とある研修医の話(非エロ)
矢部淳平×太田川奈津


「太田川ってさ、いつ空いてんの?」
「んんー?何、奢ってくれんの?」

首を傾げて言う彼女に、んなわけねーよとツッコミ一つ。そもそも京都の総合病院の跡取り娘が救命にいることから根本的に間違ってる。
だって救命なんて良いこと特になしだ。仕事はハード、睡眠時間ほぼなし、一種の働きづめ。考えてみると正直発狂ものだ。
「どMだよなぁ、俺ら」
「ちょっと、何よトートツに」

一緒にしないでよと膨れ面の太田川の頭をわしわしと犬を撫でるように撫でれば悲鳴が聞こえてくる。

「つき合えよ、太田川。おごらねーけど」
「期待してへんし!」
「ほんっとお前って色気ねーよなー」

余計なお世話だとグーで鳩尾に一発食らう。・・・思ったより重たいパンチ。真っ赤になってやかましいわ、と怒る姿は何だか新鮮だ。

「矢部君だって絶対、ぜーったい香坂先生に振られるんやから!」
「なんだよ今カンケーないだろ!」

ふふんと彼女は強気に笑ってちゅーも出来ないに一万円、と真顔で言い出す始末。お前は俺をなんだと思ってるんだ。
悔しくなって引き寄せてみればぎょっとした顔をして逃げようともがく姿が見える。後の祭り、今更謝ったって許すわけがない。口づけて舌を絡めれば抵抗してた手が徐々に緩んだ。

・・・・あ、そうだ。こいつ、「女の子」なんだ。

体を離せば真っ赤な顔をして馬鹿、アホと悪態をつきながら彼女は医局を出て行った。現実に引き戻され俺はハッとする。
俺何アイツに欲情してんの?

「・・・・ありえねぇ・・・・勘弁してくれよ・・・」

相談したら最後、ネタにされること間違いなし。身体の下部からわき出る精力に我ながら失笑。
・・・・・・どうしよう、これ。






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