代償
上條恭介×美樹さやか


「あるよ…!」

少女は涙を浮かべながらも思い人の目を真っ直ぐに見つめた。

「奇跡も、魔法も、あるんだよ…!」

目を窓のほうに向けると彼女の視界に白く小さな獣の影が映り込んだ、彼女は獣の目を真っ直ぐに見据える。
白い獣は何も語りかけては来なかったが少女には彼が何故自分の目の前に再び訪れたのかを理解していた。
すぐさま少女は思い人の少年へと向きなおし、言葉を続けた。

「それを…、今から証明してあげるっ…!」

少女はゆっくりと少年の顔のほうへ近づけるとそのまま少年と唇を重ねた…。

建物全体を黄金に色に染め上げていた夕日はほとんど沈み、部屋の中は暗闇に支配されつつあった。
その暗闇の中二つの影が映し出される、影の1つは少女もう1つの影は少年の姿であった。
少女の方は既に服をはだけており、膨らんだ胸を覆い隠す下着が見え隠れしている。

「さやか…、どうしてこんなこと…。」

少年は少女の名前を呼びながら下着に手を掛けその下着の下からあらわになった胸を口に含んだ。

「んんぁ、あ…っ!」

さやかと呼ばれた少女は甘美な刺激に思わず声を漏らした、その声は先ほどの少女らしさは薄く、艶めかしい女の声に変わりつつあった。

「大、丈夫だよ恭介…、コレは全部夢だから…、んあぁっ!」
「夢…?」

質問を投げかけながらも少年は彼女への愛撫を一心不乱に続けている。

「そう夢…、んっ…コレは全部悪い夢なの、恭、介に…降りかかった不幸も…、今まであった嫌なことも全部悪い夢だったの…、あぁっ、んっ!」

もしかしたら偶然通りかかった誰かに声を聞かれてしまうかもしれない、最悪今この瞬間に誰かがドアを開けて入ってくるかもしれない。
そんな不安を抱えながらも二人ともその行為を止めることはできなかった。

「さやか…。」
「恭介…。」

お互いの視線が絡み合った、その瞬間自分の中で何か熱いものが湧き出したのをさやかは感じた。
思わず涙がこぼれそうになった、でもそんな姿を大切な人の前で晒すわけにはいかないさやかは体を起こして恭介の胸の中に飛び込み涙ぐんでいる表情を悟られないように取り繕った。

「今まで恭介が見てきたのは悪い夢…、次に目が覚めたときには腕を汚した悪夢も、病院の先生に諦めろって言われたことも、全部どっかに消えてなくなってるから…、だから…。」

だめだ声が震えてくる、私はこの人のそばから離れなくない、この人の前から消えたくない、でも…、さやかは渾身の力と勇気を振り絞って笑顔をつくった。

「だから今は私のことだけを考えていて…?」
「さやか…っ」

恭介に押し倒されさやかの影は恭介と重なった。

「んあぁぁっ!!」

よりいっそう激しい愛撫がさやかを襲った…、あまりにも強烈な刺激に意識を持っていかれそうになるのを必死で抑えてさやかは恭介を受け止めた。

「恭介、恭介…っ!」

突如恭介の手が下半身の方へと伸ばされそこを守っていた下着に手を掛けられた。

「あっ、ダメ!」

さやかは思わず恭介の手を止めてしまった。
寂しそうな切なそうな視線がさやかに向けられた、そのまま彼の顔がゆっくりと近づいてきた再び唇を重ねた…、さっきよりも濃厚に思いをこめて…。
お互いの舌と舌が絡みあう。

「んん、あっ、ん…、くちゅ…。」

ぴちゃぴちゃと音を立てながら必死でお互いを求め合った、息がつまり思わず唇を離すと糸を引いた唾液がお互いの舌と舌繋ぎ止めていた。
「ううん、恭介ダメじゃない…、もっとして…?恭介のこと忘れないように私の心にしっかりと刻み付けて…。」

再び、下半身の下着へと手が掛けられた…。
今度は抵抗せずに恭介の行為を受け入れた、下着がゆっくりと下ろされる。
自分がずっと大切にしていた部分が想い人の前にあらわになった。

「恭介、恥ずかしいよ…。」

最後に一緒にお風呂に入ったのいつだっただろうか、あの時とは本当に様々なものが変わっていた恭介もさやか自身も…。
恭介の顔が自分の下半身の方へ消えていくのが見えた、次の瞬間今までよりいっそう甘美な刺激がさやかの中に駆け巡った。

「ふああああっ、恭…、それ刺激…強すぎるっ…あああああっ!!」

全身を電気が駆け抜けるような感覚に襲われ、さやかは抵抗する力さえ失ってしまった。
ぴちゃぴちゃとした淫猥な音が耳に届く、恥ずかしさと切なさに胸が押しつぶされそうになりながらもただただその快楽を受け入れるしかなかった。
やがて彼女の中に抑えきれない強烈な感覚がこみ上げてきた。

「恭介それ以上されたら私もう…。」

必死に懇願してみたがそれでもさやかを襲う刺激は止まらなかった。

「はぁ、はぁ…あ、あぁっ、恭介、恭介…、んん、あ、あっ…、あああああああっ!!」

今まで味わったことのない感覚が頭のてっぺんから足のつま先まで、髪の一本一本まで隙間なく突き抜けていったような感覚に襲われた…。
次の瞬間全身からどっと力が抜けていくのを感じ、ベットの上にその身体を預けた。
はぁ、はぁ、と息が詰まりそうになるのを必死に整えながら、身体ゆっくりと起こし恭介の方へと向けた、彼もものすごく息が荒くなっているのを感じ取れた。
ふいに恭介がさやかの上に覆いかぶさって来た…、三度視線が絡みあう…。
さやかは息を整え勇気を出して恭介を受け入れた…。

「いいよ…、恭介、来て…。」

恭介はさやかの身体を勢いよく抱きしめた、さやかの身体に恭介の暑い体温が伝わってきた。

恭介のモノは幼い頃お風呂で見たときと違って少しグロテスクで少し怖くも感じた、でもそれ以上にたまらなく愛しく感じられるような気がした。
まだ新しい感覚を覚えたばかりのその場所にゆっくりと恭介のモノが当てられた、恭介はさらにゆっくりと細心の注意を払って身体を突き進めた、さやかのその場所が恭介の進み具合にあわせて割り開かれていった。

「痛っ…!」

覚悟はしていたもののそれでも耐え難い痛みにさやかは声を出してしまった。

「ごめん、さやか…、大丈夫…?」
「うん…、大丈夫だから…、だから最後までちゃんとして…。」

恭介の肩へ両手を回し抱きつくような形で涙を堪えた。
唇をかみ締めて必死に痛みを堪えているとひとしきり大きな痛みがさやかを襲った後、結合部から無垢だった証の紅い雫が流れ落ちた。

「恭介…。」
「さやか…。」

薄暗い部屋の中、もう何度目だろうか?こうやって視線を絡めるのは…、唇を重ねあうのは…。

「じゃぁ、さやか動くよ…?」
「うん…。」

お互いの想いをひとしきり確認し終わったあと恭介は腰の動きを開始した。

「はぁ、はぁ、はぁ…。」

二人の荒い息が部屋の中に響き渡る。
さやかは必死に痛みに耐えながら、恭介の動きを受け止めていた。

「はぁ、はぁ、恭介、恭介…。」
「さや、か…っ。」

腰の動きがよりいっそう激しくなる。

「さやか、僕もう…っ!!」
「うん、いいよ恭介っ、全部、全部受け止めてあげるっ!!」
「さやかっ、さやかっ…!!」
「あぁ恭介来てっ、恭介来てっ…、あぁっ恭介……………!!!!」

病室の中はすっかりと暗闇の中に落とされていた。
ベットの上では愛しい相手が静かな寝息を立てていた。
さやかは服を一通り着なおすと再び恭介のほうへと向き直った。

「夢、叶えてよ恭介…、じゃないとあたしの願いが無駄になっちゃうんだからな…。」

さやかは恭介を起こさないようにゆっくりとやさしく口付けをした・・・。
そしてゆっくりとドアの入り口のほうへ向かい音を立てないようにドアを開けた。
そして扉の外へと半分ほど身を乗り出したところでもう一度恭介の方へと顔を向けた。

「恭介………、さよなら…。」

病院の屋上、月明かりに照らされる中白い不思議な生き物は空を見上げていた。
その生き物の後ろを足音を立てて、1つの影がやってきた。

「またせたな、キュゥべぇ…。」
「もういいのかい…?」
「あぁ…。」
「そうか…。」

キュゥべえと呼ばれた生き物はゆっくりとさやかの方へと向きなおした。

「もう1度だけ聞くよ、この先いったらさやかはもう引き返すことができない、願いのその先何が待っていたとしてもけっして後戻りはできないそれでもいいんだね…?」
「あぁ、覚悟の上だ…。」
「わかった…、では始めようっ魔法少女の契約を!!さぁ願うといい君の願いを!!そして受け入れるといい!!それが君の運命だ…!!」
少年は目を覚ました…。
どれくらい眠っていたのだろうか…?アレは夢だったのだろうか?気がつけば身体を重ねていたハズの幼馴染は姿を消していた。
不意に違和感を感じて左手を挙げ自分の目の前へと持ってきた。
まさかとは思い左手に力を入れてみた。
左手は動いた何事も無かったかのように、平然といつも通りに…。
少年は理解した、左手が動くようになった理由と原因を…。
そしてその代償を…。

彼の目から大粒涙がこぼれた…。






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