もしもマミがシャルロッテに勝利していたら……
巴マミ×鹿目まどか


・百合注意
・青と黒は無視
・シャルロッテ戦にマミが勝利したパラレル設定


病院に現れた魔女を倒したマミさんは、相変わらず格好良かった。
魔女を倒す正義の魔法少女。とても素敵だ。
私もマミさんみたいに、なりたい。それが私の願い。
今までは誰かに迷惑をかけながら生きて来た。そんな私を変えたかった。
だから私は病院での戦いが終わった後、キュゥべぇと契約を交わし、魔法少女になった。私は、私の夢の第一歩を踏み出したのだ。
魔法少女の契約を交わす際、キュゥべぇに一つだけ願い事を叶えてもらうことが出来る。
だけど私は魔法少女になることが夢なのだから、キュゥべぇへのお願いごとは、戦いの前にマミさんと約束した、あの事にした。

『本当にいいのかい』

なんてキュゥべぇは不思議そうな顔をしていたけれど、私は構わなかった。
だって憧れの人と、もっと一緒にいられるのだから。あの人に、もっと近づけるのだから。

「さやかちゃん、さやかちゃんっ!」

ユサユサとさやかちゃんを揺するけど、ソファーの上で気持よさそうに寝息を立てている彼女が目を覚ます気配はない。
ここはマミさんのマンション。テーブルの上には、食べきれないくらいの、とても豪華な料理が並べられている。
それは、私の願い事だった。
“ご馳走と美味しいケーキが食べたい”そう言った私だったのだけれど、キュゥべぇが奮発したおかげで、こんな量になってしまった。

「寝かしておいてあげましょう。今日も、もう遅いものね」

壁の時計を見てみると、日付が変わろうとしていた。

「もう、こんな時間なんですね」

戦いの後、私は願いを叶えて魔法少女になって、マミさんの部屋でパーティをした。
三人で料理を食べて、色々なお話をして、気がつけばこんな時間。
だけどお母さん達には先輩の家に泊まると連絡してあるし、明日は休日なので問題はない。

「だけど本当によかったの?まどかちゃん」
「何がですか」
「何って、願い事よ。もっとあったんじゃないの、色々と」
「マミさんと約束しちゃいましたから」

キッチンで洗い物を始めたマミさんの横から、私はマミさんの顔を覗き込む。
少しシャンパンを飲んだからか、ほんのりとマミさんの頬は赤かった。

「それに、私は早くマミさんの力になりたかったんです。鈍臭いから却って足引っ張っちゃうかもしれないけど」
「まどかちゃん……」

マミさんが私の方を振り向く。
とっても綺麗な瞳だった。私の、今まで何も考えないで生きてきたのとは違う、過酷な運命と戦ってきた瞳。
力になりたいと思った。
マミさんの辛さを、少しでも分けて欲しい。
こんなことを言ったら、マミさんに生意気だって怒られるだろうけど。

「私、一人っ子なの。だからね、ずっと姉妹が欲しいと思ってた。まどかちゃんみたいな、可愛い妹が」
「わ、私もマミさんみたいな、綺麗なお姉ちゃんが欲しいなって――――」
「そんな、無理しなくてもいいのよ」
「無理なんかしてません!」

思わず、声を張り上げていた。
ちらりと、さやかちゃんを確認するけど、彼女は相変わらず夢の中だ。
私は心の中で安堵の溜息を漏らすと、驚いた様子のマミさんに向き直る。

「本当です。私、マミさんみたいな人に凄い憧れてて、ずっとマミさんみたいになりたいって思ってました。だから私、魔法少女になっても怖くないんです。むしろ楽しみって言うか、やっと夢に近づけたんだって――――」

スッと、マミさんの人差し指が私の唇に押し当てられた。

「怖いんだよね」
「ちがッ――――」
「今になって、怖くなって来たんでしょう?」

私は何も言い返せなかった。
全くの図星だったから。契約する前は大丈夫だった。
だけど魔法少女になった途端に、怖さがお腹の底から這い上がって来る。
鈍臭い私みたいな子が、マミさんみたいに出来るはずがない。何を夢見ているのか。
そんな、冷静な声が頭の中に響いている。

「大丈夫だよ、まどかちゃん」
「マミさん……」
「私が一緒にいるもん。約束してあげる、怖い思いをするときは、私も一緒に怖がってあげる。同じ怖さでも、二人なら半分でしょう」

そう言って、マミさんは右手を私に差し出した。
小指だけを立てて。
それは、指切りのかたち。
おずおずと、私はマミさんの小指に自分の指を絡める。

「「指きりげんまん」」

嬉しそうに、マミさんは私と指切りを交わした。
そんなマミさんを見て、私の心臓はトクンと高鳴る。良く分からないけど、今までにない程に心臓の鼓動が早くなっていた。
さっきまで平気だったのに、マミさんの顔を見るのが無性に恥ずかしくなって、私は顔を伏せる。
過剰に供給される血液が、私の顔を耳まで真っ赤に染めていた。

「どうしたの?」
「あの、なんだか……凄くドキドキしてて。疲れてるの、かな」

ぎこちない応答。
マミさんは心配そうに、私の額に掌を添える。掌の体温が、心地良かった。

「ちょっと熱いかなぁ。今日は色々とあったものね。私のベッドでもう休みなさい」
「でも、マミさんは……」
「私は毛布でも敷いて寝るわ」
「そんなの、駄目ですよ!」

仕方ないなぁ、とマミさんは溜息をつくと
「じゃぁ一緒のベッドで寝ようか。先に行っていて。片付けたら、後から行くから」

マミさん一人に片付けを任せるのは納得がいかなかったけど、先輩命令と言われては逆らうことも出来ず、
私は家から持ってきたパジャマに着替えてマミさんのベッドに横になった。
ベッドは結構な大きさで、私とマミさん二人で寝ても余裕があると思う。
枕に顔を埋めると、マミさんの香りがして、私の鼓動は一段と高鳴った。
上手く眠れない。疲れは自覚しているのに、目だけが冴えている。

「もう、寝ちゃったかな」

寝ようと思って目を閉じて、どれ程が経ったか分からないけど、ドアの開く気配がした。
眠りの淵に手をかけている私は目を開くことをせずに、このまま眠りへ落ちてしまおうとしている。
だけれど、頬に当たったマミさんの吐息が私の意識を覚醒へと導く。
どうしたのだろうかと心配になるけれど、目を開けるのは何故だかいけない気がした。
数秒間か、それとも数分間か。
静寂の後、私の半開きの口が温かい物に塞がれた。
一瞬理解が出来なかった。
だけれどキスをされたのだと気がついて、私はビクっと体を震わせる。

「――――!まどかちゃん、起きてたの?」
「マミ……さん」
「ご、ゴメンなさい。私――――」

私が起きているとは思っていなかったのだろう、マミさんは気まずそうに俯いている。
だけど、私の気持ちはきっと、マミさんが思っているのとは違う。

「嫌じゃ……ないです」
「ぇ――――」
「嫌じゃなかったです。マミさんは、悪戯のつもりだったのかもしれないけど」

恥ずかしくって、マミさんを直視できないまま、私は言葉を続ける。

「もっと……して欲しいです。変、ですかね」

時計の秒針が進む音だけしか聞こえない静寂。
マミさんは何も喋らないまま、私の頬に手を伸ばした。

「大丈夫だよ」

顔をあげた私と、マミさんの視線が絡まる。
無意識に、私は吸い寄せられるように、マミさんに顔を近づけていた。

「ンッ――――」

二人の唇が重なる。マミさんの息遣いを感じられる、深いキス。

「好きだよ、まどかちゃん」

好き。その言葉は、心の中にゆっくりと浸透していった。
そうか。そうなのかと、納得する。
私は、きっとマミさんのことが好きなのだ。
家族のみんなや、さやかちゃんも好きだけれど、きっとマミさんへの好きと、その好きは違う。
私はマミさんに憧れているだけだと思っていた。
ずっと、マミさんみたいに、人を助ける正義の味方に憧れていたから。
だけど違う。私はマミさんのことが、好きなんだ。
紛れもない恋愛感情を、マミさんに抱いているんだ。

「私も、マミさんのことが……す、好きです」

私の初恋。私の生涯始めての告白に、彼女は笑顔で頷いてくれた。
ゆっくりと、二度目の口付けを交わす。

「――――ッ!」

だけど今回は、さっきと違った。
口内に侵入した異物。マミさんの舌、だろうか。
彼女の舌は、まるで独立した生き物のように、私の口内を探索する。
歯茎をなぞられる度に、背筋に震えが走った。舌と舌がザラリと触れ合っただけで、視界が霞む。
さっきから下腹部が不思議な熱を持っていて、無意識に私は太股を擦り合わせていた。

「ンッ」

ちょっとした悪戯心で、私はマミさんの大きな胸に手を伸ばす。
表面を軽くなぞるような、柔らかな触り方。
マミさんはくすぐったそうに、体を捻った。

「悪い子ね。悪い子には、お仕置きしないと」

マミさんに、ベッドへ押し倒される。
彼女の口元には笑みが張り付いていた。とても怖い、けれどマミさんが浮かべると綺麗な笑み。

「マミさん……」

私に覆いかぶさったマミさんは、三度目のキスをする。
だけれどそれは、今までとは全く違う、荒々しいものだった。
全てを奪い去るかのように、強引に口内に侵入した彼女の舌は、私の無防備な舌を捉えると、遠慮無くソレを吸い上げる。
部屋に響く淫音。私は苦しくって、目尻に涙を溜めながら許しを乞うけれど、マミさんはさらに激しく、私の舌をなぶり続ける。
先程から下腹部にわだかまっている熱が、身体中に伝播していた。
このままでは、どうにかなってしまうという危機感を感じているのだけれど、マミさんは行為を中断してくれない。
背筋を、何かが這い上がってきている。
その何かは脊髄を伝い、魔手を脳髄へと伸ばした。その瞬間、視界が明滅する。

「ぁッ……いや……んぁ!?」

ビクッと体が一跳した。
襲ってきた急激な虚脱感は耐え難いほどで、私はぐったりとベッドに身を任せる。
唇を離したマミさんは、そんな私の様子を、満足そうに見つめていた。


後日談

「大丈夫、まどか?」
「当然です。先輩」

私とマミさんは狂った結界の中、魔女と対峙している。
怖い。逃げ出したい。だけれど、大丈夫。
隣にはマミさんがいるから。怖さは二人なら半分になるから。

「行くわよ。今日も早く片付けましょう」

中空に展開する銃群。無限とも思えるほどの銃口は、魔女を見据えている。
私も先輩譲りの銃を手に、魔女へと狙いを定める。
外れる気はしなかった。必中を願えば、その弾丸は必中になる。

「「ティロ・フィナーレッ!!」」

空間を震わせる灼熱の咆哮に、魔女の絶望に染まった断末魔はかき消される。
一切の慈悲もなく、幾千の銃火は魔女を消滅させた。
私とマミさん。二人の魔力を合わせた銃撃は、どんな魔女でさえ撃ち砕く。

「お見事です」
「まどか。あなたの、おかげよ」

ニッコリと、思わず見惚れるほど優雅に彼女は微笑んで、私の手を握る。
私も彼女の手を、ギュッと握り返した。






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