カルテ室
山城紗江子×香坂たまき


その日の港北医大救命救急センターはホットラインが鳴らないという穏やかな日だった。
とはいえまだ時間は昼前。救命の一日はこれからが長いのは百も承知だったが今のうちにと香坂はカルテ室にこもっていた。
先日運ばれてきた患者の症例が興味深いものだったため時間のあるときに調べてみようと思ったのだ。
カルテ室は2階にあり、カルテの棚やパソコンで決して広いとは言えないが香坂が1人で使うには広すぎる部屋だった。
窓は一つは廊下側、もう一つは1階のICUを見下ろせるように配置されている。
香坂はブラインドを廊下側だけ閉じ、ICU側は何かあった時すぐに反応出来るように開いたままにしていた。
膝の上には重い専門書、机にはその患者のカルテを置きパソコンも使いながら行っていた調べものもあともう少しで一段落するところであった。
こんなことなら医局にある自分のカルテを持ってくるべきだったと思ったが、いつホットラインが鳴るのかもわからないのでその考えを保留にしていた。

そのとき突然ドアがノックされた。
まさか患者に何かあったのでは……そう思いICUを見たが特に何も問題は見当たらなかった。

「どうぞ」

とりあえず外の客を招き入れることにする。
わざわざノックする、ということは中にいる私に個人的な用でもあるのだろう。

「失礼します」

声とともに入ってきたのはファイルを持ったナースの山城だった。

「あら?珍しいわね」

ナースが医者に意見を聞きに来るというのはさして珍しいことではないが、救急認定ナースである山城が自分のとこにくるのは滅多に無い、というか初めてじゃないだろうか…?

「ICUから姿が見えたものですから…。もしかすると余計なことかもしれませんけど、これを」

山城が差し出したのはカルテのファイルだった。もちろん香坂が担当している患者のものである。

「ありがとう。ちょうど取りに行くか迷っていたのよ。こんなに救命が穏やかなんて滅多にないし。ありがとう助かるわ」
「いえ、そんな……何してらしたんですか?」
「ちょっと調べものをね。おととい外来にきた53歳の女性、いたでしょう。ほら、階段から落ちたっていう」
「あぁ、いましたね。特に骨折もなかったのでそのまま帰られましたよね?」
「そう、その人。でもその人どうやら持病があったみたいで。病院から出る前に倒れてしまったのよ。それで心臓外科で調べてみたら珍しい症例でね。その噂を聞いて知り合いからこれ、借りてきたのよ」

机に閉じて置いたカルテのファイルを指差す。

「もう少し遅ければ私が診ることが出来たのに…。あ、これ内緒にしてね。バレたらいろいろとまずいし」
「大丈夫です、私口堅いですから。……やっぱりまだ心臓外科に未練が?」

山城はそう言いながらごく自然な動作で椅子を引き寄せそこに座った。
なぜ隣の椅子ではなく後ろの椅子に座ったのかと一瞬疑問に思った香坂だが山城の問いにその疑問は吹っ飛んでいった。

「未練、ね……無いと言ったら嘘になるけど今は無いわ。現場でいろいろな患者が診れるのは面白いもの」
「面白い、ですか…そういえばこの前大勢のナースが運ばれてきましたね」
「確かにあれは面白かったわね。色とりどりのナース服。そういえば山城さんの制服って少し青みがかかっているわよね。やっぱり認定ナースだからかしら?」
「ええ、多分。そんな、特別なことじゃないのに」
「特別よ。だってあなた優秀だもの。ほんと、ナースにしておくなんて勿体無いくらい」

他愛のない話。世間話とは少し違うけれどあまりナースと仕事以外の会話をしない香坂には新鮮だった。

「結構、頼りにしてるのよ」
「ありがとうございます。あ、最近休みとられてますか?毎日いるみたいですけど」
「毎日って、あなたも休んでないってことじゃない。人のこと心配してる場合じゃないでしょ」
「私は、慣れてますから。香坂先生は救命に来てまだ1ヶ月半ぐらいでしょう?そのくらいが一番危ないんですよ」
「う〜ん…そうね、まあ明日は非番だし、あなたの忠告通りゆっくり休むことにするわ。にしても久しぶりにずっと座って作業ってのも肩こるわね…」
眉を軽くひそめて肩をまわす香坂を見て山城は思いついた。
いや、正確にはきっかけができた、とでも言うべきだろうか。
彼女がわざわざこの部屋に来た目的を行う時が。

「肩揉みましょうか?私上手いんですよ。よく他のナースにもやっているんです。婦長とか特に」
「そうなの?じゃあお願いしようかしら」

香坂は座ったまま椅子を180度回転させて前、つまりICU側の窓の方を向いた。
今日の香坂の格好は白衣の下に白の柄が入った黒のVネックのカットソー、そして黒のタイトスカートである。
そういえば救命の初日からこんな格好で驚いた覚えがある、と山城は思い出す。

「固い……結構こってますね」
「そう?やっぱり疲れがたまっているのかしら…」

前にいた病院でも女医がいたがさすがにこんな格好の人はいなかった。
今ではもう慣れてしまったけれど、それでも大胆な格好のままだ。
ひとつ変わったことと言えば靴がピンヒールから底が平らな靴に変わったことだろうか。
それでも自分たちナースが履く靴よりは底が高い。
それが彼女の性格を表しているようだ。
「もしかしてソファで寝ました?あそこで寝ると一時的にしか疲れが取れなくて肩とか腰とか、逆に疲れがたまるみたいですよ」

プライドが高くて高飛車で、

「そういえば寝たかも。あぁ、あそこで寝るのだけは私のプライドが許さなかったのに…」

それでいて負けず嫌いで努力家な、

「ふふ、いかにも救命、って感じですよね」
「そうなのよ。救命の仕事に染まるのはいいけどそういうところは勘弁してほしいわ」

その性格が、

「香坂先生らしいですね」

かわいいと、思う。

「っ…」
「あ、すみません」

あと、いじめてみたい、とも。

首のマッサージのため長い髪を二つにわけて前に下げたとき、一瞬だけ香坂が反応した。

「え、あ、いいのよ」

平静を装う香坂に山城は口元が緩むのを我慢出来ない。
わざと首に爪が触れるようにしたことに気付いてないらしい。
両手の親指以外の爪が肌に当たるようにし、残った親指で首筋を押していく。
爪がぎりぎり触れるか触れないかの感触は僅かだが快楽を生む。
香坂はその行動がわざとともとれず、何も言えなかった。
単にこれが山城の癖である可能性もあるのだ。
もちろんこれは癖では無いのだが。

「ひっ…」

髪の毛をかき分け指全てを使って耳をふんわりとさわる。

「びっくりさせちゃいました?このあたりマッサージすると気持ちいいんですよ」

そう言って耳の付け根を親指でさする。
なにかツボを探しているような仕草だが香坂は指が行ったり来たりするたびに肩を震わせる。
親指と人差し指で耳たぶを優しくつまむ。
時々人差し指で耳の周りをなぞる。
その感触が香坂の知っているマッサージとはほど遠く困惑する。
むしろこれは愛撫に近いものだった。

「こ、れ…他の人にもっ…、やってるの…?」

いつの間にか椅子から立ち上がっていた山城だがその動作をしたまま床に膝をつく。
香坂が座る椅子のレバーを上げ、椅子の高さを一番低くする。
ゆっくり下がってきた左耳に顔を近づけてそっと囁く。吐息が、かかるように。

「香坂先生にだけ…特別です」
「やぁっ……!」
「香坂先生、耳感じやすいんですね」
「やま、しろさん…あなたなに言って…っ」
「ふふっ、かわいい……」

山城は椅子を回転させ自分に向かせる。
足の力が抜けている香坂は何も抵抗出来ずに山城の方を向く。
顔が向かい合ったちょうどその時、

「んんっ!!」

唇を、奪われた。

ICU側の窓からは少し屈んだ香坂の後ろ姿しか見えない。
だが実際はその向こう側では立ち膝の山城が香坂の腰に腕をまわし、自分の唇を重ねていた。
舌を少し出して香坂の唇を舐めてみる。
そして一気に強引に咥内に舌を入れていく。
もし山城が男だったら香坂は迷わず相手の唇を噛んでいただろう。
だが実際相手は女である。
突然キスされただけでも非常事態なのに同性にされたとあって香坂の頭は混乱していた。
そのせいで彼女は山城の舌が入ってくることに抵抗出来なかった。
山城は奥に引っ込んでいる香坂の舌を外に出そうとする。
意外と簡単にそれは達成できたので遠慮なく絡ませていく。
部屋の中には舌と舌が絡み合う水音と二人の吐息が響いていた。
そうやっている間にも山城はカットソーの中に手を滑り込ませ背中をさすった後、片手でブラジャーのホックを外した。
そのまま手を前に持ってきて乳房に触れる。
そして手のひら全体を使って優しく揉み始めた。

「ふっ、あ、やめ……」
「柔らかくて大きいですね。いいなあ、私あんまり大きくないから…」
「あっ…、ひぁっ」
「形も、きれいですね」

裾をブラジャーと一緒にたくし上げて鎖骨の下辺りで止める。
カットソーが身体にフィットするタイプのためそれが可能だった。
自動的に胸を強調させるあられもない格好になってしまい香坂はますます顔を赤くした。

「外から見えないか心配ですか?大丈夫ですよ、白衣で見えませんし」
「あぁんっ!」
「鍵だって閉めちゃいました」

左の乳首を口に含まれる。
口の中でちろちろと舌が動く感触は先ほどの深い口づけを香坂に思い出させた。
山城は右の乳房をやわやわと揉み、空いた左手で脇腹をさすっていた。
先ほど背中から乳房に腕を持ってくるとき、脇腹を通った瞬間僅かに香坂が反応していたのを見逃さなかった。
なすがまま。
その言葉が似合うぐらい香坂には抵抗らしい抵抗が出来ず、ただ与えられる快感に身悶えるしか無かった。

「はあっ、はっ、なんっで……こん、なっこと、するの…」
「好きだから、とは違いますね…こんなことしてますけど別に私レズってほどじゃないし…」
「じゅう、ぶんっ…そうじゃない…」
「強いて言えば……あなたみたいな強気でプライド高いような人、いじめたくなるんです」
「そんっ、なぁぁっ」
「いじめたらどういう表情するのかなって…どういう声出しちゃうのかなって」
「ひゃあぁぁっ!」

勢い良く乳首を吸う。

「気になっちゃうんです。男女関係なしに」
「そんなの…っ、おかしい、わよ…」
「おかしい?でもおかしいのは香坂先生の方でしょ?こんなところで同性にこんな恥ずかしいことされているのに抵抗しないなんて」

そこで山城は愛撫の手をぴたっと止める。
その隙に香坂は白衣の前を慌てて合わせ、胸を隠す。
じっと自分を見つめる山城の目が今更そんなことをしても遅いのにと言っているように思えた。

「本当はこうやっていじめられるの好きなんでしょう?」
「ち、ちが…」
「そんなはずないわ、だってさっきまで気持ち良さそうに喘いでいたじゃない。…気持ちよかったでしょ?」
「なっ…」
「かわいかったな、あの声…いつもの香坂先生からは想像出来ない」

これでもかと顔を真っ赤にさせた香坂は椅子を回転させ、山城に背を向けた。

「からかうのはよし…」
「あら、進藤先生」

窓の向こうに進藤の姿を認め、言葉に詰まってしまう。

「ひっ!」

後ろから出してきた山城の手が香坂の内股をさする。
力が抜けたところを見計らって一気にタイトスカートを足の付け根まで上げる。
山城の指が、そっと香坂の秘所に触れる。

「やめてっ」
「手を胸から外したらはだけて見えちゃいますよ、進藤先生に」

香坂は山城の腕をつかもうとした腕を慌ててまた元の位置に戻す。

「湿ってる…やっぱり気持ちよかったんだ」
「ちがっ…!」
「違う?防衛本能だとでも?男にレイプされているならわかるけれど今は違うわ。気持ちよくならなきゃ、女の身体はこうはならない」
「っ……」
「もーっと、気持ちよくしてあげますからね…」

ショーツの上から指を入れる。
そこはもし自分が男だったら挿入してもいいと思えるほど潤っていた。
少しだけ外側をなぞった後、女が一番感じる突起を探す。
見つけたそれを指でこりこりとなでる。
すると面白いほどに香坂はびくびくと身体を震わせ、声を出してしまう。
しかし状況が状況なだけに声を必死に我慢しているみたいだった。
そんな姿が逆に山城を煽っている、ということを香坂は理解しているのだろうか。

「さっきも思ったんですけど香坂先生って敏感ですよね」
「んぅっ、ん、…っ」
「それとも、進藤先生に見られるかもしれない、から?」

進藤、という言葉に反応したのか愛液がとぷっと音を出して流れた。
その滑りを利用して中指と薬指を膣内に入れていく。
香坂が感じる部分をその二本で探っていく。
その間にも親指は突起を刺激するのを忘れない。
増えていく快楽に頭を下げて耐える。
もし誰かが窓から見ていたら小刻みに揺れる香坂の異変に気付くだろう。
ブラインドを閉めたいところだが腕を放すことが出来ない今、その願いは叶わない。

「あ、あ、だめっ、あんっ」
「イキそう、ですか…?」
「ん、あっあっ、やんっ」
「イっていいですよ。私の指、進藤先生だと思って」
「え、っ?あ、あぁぁっ!」
「香坂先生、よく進藤先生のこと見ているでしょう?香坂先生を見ていれば誰だってわかりますよ」

そして進藤も香坂のことをよく見ている。
このことを伝えるのは癪だったので山城は伝えなかった。
今はただ自分が与える快楽に溺れてしまえばいいのだから、と思う。

「そん、なっ…あ、あ、だめっ、きちゃ…ぅっ」

頭の中で白い光が点滅し始めたとき、香坂は偶然こちらを見た進藤と目が合ってしまった。

「やあぁあああぁあぁぁっっっ!!!」

羞恥心からかひと際大きな声を上げて香坂は達した。
あまりにも刺激が強すぎたためかそのまま机に突っ伏してしまった。
はあはあと息を荒げる香坂の顔をのぞいたとき、窓の外に走り出す進藤の姿を見た。
おそらく香坂の様子に気付いたのだろう。
こちらに来るのが想像出来た。
山城は素早くそばにあったティッシュで手を拭き、香坂のタイトスカートを元の位置に直した。
それでもなお香坂は突っ伏したままだ。
山城がドアの鍵を開けてひと呼吸後、ドアが勢いよく開いた。開けたのは外にいた進藤だった。

「!」
「…なにか?」

何食わぬ顔をして山城は進藤に言い放った。
進藤も予想外の出来事に驚いただろう。だってこちらからは香坂以外の姿は見えなかったのだから。

「こ、こう…さかは……?」

山城の背後で未だ突っ伏したままの香坂を見て進藤は言う。
香坂も香坂でもう姿勢を正すことは出来るのだろうがまさか進藤が来てしまうとは思わなかっただろう。
そのままの姿勢で時間が過ぎるのを待っているように山城には見えた。

「…少々お疲れのようです。最近、休んでいなかったみたいですから」
「そうか、だが」
「落ち着いたら下に降ります。ですから、」

じっと進藤の目を見つめ微笑む。

「大丈夫です、心配なさることではないですよ」

有無を言わせぬように。

「……わかった。よろしく頼む」

再びドアが閉められた。

ドアが閉められると同時に香坂は上半身の服装を直すため窓を背に向け立ち上がる。
しかしその足取りはしっかりしたものではなくふらふらしている。

「無理なさらないほうがいいですよ」

何事も無かったように山城は香坂に微笑みかける。

「無理って……させたのはあなたじゃない……」

香坂は大きくため息をついた。






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