好きなの?
江藤光一×神崎直


「直ちゃんって、秋山のこと好きなの?」

ふと気がついたような口調で、俺は直ちゃんに問いかける。
すると直ちゃんは、

「ち、違います!えと…ただ、すごいなあって、思うだけで」

と、顔を真っ赤にして必死に否定している。
それじゃ、“好き”って言ってるようなもんだと思うけど。
直ちゃんは、自分の気持ちに気付いてないのだろうか。
俺が見ていてもわかるのに。

しょうがないな。

「俺さ、直ちゃんのこと、好きなんだ

俺が言ったことが予想外だったのか、
直ちゃんは目を見開いて驚いている。

「えっ…あの…えっと……」

返すことばが見つからないのであろう、直ちゃんはしきりに
視線を泳がせている。

おかまいなしに俺は続ける。

「俺、直ちゃんは秋山のこと好きだって思ってたから、
ずっと言わなかったんだ」

俺がおもむろに立ち上がりにじり寄ると、直ちゃんは怯えた顔で後ずさる。

「でも、直ちゃんは秋山のこと好きじゃないんだよね。
じゃあ、俺にもチャンスはあるって事だよね……?」

わざと抑揚のない、冷たい声で言う。
壁まで追い込まれた直ちゃんに、もう逃げ場はない。
俺は即座に直ちゃんの手首を掴み、壁に押さえつける。

「やっ……エトウさん…やめて…」

怖いのだろう。もう泣きそうな顔をしている。

「ねえ、直ちゃん……いいよね…?」

極めつけに、思いっきり顔を近づけて囁くように言ってやる。

「嫌っ……秋山さん…!」

その言葉を聞くと同時に、俺は押さえつけていた直ちゃんの手を離す。

「やっぱり秋山が好きなんだよ、直ちゃんは」
「えっ…あの…」

何がなんだか分かっていない直ちゃんはぽかんと口を開けて
突っ立っている。

「ごめんね、直ちゃん。怖がらせて。
でも、こうでもしないと直ちゃん、本当のこと言わないから」

「直ちゃんは、秋山が好き。…そうでしょ?」

俺がそう言うと、直ちゃんは恥ずかしそうに頷いた。
前々からわかっていたけど、やっぱり胸がチクリと痛んだ。

「早く秋山に気持ち伝えなよ」

蓋をした気持ちに気付かれないように、
俺はそれだけ言うと足早に部屋を後にした。

「早く、くっついてくれよ。じゃないと、俺が許さない」

誰に言うわけでもなく、小さく小さくつぶやいた。






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