届かない叫び 続き2
横谷ノリヒコ×神崎直


自由を奪い、細い首に舌を這わせたところだった。

“ゲーム中のわいせつな行為はおやめください”

事務局員の機械的な音声が響く。
「これからがイイところなのに…ねぇ、カンザキさん?」
背後にいる人物はチッと舌打ちをし、
自分の行為を悪びれもせず悪態をつくと、腕を緩めた。
枯れたと思っていた涙がとめどなく流れる。
ヨコヤはもとの席に戻ると“パス”を宣言し空の中身を確かめるとさっさと退室した。

動けない。
恐怖と絶望の渦の中で何もできない自分がいる。

「大丈夫ですか?」

不意に声をかけられ体が震えた。
「神崎様、本来はこのようなことはしないのですが、非常事態と判断いたしました。
このままここに留まっていらっしゃる場合、次のゲームも神崎様の担当になります。
他の方と交代なさるのならお戻りください。
…貴女は現在ゲームができる状態ではないとお見受けいたします。
戻られたほうが賢明かと思われますが」
敗者復活戦の際に話し掛けてきてくれた事務局員だった。

かろうじて頷くと支えてもらいながら立ち上がり、検査ルームを後にする。
涙が止まる気配はなかったが、戻る間の背中をさする温かい手が残された理性を支えてくれていた。

「貴女が…どれだけ傷ついているか…女であるわたくしも重々承知致しております。
ただ…今はゲーム中です。チームとして参加して頂いております。
どうか…ご自分を強くお持ちになってください」

扉の前でそう言うと、彼女は礼を言うまもなく暗闇に消えてしまった。

一人になるとと再び足がすくみ、震えがやってきた。
あと一歩が踏み出せず、その場にしゃがみこむ。
(この扉の向こうには…みんながいる。
私がヨコヤさんにされたこと…皆に知られてしまった。
なにより秋山さんにだけは知られたくなかった。
汚れてしまった自分を見られたくなかった。
軽蔑の目で見られたら…もう…このまま死んでしまいたい。
もぅ…何も考えたくない…)

“今はゲーム中です。―ご自分を強くお持ちになってください”

(そんなこと…わかってる。…でも、もう嫌だ。)
「うっ…うぅ…」

「おい」
「!」
「そこにいるのか?」
(あ…きやまさん)
「…大丈夫か」
「…」

「…こっちにこいよ」

優しい声。ちょっと低めの…いつも私の心を掴んで離さない声。
こんな時でも(素敵な声だなぁ)と思ってしまう。
でも…
(…私…もう、会えません。もう、私は私じゃないんです。私は汚いんです。秋山さん…)

「聞こえてるか?…あのな…おまえはおまえだよ。
どんなことがあったって…俺にとってのおまえは変わらない」

(え……なんで)

「おまえの考えてることなんて俺には簡単にわかる。
俺にとってカンザキナオという人間はな、馬鹿正直で、優しくて、
なんでも信じちまうピュアな人間なんだ。何があってもそれは変わらない。
俺は汚い人間を嫌というほど知ってる。その俺が言うんだから間違いない。
おまえは汚くなんかない。
…大丈夫だから。おいで」

(…本当に?)

震える足を一歩出す。自動ドアのロックが解除された。

まぶしくて目を閉じる。
すると、ふわり、と温かい何かに包まれた。

そっと目を開けると、白。覚えのある肌触り。

「…おかえり」

上から聞こえた音につられて顔を上げると
そこには大好きな人の優しい顔があった。

(秋山さん…)

背中を優しくポンポンとあやす手。
「よく、頑張ったな」
「ごめんな」
「もう大丈夫だから」
優しく声をかけられて抱きしめられたことで
先程までの極度の緊張と恐怖で強張った体の力が抜けていく。

(あきやまさん…)

直は少し微笑むと、そのまま秋山の腕の中で意識を失ってしまった。

トクン、トクン
(きもちぃリズム…ゆらゆら…きもちぃ…)

「…目、覚めたか?」

「…ん…ん」
「…ここ、どこ?」意識がなかなかはっきりしてこないまま尋ねる。

「帰りのタクシーの中」

「そ、う……?え…?」
今度こそ覚醒し、声のするほうへ顔を向けた。
(!?)
見上げてすぐに秋山の顔。

「あっあっあきやまさんっ」

「…なに」
「近いですっ」
「じゃあ、離れたら?」
「え…?」
よく見るとそこは秋山の腕の中だった。
どうやら彼に身を預けて寝ていたらしい。
「すっすみません!重かったですよね!すぐどきますから!!」

「…別にいいけど」

「あのっでもっ」
「…いや、間違えた。…このまま、こうしていてほしい」
「…え?」

「もう少しだけ、俺の、腕の中にいてくれ」

「秋山さん…」
いまだ夢の中にいるような心地でそっと秋山にもたれた。

トクン、トクン
(あ…これ…秋山さんの)

規則正しい心音に耳を傾けていると、肩を抱く手が少し強くなった。

「ゲームは終わった。俺もキミも借金なしに抜けられた。もちろん他のやつらも。
だから安心していい。全て終わった。」

「…俺は今回おまえを守りきる自信があった。
でも…できなかった。取り返しのつかない失敗をしてしまった。
いくらこのゲームから抜けられたって…おまえを傷つけてしまったことには変わりない」

(あ…)

「本当に…ごめんな」
(そうだ…私…私は…)
あのときの恐怖がよみがえる。
「あ…いや…やだ…」カチカチとかみ合わない歯が余計に情景を思い起こさせる。

「わたしは…も、ぅ…きたな」
「おまえは」

「カンザキナオは…なにもかわっていない。
全て悪い夢だった。もう…忘れるんだ」
(そんな…無理です…秋山さん)

「忘れるんだ、全部。ゲームのことも、俺のことも、全て」

「…え?…どうしてですか…?なんで秋山さんのこと忘れなきゃならないんですか?!
そんなの嫌です!!」

「もともと俺たちのつながりはゲームでしかない。ゲームが終われば…もう関係ない」
「関係なんて…確かに初めは私が秋山さんに助けてもらったからなのかもしれません。でもっ」
「違う。俺がキミをあの忌まわしいゲームに巻き込んでしまった」

「…そんなの関係ありません!!きっかけはゲームでもっ…私…私は、秋山さんのことが」
「言うな」

秋山は外を見たまま
「…言うな。…全て忘れてくれ」
自分に言い聞かせるように低く言った。
直は流れる涙もそのままに秋山から目を離せなかった。

「着いたぞ」

肩からそっと腕を外すと降りるよう促した。
直はぎゅっと口をつぐみ、無言のままタクシーから降りる。
そして振り返ると

「秋山さんも降りてください」

「…は?」
「いいから!降りてください!!」
今まで見たこともない表情だった。
幾分気圧されたまま、腕をとられ下車した。

彼女は俯いたまま一点を見つめ続けて言った。
「…なんで…言わせてくれないんですか。…やっぱり、私が汚れてるから?」
「ちがう」
「じゃあ…なんでですか!?」見上げた目には今にも溢れ落ちそうな涙。
「…」
「秋山さん!」
秋山は細く息を吐いた。

「…もう、いやなんだ」
「…自分のせいで他人が傷つくのは。大切な人には幸せでいてもらいたいんだよ」
「キミは…ゲームのこと、俺のこと、全て忘れてやり直すんだ。
…幸せになってもらいたい」

「…秋山さん…」

ダラリと下がった両腕を掴む。
「なんで、私が泣いているか、わかりますか?」


「…悲しんでるんじゃありません」
「秋山さんの…身勝手さを怒ってるんです!」

「あなたは自分さえいなくなればいい、そうすれば私が幸せになれるって言いますけど、
…そんなのただの傲慢です!身勝手です!!
私の幸せを勝手に決めつけないでください!!私の幸せは、私が決めるんです!!
私の…私の幸せは、秋山さんのところにあるんです!!
秋山さんのいない生活に幸せなんてないんです!!
私は、もぅ引き返せないくらい秋山さんのこと好」
突風に巻き込まれたかのように言葉はさえぎられた。

これ以上ないほどのきつい抱擁。

声が出せない。
(苦しい…)
身動きが取れない中、ふと、肩先に何かを感じた。

(秋山さん…泣いてる?)

秋山の震えが伝わってきた。
「俺といることでキミを傷つけてしまうことが怖い…。
キミを守れなかった。」

直はかろうじて動く両手を秋山の背に回し、ポンポンとあやした。
抱きしめる力がフッと緩む。
「…秋山さん?私が不安な時、傷ついてる時、いつもこうしてくれましたよね。
私は、十分秋山さんに守ってもらってますよ。
私…秋山さんに守ってもらったように、私も秋山さんをこれから守りたいんです。
秋山さんのことが誰よりも大切なんです。
そばにいさせてください。一緒に、生きていきたいんです」

「秋山さんの、隣にずっといさせてください」

秋山は腕を緩め、頬から伝う涙もそのままに、直を見た。

(秋山さん…綺麗)

初めて見る愛しい人の表情に見惚れ、自然と微笑がこぼれる。
そして、互いの瞳に吸い寄せられるように近づくと
そのままそっと唇を合わせた。

どのくらいそうしていただろう。
柔らかい感触がそっと離れていく。

秋山の表情は、これまでまとっていた負を払拭したような表情になっていた。
もともと整った顔立ちであったが、鋭さがとれ、まさしく“美しい”という形容が似合う表情。
見つめられて心拍数が上がる。
熱を持った頬に触れられ、体の奥がブルッと震えたのがわかった。
(なに…今の)
初めての感覚に戸惑う。

「…そんな、目で見るな」

「…え?」
「俺の理性をこれ以上奪うなって言ってんの」
「…?」よく意味がわからず首をかしげる。

「もう、いい」
目の奥に欲情の色がみえるような気がしてならない。
耳が熱っぽくなるのを感じ、思わず目を逸らした。

(少し困り顔の秋山さんもかわいい…って言ったら怒られるかな)
すっかり気持ちが和らいだ直は、どうしても離れがたい気持ちを抑えることができない。

「…秋山さん?…良かったら、家にきてください!…一人より二人って言いますし
それに…あの…一緒にいたいなって…」

「…ハァ、キミ…やっぱわかってない」
「え?なにか変なこと言っちゃいました?」
「…いや、まぁ…いいよ」
「えへへ。帰りましょ」

先程まで自分を包んでいた腕に指を絡め、二人で部屋への階段を上った。

「秋山さん、何か飲みますか?」
「いや…いい。それよりも」
クイっと手招きされ、パタパタと近寄る。
「座って」
言われるがままベッドの端にちょこんと座る。

(…黙ったっきり…秋山さん?)
意図がわからずしばらく見上げたままでいると、フワリと空気が動いた。
(え…!?)
両手を優しく包み、目の前で片膝をつく秋山。
「あ…あきやまさん?」

「……あのな。…さっきも言ったとおり…俺はキミを守りきれなかった。
俺のせいでキミを傷つけてしまって……本当にごめん。

…これからキミが幸せになるためには
ゲームのことを一切忘れることが必要だと思ったんだ。
あの、一回戦の案内を受け取る前に戻ることが最善だと判断した。
だからそれに関わる人間…俺のことも忘れさせるべきだと思った。
…でも…キミはそれを俺の身勝手だと言った。

自分の幸せは俺とともに生きることだって聞いて……うれしかった。
俺を心から必要としてくれる人間がいるとは思っていなかった。
ありがとう。

俺は、これから一生かけてキミを守る。
もう、二度とキミが悲しむことがないように。傷つくことがないように。
だから…俺を信じて傍にいてほしい。

キミを…愛してる」

いつのまにか涙が頬を伝う。
瞬きもせず、秋山の告白を全身で聞き漏らすまいと聞き入っていた。

秋山は直の肩をそっと抱き、互いの瞳に互いが映るほど顔を寄せ

「愛してる」

囁きとともに口づけた。

そっと触れるだけのキス。
秋山にとってそれは誓いのキスだった。

「秋山さん…」
「ん?」

「あの…もう一回…」

「!!…ばぁっか!…こんなこと二度もできるか」
カッと赤くなるのが自分でもわかって思わず吐き捨てる。
「えぇーいぃじゃないですかぁ!あーもぅ録音しておけばよかった!」
「なに言ってんだ!まじめに言って損した」
「怒んないでくださいよぅ!だって嬉しかったんですもん!!」
ふいっとその場を離れようとする秋山。

「えっあっ待って!」
立ち上がり腕を捕まえる。
「あのっ…私のことも聞いてください」

「秋山さん…私…本当に嬉しいです。…幸せです。あなたに…出会えて良かった。
人を好きになるって、こんなに幸せなことだとは思ってませんでした。
秋山さんのおかげで…こんな素敵な気持ちを知ることができたんです。ありがとうございます。
…私、ずっと傍にいます。秋山さんを守ります。秋山さんのことを…愛しています」

秋山が自分にしてくれたように誓おうと、背伸びをしてみたものの届かず
フェイスラインへのキスとなった。
「ちっさいな」クスリと笑われる。
「んもぅっ秋山さんがおっきいんですってば」
じゃれあっているこの空気がくすぐったくて心地良い。
クスクスと笑い合ってると、なるべく重くならないように、と心掛けながらさらに続けた。

「…秋山さん?もう一つ、いいですか?

あの…私、ゲームであったこと…なかったことにはできないってちゃんとわかってます。
すごくつらかったけど…忘れるしかないのかなって…。
でも…私、おかしいんです。
今一番不安なのは…こんなことになって…秋山さんがこれから先、
私に触れてくれないんじゃないかってことなんです…」

「秋山さん。…私を、全部もらってくれませんか?」
最後は声が震えてしまった。

想像もしてなかった言葉に思わず動揺してしまい、すぐには答えられなかった。
「…言われなくても、ちゃんとその時がきたら」
「いまっ…今、がいいんです」
「…キミは疲れてる。今日は休もう」
「いやです!あきやまさん…お願い」
潤んだ瞳で見上げる。

まっすぐ見つめる目を避けるようにきゅっと抱きしめると
「俺は…こうしてるだけでもいいんだけど」

「…私は…早く忘れてしまいたいんです。秋山さんに嫌なこと消してもらいたいんです。
秋山さんに…触れてもらいたいんです」

天井を見上げて息を吐く。
「…まいった」
この表情にこの言動。気持ちはわかるが…
どれだけコッチの理性を揺さぶっているのか…無意識なのが一番タチが悪い。
「わかった。…でも、無理そうならすぐやめる」
結局彼女の言いなりか。そんな自分が可笑しく感じる。

「大丈夫です…お願いします」
秋山さんに触れてほしいのは嘘じゃない。でも…本当は…怖い。
まだアノ人に掴まれていた感覚が消えない。
もし…秋山さんとしても同じだったら?
その時…私は、どうするんだろ…。

「…秋山さん…私…初めてじゃなくって、ごめんなさい」
「…初めてだろ?」優しく微笑む。
「俺も、初めて。本当に好きになった人とするの。キミは違う?」
慌ててふるふると首を振る。
「じゃ、問題ない」

キスが降ってきた。
額にそっと触れた後、頬をかすめ、耳に口を寄せると

「大丈夫だよ」

艶のある低めの声が鼓膜に響く。
その瞬間、体の中でジリッと電流が突き抜けた。
(あ…また…この震えはな、に?)

そっと唇を合わせる。柔らかく、角度を変えて何度も。
それから、直の上唇を咥えるように口に含んだ。
初めての感触に震える。
上唇と下唇を交互に軽く吸いながら
秋山は、直を安心させるように髪を撫で、腕を背に回し、優しく触れた。

触れる先から安心が流れてくるように感じ、身体から力が抜けると、いつのまにか不安も消えていた。

直が素直に愛撫を受けているのを感じると、秋山は少し舌を入れ、歯列をなぞる。
くすぐったい感覚に少し口を開いた隙に、角度を変えて深く挿し込んだ。
「ん……んぅ…」
体中がピタリと合わさりお互いの熱が服の上からでも伝わりあう。

もっと、もっと近づきたい。

秋山の舌の動きを懸命に追う。口内で感じる刺激が体中をかけ巡る。
唇から漏れるも音体を這う手の感触も、割って入ってくる足の感触も
全てが電流となって直の体を突き抜ける。
「…は…ぁ」
意識が遠くなる。
ようやく唇を離すと、上気した頬に潤んだ瞳。半開きの口の端から唾液がつぅ、とつたった。

秋山は、微笑み、それを指ですくうとフワリと抱き上げてそっとベッドへ降ろす。
横たわる直を見下ろしながらシャツを脱いだ。

「こわい?」
優しく囁くと「ぃぇ…」とか細い声。
その声に不安になり
「やめる?」
両手でそっと顔を囲み、問いかける。

「ぃや……やめないで」

と潤んだ瞳で見上げられ、自分の下腹部がズクンと反応するのがわかった。
そのまま覆いかぶさると、首に唇を這わせて舌で舐め上げる。
「あ…ぅん…」
恥ずかしそうに目を瞑ったまま耐えている姿が愛しい。

そのまま服の上から胸を掴むと、小さく悲鳴が上がった。
これまでとは色の違う悲鳴。
訝しむとスルッとニットをたくし上げた。
「っ…ぃやぁ!!」
そこには彼女が辱められた痕跡が散らばっていた。
最後の小さい布を取ると蕾の周りには痛々しい噛み痕が残されている。
小刻みに震える彼女の頬に涙が伝った。

(こんな……かわいそうに)
秋山は舌でそっとぬぐうと
「…つらかったな。ごめんな。俺が…忘れさせてやるから」
ゆっくりと服を脱がせ、優しく丁寧に唇を肌に滑らす。
唇と舌を柔らかく使いながら自分に集中してもらえるように愛撫を続けた。
少し息が弾んできたところで、突起の周りをやんわりとなぞるように舐めると
先程の悲鳴が甘い吐息に変わった。

「あ、あ、きや、まさん…」
「どうした?」
「何か…ゾクゾク、して…腰、のあた…りがビリ、ビリしてる、んですけど……っ…ん」
「ん…大丈夫だよ。それはキミが俺をちゃあんと感じてくれてるってこと」
「そ…なんです、か?…っん…は、ぁ…なら、うれしい…」
言葉の間に混ざる明らかに悦んでいる声色。
尖端を口に含み、舌を硬くしてなぶる。
「っきゃ…ぁ、ん」
秋山の肩を掴み、びくびくと反応する直。
胸に感じる感触に我慢できずに、腰がよじれる。

充分感じている様子を上目に見ながら、直の足の間に自分の足を割り込ませた。
空いた手を体のラインに沿わせながら下ろし内腿に這わせる。
「あ…っん……ふっ…ぅ。」
軽いタッチにくすぐったさと気持ちよさが混ざる。

「かわいいよ」

(…え?)
空耳かと秋山を見る。

「かわいい」

直を見て微笑む。
秋山の頬も上気し、興奮をまとっているのがわかった。

這わせた手を直の脚の付け根まで持っていくと指で下着のラインをなぞる。
「んっ…ゃ、あ」
「いや?」
耳元で囁かれるとどうにも抵抗できないまま気持ちが昂ぶってしまう。
「ん…ん」
「やめる?」いつもの意地悪な含み笑い。

「…いじわる…しないで」

(もっと、触って)

欲求と羞恥の狭間で自分の気持ちを持て余す。
秋山は指をスライドし、下着の上から軽く爪で掻いた。
「きゃっあぁ!…あ…やぁ…あ…きや、まさぁん…」
脇から指を入れると、ぬるっとした感触に秋山自身も昂ぶる。
指の腹でそっと上下に刺激すると直は長い黒髪を踊らせた。
「あっあっや、だめぇ…!あ、っき…ま、さ…ぁっ!!」
秋山の腕を掴んで制止させようとする直に構わず、膨らんだ芽をぐりっと押した。

「っ!!はぁ、やぁ…ぁ…ぁ、あ…ゃあああ!!」

ビクビクッっと自分の下で跳ねる体。
中心がヒクヒクと指に吸い付いてきた。

「…あ……い、いま、の…?」
息も絶え絶えに恍惚の表情で秋山を見る。

秋山の愛撫の全てを受け入れ、信頼し、身を預けていたからこその反応。
イクことが何かも知らなかった少女の、素直すぎるその反応が内なる欲望に拍車をかけ、
思わず力任せに抱いてしまいそうになった。

わけもわからないうちに絶頂を迎えてしまった彼女に
考える隙を与えないよう再度蕾を口に含む。

「ぅあ…」

舌をやわらかく使いながら脇から肋骨、腰に向かって舐める。
薄い体の骨を感じる部分に沿わす度に甘い声が降りてきた。
「は…ぁ…あ、きやまさぁん…なん、か…へん…」
絶えず与えられる快楽に、意思に反して反応してしまう体に戸惑っているのだろう。
「大丈夫だよ、へんじゃない」
その都度不安を取り除きながら更に刺激を与えた。

中心を避け、付け根付近で舌をやんわりと上下させる。
「んん…」
くぐもった声に目をやると、目をぎゅっと瞑り口元を懸命に手で覆っていた。
恥ずかしがる本人の意思とはうらはらに、中心の実は十分に膨らみ熟れている。
秋山は舌の腹を使い、その実をざらりと舐め上げた。
「っきゃあ!」
急激な刺激に押さえる手が緩む。
「我慢しなくていい」
唇の内側を使って、ちゅ、っと吸い上げる。
「あぁん…やぁ、あ、あ、…んん」
吸い上げるたびに声が漏れる。
口内でころがすと背中を反って応える。
そのままゆっくりと指先を挿し入れるとあっと言う間に根元まで吸い込まれていった。
中を傷つけないように軽く指を曲げ、腹で優しく壁を撫でる。
「あきや、まさ…ゃ、ぅん…、ま、たっ…やっあっあっあぁ!!」
秋山を股にはさんだまま、うねりに呑み込まれた。
秋山の目の前で、パクパクと収縮に合わせて揺れる花弁に蜜が光る。
その蜜は尻の割れ目に沿ってシーツをも濡らした。

純真無垢な少女の下にこんなに猥らなモノがあったとは。
なるべく彼女が辛くならないように慣らしてから…と思っていたが
こんなモノを見せられては秋山自身が辛い。
蜜がついた口をぬぐうと、彼女の足を抱えた。

「…き、やまさん?」
まつげを濡らし、物欲しげな表情を向ける。
「…ん?」
額に柔らかく口づけ優しく微笑む。
「ぁきやまさん、も、きもちぃ…ですか?」
答えるかわりに小さな手をそっと掴み、下へ導いた。
ビクッと震え、見つめる瞳がいっそう大きくなる。
「!!…あ…あきやまさん…これ…」
「…わかった?」
「……すごく、あったかい、です…なんか、ヌルヌルしてる…」
思いがけず先端に触れられ思わず腰を引く。
「…っやめろ」
これだから無知は怖い。
「あ…ごめ、なさい…」調子に乗ってしまったと小さくなる。
「いや…ちがう。ごめん。ちょっと…俺も余裕ないんだ」
少女に与えられた刺激に呼吸が乱れる。
「…そ、なんです…か?」
「キミのせいでね」
悪戯っ子のように笑い、チュッと口づけると足を抱えなおし、糸を引く己を中心にあてがった。
ビクッと固くなる彼女に
「大丈夫」再度言い聞かせるように囁く。
耳朶を唇でなぶりながら少しずつ腰を進めると、
かかる圧は強いものの思ったよりもスムーズに呑み込まれていった。

「うぅ…」
表情は歪んでいるが呑み込んだそこはヒクヒクと波打つ。
皺の寄った眉間に口づけると
「いい子だ……どぅ?」
額に張り付いた髪を除けてやる。

「んぅ…へっき、です…でも、ちょっと、くる、しい…かな」

息を吐きながらつぶやく。
「苦しい?痛い、じゃなくて?」
「…痛いのは、いたい、んですけ、ど…なんか…
それよりも中が、秋山さんの、で…いっぱい、みたい、な…?」
「…っ」
「っぁ…おっきくな、った…?」
「くっ…ちょっと黙って」
言葉で責められ、我慢できずにグッとねじ込む。

「ぁあっん…は…ぁぁ」
体の奥深くまで突き刺さり、全身に快感が襲ってくる。
「あっあっんん、や、ぁっ…っきやま、さ…っ」
できるだけゆっくりと動き始めるが、蜜が十分に絡みつき徐々に加速させた。

直の甘い声が秋山を翻弄する。
強い突き上げが直を翻弄する。

「きゃぁ!!」
その突き上げに体がビクリと跳ねた。
「やだっあきやまさっん!!それ、やっ!」
腕の中でもがく。
「…ここ?」
「いやぁ!!」
確かめるように数回そこを強く突き上げ、真っ赤に熟れた実を指でつぶす。

「きゃぁああ!!」

ガクガクと揺れる。

「…っく!」

端正な顔を歪め、我慢できずに彼女の最奥に自身を打ち付けた。

「気づいたか?」
目の前に心配そうな秋山の顔。
「…え…私…?」
「…ごめん」
そっと肩を抱かれる。
「優しくしてやれなかった」

「……私、秋山さんのことで頭が一杯で…幸せでした、よ?」

自分を気遣う秋山の気持ちが嬉しくてニッコリと見上げる。
「なんか、全然違ったし…すごく気持ちよくて…ちょっと怖かったけど…」

「秋山さんとスルの…私、好きです」

秋山は少しの間、目を閉じると
「…あのさ…そういうこと言わないほうがいいと思う」

「え?なんでですか?」
「…」
「秋山さん?」

「ハァ…もっかいしたくなるだろ」

「えっ…」
「まぁ、いいや。…それより体大丈夫か?」
「あ…はい!なんでかあんまり痛くなかったし…」
「そりゃあんだけ濡れてりゃね…」
「え?なんですか?」
「キミは感じ易い子だなって言ったの」

「!?やだっ」

「俺は、嬉しいけど?」

「………なら、ぃぃです、け、ど」
真っ赤になって俯く。

くく、喉を鳴らして彼女を引き寄せると

「もっかい、する?」

耳元で囁いた。






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