何度も
秋山深一×神崎直


「んんっ……」

熱いため息が漏れた。
秋山も同様で、お互いが乱れた息を吐きながらぐったりとベッドへと倒れ込む。
ふと直の頭にくすぐったさが過ぎるのは、彼が直の頭に顔をうずめているからだと理解する。
背中にかかる秋山の重みがとても愛しくて、やっと整ってきた息の中に少し笑いを交えた。

「な、お」

「…はい、」

背中越しに感じる広い胸。そこにしっとりと伝う汗。何もかもが秋山を身近に感じさせるこの瞬間が大好きだった。

「や、」

ぴく、と体が強ばる。
致した直後のことなのでと放置しておいたけれど、秋山はソレをまだ抜いてはいなかった。
少し身をよじるだけでダイレクトに伝わってくるその熱がまだ引かない余韻を際立たせて直を襲ってくる。

「あき、あきやまさ、」

「ん?」

分かっている癖に、彼は意地悪そうに少し笑っていて。
直が言葉を紡ぐかどうか迷っている間にも、彼の熱のこもった指が白くなだらかな背中の筋をつう、となぞった。

「あっ、…も、もう、朝です、」

「…やだ」

咎める彼女の声に、駄々をこねるような声を重ねられて。
何時もの余裕や大人の素振りが其処に無くて、可愛いとさえ思ってしまう。

「んんっ」

緩く緩慢な動作で秋山の腰が動いて、逃げようとした直の細い足が彼の手によって密着させられた。
クチュ、と小さな水音がして、それとは異なるようにしなる直の背中にキスが落ちてくる。

「きょ、…あっ、だい、が、く…っ」

「どっちにしろ無理だよ」

クスリと笑う気配。
自分の腰の上で動くそれよりも、彼の声の方がぞくりと体を震わせる。

「…昨日何回シたか覚えてる?」

「ふあ、」

「3回。若いよね、俺も」

もう直の耳には入っていないだろうとは分かっていたけれど、クク、と喉で笑う秋山は、悪戯っぽく笑んだ後に首筋にキツく吸い付いた。

「っ、」

「ほら、こんなの付けて行く気?」

付いていた腕を折り曲げて、離れていた距離を埋めるように直の背中と秋山の胸が密着した。
指を胸へと移動させて、彼女の反応を楽しむように強弱を付けて触れてゆく。

「それに、体も動かないよ」

初めからそのつもりだったけど、なんて言わないけれど。

直の快楽に耐える顔が見たくて、それ以上にキスがしたくて彼女の体をこちらへと向けさせる。
整理的な涙と、唇を濡らす唾液。全てが秋山を追い詰めるのに、どうして我慢が出来ようか。

「ほら、口あけて」

そう言うと直は絶え絶えに息を漏らしながらも、秋山の言う通りにしようと必死で口を開ける。
中に収まる舌へ絡めるように伸ばすと、それすらも心地よさの一員となってしまう。

このまま、彼女を食べてしまうのではないか。

そんな馬鹿げた疑問が頭の片隅に浮かんでは消えて、彼は自嘲気味に笑った。
全部全部自分のモノになってしまえばいいのに。
この年になって、8つも年下の彼女が何処かへ行ってしまうのが不安で、何度も求めてしまう。

直にしてみればきっと迷惑に違いないそんな思いを隠すように、秋山は更に深く口付けた。






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