みんなでサバイバル
みんな


俺 秋山深一はいつものメンバーとともにライアーゲーム事務局の催したバカンスに参加し私有海上クルーザーに乗っている。
頬にあたる潮風が心地好い。

「秋山さん、ほら島が見えてきましたよ!」

直が指す方を見ると小さな島がポツンと浮かんでいた。

リゾート地にしては随分ちんけだな。そう思いながら俺は荷物を持ち船から降りて辺りを見渡す。

鬱蒼と生い茂る森…ゴロゴロデカイ石が転がっていて足場が悪い地面…そして今にも壊れそうな小屋…。俺は嫌な予感がした。

「おい」

俺は船の搭乗口に立つエリーに声をかける。

「ここ 無人島とかじゃないだろうな…。」
「ここはライアーゲーム事務局が所有している無人島でございます。」

エリーの凛と澄んだ声が俺たちの頭に響き渡る。

フクナガがエリーに食いかかった。

「ちょっ…ふざけんのも休み休みにしろよ!なんで俺たちをこんなところに連れてきたんだよ!」

エリーは切長の瞳でフクナガを見据える。

「もし あなたがたが無人島に取り残された時ライアーゲームで培ってきた力でいかに生き抜くか試して見たかったのです。ご安心下さい。三日後にお迎えにあがります。
…………カンザキ様、これを」

エリーは直に差し出した。
エリーの手にはふくふくとした羽根に覆われたがヒヨコが小さな瞳で直を見ていた。

「わぁ…カワイイ…!」

直がそっとヒヨコを両手で包みこむ。
人馴れしているのか暴れたり逃げようとしたりせず、直の手に身を委ねぴよぴよと小さな声でないていた。

「この子の名前はピョリーちゃんです。可愛がって下さいね。餌はここに置いて行きますので、それでは失礼します。」

エリーは船に乗り去って行ってしまった。

「さて…来ちまった以上やるしかねぇか…。俺とヨコヤは食糧係、オオノとフクナガは寝床を確保、直とアソウは水を探してきてくれ。ソレじゃみんな解散!」

俺とヨコヤはボロ小屋から見つけたモリやら釣り具をもって海辺を歩く。

「不思議ですねぇ…無人島のハズなのに新品のモリとか、必要最低限の調味料とか調理道具一式とか毛布とかドラム缶があるなんて…無人島になってから日が浅いのでしょうか…?」

ヨコヤの珍妙な言葉に俺は、はあ?と声をあげた。

「お前バカだな。事務局の奴らが用意したに決まってんだろ。ほれ、お前モリと水中メガネ持ってんだから海行って魚取ってこい。」

シュバッとヨコヤが俺にモリを差し出す。

「嫌です。私は釣りをしますから秋山くんがやってください。」
「はあ!?お前なにいってんだよ!お前やれよ!」

「だから イーヤーでーす。私の髪の毛はデリケートなんで海水で痛んじゃうんです。秋山くんやってください。」

「だー!もう分かったよ!やりゃいいんだろ、やりゃぁ!」

俺は上着を脱ぎ水中メガネとモリを持って海へ走る。
ヨコヤが「頑張って〜。」と手を振った

「あ!直ちゃん見て見て!あそこに湖があるよ!」
「きゃー ほんとだ!ヒロミさん早くいきましょ!」

アソウと直は大喜びで湖へと駆け出した。水面をのぞきこむ。澄んだ水が太陽の光を吸い込みキラキラと輝く。

「お風呂無かったからどうしようかと思ったけどここなら水浴びできるね!」
「はい!見つけられて良かったです!ねッ ピョリーちゃん」

直の左胸ポケットにスッポリ収まるピョリーが直に答えるようにピヨッと鳴いた。

一方その頃―――

「こらチビキノコ!キリキリ働け日が暮れるだろ!」

オオノがよろよろとふらつきながら木材を運びフクナガが器用に釘を打ち小屋の腐った場所を補強する。
どうやらボロ小屋を修繕するつもりらしい。

「ひぃ、ひぃ…なんでボクがこんなことを…水係が良かった!」
「バカ!女に力仕事させられるわけね〜だろ!ほれ、どんどん木材拾ってこい!」

ひぃ〜〜と情けない声をあげながらオオノは島を駆け回り木材を集め回った。

俺とヨコヤが戻った頃にはボロ小屋が綺麗に修繕されていた。

「お〜やるな お前ら」

俺の言葉を聞いてフクナガが得意気になる。

「へへッあったりめぇ〜よ。そういや直ちゃんたち まだ戻ってないな。まさか迷ったんじゃ…」

「オォーーーイ!」

森からアソウと直が出てきた。
フクナガはホッと胸をなで下ろす。

「お前らなにしてたんだよ 心配したんだかんな!このドブス」
「いや〜森んなか歩いてたら果物なってたから採るのに夢中になっちゃった。」

アソウはフクナガに袋を見せる。中には水を入れた数本のペットボトルの他に熟した果物がいっぱいに入れられていた。

「おぉぉ よくやった!さすがビジン!ビジン最高!!ビジン万歳!!」

調子のいいヤツーと笑った。

そしてヨコヤが持ち前の料理の腕をふるって 魚の煮付けを作り手際よくみんなに配る。

なんかキャンプみたいだな…。たまにはいいな、こんなのも…。

「あーッ!もうウンザリだ!」

オオノが怒鳴り立ち上がった

フクナガが呆れた顔をしながらスープをすする。

「おいおい、チビキノコどうしたよ、お前も食えよ すげーうまいぞ。」
「うるさい!さんざんこき使われた挙げ句に魚かよ!ボクは魚なんて大嫌いだ!支配者のボクに肉を寄越せ肉を!」

あ〜オオノの支配者になりたい病が始まった…。俺は面倒だなと 溜め息をついた。するとオオノはヒヨコにお湯で溶いた餌を与える直にズカズカと歩みよるとヒヨコを直から引ったくった!

「ああっ オオノさんピョリーちゃんを返してください!」

直がオオノからヒヨコを奪い返そうとしたが突き飛ばされ尻餅をついてしまった。ヒヨコはプルプルと震え怯えていた。

「おい…オオノ いい加減にしろ…!直にヒヨコを返せ」
「オオノくん…言うことを聞いたほうが身のためですよ…。」

怒りを露にした俺とヨコヤが凄んでみせたがオオノは聞かなかった。

「うるさい うるさい!このヒヨコは焼いて食べるんだ!」

「ヒック…ぐすッ…ピョリーちゃん返してぇ……ぐすッ」

とうとう直が泣き出してしまった。もう許さん!オオノを殴ってやる!
俺は立ち上がった………が
スパアァァァン!!
俺が殴るよりも先にアソウがオオノにひっぱたいていた。

オオノは赤くなった頬を押さえる。

「何すんだよ!このドブ…痛いッ!!」

オオノがいい終えぬうちにアソウはオオノの頭にゲンコツをかました。

「アンタってヤツは…!好き嫌いばっかして…!その上直ちゃん泣かすなんて、自分より小さい子をいじめちゃいけないって教わんなかったのかよ!!」

アソウがオオノに鉄拳制裁を下すのをただただ見ていた。
強い…アソウって強かったのか…。あんま逆らわない方がいいな…。

「ヒイィ…ごめんなしゃ〜い!」

オオノからヒヨコを奪い返し直に手渡し直の頭を撫でる。

「ほら ヒヨコは取り返したからもう泣かないで…ね、直ちゃん」

直がコクンと頷く。

そしてアソウはオオノの方に顔を向ける。

「ほらチビキノコ!へばってないでご飯食べな!魚は無理に食わないでいいから。果物あるし」
「は、はいぃ…」

その光景をみてヨコヤはこそっと俺に耳打ちした。

「アソウさんって母親みたいですね。」

その言葉に俺はすこしくすぐったい懐かしさを覚えた。



その後オオノはアソウに頭が上がらなくなってしまったらしい。






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