忘れさせて
明智健悟×七瀬美雪


陰から明智の話を盗み聞きしていたはじめは、
美雪の様子に我慢できずに割り込んできた。

「タイクツな話はもう終わったの〜?明智センセ?」

明智の話に聞き入っていた美雪は、突然の声に驚いた。

「はじめちゃん!?」

はじめは美雪にも、美雪を惹きつけている明智にも腹が立ってしょうがなかった。
―――俺っていう男がすぐ近くにいるのに、何だってまたイヤミの横で頬染めてやがんだ!!
たった40分の遅刻じゃねぇか。まさか、明智に乗り換えるのか!?
別に俺と美雪は付き合ってるワケじゃない。

・・・でも美雪、お前、俺のこと好きなはずだろ?俺だって、お前のこと・・・
それなのに、よりによってイヤミ警視の横で―――

・・突然、美雪の表情が変わった。どうやら今まで心の中で思っていた事が、全部口に出てしまったらしい。

「も〜〜いいっ!今日という今日は完っ璧に怒った!!
人のこと雨の中40分以上も待たせておいて、よくそんなことが言えるわね?
もうはじめちゃんなんか知らないっ!行きましょ、明智さん!」

そんな2人の痴話ゲンカを黙って見ていた明智は、不意に美雪に腕を掴まれると、ぐいぐい引っ張られて行った。
美雪の有無を言わせぬ態度に、流石の明智も口を挟む余裕がない。
呆然と突っ立っている金田一を尻目に、明智は黙って美雪について行くことにした。

大分歩いてくると、自分のマンションのすぐ近くまで来ていた。

「・・・七瀬さん、七瀬さん。もう、いいんじゃないですか?」

明智は、努めて優しく言った。

「あ、やだっ、ごめんなさい明智さん。腕、痛くありませんでした?
あたし、怒ると周りが見えなくなっちゃって・・・」

美雪は恥ずかしそうに謝る。
明智はなぜか、そんな美雪を愛しいと思ってしまった。

(なっ・・・私は何を考えているんだ。彼女はまだ17歳の高校生じゃないか。
11も年下の少女に・・・しかも彼女は金田一君の幼馴染、いやお互いにそれ以上の存在だろう・・
私の入り込む隙間など、どこにも・・・)

「いえ、いいんですよ。金田一君のあの態度じゃ、七瀬さんが怒るのも無理ありませんから。
どうせ金田一君の遅刻は、今回が初めてじゃないんでしょう?」

何とか冷静に返事をするが、心の中のもやは直ぐに晴れることはなかった。
美雪はそんな明智の態度を不思議そうに見ている。まっすぐな視線が痛い。


明智はさりげなく、美雪を自宅へと誘うことにした。

「七瀬さん、実はもう少し行くと私のマンションがあるのですが、是非お茶でもいかがですか?
青空の下のティータイムとまではいきませんが、それ相応のものはお出ししますよ。

ちょうどもらい物のケーキもあるはずですし・・・
それに、七瀬さんも色々と言いたいことがあるでしょう?話し相手になりますよ」

「お邪魔してもいいんですか?何かご予定があったんじゃ・・・?」

―――遠慮がちに少女は聞いてくる。上目遣いに覗き込んでくる黒目がちな大きな瞳が、
私を吸い込んでしまいそうで恐かった。
いや、彼女に惹かれている自分を認めるのが恐かったのかも知れない。

「構いませんよ。では、行きましょうか」

ほんの5分も歩いただろうか、ウォーターフロントに面した高層マンションが見えてきた。

(うわぁ・・・すごい高級そうなとこに住んでるのね、明智さんって。
何か住む世界が違うってカンジ)

美雪が心底感心している横で、明智は手早く暗証番号を入力し、
エレベーターへと美雪をエスコートした。
まもなく最上階にエレベーターが止まり、明智の部屋へ着いた。
中は、まぁ想像どおりというか、全く生活感のない部屋だった。

「そんなに緊張しないで下さい。すぐに紅茶とケーキをお持ちしますので、
そこのソファーでくつろいでいてください」

―――と言われたものの、美雪は何だか落ち着かなかった。

(その場の感情に任せて、はじめちゃんを一人残してきてよかったのかな?
それに、いくら明智さんとはいえ、男の人の部屋に一人で来るなんて・・・
でも、明智さんははじめちゃんと違って紳士だし、大丈夫だよね!)

「七瀬さん?紅茶が入りましたよ。ケーキも召し上がってください」
「あっ、え・・・あ、ハイ。ありがとうございます。それじゃぁ、いただきます」


他愛のない話をしながら、時間はゆっくりと過ぎていった。
話はいつしか金田一のことになっていた。

「・・・それでですね、はじめちゃんったら酷いんですよ!
あたしが何か言うと、二言目には決まって"玲香ちゃんは・玲香ちゃんなら"って。
はじめちゃんの一番近くにいるのはあたしだって思ってたけど、
はじめちゃんはそうじゃないかもしれない。
玲香ちゃんなら、黙ってはじめちゃんのいうこと何でも聞いてくれるんじゃないのかな?
もしかしたら、はじめちゃんが遠くに行っちゃうんじゃないかな?って、最近不安でしょうがないんです。
ダメですよね、あたし。こんなんだから約束も守ってもらえないのかもしれない・・・
もう、呆れられちゃったのかな・・・」

自嘲気味に笑うが、本当に傷ついているのだろう。目には、うっすらと涙が浮かんでいた。

「あ〜あっ・・・明智さんみたいな人、どこかにいないかなぁっ・・・!」
「私なら、今ここにいますが?」
「やだ明智さん、そうじゃなくって、恋人にするならってことですよ。
多分、あたしのこと一番に考えてくれるし、何より大事にしてくれるんじゃないかなって」

美雪の一言が起爆剤となってしまった。
今まで黙っていた明智が、意を決したように口を開いた。

「・・・でしたら七瀬さん、私と付き合っていただけませんか?」
「へ?なに真顔で冗談言ってるんですか、明智さん!」

美雪は飲みかけの紅茶を噴出しそうになるのを必死に押さえて言った。

「もちろん、冗談ではありませんよ。いきなりで驚かせてしまったようですね。私は本気なのですが・・・」

美雪のカップを持つ手が震える。

「でも明智さん恋人いらっしゃるんじゃ?」

美雪はなんとか断る口実を作ろうとするが、軽くかわされてしまう。

「いえ、今はいませんので。それとも、私では不満・・・でしょうか?」
「不満というか、私なんかじゃ釣り合わないですよ」
「釣り合う・釣り合わないは関係ありませんよ。私が貴女を好きなんですから」

そういうと明智は強く美雪を抱きしめた。
美雪は一瞬体を強張らせたが、やがて納得したのか、
ゆっくりと明智に腕を回し、胸に顔をうずめた。

「明智さん、あたしのこと幸せにしてくれますか?」
「もちろんですよ・・・」

明智は美雪の頬にそっと触れると、桜色をした唇にキスをした。
最初は、ついばむような軽いキス。それから徐々に深くなっていくキスに、くちゅくちゅと水音が部屋に響く。
初めてのキスに美雪が耐えられず、声を漏らす。

「ん・・・っ・・あっ、はぁ・・・っ・・
ねぇ明智さん、はじめちゃんのこと忘れさせて?」

「もちろん、忘れさせてさしあげますよ」

明智は眼鏡を外し、段々とキスを下ろしていく。
耳たぶから首筋に、鎖骨に・・・その度に敏感な美雪は声を上げずにはいられない。

「ぁ、んっ・・ゃ・・・あけ、ち・さんっ」

初めての刺激にどうしていいか分からない美雪は、
明智の与える刺激にただ酔っていた。
あまりの気持ちよさに、膝が震えて立っていることもできなくなり、
美雪はソファーに身を沈める。
器用にワンピースを脱がされ、美雪は下着姿で恥ずかしそうにうつむく。
明智の目の前には、高校生にしては随分と発育した躯・・・

―――ギシッ

顔をあげると、直ぐ近くに明智の顔があった。
彼は、残り少ない理性と闘っていた。

・・・さすがにソファーの上ではまずいと思ったのか、
この場で抱いてしまいたい衝動をぐっと抑え、美雪を抱き上げ寝室へと向かう。
抱き上げられた美雪は、恥ずかしさで顔を真っ赤にし、再びうつむいてしまった。

寝室に入ると、明智はそっとベッドに美雪を横たえ、
ネクタイを緩めワイシャツを脱ぎ始めた。
現れた肉体は少年のものとは違い、適度な筋肉に覆われていた
そこには、普段スーツの上からでは感じることのなかった逞しさがあった。

―――エリートとは言っても、やっぱり警察官なんだわ・・・

ベルトをはずし、それで両手首を軽く縛り、明智は美雪を組み敷いた。

「あ・明智さんっ!なんで縛ってるんですか!?外して下さい!」
「恐がることはありませんよ。ちょっとした演出みたいなものですから」

そう言うと、何度も何度も、美雪の緊張を解きほぐすように至るところにキスを降らせる。
美雪は、ひとつひとつに敏感に反応を返してくる。
時折髪を撫でられ、縛られたことへの恐怖感はもうなくなっていた。
やがて慣れた手つきでホックをはずすと、するりと腕から抜く。
これで美雪の上半身を覆うものは何もなくなった。
明智の目の前には豊かなふくらみがふたつ、胸の頂は既に硬く反応を見せていた。

「おやおや、キスだけでこんなに感じてくれているのですか?」

そう言いながらも、明智自身にも余裕はなかった。
やさしく片方のふくらみを揉みしだき、頂を指で弄ぶ。
もうひとつに舌を這わせると、美雪は全身に電流が走った感覚に襲われた。

「んっ、ぁ・・や・・・っ、はぁッ・・」

胸への愛撫は止めることなく、今度は腹部へと唇を走らせる。
まるで明智に触れられているところ全てが感じるかのように、
内腿をすり合わせ美雪は悶える。

「明智さ・・・ん、な・・かヘンな感じがするッ・・・」
「いいんですよ、七瀬さん。きちんと感じて下さい・・・」

明智は、既に湿って染みをつくっている美雪の秘所を通り越し、
内腿へと指を這わせる。
指の腹でほんの少し肌に触れ、内腿から脚の付け根ギリギリのところを
往復させているうちに、焦らされている美雪に限界がきた。

「も・・ぅ、はや・くっ・・・!」
「早くどうしてほしいのですか?はっきり言ってくれないと分からないのですが・・・」
「ん・・・っ、早く触ってッ!」
「どこを・・・ですか?」
「そ・・・んなこと、言わせないで下さいッ・・」

明智は、快感に耐えながら答える美雪に微笑み、

「フッ・・・すみません。ちょっと今のはいじわるすぎましたね」

言うが早いか、既に染みのできているクロッチの上から、つーッとなぞる。

「こんなに濡らして・・・もう下着の意味を成していませんね。取りますよ?」

美雪の下着が膝まで下ろされた、と思ったら完璧に剥ぎ取られてしまった。
ついに、美雪は生まれたままの姿で明智の前にいる。

足を開かされ、一番敏感なところを触られると、瞬間足を閉じてしまう。
それが余計に明智を誘っているようで、更に指の動きが激しさを増す。
溢れ出る愛液をすくい、敏感な部分に塗りつけ、今度は弾いてやる。

「あ・・・ゃんッ、な・・で、こ・・ん・なに・・・」

――― 七瀬くんは、まだ男を知らない?私が初めて・・・?
あの少年とは今まで何もなかったのか?―――

・・・そんなことを考えつつも、明智の巧みな指技は美雪を絶頂へと導く。
だんだん美雪の息が荒さを増してきた。
もう、何も考えることはできない。

「っは・・・・・あ・・・んっ・・・あッ、やぁっ・・・も・・もぅ・・・ダメェっ!」

―――美雪は明智の指だけで果ててしまった・・・

「・・・さん、七瀬さん。大丈夫ですか?」

手首に巻いたベルトを外しながら、
うつろな目をした美雪を、心配そうに見つめる。

「ぁ、ごめんなさい・・・あたし・・ひとりだけ・・・」
「・・謝ることはありませんよ。私に感じてくれたということでしょう?
それより手首、痛くありませんか?」
「あ、ハイ。痛くはなぃ・・・って明智さん?」

返事を待つことなく、再び美雪を組み敷く。

「・・・なんて言いましたけど、私の躯のことも、少しは心配してくれますか?」
「え?」

明智は美雪の手を取ると、そっと自分の下半身に持っていく。

「君の淫らな姿に、もう、こんなになってしまったんですよ・・・」

明智のそれは、布越しに触れてもわかるくらい硬く、大きくなっていた。
美雪はどう返していいか分からない。
明智は頬に手をやり、そっとキスをした。
そして・・・

――― 七瀬さん、ちゃんと君を・・抱きたい・・・






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