!
恭介の赤ちゃん!!赤ちゃん欲しいよぉ!!」

二度目の射精。
さやかの初めての膣内に注がれる子種。
膣内を焼かれる感じにさやかは声を荒げた。

「イグッ…!! イグゥゥゥゥゥゥ!! 恭介ぇぇぇぇぇ!!」

愛する人を思い切り叫びながら、さやかはベッドに沈んだ。
全身を汗で濡らして、肌を真っ赤にして、荒い呼吸で…。
普段の幼馴染とは思えないほどの厭らしい姿は、事後も恭介を興奮させた。
しかしさやかにとっては終わりでも、恭介にとってはそうでは無い。

「お疲れ様でしたさやかさん…。お見事です」

敵手の健闘を讃え、送る言葉。
それは仁美のターンの始まりを告げる。

「上條君。体位は私に任せていただけますか?」
「志筑さん…何を」
「ふふっ」

先ほどさやかとキスした唇に、今度は仁美の上品な唇が重なる。
香る甘さが全身を包む。
後から分かったことだがこのコロンの香りは彼女のオリジナル。
今日の為に作った仁美の武器。
仁美の作中に見事はまった恭介はその香りに魅了された。

仁美は貪るように恭介の唇を求め、やはり濃厚な舌使いで恭介の口内を犯す。
伝わる仁美の鼓動。
彼女とて初めての事だ。
いつものように感情を押し留めようとしても、
その高鳴りは目の色に、そして息遣いにも現れる。

”はぁ、はぁ、はぁ、はぁ―――”

清楚な令嬢が、淫乱な香りを撒き散らし、欲望のままに縋りついてくる構図。
日頃の気品溢れる物腰が不動な分、いざ乱れた時の美しさもまた凄まじい。

(ああ――。夜の志筑さんって、こんなにも、厭らしくて、綺麗――――)

まるで神話に出てくる女神のよう。

細い腕を恭介の背に回し、美しい足を絡めてくる。
――”志筑さんは僕をいじめてるのかい”と恭介は思った。
さやかの身体も絹のようだったが、仁美の手や足は、それ以上にすべすべ。
こんなのに絡まれては男に出来ることは何も無い。
毛布のような暖かさ、極上のシルクのような肌触り。
より強く押し付けられるふくよかな胸。

「上條君…?どうですか?」
トドメと言わんばかりにキスを終えた唇が耳元でそっと呟く。

「どうじゃ、無いよ…。本当にどうじゃないよ…。僕はどうにかなってしまいそうだ…」
「大丈夫です。私に全て任せて下さい。でも、ひとつだけお願い」
「……?」

横目で仁美と視線を合わせる。
一体何を求めると言うのか。
今となっては聞いてあげられないお願いの方が多いような気がした。
無言の恭介に仁美は面妖に微笑んで、

私の事を――。仁美と呼んで下さい。

と囁いた。
それがどういう意味を持つのか。
精神が高揚しきってて正確な判断力が損なわれていながらもそれを悟った恭介は、

「仁美――――さん」

と彼女のことを、初めて下の名前で呼んだ。

「はい…。恭介、さん…」

少し残念そうなのは敬称が避けられなかったことだろう。
しかし仁美は、今はこれで妥協したようだ。
仁美の身体が恭介にのしかかる。
彼女の華奢な身体に押されるままに恭介は仰向けに倒され、仁美はその上に跨る。
2度も射精したというのに、恭介の下半身はまだ元気なのだ…。

「仁美さん…」
「私が……ちゃんとお慰めして、差し上げますからッ…!!」

恭介のそそり立つペニスの上に、仁美は腰を落とす。

「恭介さんッ!!」

と愛する男の名を叫びながら、躊躇も無しに自分の初めてを捧げた。

「〜〜〜〜〜〜!!」

走る痛みを必死で堪える仁美。
彼女の膣内は締め付けが凄い。
無理やり処女幕を破り、子宮口までいきなり男のペニスを届かせるには、
いくら愛液が分泌されているとは言っても苦痛を伴った。

「仁美さん…」

その時、恭介は仁美の頬に涙が滴った瞬間を見た。
自分のペニスが締め付けられる感触よりもそちらの方が印象的だった。
この気丈な娘が、泣いているのは――。
恭介に罪悪感を呼び起こさせる。

「仁美さん、大丈夫なのかい…?」
「大丈夫も何も…。嬉し涙ですわ。ようやく、恭介さんと結ばれたのですから…」

無論それは身体が結ばれたというだけ。
心が繋がったわけではない。
さやかとの戦いに勝利したわけではない。
恋敵は自分よりも早く処女をこの人に捧げた。
嬉し涙というのも半分強がりだ。痛かったのだ。
…が、嬉しかった、その心もまた真実。

「それでは、動きます、わ…!」

仁美は気を取り直して、騎乗位のまま腰を振り始める。
同時に恭介の下半身を襲う凄まじい快楽。
仁美の、男根に喰らいつこうという、万力のように貪欲な膣内。
それは仁美が腰を動かす度に恭介のペニスを恐ろしい力でしごく。

「志筑さんの膣内、厭らしすぎる……!!」
「ああん!! あっ! あっ!! 感じ、感じますわ!!
いい、凄くいいのぉ!!」

叫びながら怪しく踊る美少女。
理性を失いつつ、快楽に任せて言葉を発し続ける。

「恭介さん、恭介さん!! 仁美の膣内、どうですかッ!!
わた、し、のっ、ンッ!!! 膣内、ハッ!!」

(志づ……、仁美さん、凄い…!!)

中も凄いが、その外も凄い。
騎乗位のという体位は、女性の正面が丸見えなので……
淫らな姿を余すことなく堪能することができる。

お淑やかな令嬢の顔は今やただのメス犬のよう。
豊かな胸が縦横無尽に暴れまわり、長い髪を振り乱し…。
白い肌からは無数の汗の雫が飛び散って、
艶やかなコロンの香りに混ざって彼女の直の体臭が漂ってくる。
その匂いそのものが、恭介の性欲を湧き立たせる。

「仁美さん、仁美さん…!!」

何時しか、恭介は一心不乱に彼女の名を呼んでいた。
夢中に名を呼ばれることに気を良くした仁美は更に激しく踊る。

「恭介さん!恭介さん!!恭介さん!!!」
「仁美さん!仁美さん!!仁美さん!!! 僕はもう、もうダメだ!!!」
「イって下さい…!!イって!! 仁美の膣内に出して!! 
私も、私もイクウウウウウウウウ!!」

はぁん!!!と声を荒げて仁美が達した後、
恭介の精液がブチまけられて仁美に更なる刺激をもたらす。

―――――ハァァ………、イ、くううう………。

それが彼女の最後の言葉。
どこで切れたのか分からない言葉を終えると、仁美はペニスから
自分の秘穴を引っこ抜いてぐたりとなった。

「仁美、さん……。それにさやか……」

倒れこんだ仁美とは逆に上体を起こす恭介。
眼下に身体を横たえる二人の少女。
いずれも満足そうな顔で、その大切な穴からは白と赤の混じったどろどろの
液体が流れてシーツを汚している。

「僕は、なんて……」
「恭介が悩むことないよ」
「何かあれば全て私たちの責任ですから」

寝ていたわけではなかったようだ。
二人は同時に身を起こすと、さやかは前から、仁美は背中から恭介に抱きついた。

「寝よ、恭介。今日は疲れたでしょ」
「さやかさんの仰る通りです。今日は休みましょう」
「細かいことは明日。ね、恭介」

休みましょうったって…。
動揺の収まらない恭介をさやかと仁美は引っ張り倒して、
三人で川の字のようになって、寝た。

「…恭介、寝たみたいだね」

恭介から寝息が聞こえてきた頃になって、さやかは小さく声に出した。
すると恭介を挟んだ向こう側から、「はい」と返事が返ってきた。

「仁美……。話、聞いて貰ってもいいかな。
こんな事した後で言うことじゃないんだけど」
「仰ってください。多分さやかさんの仰りたいことは、私の考えと同じです」
「そっか。分かるんだね、やっぱり」
「ええ…。賛成ですよ。さやかさん」

二人は何かを申し合わせた上で互いに手を伸ばし、恭介の身体の上で繋いだ。
その強い握手は…。
二人が寝入っても、朝が来るまで解けることはなかった。



朝。
一番早く目が覚めたのは恭介だった。
自分の左右に寝る二人の少女を見て、
やっぱり昨夜の天国は夢ではなかったかと頭を痛める。

「…どうしよう」

本当にどうしよう。

二人を抱いて…妊娠させてしまったかもしれない。
いや妊娠させていなくても、”責任”はどうなる。
将来結婚するにしても、それは二人のうちどちらかを切り捨てる行為だ。
本人らはそんなリスクは承知だ、選ばれなければ諦めると言うだろう。
そこに関して恭介は、責任は感じない。
彼女らが負うべきリスクだ。

…しかしそれは、恭介が今回の件で、
どちらの女性を将来の伴侶にするかしっかりと決めることが出来た場合である。
改めて考える。
昨夜の夜伽、どちらが良かったか。

正直――仁美の方が、客観的な美しさと気持ちよさでは上だったような気がする。
しかしさやかの方には情が移っている。
この娘を抱いているんだ、という時の高揚感はさやかの方が上のような…。
いやそれも何となくという感じで断言は出来ないのだが。

分かっていることは、昨日の今日では「こっちに決めた」なんて考えが
出なかったということだ。
恋人は誰かと言われればやっぱバイオリンになってしまうのではないか…。

(ああ、何を考えているんだ、僕の馬鹿! 結婚したって演奏はできるじゃないか!!
趣味と恋愛と一緒にしちゃダメだ、冷静に、冷静に考えるんだ…!!)

しかし考えたって出ないもんは出ないのである。
恭介は頭がパンクしてしまいそうだ。
そうこうしている内に目覚まし時計のベルが鳴り、両脇のお姫様達が目を覚ました。
――ああ、起きてしまった。
時間を逆戻させられればいいのに。
恐らく来るであろう「どっちにするの」という追求に恭介は鬱屈した気分になる。

「どうしたの恭介。顔色悪いぞ」
「さやか…」
「おはよう、恭介!」
「うん、おはよう」
「おはようございます、恭介さん」
「おはよう仁美さん…」

二人は朝日を浴びて、きらきら輝く笑顔を見せているのに。
恭介は死んだ魚のような目で挨拶する。
はあ、と溜息をつきつつ追求に備える恭介だった。
…が、何時までたっても昨夜のことを持ち出す雰囲気が無い。

「さやか? 仁美さん?」
「ん〜!今日もいい天気だ!シャワー浴びたらご飯行こう!!」
「そうですわね。ここのホテルのバイキングは最高ですわ〜」

浮き足立ったお二人はさっさとバスルームへ直行。
終わった後で恭介もシャワーを浴びてご飯を食べ、ホテルを後にしたのだが…。
幾ら時間が経っても昨日の話が持ち出されないのは、それで気になる。
日曜の雑踏を歩く中で、恭介は軽く話題に挙げてみた。

「ねぇさやか。昨日の件は、その――」
「ああ、あれ。引き分けだから」
「!?」
「本当は分かっていましたの。恭介さんは未だクラシック一筋…。
まだお互い中学生ですし、決着を急くことはないかと。
今日のような色事はもうしません」

えっ。と立ち尽くす恭介。
それでいいのだろうか。
あれほどの豪華な食事をして、いい部屋に泊まって、大人の階段をぶっちぎり、
その結論がそれでいいのだろうか。
幸いと言えば幸いだが不安というか、しっくり来ない部分が残るのは否めない。

「…二人はそれで、いいの?」
「勿論、いずれどちらかは決めて頂きます」
「けどまだ時間あるしね」

中学3年。高校。大学。
3人の青春はあと8年あるのだ。
それまでに決めればいいと、二人は言う。

「一年に百戦するとなると…。
仁美とはこのまま、決着が遅れれば八百戦はすることになるのかな?」
「勿論それ以前に決着がつく可能性もありますわ」
「私の勝ちで?」
「まあご冗談を」

爽やかな朝風に髪をなびかせながら恐ろしい会話をこなす二人。
しかしその表情と心持はどこまでも真っ直ぐだった。
恭介は溜息を漏らす。
この1年間で行われた100度の戦い。
それはこれから始まる戦いの前哨戦でしかなかったのだ。
群馬に立つ二本の火柱。その熱気はまだ冷めはしない―――。



―☆ワン・ハンドレッド☆ 完―






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