終了2日前
秋山深一×神崎直


「秋山さん…こんなことして、どうなるんですか?」
「まぁ見てろ」

ソファに腰掛け余裕の表情で煙草を吸う秋山に、直は苛立ちを隠せずに声をかけた。
ライアーゲームの終了日まで後2日、藤沢は相変わらず居間の押し入れの前で籠城を続けており、
かたや秋山と直は監視ともつかない監視を続けている。
勝算も無く、かといって具体的なアクションも起こせず、一人の時間を持て余した直は、
自分の監視の時間が終わった後も、しばらくこうして秋山と一緒にいることが多かった。

「何か…何かできることは無いんですか!?」

たまりかねた直が悲鳴を上げると、秋山は吸っていた煙草を灰皿でもみ消し、愉快そうな顔で直を見上げた。

「無いな…そうだ。強いて言えば、俺の相手はどうだ?」
「はい?」

鳩が豆鉄砲を食ったような表情の直の顔を下から覗き込み、
読んでいた雑誌を傍らに投げると秋山はくくっと喉の奥で笑う。

「いや…俺も長い間刑務所暮らしだったし、久々に若い女と一緒にいるとそういう気分にもなるってもんでね。
というわけでどう?君可愛いし俺は問題ないよ」
「な、な、な、何言ってるんですかっ!ダメに決まってます、あり得ません!ダメダメ!!」

いくら純粋な直とは言え、秋山の言葉がどんな行為を意味するかは分かっている。
真っ赤になったり真っ蒼になったり、目まで白黒させて全力で否定する直を前に、
秋山は音もなくソファから立ち上がった。そのままじりじりと直を壁際に追いやり、
顔の真横に手をついて至近距離から直の瞳を見据えた。

「男女が夜中に密室で二人、それなりの覚悟がないわけないよな?
それに、俺は君の至極勝手な依頼に巻き込まれたいわば被害者、君はその勝手な依頼人。
今俺が君を見捨てたら、負債一億円を抱えた女子大生の出来上がりだ。
君に断る余地なんてあんの?」

煙草混じりの非情な台詞を聞いて、直は言葉に詰まる。秋山の言う通り、言い返す余地は何も無い。
遅かれ早かれ、一億円もの負債を抱えた一介の女子大生に残るものは、自分のカラダ一つしか無いのだ。
藤沢の言う通り水商売に堕ちてしまえば、直にとって最悪の結果しか無いのは確実だった。
秋山のことは決して嫌いではない。落ち着いていて、すごく頭が良くて回転も速い。
それに、ちょっと、いや、かなりカッコいい容姿の持ち主である。
長い前髪と近寄り難い雰囲気で隠されてはいるが、驚く程整った顔をしている。
恋愛沙汰に疎い直ですら、この短い付き合いの中、前髪の奥の秋山の表情にドキッとする瞬間が何度もあった。
それに、たまに見せる寂しげな瞳は、決して悪い人間には見えなかった。

でも、そういうことはこの際問題ではない。
やはり初めての相手は、お互いに好き合った人が良かった。
平凡でもいい、私を心から大事にしてくれる人が良かった。
しかし自分にそんなことを言う資格は無いのも確かだった。
刑務所から出所したばかりの何の関係も無いこの人を巻き込んで、胡散臭いゲームに利用してしまったのは自分だ。
本人は報酬のためとは言うけれど、自分が助かりたいばかりに、まっとうな人生を歩み始めたこの人を、
またもや暗い世界に引きずりこんでしまった。私、なんて勝手な人間だったんだろう…。
直はみるみる浮かんできた涙を大きな目いっぱいに溜め、ぎゅっと下唇を噛んだ。

「そろそろ答え出た?
不特定多数にカラダを売るか、御礼のつもりで俺一人を我慢するか。さぁ、どっち?」

心を見透かしたようなタイミングで発せられた秋山の台詞で、
ついに直の瞳から涙がこぼれ、二人の足元に落ちた。
他人に迷惑をかけてはいけない、正直で無ければいけない。
そう信じて生きてきた直だからこそ、秋山の台詞が容赦無く浸食する。

「…っ、分かりました。わ、私、秋山さんに…」

「ははっ。冗談だよ、ほんっと丸め込みやすいヤツだな」

そう言うと秋山は、硬直した空気を吹き払うように笑いながらソファに身を投げた。
直は涙で濡れた顔を上げ、またしても鳩が豆鉄砲を食ったような表情をしている。
その表情にしばらく肩を震わせていた秋山だが、ふと真顔に戻ると呆然とする直を見詰め直した。

「君さ、本当に気をつけた方が良いよ。俺だから良かったものの、相手が本気だったらどうすんの?
若いんだからあまり自分を安売りしない方が良い」

そう言うと、床に直接置いたLARKの箱から新しい煙草を取り出し、紫煙をくゆらせ始めた。
直は一連の出来事をうまく消化できないまま、つまらなそうに煙を吐き出す秋山を見詰めている。

「秋山さん…」
「ほら、もう遅いから早く帰れ。襲われたいのか?」

何事も無かったかのように雑誌を読み始めた秋山の、猫背気味の広い背中を見詰めたまま、
直はじっとその場に立ち尽くした。

「ま、君さえその気なら俺はいつでもOKだよ。
溜まってるのは本当だしな、気が変わったら言ってくれ」

冗談半分本気半分、秋山は口の端を歪めてそう声をかけると、
またくつくつ笑いながら手元の雑誌に目を落とした。

そう言われながらも、直はその場に佇んでいた。帰れない。このまま帰ったら、勝手な女で終わってしまう。

「…私、ちゃんと考えました。秋山さんの言ったこと、本当にその通りだと思いました。
御礼をさせて下さい。どうぞ、抱いて…下さい」
「はぁ?!」

どうせ半泣きで帰るだろうとタカをくくっていたのだが、思いも寄らない直の台詞に、
秋山は咥えていた煙草を落としそうになった。
当の直はワンピースのスカートをきつく握り締めて俯いているが、その手は血色を失って微かに震えている。

「確かに秋山さんの言う通りです。私は秋山さんにすごく迷惑をかけています。
それに対して御礼をするのは当然のことです。も、もし私なんかで秋山さんのお役に立てるなら、その…」

直の声はどんどん細く小さくなり、最後になるともはや震えていてよく聞こえなかった。
尋常では無い様子を前に思わずソファから立ち上がった秋山は、緊張で硬直した直の細い肩に手をかけた。

「おい、君大丈夫か?冗談が過ぎたようなら謝…」
「良いんです!迷惑をかけたのは私です、秋山さんが望むなら構わないんです!だからっ…」

悲鳴にも似た声で叫ぶと、直は肩に置かれた手を振り払い、秋山の体に抱きつき硬い胸に顔を埋めた。
苦しい程の力でしがみつく直の体は、やはり微かに震えている。
秋山がなす術もなく立ち尽くしていると、先ほどよりは随分と落ち着いた声で直が言った。

「だから、冗談だなんて言わないで下さい。私の気持ちを、覚悟を、無駄にしないで下さい。
私、秋山さんならいいです…」

秋山が顔を落とすと、真っ直ぐな瞳で直がこちらを見詰めている。
その瞳には諦めの影は見当たらず、ただ真っ直ぐな決意だけが宿っていた。
幾分、頬に赤味が差してはいるが。

「…本気か?」
「私、嘘はつきません」

その台詞を聞き、秋山の眉間に小さなシワが寄せられる。
頭をよぎるのは、人間は正直であれ、と自分に教えてくれた母。
目の前のこの娘のように、純粋に一所懸命生きていた母。
しかし、このような状況で思い出すべき人ではなかった。
一瞬の感傷を振り払うと、真っ直ぐに直の瞳を見詰め返した。

「分かった、君を信じる」

秋山はソファに直を押し倒すと、後頭部を軽く掴んでやや強引に唇を奪う。
ふっくりとした唇の間に舌を捻じ込ませ、甘く柔らかい口内を蹂躙する。
舌を絡め、上顎を舐め、唾液を流し込むと、くちゅくちゅと湿った音が二人の耳を犯す。
うまく呼吸のタイミングが掴めず真っ赤になっている直に気付いて秋山が顔を離すと、
二人の間に淫靡な糸が煌めいた。
もちろん直にとってキスなど初めての経験だが、秋山には知る由も無い。
唇の周りを唾液で濡らし、はぁはぁと艶っぽい息を吐く直を見て、少し強張った顔で秋山が呟く。

「自分から誘っておいて初めてなのか?」
「すみません…初めて、です…。私、何かまずいことしちゃいましたか?」

秋山を見上げる瞳は恥ずかしげで、視線を合わせる間も無くうろうろと彷徨う。
しばらくすると、呆れたような秋山の視線にいたたまれなくなったのか、
ぎゅっと目を瞑って顔を背けてしまった。
相手はもはや変人の域に達したバカがつく程の正直者、いくら可愛かろうが性格が良かろうが、
周りの男共が手を出さなかったことは想像に難くない。

「そりゃそうか…。まぁいい、力抜いてな」

まだ息が上がっている直に軽く口付けると、骨ばった右手で直の乳房を撫で上げた。
びくっと震えた体を無視して強弱をつけて揉みしだくと、直は唇を噛んで低い呻き声をあげる。
声を出さないよう我慢しているらしい。秋山も徐々に火が点いてくる。
硬い下着越しの感触では物足りなくなり、ワンピースの襟元から直接手を入れる。
既にピンと起ち上がり、存在感を示し始めた突起を指の間で摘み上げると、
ついに直の口から甘い媚声が漏れ出した。
自分から出た声に驚いて直が口許を押さえたが、秋山はそれを空いた手で引き剥がした。

「おかしいことじゃない」
「やっ…だって、私こんな…!」
「構わない、聴かせてくれ」

突起を弄ぶ指はそのままに、秋山は空いた手で背中のファスナーに手を伸ばし、
いとも簡単に身体からワンピースを引き抜いた。
露わになった直の肢体は桃色に上気しており、顔に似合わぬ豊かな胸と、
必要十分な柔らかさを持つ腰のくびれが、強烈な色香を漂わせている。
着けている下着は繊細なレースと白いリボンが品良く装飾されたペールピンクのセットで、
ショルダーの細いワンピースに合わせてか肩紐が外されていた。
直の服を脱がせたことによって、周辺に甘く官能的な香りが一気に充満する。
秋山は久々に嗅ぐ女の匂いに息をのみ、不覚にも目を背けてしまった。

「秋山…さん…?」

荒い呼吸で見上げる直が、秋山の様子に気づいて声をかけた。
何か仕出かしてしまったかと、心配そうな表情をしている。
我に返った秋山は、まるで中学生のような反応をしてしまった自分に、心の中で苦笑した。
それこそ、初めてでもあるまいし。何をやってるんだ俺は。

「…何でもない。随分気合い入った下着だけど、こういうこと期待してた?」
「えっ?!ま、まさか!絶対違います!!」
「まぁ、どうせすぐ取るんだけどね」

予想通りの返答を聞き流し、秋山は直の両手をその頭上で抑え込むと、
背面のホックに手を伸ばしてするりとブラを取り外した。
縛りを失った乳房は原型を失わない程度にぷるんと左右にこぼれ落ち、
すっかり起ち上がった桃色の突起がふるふると秋山の劣情を誘う。
直は慌てて隠そうとするが、両手を戒められていてそれもかなわない。
女性特有のしっとりした甘い香りが鼻腔をくすぐり、誘われるままに突起を口に含むと、
直はたまらず悲鳴にも似た嬌声をあげた。

「はっ、ん…!だ、だめです秋山さん…!そこ…や、あんっ」

舌全体でじっとりと舐め上げ、歯を立てないよう軽く甘噛みし、
舌先でちろちろとくすぐると、直が甘い声で鳴く。
直は随分感度が良いらしく、秋山の僅かな舌遣いにも逐一反応を返す。
それに気を良くした秋山が、両方の突起をひとしきり攻め上げ、
ちゅうっと音を立てて勢い良く吸い上げると、一際高い声と共に直の腰が高く跳ねた。

「ん、あんっ、はっ…、はっ、はぁ…」

経験の無い切なさに息を乱した直は、上目遣いで恨めしそうに秋山を睨む。
濡れたまつ毛に囲まれた大きな目は盛大に潤み、頬と唇は興奮のため真紅に染まっている。

「はぁっ…あ、秋山さんの、意地悪…」

欲望に火の点いた男には、女のいじらしい抵抗の全てが逆効果でしかなかった。
精一杯の恨み言は全身を心地良く刺激し、涙に濡れた上目遣いが嗜虐心を煽る。
秋山は、自らの下半身にじわりと熱が溜まって行くのを感じた。
いつの間にか伸ばされた秋山の手は、直の身体の曲線を辿ってショーツの上から秘裂をなぞっていた。

「と言いつつ、濡れてるんだな」

直とて、先程から温かい何かが、自分の秘所から滲み出ているのを自覚している。
『気持ちイイ』時に出るものだという知識はあったが、
『気持ちイイ』ことを秋山に知られたくなく、自分でも知らぬふりを続けていた。
それを当の秋山に指摘されたことにより、強烈な羞恥心が直を直撃した。
しかし今の直は、その羞恥心すら快感に変えてしまう程、秋山との淫らな行為に溺れている。
秘裂は更に潤みを増し、ショーツの大部分を濃色に変化させていた。
秋山が布の上から秘裂を前後になぞる。時には布越しの窪みに向かって指を突き立て、入り口の粘膜を刺激する。
ペールピンクのショーツは既に意味を成さず、卑猥な水音を立て劣情を煽るだけの小道具に成り下がっていた。
しかし秋山は決してそれを脱がそうとはせず、濡れて変色したショーツを身に着けて喘ぐ直を、
いたく満足そうに眺めているだけである。

布越しの焦れったい刺激で体が疼いてきた頃、秋山の身体が直の両脚を割って入った。
それと同時に、クロッチの横から冷たい指が差し込まれる。
突然の刺激と冷たさに驚いて直が縮み上がると、秋山はその身体をぎゅっと抱きしめ、髪にそっとキスを落とす。
まるで恋人のような優しい扱いに少し安心した直が秋山を見上げると、愉快そうな瞳で口端を吊り上げて笑っている。

「君、本当に初めて?ここビショビショだよ、エロいんだねー」
「…え、ひどっ…あ、やあっ!」

秋山さんを優しいと思った自分が馬鹿だった。
そう抗議しようとした直は、何の前触れもなく秘裂に指を突き立てられ、悲鳴を上げた。
侵入した長い指が、容赦なく直の内壁を掻き回す。
じゅぷじゅぷと淫猥な音を立て、前後ろと何かを探るかのように中を刺激する。

「ひぁっ、や、やだ…!やめて…くだ、さっ、あぁっ…」

直は拒否の意思を必死で訴えてはいるが、聞き入れる秋山ではなく、何の返答も無い。
そればかりか、更に丁寧にくまなく内部を刺激し始めた。
もちろん、閨での否定は肯定の意思表示としか思われていない。

直の秘所は、初めてというだけあり指一本でも相当な締め付けで、ともすれば凄まじい圧力で追い出されそうになる。
秋山はこれから後の行為が空恐ろしくなった。果たして自分は保つのだろうか。
それより、最後まで挿れることは出来るのか。
まぁそれならキリの良いところで帰してしまい、今夜はこれをネタに自分で処理するか…。
そんな下卑たことを考えながらしばらく内壁の探索を続けると、一ヶ所だけ直の身体が硬直した部分があった。
本当に狭い一部分だったが、ピンポイントで刺激すると間違いなく媚声に色が宿る。
秘裂は刺激の度にひくひくと引き攣り、徐々にその感覚が短くなってくる。間違いない。

「ここか」
「やっ、そこ、いや…!…怖っ、ん、あぁーーっ…!!」

秋山は指を二本に増やし、徹底的に刺激を始める。
ざらざらとした感触のそこを規則的に刺激すると、直の腰が細かい痙攣を始める。
すらりとした両脚はきつく秋山を挟み込み、直の快感の強さを物語る。
秋山の手が愛液でどろどろになった頃、息も絶え絶えの直が涙を流して秋山に訴えた。

「あき、やまさ、ん…!なっ、何か、怖いんです…!
頭がおかしく、なりそうで、あっ…あの、お手洗いに行きたい、って言うか…!」

『イキそう』、そんな表現も知らないのだろう直は、
ただその圧倒的で強烈な感覚を恐れ、一人でひっそりと耐え続けていた。
しかしその正体も分からぬまま我慢が限界に達し、ついに秋山に助けを求めたのだ。
明山は、初めてにしては上出来だと褒めてやろうかと思ったが、
恐怖と快感で震える直を見ていると口に出すのが憚られた。
しかしここで追撃の手を緩める秋山では無い。
心とは裏腹に、口はやはり直を虐める。ここまで言葉攻めの似合う女は、そうはいまい。

「それ、俺の指が『気持ちイイ』ってこと?」
「ち、ちがっ…!う、んっ…」
「ふぅん、まだ足りないか」

秋山は直の両膝を左右に抱え、透明な糸を引いた下着を剥ぎ取ると、何の躊躇いもなく秘所に顔を埋めた。
一瞬事態を理解できなかった直だが、自分の置かれた状況が飲み込めた瞬間、
全身を激しくバタつかせて大きな悲鳴を上げた。

「やだぁっ、そんなとこ汚いですっ!や、やめて下さいっ!いやぁっ!!」
「ったく、落ち着けよ…」

ため息混じりにそう言いながら、秋山は暴れる直の両脚を更に強く押さえつけて秘所を眼前に晒し、
既に膨れ上がった花芯を指先で軽く剥いて、舌でざりっと舐め上げた。

「あ、ん、ああぁぁ…っ!!」

直の背中が弓のように反ると同時に、秘所から軽く水が飛び散り、ソファカバーに小さな水たまりを作る。
指での愛撫で絶頂直前まで追い詰められていた直は、今の刺激で軽く達してしまったらしい。
ぐったりした直の秘裂は愛液を吐き出しながらひくひくと痙攣し、それに呼応して細い腰も僅かに跳ねる。
秋山は顔にかかった水滴を腕で拭うと、にやりと笑いながら直の顔を見つめる。
秋山の視線に気付いた直は、真っ赤に染めた顔を両手で覆って細い声を絞り出した。

「…ご、ごめんなさい…!私…頭が真っ白になって…。もしかして…その、お、おしっこ…」
「いや違うよ、大丈夫だ。その感覚が『イク』ってこと。珍しいオプション付きではあったけど…君すごいな」
「…??あ、ありがとう、ございます…?」

理解できないながらも、何となく褒められたような気がした直は、とりあえず無理に微笑んでみた。
やっぱり、こいつは何も分かっていないらしい。

「…言っておくが、俺以外には自慢しない方がいい」

呆れた顔でそう言うと、秋山はまた直の秘所に舌を伸ばす。

今度は太股の付け根や周辺の柔らかい部分をじりじりと煽るばかりで、肝心の花芯には決定的な刺激を与えない。
先程の強烈な快感の残滓が残る直の腰は、もどかしい刺激で不満げに悶える。

「あ、あきやま、さん…そこじゃ、なくて…いじわるぅっ…!」

耐えられなくなったのか、舌を花芯に誘導しようと無意識に腰をくねらしている直に気付き、
秋山はその陥落を知ってにやりと笑う。
カラダも正直なんだなと妙に感心しつつ、その正直さに応えるべく、
花芯を指で軽く剥き舌の腹で舐め上げてやると、直が高く艶やかな声で鳴いた。
花芯への愛撫はそのまま、とろとろの秘裂に指を挿し込むと、直の身体が少し硬直した。
だが挿入はひどくスムーズで、二本の指は抵抗なく飲み込まれ、温かい蠢きがその存在を歓迎する。
先程見つけた場所を指の腹で刺激してやると、再び直の両脚が強張り、爪先がピンと天を仰ぐ。
そのまま容赦なく刺激を続けると、ふるふると震える腰が何度も大きく跳ね、直の悲鳴に似た嬌声が響き渡った。

「やぁっ、もう…!ひ、あっ、あぁん…っ!あき…やま、さん、また『イキそう』…っ!」

秋山とて、限界が近かった。当初、初めてならばイカせるくらいが関の山、
後は自分で…と考えていた秋山だが、そんな余裕は最早どこにもなかった。
初めての身でここまで淫らな女が、両脚を大きく開いて女の匂いを立ち上らせ、扇情的な表情で自分の名を呼ぶのだ。
年齢の割には幼い顔つきと、それに不似合いな豊満な身体が、この少女をひどく淫らに見せる。
長らくご無沙汰だったことを除いても、完全に予想外、秋山の完全敗北。
このままおめおめと帰せるわけがなかった。

「まだイクな、挿れるぞ」

興奮と焦燥のためか、いつもは冷静な秋山の声に隠し切れない熱がこもる。
暑さのためシャツのボタンを外してはいたが、今はそれを脱ぎ去る間も惜しい。
ガチャガチャとベルトのバックルを外すと、既に膨れ上がった自身が下着越しに存在を主張していた。
改めて直に覆い被さり押さえつけるように唇にキスを落とすと、直も応えるようにむしゃぶりつく。
最初の一方的なものとは違い、お互いがお互いを求め合う濃厚なキスだった。
秋山が絡めた舌を抜き取ると、直が潤んだ瞳で恥ずかしそうに呟いた。

「あ、あの、あきやまさん…。やさしく…して下さいね…?」
「…あぁ…。けど、悪い。もう我慢できない」

言うが早いか、秋山は直の秘所に自身を突き刺した。
十二分に濡れているため挿入自体はスムーズだったが、やはり男性自身を迎え入れるには狭く、
侵入して来た異物を喰いちぎるような強烈な締め付けだった。
途中、ぷつりと何かがちぎれるような感触があったのは、思い込みのせいか。

脳髄が痺れるような吐精感を秋山が必死でやり過ごしていると、身体の下の直から苦しそうな声があがった。

「あきやまさん…い、痛い、ですっ…!」

見ると、先程とは異なる苦痛の涙を流した直が、秋山の肩にしがみついて震えている。
破瓜の痛みが余程強烈なのか、眉根はぎゅっと寄せられ色味を失っていた。
一瞬のこととは言え、己の快感で頭がいっぱいになり、直にまで気を回す余裕がなかった自分を恥じた。
下半身は繋がったまま直の頭をそっと撫で、安心させるように努めて優しく声をかける。

「大丈夫だ、しばらくはこのまま動かないようにするから。痛いのも最初だけだ」

すん、と小さく鼻をすすると、直が弱々しく微笑む。
痛みのために蒼白になった顔でいじらしく笑う直を見ていると、秋山の心に俄に罪悪感がこみあげ、
欲望に浮かされ暴走していた頭がすっと冷えた。
だがもう止めることは出来ない。
自分に出来ることは、可能な限り直に負担を感じさせないようにすることだけだった。

元来、自分は気が利く男ではない。
今までに付き合った女性がいないとは言わないが、それでも女性相手となると、何を考えているのか未だに分からない。
心理学で博士を取った人間が、これじゃあな。
何を言えば気が紛れるのか、何を言えば笑ってくれるのか。
吐精感を噛み殺しながら思いを巡らしていると、つい本音が出てしまった。

「後悔してないか」
「…え?」

秋山の呟きに、直が不思議そうに顔を上げた。
しまった。
思わず口をついて出た言葉は、聞きたくても聞いてはいけない類のものだった。本当は聞きたくなかった。
しかし一旦出た言葉は、止まることを知らずに流れ続ける。

「こんな得体の知れない男の一時の欲望のために、君は処女を失った。犯罪者と身体の関係を持ってしまった。
だが、代わりに得るものは何もない。本当に後悔していないのか?」

目も合わせずに呟く秋山の言葉を、ぽかんと聞いていた直は、思わず吹き出してしまった。
何がおかしいんだと眉根を寄せる秋山に、くすくす笑いながら言葉を返す。

「そんなこと心配してたんですか?後悔なんてしてません」
「本当か?」
「もちろんです。私、嘘はつきません」

汗で濡れた前髪の奥に、少し心配そうに揺らぐ秋山の瞳が見えた気がして、直は無性にこの男が愛おしくなった。
あれ程傍若無人に攻め立てていた男は、直が痛みを訴えて以降、少しも動かずに直を抱き締め続けている。
唐突に始まったこの話も、きっと痛みを紛らわそうとしてくれていたのだろう。
しかし普段は無口な秋山のことだ。話題に困っている内に、つい心の内を漏らしてしまったのだろう。
そう思うと、直の頬は自然と緩んだ。

「やっぱり、秋山さんは優しいです」
「はぁ?」

突拍子もない告白に、今度は秋山が不思議そうに直の顔を覗く。
今の話の流れで、何故自分が優しいということになるのか。

「過去に罪を犯したとか関係ありません。確かに、初めは少し怖かったけど、今はずっと私をいたわってくれています。
秋山さん、本当は優しい人なんです。きっと私、初めから秋山さんのことを好きだったんだと思います。
じゃないと、さすがにこんなコト…」

そこまで言うと、自分達の状況を思い出したのか、直は頬を真っ赤に染めて俯いてしまった。
秋山も繋がったままの下半身を思い出し、思わず意識を向けてしまう。
絡みつく直の熱を再認識すると、途端に自身の硬度と質量が増したのが分かった。

「ん、あんっ…。…今、おっきくなりました…?」
「あぁ…悪い。君の中、かなり気持ち良くて」

胸の中にいる直に艶っぽい上目遣いで問われ、さすがの秋山も素直に肯定する。
しかし言った自分に恥ずかしくなったのか、秋山は渋い顔を作って天を仰いでしまった。
その反応が面白かったのか、直はくすっと笑うと秋山を抱き締め、硬い胸に頬を擦り寄せた。

「私、もう大丈夫です。動いて下さい」
「おい、もういいのか?」

先程の苦痛の表情を思い出し、秋山が不安そうに返す。
欲望に任せて直を貫きたいという思いはもちろんある。
だが、この娘を壊したくない、守らなければならないという気持ちが、秋山の中に徐々に芽生え始めていた。
そんな秋山の葛藤を知ってか知らずか、直は後押しをするように言葉を続けた。

「秋山さんが喜んでくれるなら、私も嬉しいんです。大丈夫、こう見えて結構丈夫なんですよ!」

やっぱりこいつは最強のバカなのかも知れない。俺なんかが敵うわけがない。
直にすら気付かれないような小さな声で笑うと、直の身体をぎゅっと抱き締めて言った。

「じゃ、遠慮なく」
「で、でも、優しくして下さいねっ…あ、んんっ!!」

ゆるゆると、しかししっかりと動き始めたストロークは、直を快感の波に巻き込んだ。
先程までの痛みはもう殆ど無く、感じるのは自分の中で蠢く秋山の熱と質量、そしてその快感だけだった。
浅く突かれると、入り口から這い上がった快感が子宮いっぱいに広がり、
深く突かれると、子宮に溜まったそれが脳髄まで駆け抜ける。
脳に届いたその快感は限りなく貪欲で、もっともっととせがむように直の腰を揺らめかせた。
強弱をつけて繰り返されるストロークに、直の呼吸が乱れ、艶を帯びる。
それは秋山とて同じで、息は荒くなり、眉根に深いシワが寄せられていた。
先程から、呼吸に合わせて蠢く直の無数のひだが、己自身をざわざわと撫で回し、秋山を搾り取ろうと絡み付いてくる。
いつの間にか直の腰も揺られ始めており、秋山の予想以上に己自身が奥まで飲み込まれていることが多い。
計算して動いていたつもりだったが、いつの間にか直のペースに巻き込まれている。
己の限界が近づいているのが分かった。

「あぁもう、仕方ねーヤツだな…」

吐息混じりに呟いて直の腰をぐっと持ち上げると、奥深くまで打ち付けるのを止め、
ごく浅い場所にある一部分に狙いを定め、今までよりも激しく突き上げた。

「ふあっ…そ、そこっ、だめ、れすっ!んっ、あ、あぁぁ…!」

今日だけで何度も刺激された場所だが、そう簡単に慣れる筈もなく、直は強烈な快感に全身を跳ね上げた。
お構いなしに、秋山が硬く尖った先端でそこを追い詰めると、
指や舌で得た鋭い快感とは異なる圧倒的な熱量と大きさの快感が、直の全身を包み込んでくる。
直の下半身に急速に熱が溜まり、子宮がきつく収縮を始める。
秘裂も絶え間なく痙攣を始め、ぎりぎりのところで耐える秋山自身を容赦なく締め上げる。
やばい。そう感じた秋山は、咄嗟に直の花芯に手を伸ばし、直接刺激を始めた。
腰は相変わらず弱い部分を突き上げたまま、中指でくるくると円を描くように花芯を潰すと、
直が目尻に涙を滲ませながら高い悲鳴を上げた。

「ひっ、やぁっ…!もう、無理、我慢できないぃっ…!」

秋山は、直の目の端に滲んだ涙を指で拭い取ってやると、口元できつく握られていた手を取り、自分の首に回してやる。

「掴まってろ」

直がぎゅっと首にしがみついたのを確認し、秋山は理性の箍を外した。
両手で直の腰をしっかりと掴むと、もう何の躊躇いもなく、最奥をめがけて己自身を打ち付けた。
肌と肌がぶつかり合う音が、部屋中に響く。一秒でも長く直と繋がっていたい。
だが、もう限界だった。

「はっ、あん、やっ、まだぁっ…?!あきやま、さっ、もっ…イって、いいですかっ…?」
「あぁ…イけ」
「あっ、ん、あき、やまさ…あ、あっ、あぁぁぁっ…!!」
「…っ!」

直の身体が腰を中心に激しく反ると、折らんばかりに秋山の身体にしがみついた。
同じ瞬間、その内壁も凄まじい勢いで秋山自身を締め上げる。
秋山は反射的に己を引き抜き、直の腹の上に白い欲望を吐き出した。

「はっ、はぁっ…んっ、あ…」

痙攣を繰り返す直の秘裂から、こぽりと音を立てて白く泡立った愛液が流れ出る。
腹の上に吐き出された秋山の欲望が、つぅっと流れて体側に落ちると、直はその感覚に身体を震わせた。
直は恥ずかしそうに頬を染めて両手で顔を覆うものの、快感に果てた身体はまだ動かないらしい。
秋山は気怠い身体を引きずって床に置いたティッシュに手を伸ばすと、
まずは直の身体を拭き清め、その後に己自身も清めてソファに倒れ込んだ。

「…悪かった。優しくできなかった」

狭いソファで重なり合うように横たわり、直は秋山の上に乗るような形になっている。
秋山は片手で直を抱き、もう片方の手でその頭を撫でながら、ぽつりと呟いた。
そっと秋山の顔を覗き見ると、照れたような様子で目をつぶっている。

「…何言ってるんですか。ずっと、優しかったですよ。秋山さんこそ、私なんかでお役に立てましたか?」

秋山が目を開くと、小動物のような丸い目をした直が、胸の上でこちらを見詰めていた。
口元こそ微笑んではいるが、目の奥には微かな緊張の影が過ぎる。
秋山は思わず相好を崩し、直を見詰めて言った。

「あぁ、予想以上だったよ。俺の完全敗北だ」
「ふふっ、ありがとうございます。やっぱり優しいんですね」

直は嬉しそうにそう言うと、急に秋山の顔の方ににじりより、急に真剣な表情になって呟いた。

「一つだけ、秋山さんに確認しておきたいことがあります」
「な、なんだ?」

ずいと突き出された直の顔は真剣そのもので、秋山も思わず緊張して息を詰めた。
一体何の話だ。まぁ、中では出していない筈だが…。

「わ、私…秋山さんのカノジョってことで良いんでしょうか」
「は?」
「だから、その、こういうことしちゃったし、私は秋山さんのカノジョってことで良いんですよね!?」

秋山は呆気に取られて直の顔を見た。その表情は真剣そのものだったが、
よく見ると頬は紅く染まり、瞳には大きな期待と微かな心配が見え隠れしている。
純粋というか、呑気というか。至極無防備なコトが終わって、心配するところはそこなのか。
秋山はくくっと笑い、両手で直の頬を挟むと、口端を吊り上げて意地悪そうな顔で告げる。

「そうだな…まずは明後日のライアーゲーム終了のことを考えようか。話はそれからだ」
「あぁっ、ゲームのこと忘れてた!うわー、嫌なこと思い出しちゃった…一億円、どうしよう…」

あからさまに元気を失い涙目になった直を抱き締めると、秋山は眼を閉じた。
さぁ、ゲームが終わったら、この娘をどうしてやろう。






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