明智健悟×七瀬美雪
18時。赤い夕日の差し込む事務所。 壁際の一際大きな椅子に座っていた明智はおもむろに 立ち上がった。それまでまで世間を騒がせ、先週末やっと 解決を迎えた都内の連続強盗殺人事件の報告書を書き終えた ところだった。今日のところはここらで切り上げても いいだろう。作成した報告書を机の 引き出しの中に入れ、パソコンの電源を落とした。 「お先。」 まだ机についている部下達に声をかけ、事務所を後にした。 定時に事務所を出るのは久しぶりだった。 そのまま真直ぐ帰宅するか、あるいは少し寄り道をして 帰ってもまずいことはなかろう。明日は非番だ。 そう考え明智は駅近くの7階建ての書店に立ち寄ることに した。それまでの事件の捜査に追われ、趣味の読書にも 手が付けられない状況だった。さて、何を買って帰ろうか? そう考えながら、自然とわくわくしてくる自分がいる。 1階で最近出版された本を眺めて回った後、エスカレーターで 文庫本を取り扱う2階へ上がった。 エスカレータを降りると、仕事帰りと思われスーツ姿の者や、 学生服を着た者、私服の大学生、などがフロア内で色々な 本を物色している光景が目に飛び込んできた。 明智は以前来た時の記憶を手繰って、海外の文学作品が 陳列されていた箇所へ歩を進めていった。 と、その時横切った本棚と本棚の間に知っている者の姿を 見かけたような気がした。明智は足を止め、少し後ろへ戻って その本棚と本棚の間へ目をやった。「彼女」は明智に背を向け 向こうへゆっくりと歩いて行こうとしていた。 学生服。長く真直ぐ伸びた黒い髪。女性としては高めの背丈。 あれは、、七瀬美雪ではなかったか? 確かめるために後を追って歩いていく。彼女は本棚と本棚の 間の先を右へ曲がり、横顔が見えた。整った顔つき。白い肌。 間違いない。明智は近づき声をかけようとして、留まった。 彼女はすぐ右手の本棚からさっと本を一冊抜き取り、鞄の中に 素早く入れたのだった。明智は我が目を疑った。 確か彼女は学業も優秀で、いやそんなことよりこれまで金田一らと 過ごしてきた時間の中でそんな安易な犯罪に手を染めるような 娘では無いはず、というのが明智の認識だった。 何かわけでもあるのか。いやそれよりまず先に、彼女に思い とどまらせなければならない。そう考え、明智は彼女にまた 近づこうとした。しかし次の瞬間、明智が美雪に声をかける前に 緑のエプロンを身につけた、中年の小太りな店員が美雪の 肩に手をかけた。美雪の体がびくっと震える。 「君、盗ったでしょ。ちょっと中の事務所来てよ。」 店員はこういったことに慣れているのか、相手に有無を言わさない、 強い口調だった。美雪も素直に従い、うつむいて店員について いった。しかし一瞬見えた美雪の表情に明智ははっとした。 微かに口を歪めて笑っているように見えたのだ。 明智は二人に気取られぬよう、距離をおいて二人の後について行った。 二人は事務所の壁際の通路を歩き、その突き当たりにある、本棚の 脇の空間に消えていった。明智も本棚の脇から中へ入る。薄暗い空間。 5メートル程度真直ぐ歩き、その先は右へ折れ曲がっていた。 角の先で扉が開き、そしてまた閉まる音。 明智も曲がり角を曲がる。正面に「事務室 STAFF ONLY」 と書いた看板のかけられたドアがあった。ドアの四辺から中の明かりが 漏れ、長方形のドアの形を縁取っている。 明智はドアに歩みより、中の声に耳を澄ました。 店員の声「、、、で、でもさ、そんなの、、、。」 美雪の声「いいでしょ。店員さん。お願いだから、、、。」 美雪の口調はそれまで明智の聞いたことのない甘いものだった。 一体何をしているんだ? がたんっと椅子が浮き、また地につくような音。 そして衣と衣のこすれあうような音が聞こえた。 店員の声「あっ、だめ。ああっ、くっ、はあ、、」 美雪の声「苦しそうですよ、ここ。開けちゃいますね。」 チャックを下ろし、ベルトがかちゃかちゃ鳴るような金属音。 店員のあえぎ声。 美雪の声「ふうっ(息を吹く音)。そ・れ・で、どうしますか?」 店員の声「ああっ。は、早く。お、お願いします。なかったことにするから。」 美雪の声「ふふっ、ありがとう。」 それから室内にちゅっ、ぷちゅっ、くちゅっという音が鳴り出し、 美雪の声が聞こえなくなった。 店員の声「ああっ、ああ、、いいよ、はあはあ、君の口、温かくて、ああ、すごい。」 目に見えぬとも、中の光景が鮮明に明智の脳裏に浮かんだ。 肉棒を晒し、だらしなく椅子に腰掛ける店員。店員の両膝の間にひざまずき その股間に顔をうずめる美雪!なんということだ! そう考えながらも明智は、固すぎるくらい固く膨張した自身の股間を意識せずには いられなかった。そして店員に羨望意識すら感じている自分を。 店員の絶頂を告げる最後の大きな喘ぎ声が聞こえ、そして荒い息遣いだけになった。 美雪の声「うふっ、すごい量。溜まってたん出すね。ちゅっ(という音)」 店員の声「ああっ。」 美雪の声「じゃ、また。」 立ち上がる音。明智は慌てて隅の暗がりに身を潜めた。扉が開き、美雪が出てくる。 振り返ることなく、そのまま軽快な足取りで歩き去っていった。 明智は開いた扉の隙間からそっと中を覗き込んだ。案の定、スチールの椅子に腰掛、 下半身をむき出しにした男がそこにいた。放心したような顔。唾液と精液にまみれ 光沢をはなつ肉棒、、、明智もまた放心したような顔でフロアに戻り、そのまま帰宅した。 金田一が旅に出、おのずと美雪とも、しばらく会うことはなくなっていた。 それまでの期間に彼女に何かあったのだろうか? 翌日。非番であった明智は放課後の美雪の後をつけてみることにした。 幾度となく一緒に事件解決に臨んだ金田一とその仲間のため、そうした思いも あったが、それだけだろうか。いや、明智は今の美雪がみにつけた淫らな素質の 素顔を除きたいという好奇心、そして自身もその素質に包まれてしまいたいとすら 感じる強い性的欲求によることは否定できそうになかった。 そう美雪の魔力のようなものに揺り動かされ、行動するのだ。 翌日。美雪の通う学校の前の校門。通りを挟んで正面の通路にある洋服店の前に 変装した明智が立っていた。豊かな髪を後ろになでつけ、暗い色のサングラスを かけている。白いボタンダウンシャツに青いジーンズという服装で、店の ショーウィンドウの中に飾られた商品を見つめている、という風を装っている。 ガラス越しに校門から出てくる学生達を見つめる。美雪のことはすぐにわかった。 2人の女学生と一緒だった。3人の中央に美雪がいる。ガラス越しに美雪の顔を見、 そして全身に視線を移す。それにしても、、、、清楚な美しさをたたえたその顔に 反して、彼女の体つきは制服の上からでも、豊かに発育し、丸みを帯び、妖しい 媚態のようなものさえ感じさせる。明智は彼女の体の線をなぞるように視線を走らせた。 明智は距離を置いて、美雪のあとをつけはじめた。途中で一人と別れ二人となり、 やがてもう一人とも別れ、彼女は一人になった。今日はこのまま帰宅するのだろうか。 明智はほっとしたような、少しがっかりしたような複雑な気分になった。 しかし美雪はそのまま家に帰るのではなく、駅の方へ向かって進んでいった。 一体どこへ行くのだろう。彼女は改札を通って、プラットフォームに立ち電車を待った。 やがて電車が来ると、明智も1つ隣の車両に乗り込んだ。車両間のガラス越しに 美雪の姿を見失わないようにする。明智は彼女の横顔を確認し、そしてその豊かな 胸元を見つめすぎてしまった。次の瞬間、美雪がふっと顔を横に向け、明智と 目を合わせた。 「しまった!」そう思ったが、彼女にすぐに何事もなかったかのように目をそらした。 ほっと胸をなでおろす。どうやら彼女は何も気づかず、何とも思わなかったようだ。 しかし明智は気づいていなかった。その後美雪が口元を歪めて微かに笑みをうかべたのを、、 やがて彼女は5つ目の駅で電車を降りた。デパートや繁華街もある大きな駅だった。 彼女はあふれる人の間を縫って、慣れた様子で歩いていく。駅を抜け出ると、 大通り沿いのCD屋、洋服店などに立ち寄った。明智もそれとなく彼女のあとにつき 見ていたが、昨日のように何かを万引きしたような様子はなかった。 昨日の出来事は何かの間違いだったのだろうか。疑念が明智の頭をもたげる。 けれども店員との淫行の事実が鮮明に頭にも残っている。 今美雪は大通りをまた歩いて進んでいく。次の店で何も無かったらもうやめにしよう、 そう明智は考えた。やがて美雪はあたりでも一際大きな、若い女性向けの衣服を 取り扱う専門店が集まった建物の中に入っていった。明智も続いて中へ入る。 中はけばけばしい服装、化粧の女性と照明、そして騒々しいBGMの音にあふれ かえっていた。美雪はフロアを横切り、隅にあった化粧室と書かれた看板の下の 通路を進んでいった。明智は周囲を見やり、フロア中央のエスカレーター脇に置かれていた ベンチの上に腰掛けた。若干離れてはいるが、化粧室へ向かう通路から出てくる 人の様子を眺めることができる。明智はしばらくそこで腰掛けて待った。 ずいぶん時間が経った気がした。何人か通路から出てきたが美雪の姿はなかった。 見失ってしまったのだろうか。あるいはまさか、、尾行に気づかれてしまったのか。 化粧室の奥に裏口のようなものでもあったのだろうか。明智は頭を振った。 と、その時、誰かが明智の隣に座った。明智が顔を向け、そしてはっと息を飲んだ。 美雪だった。けれども服装が変わっていた。豊かな胸元を見せ付けるかのような Vネックの黒いシャツ、下は先ほどよりもぐっと短い青いデニムのスカートを はいている。顔には明智の知る美雪とは異なる派手な化粧が施されている。 彼女は半ば嘲るような笑みを浮かべ、明智に話しかけた。 「ねえ、おじさん、さっきからずっと私のことつけてませんか?」 美雪の表情には嘲りに、妖しさのようなものが加わり、明智には何も言えない。 「ねえ、どうなんですか?私のこと興味あるの?」 意を決して明智が言った。 「そうなんだよ、美雪君」 サングラスを外した。 美雪は驚いたような表情を浮かべて言った。「明智さん!どうして?」 「昨日、君を街の本屋で見かけたんだ。それで万引きをしていたところも、、、」 美雪が明智から目をそらしうつむく。 「そうですか、、」 「うん、それと、、、」 美雪が問いかけるような目を向ける。 「そ、その後のことも、、、。」 今度は明智が目をそらした。けれど美雪は彼が目をそらす前の一瞬、美雪の体を 媚と淫らな欲情の混じったような目線で見つめたのを見逃さなかった。 美雪は一瞬笑みを浮かべ、そして明智の膝の上に手を置いた。明智の体がびくっと 反応する。美雪が身を寄せて言う。 「ねえ、明智さん、、」 「う、うん?」 彼女の手のひらが膝の上で前後する。美雪の吐息が顔にかかり、すぐ近くに 黒いシャツの合間から豊かな胸元がのぞいている。いやでも目が行き、今固く 膨張し始めた股間に、少しでも膝の上の手を寄せて欲しいと渇望する自分が いるのだった。しかし彼女はそうしなかった。膝から手を放して言った。 「明智さん、お会いするの久しぶりだし、色々お話ししたいこともあるから、 少しお時間いただけませんか?もう少し落ち着いて話せるとこと知ってるんで。」 SS一覧に戻る メインページに戻る |