我慢
秋山深一×神崎直


「んっ…く、」

ぞくぞく、と彼女の体を走る快感。
ただ首筋を撫でただけなのに、もうその目に貯まる涙を見て秋山は苦笑した。
つ、と細い指を首筋から鎖骨へ、そして胸の谷間へ。
触れるか触れないかの加減でなぞっていけば、彼女はふるふると震えていた。
するり、と脇腹を撫でて腰を抱くと、「んんっ」と声が響く。日増しに感度の良くなるカラダが、秋山は少し嬉しく思う。

「触っただけだろ?」

意地悪そうに呟くと、でも、だとかだって、だとか、拙い言い訳をする直が愛しい。
ベッドの上に身を横たえさせて、左手は彼女の頬に。右手はそれでもゆるゆると腰を撫でる動作を続けた。

「ふ、あ」

「キモチイイ?」

こくん、と素直に頷く直。こんな時も馬鹿正直な彼女とその体に、自然と頬が緩んでしまう。
やがてその手は彼女のスカートの中へと侵入した。あ、と漏れる声を無視して下着の上からゆっくりと秘部をなぞってやる。

「あ、や、」

視線が合うと恥ずかしそうに逸らす直が愛しくて、ほぼ無意識に唇を重ねた。半開きの柔らかい肉を割って、ぬるりと熱い舌が侵入すると、直は身をよじらせる。
少しだけ目を開いて直を叱るようにすればすぐに大人しくなった。

心の中だけでうっすらと笑いながら、ちゅくちゅくとわざと音を立てて逃げる舌を絡ませてやる。
ぐりぐりと強く押される指と、熱くて逃げられない秋山の舌。もうどちらに集中すればいいのかもわからなくて、直はぎゅっと彼のシャツを握り締めた。

あまり求めてはいけないと分かっていながらも、目の前に転がる獲物に理性は働かない。
もう少し求めるように顔を動かすと、深くなったくちづけにカチリと歯が合わさる。

「ふ、」

漏れる吐息が熱い。それすらも直の一部だと思うと、逃がさないように唇を食んだ。
直の顔がすっかり赤く染まった頃を見計らって、少しだけ唇を離してやった。それでもその距離は1ミリとも空いておらず、結果的にお互いを見つめ合うことになるのだけれど。
どちらかが何かを言えばまた触れ合いそうな距離。堪らなくなった直が先に目を閉じてしまうと、それが何となく気に食わなかった彼の指が、直の一番敏感な箇所をグリ、と押しつぶした。

「あっああ!」

閉じられたばかりの直の瞳が大きく開いた。
その様子に満足して、にたりと笑ってやれば、直は切なそうに目を細めてこちらを見てくる。

「気持ちいいんだろ?」

そう問うている間にも、クリクリと、先ほどよりも少しだけ緩めに人差し指で押してやる。
半開きの口元から伝うその唾液をペロリと舐めとると、彼女を愛している分だけ甘い感覚が口のなかヘと広がった。

「や、や……あき、あ…っ、」

「俺のこと見てな」

そう告げると秋山の指は湿った下着の横から侵入して、今度は直接直のぬるぬるとした秘部に触れた。
ビクリと跳ねた細い体に自分を密着させて、そんな彼女を楽しむように眺める。

「凄く濡れてる。オモラシしたみたい」

「そん…なっ…やぁん!」

恥ずかしくてたまらないのだろう、直はぽろぽろと涙をこぼす。くっく、と喉で笑って、今度は中指を割れ目にそって繰り返しなぞった。
熱い愛液が秋山の指に絡みつき、熱がこもる中へと一本指を入れてみる。少しだけ強ばる直に慰めるようにキスを落とすと、すんなりと抜ける体の力。
壁に押し付けるようにしながら、第二関節辺りまでその指を埋めてみた。

予想通りではあるけれどキツイ。

それが嬉しくもあり、そしてこれからのことを考えると当分先へは進めないことが悲しくもあり。
けれどこんな表情をする彼女を見るのは初めてではない。今夜も家に帰って自分で処理をしなければ。

「あ……き、…やま、さ…?」

苦笑いが彼女に見えてしまったのだろうか。
心配そうに、それでも息も絶え絶えに、直は秋山を見つめていて。ふ、と優しく笑って、指の挿入を開始した。

人差し指と小指でソコを広げて、中指で彼女の中を楽しむように繰り返し入れたり抜いたりを繰り返す。
ちゅぷ、くちゅ、と奏でる音は直を辱めるけれど、秋山には酷く心地いい。

「あ、あ!んあ、」

「直、可愛い」

彼女が喜ぶのなら、こんな我慢は小さなものだ。
きゅう、と締め付けてくる中の具合で、そろそろ達しそうなのを感じ取る。

「イク所見せて」

「え、あああ、あっ、」

秋山の言葉を理解する間もなかった。
完全に意識の外にあった親指が赤い芽を再度強く押しつぶす。

ビリビリビリ、と体の中心に強い刺激が走り直の体が弓なりに逸れて、ふわりと宙に浮くような感覚に襲われて。

「は……、」

熱くて甘息が耳に届く。
とろんとしている彼女から指をゆっくりと引き抜いて、まとわりつく直の愛液を猫のように舐めとった。
恥ずかしそうに秋山の首筋に顔を埋める彼女の頬に、ちゅ、と唇を落として「お疲れ様」と労わってやる。

「はずかし、です…」

「可愛かったよ」

「っ!もうっ、そんなこと、」

ううー、と呻く直の髪をふわりと撫でて、それでも暫くは自分も動けないことにまた苦笑いが漏れた。






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