とある看護士の話(非エロ)
馬場武蔵×桜井ゆき


小児科に患者を移動し終わると特別な会話もなしに並んで歩いていく。

「馬場先生、大人気でしたね手品」

にこにこと笑顔を浮かべる桜井に馬場もまた小さく頷いて自信満々に胸を張った。以前は余り受けは良くなかったがコツコツ努力した結果、一発芸にしては実に巧妙なトリックを用い立派なマジックを出来るようになった。

マッスルパスといったコインマジックからトランプマジックエトセトラ……。

「努力したもんなぁ、流石俺」

としみじみしながら言い放った馬場に桜井は少し呆れたが彼の影ながらの努力も知っているので其れ以上は追求しない。寧ろ頑張りましたで賞ぐらいはあげてもいいかな、とも思っている。
本人に言ったらこの性格だ、何となく先は読めているので其れ以上は言わない。
他の誰よりも正義感の強い、まっすぐな人。たくさんの恋路に破れそれでも頑張っている姿は尊敬してしまう。自分には真似の出来ない道だ。
だからこそ、惹かれたのかもしれない。

「馬場先生」
「おー、なんだぁ?」

急に桜井が足を止めたので彼は何歩か前に行ってしまい、彼女に呼び止められたことにより足を止めた。
桜井は少し照れくさいのか伏せ目がちになりながらも、顔を上げこれでもかと言わんばかりに良い笑顔を向ける。

「また手品、見せてください」
「お?おう、なんだよそんなこと言わなくても直ぐ見せてやるよ」
「そうですねぇ、いっつも手品やりますもんね、それもワンパターン」

からかうように桜井は笑い、ゆっくり彼に近づいた。少し顔が引きつっているのは言われた意味のまま直接受け取っているからだろう。

「元紀になるマジック、種も仕掛けも先生教えてくれないですもんねー」
「…………は?」

次は好きになる手品でもお願いしようかなー。ころころ笑いながら去っていく桜井を見送りながら呆然としていたが、きっちり三拍後目を丸くし奇声を上げた馬場の姿があったりなかったり。その姿を想像しながら桜井は上機嫌で去っていった。






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